この連載では、私が経済キャスターとして培ってきた経済や金融の知識をもとに、旬の経済ニュースを「キーワード」を軸にわかりやすく解説していき、若手社会人の方の「経済や金融の話はちょっと...」といった苦手意識を取り除くとともに、激動の時代を乗り超えるための一助となるようなコラムを綴って参ります。
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1.第2次石破内閣、「年収103万円の壁」対策など国民民主党の政策の受け入れ方が焦点
11月11日、第215回特別国会における衆参両院の首班指名選挙で、自民党の石破茂総裁が第103代内閣総理大臣に選出され、第2次石破内閣が発足しました。
石破首相は内閣発足後に記者会見に臨み、今後の優先課題について、
(1)厳しさを増す安全保障への対応、(2)治安・防災への対応、(3)経済の活力回復、の3点を挙げ、それぞれ説明しました。
(3)の「経済の活力回復」においては、特に国民からの関心が高い「103万円の壁」問題への対応についても取り上げ、国民民主党が衆院選で多くの国民の支持を得たことを尊重する考えを示し、前向きに取り組む姿勢を示しました。
そこで、今回は以下の記事を取り上げます。
『第2次石破内閣の経済政策、国民民主との調整が焦点...「103万円の壁」見直しやガソリン税減税を改めて求められる』(出典:読売新聞オンライン)
キーワードは『103万円の壁』です。
(今回のキーワード)
『103万円の壁』
この記事にもある通り、第2次石破政権における経済政策では「年収103万円の壁」対策やガソリン減税など、国民民主党の要望をどう取り入れるかが焦点となります。
国民民主党は「103万円」を原則として一律に適用される減税措置の基礎控除などを拡大し、「178万円」に引き上げるよう訴えており、実現すれば国・地方を合わせて最大7兆~8兆円程度の税収減となる見通しです。
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2.「103万円の壁」とは?
「103万円の壁」とは、所得税に関わる「壁」のことです。
どういうものかと言いますと、基礎控除と給与所得控除を合わせた金額が103万円であるため、年収がこれを超えると所得税が発生します。
具体的には、アルバイトで働く学生の場合、親の所得税の控除から外れてしまうのです。
一方、配偶者の扶養に入りながらパートなどで働く場合については、2018年に制度変更され、配偶者への控除の「壁」が103万円から150万円に引き上げられています。
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3.「106万円の壁」と「130万円の壁」も存在
また、「103万円の壁」のほかに、「106万円の壁」と「130万円の壁」もあります。
「106万円の壁」とは、従業員51人以上の企業などで働く人が対象であり、年収が106万円超え(月額賃金8万8000円)、週の労働時間が20時間以上などの壁を超えると配偶者の扶養から外れ、厚生年金や健康保険の保険料の支払いが発生する壁のことを言います。
さらに「130万円の壁」とは従業員が50人以下の企業などで働く人が対象であり、年収が130万円を超えると扶養を外れ、国民年金や国民健康保険の保険料の支払いが発生する壁とされています。
このように、「103万円」「106万円」「130万円」と様々な数字がニュースで飛び交っていますが、いずれもパートやアルバイトで働く人たちが、手取り収入が減ることを懸念して、働く時間を抑制してしまう「年収の壁」となっているのです。
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4.国民民主党は手取り収入を増やす政策として「103万円の壁」引き上げを提案
そうした中で、国民民主党は手取り収入を増やす政策の一つとして「103万円の壁」の引き上げ案を掲げました。基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計103万円を178万円へ増額する提案です。
この減税の対象は、給与所得103万円超で所得税を納めるべき人全員となります。
政府の試算によれば、この政策によって減税される総額は7.6兆円に上り、税負担の大きい高所得者ほど減税額も大きくなります。
給与所得300万円だとすると、減税額は約4万円、700万円だと約15万円、1200万円だと約23万円になる見込みです。
政府・与党が懸念しているのは、「103万円の壁」の引き上げにより生じる税収減についてです。税収が減少する中で、財源をどうするのか、財源がないなら代わりに何をやめるかなど、対策を練らなければなりません。国の財源が減ってしまう状態が続くと、年金など将来のための社会保障費の財源も確保しにくくなってしまう不安が出てきます。
国民民主党は「103万円の壁」対策とガソリン減税などのエネルギー高騰対策を最重点とし、消費税率の時限的な5%への引き下げなど4項目を重点項目に位置づけた要望書を提出し、協議を求めていました。
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5.政府・与党は2025年度税制改正で「年収103万円の壁」を議論する方針を経済対策案に明記
政府・与党は11月19日、国民民主党の要求を受け入れ、「年収103万円の壁」の引き上げなどを2025年度税制改正で議論する方針を経済対策案に明記しました。上乗せしている旧暫定税率の廃止を含むガソリン減税も含めて「引き続き議論する」としています。
政府・与党は国民民主党との協議について、「早期に合意にこぎつけ、経済対策を決定し補正予算を年内に成立させる」と強調しており、財源の裏づけとなる2024年度補正予算を年内に臨時国会で成立させ、2025年度予算案なども年内にまとめることを目指しています。
「103万円の壁」を始めとする年収の壁に関する政策は、私たちにとって自分ごとです。
ぜひとも自分ごととして関心を持ちつつも、国の税収の増減との関連性も見渡しながらチェックしておくと良いでしょう。
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