原油価格はどう決まる? 原油先物から詳しく解説--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(6)

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経済キャスターの鈴木ともみです。

この連載では、私が経済キャスターとして培ってきた経済や金融の知識をもとに、旬の経済ニュースを「キーワード」で解説していき、若手社会人の方の「経済や金融の話はちょっと...」といった苦手意識を取り除くとともに、激動の時代を乗り超えるための一助となるようなコラムを綴って参ります。

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1.原油先物の銘柄にはWTI原油先物とブレント原油の2種類がある

早速ですが今回はNHKの以下の記事を解説していきます。

『原油先物価格 先週末比一時5%超 大幅上昇 イスラエル情勢受け』(出典:NHK)

この記事を読み解くキーワードは『原油先物価格』です。

(今回のキーワード)

『原油先物価格』

この記事は、国際的な原油価格の指標のひとつであるニューヨーク市場のWTIの先物価格が一時、5%を超えて大幅に値上がりしたことを伝えています。

WTI原油先物とは、米国の代表的な原油先物商品を指します。

WTI(West Texas Intermediate)とは、テキサス州西部を中心とした地域で産出される中質原油のことを指し、硫黄分が少なく軽質で、ガソリンや軽油を多く抽出できる高品質な特徴を持ったオイルです。

取引量と市場参加者が多いことから、原油価格の代表的な指標の一つに数えられています。

原油先物の銘柄には、このWTIとブレント原油2種類があり、それぞれニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)インターコンチネンタル取引所(ICE)で取引され、世界の原油価格や経済状況の指標として用いられています。

WTI原油先物は1983年5月にNYMEXに上場しました。

ここで出てくる「原油先物価格」の「原油先物」という言葉は、おそらく読者の皆さんにとっては聞き慣れないワードだと思いますので、以下で解説します。

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2.「原油先物」とは?

まず、原油先物取引とは、一定の期日に決められた量の原油を決められた価格(=先物価格)で交換することを約束する契約のことです。

価格は取引所で決定されており、原油先物取引は原油を売買する一般的な方法で、価格が上昇するか下落するかを予測して取引を行います。

先物取引では、原油そのものの受け渡しをする必要がないため、投資商品としてより人気が高まる傾向にあるのです。

そして、この価格は主に需要と供給の関係で動いています。

原油の需要が供給を上回れば価格は上昇し、一方、需要が減少し供給が増えれば価格は下がります。

このように、価格は需給によって決まるわけですが、その需給に影響を与える要因は多岐に渡ります。

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3.供給面において産油国の存在が重要

まず、世界の原油の供給がどのくらいになるのかという供給面において、産油国の存在が重要な位置を占めており、世界の産油国を代表するのが石油輸出国機構(OPEC)となります。

サウジアラビアやUAEは、OPEC加盟国です。

OPEC加盟国は、世界の需要に合わせて生産量・供給量を増減させ、原油価格に影響を与えます。

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4.なぜ「原油先物価格」が上昇した?

ニュース記事に戻りますと「パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃と、それに対するイスラエル軍の報復作戦を巡り、中東地域での原油の供給に対して懸念が広がったため原油先物価格が上昇した」とあります。

つまり、産油国が集中する中東地域で戦闘が起こったことにより、原油の供給面において、今後、生産・供給が減少する懸念が高まり、WTI原油先物価格が上昇したわけです。

そして、このようにある特定の地域で政治的・社会的・軍事的な緊張が高まるリスク『地政学リスク』と言います。

産油国の多い中東地域で地政学リスクが高まると、原油の供給が減少する懸念からWTI原油先物価格は上昇しやすくなるのです。

ニュース記事の中にも「今後は、世界有数の産油国であるサウジアラビアやUAEがどのような行動を取るかに注目が集まるだろう」とありますが、地政学リスクがどのくらい高まるかが、今後のWTI原油先物価格の動向を左右することになります。

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5.WTI原油先物価格の動向は、世界の大きな潮流や国際情勢に敏感に反応

一方、WTI原油先物価格の動向は、需要面の影響も受けます。

世界の経済情勢において、経済活動が活発化している時には、エネルギー、輸送、製造、医薬品など産業界での活動が旺盛になり、原油の需要が増加し、需要が供給を上回ることで価格は上昇します。

さらに、中長期的な視点で考えると、世界は今、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料の枯渇問題や地球温暖化などの環境問題により、エネルギー生産を化石燃料から再生可能エネルギーへ移行する時代に入っています。

こうした流れにおいては、石油などの資源から太陽光発電、風力発電、水力発電など代替資源への移行が進み、石油の需要が減少していくことが予想されます。

そうなると、当然、石油の基となる原油の需要も減少するため、WTI原油先物価格も下落していくと考えられます。

このように需給で決まるWTI原油先物価格の動向は、世界の大きな潮流や、国際情勢に関する最新のニュースなどに敏感に反応します。

トレードする際に、GDPや雇用統計などのあらゆる経済データが用いられるのもそのためです。

私たちが生きている世界の今を知るためにも、最新のニュースとWTI原油先物価格の動向をセットで理解し、常に国際情勢や世界経済の流れを把握する癖をつけておきたいものです。

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鈴木ともみがキャスターを務める『WORLD MARKETZ』(東京MXテレビ・ストックボイスTV)は平日夜22:00~23:00生放送(鈴木ともみは月曜日担当)。最新のグローバルな金融経済ニュースをリアルタイムでお伝えする国際金融報道番組。
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著者:鈴木ともみ

経済キャスター、国士舘大学政経学部兼任講師、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員、日本記者クラブ会員記者、ファイナンシャル・プランナー。
埼玉大学大学院人文社会科学研究科経済経営専攻博士前期課程を修了し、経済学修士を取得。地上波初の株式市況中継TV番組『東京マーケットワイド』『WORLD MARKETZ』、『Tokyo Financial Street』(ストックボイスTV)にてキャスターを務める他、TOKYO-FM、ラジオNIKKEI等ラジオ番組にも出演。NIKKEI STYLE、マイナビ、FinTech Journal、日経QUICK等にてコラムを連載。国内外の政治家、企業経営者、ハリウッドスター等へのインタビュー多数。主な著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)『資産寿命を延ばす逆算力』(シャスタインターナショナル刊)。

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