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「未来のお金のカタチとは?」【前編】--マネーフォワードトークセッション

決済・送金(キャッシュレス)
最終更新日:2019/01/10

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2018年9月、東京港区のマネーフォワード本社において、「未来のお金のカタチとは?」と題したトークセッションが開催された。ゲストスピーカーは3人。アフリカで電子マネーを運営する日本植物燃料の合田真代表。飛騨高山で地域通貨を電子化した飛騨信用組合の古里圭史氏。そして仮想通貨ビジネスを構築中のマネーフォワードフィナンシャルの神田潤一代表。モデレーターはインクルージョン・ジャパンの吉沢康弘氏が務めた。

■バイオ燃料ベンチャーがモザンビークで電子マネーを運用!?

トークセッションの前にゲストの2人からプレゼンテーションがあった。

日本植物燃料の合田真氏は、モザンビークで電子マネーを運用している。「なぜ、バイオ燃料ベンチャーの日本植物燃料が電子マネー?」と誰もが不思議に思うはずだ。日本植物燃料は、社名通り、バイオディーゼル燃料を生産して販売する企業。その原料として、モザンビークで栽培されているヤトロファという植物に注目をした。この関係で、ヤトロファを生産するモザンビークに現地法人を設立した。

それだけでなく、電化率1%だった生産地の村々にバイオディーゼル発電で生み出した電気を供給するビジネスも始めた。ところが、電化率1%の地域なので、そもそも電化製品が存在しない。そこで、最初は充電式ランタンのレンタル、キオスク店舗を設立し、そこに冷蔵庫を置いて、冷たい飲み物などの日用品の販売、食品などの冷蔵保存代行などのビジネスを始めた。

ところが、このキオスクが問題だらけだった。売上金と帳簿が合わないのだ。内戦が続いて、商習慣というものができあがっていない現地では、ビジネスというものがまだ理解されていない。売上金が最大で30%も欠損することもあったが、担当者を問い詰めても「妖精が持っていった」と言うばかり。悪意があって盗んでいるというよりも、きちんと現金と帳簿を合わせるという習慣が存在しないのだ。

そこでタブレットを使った電子マネー決済システムを導入した。これで欠損金は1%になったという。

【前編】001サイズ変更.jpg(日本植物燃料、合田真代表。モザンビークで電子マネー、モバイルバンクを運営する)

■貯蓄された電子マネーでモバイルバンク運営、収益は村と個人に分配

お金の管理をするために導入した電子マネーだったが、不思議なことが起こった。それは数十万円という現地ではかなりの大金を電子マネーに変える人が現れてきたことだ。現地には銀行がなく、お金の保存が難しい。財産を持つ人は、地面に穴を掘って、現金を隠しているような状況だった。それよりは電子マネーにしておいた方が安心と考えたのだ。

合田氏は、これを見て、電子マネーは、モバイルバンクの機能も持っていることに気がつき、村の発展にも貢献する「収益分配型モバイルバンク」の構築を進めている。電子マネーを貯蓄に利用している人がいるのだから、その資金を個人に低金利で貸し付けるようにした。利子による収益が目的ではなく、生活水準を上げてもらうための貸し付けだ。

モバイルバンクの収益源は、電子マネー決済による決済手数料だ。しかも、この収益を村と個人に分配する。収益の20%のうち、1%を利用した個人に還元する。19%は各村の組合に還元し、村のインフラ整備などに使ってもらう。何に使うかは、村で議論をしてもらう。この議論をしてもらうためのきっかけ作りにすることが狙いだ。この資金で、各村の生活水準があがることを期待している。

■飛騨高山地域の地域通貨「さるぼぼコイン」はなぜ定着!?

飛騨信用組合の古里圭史氏は、飛騨高山の地域通貨「さるぼぼコイン」の電子化についてプレゼンテーションを行った。

地域通貨は、日本各地で発行されている、その地域でのみ使える通貨だ。お金の地産地消とも言われるもので、地域経済を活性化しようとする試みだ。しかし、多くの地域で定着に苦戦をしている。その中で、高山市と飛騨市、白川村の2市1村、人口11.4万人の飛騨高山地域の地域通貨「さるぼぼコイン」は、利用者数5000人、累計コイン販売3億5000万円、加盟店数約800店舗(地域の店舗の15%程度)と定着をしている。その原動力となったのが、地域通貨の電子化、スマホ決済化だ。

【前編】002サイズ変更.jpg(飛騨信用組合の古里圭史氏。飛騨高山の地域通貨「さるぼぼコイン」を電子化、スマホ決済を可能にした。)

非常にうまいのは、加盟店の導入コストをほぼゼロにしている点だ。QRコードスマホ決済の場合、利用者が自分のQRコードをスマホに表示して、それを商店のレジ付属のスキャナーで読み取るという方法が一般的。しかし、商店側にレジ、スキャナー、ネット接続などの設備が必要になる。もうひとつ逆の決済方法があり、それは商店が自分のQRコードを印刷し、紙として店舗内に掲示をしておく。利用者はスマホでこのQRコードをスキャンし、支払い金額を入れて、決済するというものだ。商店側にはレジ、スキャナーが不要になる。決済の確認は、商店主個人のスマホまたはタブレットで行える。

さるぼぼコインは、この簡便な決済方法を基本としたため、加盟店になるための設備投資がほとんどゼロで済んでいる。そのため、加盟店が一気に増えたのだ。

■飛騨信用組合と飛騨高山地域は運命共同体、地域の人が盛り立て

もうひとつの理由は、飛騨信用組合がこのさるぼぼコインを運営しているということだ。信用組合は協同組織金融機関と呼ばれる形態の金融機関であり、飛騨信用組合の場合、飛騨高山地域の高山市、飛騨市、白川村の2市1村でしか営業活動ができない。そのため、飛騨高山地域の経済が衰退すると、飛騨信用組合も業績が悪化し、万が一なくなりでもしたら、地域の人は身近な金融機関を失うことになる。地域と運命共同体の関係にある。そのため、さるぼぼコインは地域の利用者にとって利便性が高くなるように設計され、地域の人もさるぼぼコインを盛り立てて行こうという機運がある。

さらに飛騨高山地域の主要産業は観光業で、年間462万人の観光客が訪れる。そのうち、外国人観光客が51万人で、中国のスマホ決済「アリペイ」とも契約をして、中国人観光客がアリペイ決済をできるようにもし、外貨の獲得にも寄与している。

当然ながら、飛騨高山地域には中高年や高齢者も多い。高齢者がスマホやタブレットを使いこなせるのかと思われる方もいるかもしれない。もちろん、スマホの使い方講座などの活動も行なっているが、最も利用頻度が多く、利用金額が大きいのは60代女性であるという。おばあちゃんが店主の雑貨屋、食堂といった日常使いの商店が多く加盟していることが影響している。もはや「中高年、高齢者はスマホが使えない」は都市伝説であるということがわかる。

このようなプレゼンの後、モデレーターの吉沢氏の司会で、ゲストスピーカー3人による議論が行われた。その議論については、後編でご紹介する。