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フィンテック企業取材レポート

"元芸人志望" だった Financial Lab松井社長「『インシュアテック』のフロントランナーとして走り続ける」

保険(インシュアテック)
最終更新日:2019/09/20

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マイナビエージェント「フィンテック特集」、企業取材レポートの第一弾は、『インシュアテック』で注目を集める、Sasuke Financial Lab代表取締役の松井清隆さんにお話を伺った内容をご紹介します。

家計のサポートサービス「ウェルスケア」と保険のロボアドバイザー「ドーナツ」を提供

――御社のサービス内容を教えてください。

私たち、Sasuke Financial Labでは、現在二つのサービスを提供しています。

一つがファイナンシャルプランナー(FP)のアドバイスを手軽に体験できる、家計のサポートのサービス「ウェルスケア」で、2017年の9月に開始しました。そもそも当社全体のミッションとして掲げているのが、「若年層を中心とした家計の最適化」ということです。
お金のこと、家計のことって、学校でも習わないし、誰に相談してよいかもわからない。家計のアドバイザーとして、ファイナンシャルプランナーがいるけれど、場合によっては高額な料金が発生してしまうのでは?となかなか相談できないのが現状です...そうした状況を見て、手軽にアプリを通じて体験できるようなサービスを提供していきたいと思ったのが、ウェルケアを始めた大きなきっかけとなっています。

一部有料コンテンツも含まれていますが、ウェルスケアは基本的に無料で体験できるものになっています。具体的には、家計の状況や家族の情報など、一般的にFPさんに対面で聞かれるような質問を入力してもらうと、それに対して「現状の支出が多すぎます」とか「もう少し余裕をもって使っても大丈夫です」といったアドバイスがグラフ等と合わせて提供されるという形になっています。また、それに合わせて家計の知識や住宅に関するノウハウなどもレクチャー形式で提供しています。大きく分けてアドバイスのセクションと学ぶセクションの二つで成り立っているのがウェルスケアです。

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そしてもう一つのサービスが、保険のロボアドバイザー「ドーナツ」。こちらはユーザーに対して、最適な保険を提案して案内をするサービスで、2018年の4月に開始しました。

ウェルスケアを提供していく中で、どうしてもそこでのアドバイスが実際の支援のところまではいかないということが多々ありました。また実際に利用されているお客様にインタビューをさせていただいても、アドバイスを踏まえてどのような改善をしたら良いのか、実際にどういうアクションを取ったら良いのかという実行支援を求められるケースが非常に多く出てきていました。そこで、家計の支出のうちで特に支出の大きい保険に注目して、実行支援できるサービスを提供していこうというのがドーナツの開発に至った経緯です。

ドーナツでは保険を扱っていますが、保険の場合商品が複雑なところもあるため、現場の相談窓口も設置して、お問い合わせいただいたお客様についてはFPが回答するというような機能も同時並行で提供しています。

ウエルスケアも、ドーナツも、金融情報をITテクノロジーを使って、提供していくサービス。こうしたサービスは「インシュアテック」と呼ばれていますが、われわれは、そのフロントランナーとして走っているところです。

金融業界でBtoBの仕事をしていたからこそ、個人の家計が気になった

――御社を起業するにあたっての経緯を教えていただけますでしょうか。

私は高校を卒業した後、吉本の養成所「NSC」に入りました。そこから3年ほど構成作家をしていたのですが、限界を感じ、21歳の時にアメリカのUCLAに留学しました。UCLA卒業後はリーマン・ブラザーズに入社したのですが、1年ほどでリーマン・ショックが発生して、会社が破綻。その後は野村證券に拾ってもらい5年ほどいました。そして資産運用会社のウエリントン・マネージメントに転職して2年半ほど働き、2016年に起業しました。

新卒からずっと金融、主に証券会社で働いていましたが、金融で企業同士の取引に関わっていても、個々人の日々の生活に関係する家計の部分が大きな土台としてあると常に考えていました。とはいえ、日本の義務教育で家計の知識についての授業はなく、あくまで社会科の一部として経済のことを勉強するという程度で終わっているケースが大半だと思います。まずはその部分のボトムアップを図れるようなサービスを提供することで、お金についてのリテラシーを上げていきたいというのが起業のきっかけになっています。

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若年層に家計のリスクについてもっと知ってもらいたい

――最近では、若い人の"保険離れ"も指摘されています。

メディアでは、保険の入りすぎや無駄な保険というテーマで保険が取り上げられることが多いと思います。しかし若年層に関していえば、近年ではセキュリティの問題から大手の保険会社のセールスの方がオフィスに入れなくなったこともあって、保険の加入率は低下しています。とはいえやはり、結婚して子供ができた20代後半、30代の家族が一切保険に入っていなければ、それこそ家計にとっての大きいリスクになるのではないでしょうか。ですから、若年層をきちんと啓蒙できるようなデザインを我々自身が作っていけたらと考えています。

スマートフォンが普及している現在、とりわけデジタルやテクノロジーは若い世代とのタッチポイントとして非常に重要な要素になっています。そこは、選択の仕方としてユーザー第一を考えて、サービスを提供しています。

ドーナツで使われている具体的なテクノロジーとしては、例えば家族の状況やその人の持っているリスクの度合い、年齢や性別など実際にウェブ上で回答していただいた中で、過去のデータと照らし合わせて、今回答している人がどのくらいの保険が必要でどういったリスクがあるのかっていうのを導き出すようなものになっています。対面で場合によっては何十項目もヒアリングして保険を提案していたものを、ウェブを使って簡易的にかつロジックを立てて、その方にあった保険を提供させて頂いています。

2019年は、インシュアテック元年になる

――今後の見通しをお教えください。

個人的には、来年が勝負の年だと考えています。2018年はよくインシュアテック元年みたいに言われることが多くて、これからもっといろいろな企業が参入してきて、この業界が注目されるようになれば、来年本格的なブームが来ると思っています。現在ネットで生命保険に加入するという方は約1%ですが、ゆくゆく5%〜10%くらいには上がると確信しています。
生保産業は非常に大きい業界ですので、今の5倍、10倍増やすだけでも、非常に大きなインパクトを与えられると思います。

こうした勝負の年を迎える中で、私達は来年ドーナツの正式版のリリースを考えています。現在使用されているものはベータ版で、色々なデータを取りながらどこがダメでどこを改良したらいいかってことをずっと社内で色々話していて、これを正式版として来年しっかりと提供していきたいなと思っています。現在、6社の保険会社と提携していて、近いうちに15社前後くらいには増やしていくつもりです。

これから、様々な保険をネットでどんどん取り扱いたいと思っているのですが、ネットでは販売できない商品も多くあり、保険会社側とも連携しながら商品数を拡大していきたいと思います。そこは一歩一歩着実に進めていきたいと考えています。

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もっと先の未来は何をしていきたいかまだ明確には決めていませんが、家計や人生のリスクについて多くの人にわかりやすい仕組みを提供していきたいなと思っています。

Sasuke Financial Lab
東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビル4階 FINOLAB内
URL https://i-donuts.com/

Sasuke Financial Lab株式会社
代表取締役 松井清隆
広島生まれ。高校卒業後、吉本総合芸能学院(通称:NSC)に所属し、構成作家としてキャリアを積む。21歳時に一念発起して米UCLAに留学。卒業後、リーマン・ブラザーズ証券に入社。M&A業務に従事。リーマン・ショックで会社が破綻し、野村證券の金融法人担当に。保険会社のIPOやM&Aに携わる。2016年にSasuke Financial Lab設立。