ガソリン価格は今後どう推移? "暫定"なのに暫定ではない"暫定税率"廃止で値下がり実現なるか!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(26)

連載・インタビュー

この連載では、私が経済キャスターとして培ってきた経済や金融の知識をもとに、旬の経済ニュースを「キーワード」を軸にわかりやすく解説していき、若手社会人の方の「経済や金融の話はちょっと...」といった苦手意識を取り除くとともに、激動の時代を乗り超えるための一助となるようなコラムを綴って参ります。

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1. ガソリン価格の高騰を抑える政府の補助金が16日再縮小、ガソリン価格が値上がり

2025年に入り、いつのまにか一カ月が過ぎようとしています。新年を迎えたとは言え、社会が抱える課題は昨年から継続しており、確認しておきたい経済・金融ニュースが目白押しです。

そうした中でも、ガソリン価格を巡る議論については、多くの皆さんの生活にも関わるテーマですので、ニュースとしても注目を集めています。

そこで今回は、以下の記事を取り上げます。

「ガソリン価格 今後どうなる 政府補助金の縮小は1月も 小売価格にはいつ反映?」(出典:NHK)

キーワードは『ガソリン価格』です。

(今回のキーワード)

『ガソリン価格』

ガソリン価格の高騰を抑えるための政府の補助金が12月19日から縮小されたのに続き、1月16日に再び縮小されました。これにより、現在1リットル180円程度の小売価格(全国平均)が185円程度まで上昇することになります。

そもそも、これまでのガソリン価格は、政府が物価高対策の一つとして2022年1月から石油元売り各社に補助金を支給してきたことにより、価格が抑えられてきました。

そうした補助金が連続して縮小されたのです。

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2.「ガソリンの暫定税率」とは?

この流れの背景には、12月11日に自由民主党、公明党、国民民主党の3党による幹事長会談が行われた際に、「ガソリンの暫定税率を廃止する」ことで合意したことがあります。

そもそもガソリンにかかる税金には、ガソリンの本体価格に上乗せされた「揮発油税」と「地方揮発油税」をあわせた通称"ガソリン税"という税率があり、このガソリン税は1リットルあたり合計で53.8円が課されています。

このうち本来の税額28.7円に25.1円が上乗せされており、この25.1円「ガソリンの暫定税率」となっているのです。

もともとガソリン税は、道路整備のための特定財源として設定された税でした。

1974年に道路の建設・整備のために導入されたもので、本来ならば25.1円はあくまで暫定的であったことから、「暫定税率」と呼ばれていたはずなのですが、道路財源の確保を理由に現在の暫定税率は1979年からずっと続いています。

2009年に、ガソリン税など道路整備のための特定財源とされていた税収が一般財源化されたのですが、ガソリン税に関しては、財政事情や温暖化対策への意識の高まりを背景に、理不尽な税金と言われつつも、同じ税率のまま続いてきました。

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3.燃料価格の急騰を抑えるために導入された「トリガー条項」とは?

その後、2010年には燃料価格の急騰を抑えるために「トリガー条項」が導入されました。

この条項は、全国平均でガソリン価格が1リットル160円を超えた場合に暫定税率を停止し、130円を下回ると再開する仕組みですが、東日本大震災以降は、復興財源として使われることを理由に凍結された状態が続いています。

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4.暫定税率が廃止されればガソリン価格は下落する見通し

12月11日の自由民主党、公明党、国民民主党の3党による幹事長会談での合意では、「暫定税率」について時期は明示していませんが「廃止する」とし、具体的な実施方法などについて、今後も関係者間で誠実に協議を進めるとしています。

今回の合意により、暫定税率が廃止される見通しとなったことで、ガソリンや軽油の価格が直接的に引き下げられる見込みです。廃止に向けては、来年末の令和8年度(2026年)税制改正大綱までに詳細を決め、令和8年(2026年)4月からの実施を目指すとしています。

つまり、ガソリン価格については、政府の補助金が縮小し、一旦価格が上昇しますが、その後に暫定税率が廃止されれば、今一度、下落するという価格推移になりそうです。

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5.ガソリン価格は、NY原油WTI先物価格や為替相場の動きにも注目

また、ガソリン価格は、国際金融市場におけるNY原油WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物価格の影響を大いに受けます。NY原油WTIとは、テキサス州西部を中心とした地域で産出される米国の代表的な原油であり、硫黄分が少なくガソリンを多く抽出できる高品質な原油のことを言います。

この原油価格はニューヨークマーカンタイル取引所において先物取引が行われており、原油価格の代表的な指標となっているため、ガソリン価格を見通す上でもチェックしておきたい指標です。

また、外国為替市場における長引く円安・ドル高基調は、円建ての原油価格を押し上げる要因となります。為替相場の動きも確認しておく必要があります。

国際的に資源価格の相場が不透明な中、ガソリン価格を抑える政府の補助金が縮小されることについて林芳正官房長官は1月16日の記者会見で、「不安払拭に努めたい」と述べています。

同時に、低所得者向けの給付金や交付金などを周知し、物価高対策に総合的な対応を取ることも強調しました。

2025年は、これまで大きな動きがなかったガソリンの税金に関して、議論が加速する重要な一年となりそうです。日々の生活にも影響する自分ごととして、ガソリン価格やガソリン税に関するニュースを注視しておくと良いでしょう。

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鈴木ともみがキャスターを務める『WORLD MARKETZ』(東京MXテレビ・ストックボイスTV)は平日夜22:00~23:00生放送(鈴木ともみは月曜日担当)。最新のグローバルな金融経済ニュースをリアルタイムでお伝えする国際金融報道番組。
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著者:鈴木ともみ

経済キャスター、国士舘大学政経学部兼任講師、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員、日本記者クラブ会員記者、ファイナンシャル・プランナー。
埼玉大学大学院人文社会科学研究科経済経営専攻博士前期課程を修了し、経済学修士を取得。地上波初の株式市況中継TV番組『東京マーケットワイド』『WORLD MARKETZ』、『Tokyo Financial Street』(ストックボイスTV)にてキャスターを務める他、TOKYO-FM、ラジオNIKKEI等ラジオ番組にも出演。NIKKEI STYLE、マイナビ、FinTech Journal、日経QUICK等にてコラムを連載。国内外の政治家、企業経営者、ハリウッドスター等へのインタビュー多数。主な著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)『資産寿命を延ばす逆算力』(シャスタインターナショナル刊)。

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