名目GDPとは? 名目GDPでドイツに抜かれた要因は?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(25)

連載・インタビュー

この連載では、私が経済キャスターとして培ってきた経済や金融の知識をもとに、旬の経済ニュースを「キーワード」を軸にわかりやすく解説していき、若手社会人の方の「経済や金融の話はちょっと...」といった苦手意識を取り除くとともに、激動の時代を乗り超えるための一助となるようなコラムを綴って参ります。

(※もしかしたら仕事頑張りすぎ!? ... そんな方におすすめ『仕事どうする!? 診断』)

【関連記事】「今の高3生以上は"金融スキマ世代"!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(1)」

1.「今年の漢字」で選ばれた「金」(キン・かね)、経済・金融への関心を象徴

早いもので、2024年も終わろうとしています。

今年一年の世相を漢字ひと文字で表す「今年の漢字」が京都の清水寺で発表され、「金」(キン・かね)の文字が選ばれました。

オリンピック・パラリンピックの日本人選手などの活躍による、光をあらわす「金(キン)」と、政治の裏金問題などの影をあらわす「金(かね)」の2つの意味を示しているということですが、今年は新NISAも始まり、資産形成を考える上で「金融」に関するニュースにこれまで以上の関心が寄せられたことからも「金」という漢字を意識した一年だったように思います。

そうした中、広い視野で確認しておきたい経済・金融ニュースが重要視される時代になってきました。果たして、今のそして今年の日本経済全体は良かったのか悪かったのか...。

経済の状況を見る上で、経済規模を示す指標がGDPとなります。

そこで今回は、以下の記事を取り上げます。

名目GDP、世界4位に転落』(出典:読売新聞オンライン)

キーワードは『名目GDP』です。

(今回のキーワード)

『名目GDP』

post1482_img1.jpg

【関連記事】「「103万円の壁」とは? 引き上げると「手取り」が増加する理由は?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(23)」

【関連記事】「現在の手取り減少と将来の年金増...「106万円の壁」撤廃後の影響とは!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(24)」

【関連記事】「石破茂首相が総裁選で言及して注目、「金融所得課税」とは?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(20)」

【関連記事】「最低賃金とは? 引き上げるとどんな効果・影響がある!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(22)」

【関連記事】「実質賃金とは? なぜマイナスが続いている!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(17)」

今の仕事、会社がつらい...無料で相談できる転職エージェント「マイナビエージェント」に相談してみる。

2.「GDP」とは? なぜ「GNP」より重要視されるように?

そもそも「GDP」とは国内総生産とも呼ばれ、英語の「Gross Domestic Product」の頭文字をとった言葉です。

GDPは一定期間の間に各国で生産された付加価値の総額のことで、その国でどれくらいの規模の経済活動が行われたかを示す数値となります。

「国内」総生産であるため、日本企業が海外で生産したサービスや商品の付加価値は含まれません。

一方、「GNP(Gross National Product)」(国民総生産)と呼ばれる指標もあります。

GNPは国内に限らず国民(国内に住む人々)によって生み出された商品やサービスの付加価値の合計を示すため、日本企業の海外での活動によるものも含まれます。

かつては、日本の景気を測る指標としては、このGNPが主に用いられていました。

ですが、現在は国内の景気をより正確に反映する指標としてGDPが重視されています。

国内の生産活動に焦点を当てることで、国内の景気変動をより直接的にとらえることができるからです。

post1482_img2.jpg

【関連記事】「アメリカの利下げは私達の生活にどう影響!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(21)」

【関連記事】「"春闘"とは? 「中小企業」で賃上げが広がるかが焦点--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(12)」

【関連記事】「長期金利が上がるとどうなる!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(5)」

【関連記事】「原油価格はどう決まる? 原油先物から詳しく解説--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(6)」

【求人をお探しの方はこちら】

3.名目GDPと実質GDPの違いは?

GDPには、名目GDPと実質GDPがあります。

名目GDPは国内で一定期間に生産されたモノやサービスの付加価値の総額です。

実際に取引されている価格に基づいて推計されます。

つまり、名目GDPは、現行の価格で計算される国内総生産(GDP)の値であり、「その年の市場価格」で生産された全てのモノやサービスの合計値を示しています。そのため、名目GDPは物価上昇やインフレーションの影響を受け、物価の変動も反映されています。

一方、実質GDPは、物価の変動による影響を取り除き、その年に生産されたモノの本当の価値を算出したものです。

例えば、インフレ政策や為替の変動、原材料の価格の変化によって物価が上昇し、物価が2倍になった場合、GDPも増加することになります。ですが、これは名目GDPの増加であり、経済の規模も2倍になったとは言えません。実質的な経済成長を示すものではないため、実際には物価上昇の影響を取り除いた実質GDPで判断されます。

このように、物価が変化することでGDPの数値が変化してしまうことを避けるため、経済の実態を知る上で重要視されているのが実質GDPなのです。

post1482_img3.jpg

【関連記事】「インフレとは? インフレーションの意味や種類を簡単に紹介--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(2)」

【関連記事】「なぜ円安? いつまで続く!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(3)」

【関連記事】「補正予算とは? 2023年度の注目点は!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(4)」

【関連記事】「金価格はなぜ上昇? 金相場の指標とは!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(7)」

4.各国比較では名目GDP、経済の実態を知る上で重要視されているのが実質GDP

実質GDPは、名目GDPから物価変動の影響を取り除いていることから、経済の成長や縮小をより正確に評価するために使用されています。

各国比較では名目GDPの実額が使われていますが、実質GDPの変動率で景気の動きを見ています。

【関連記事】「中国経済の現状と最新情報、今後の見通しは?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(8)」

【関連記事】「インバウンドとは? インバウンド需要の現状と日本経済への影響--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(9)」

【関連記事】「激化する宇宙開発競争、日本政府の宇宙技術戦略は?- --"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(10)」

5.IMFは、名目GDPの順位の入れ替わりは為替レートの変動が主な要因と分析

その基礎知識をもとに、今回取り上げた記事をひもときますと、今年(2024年)2月に内閣府が発表した2023年の日本の名目GDPは、平均為替レートでドルに換算すると4兆2106億ドルであった一方、ドイツのGDPは4兆4561億ドルと日本を上回ったことが報道されていました。

記事によれば、日本の経済規模は、1968年にGNP=国民総生産で当時の西ドイツを上回って、アメリカに次いで世界2位となり、その後、2010年にGDPで中国に抜かれ、世界3位が続いていました。

しかし、2023年、人口がほぼ3分の2のドイツに逆転され、4位になったということです。

日本では1990年代にバブル経済が崩壊して以降、長年にわたって低成長やデフレが続き、個人消費や企業の投資が抑えられてきました。

また、最近では、円安ドル高の影響で、日本のGDPをドルに換算すると目減りすることや日本に比べて物価上昇率が高いドイツは名目のGDPの伸びがより高くなることも影響しました。

国際通貨基金(IMF)も、名目GDPの順位の入れ替わりは、為替レートの変動が主な要因とした上で、物価水準を考慮すれば、日本のほうが経済規模は大きいとの見方を示しています。

今年2024年10月-12月期を含めたGDP(第一次速報)数値は、来年の2025年2月17日(月)に内閣府が公表する予定です。2025年の経済動向を占う上でも、ぜひ確認するようにして下さい。

GDPは四半期に一回公表されますので、その都度、チェックする癖をつけておくと良いでしょう。

post1482_img4.jpg

【関連記事】「日経平均株価とは? 最近の株価上昇の理由は!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(11)」

【関連記事】「「TOPIX(東証株価指数)」とは? インデックス投資って何?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(13)」

【関連記事】「金融緩和とは? マイナス金利政策とは何だった?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(14)」

【関連記事】「日銀短観とは? 景気動向のバロメータのいろいろ----"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(15)」

【関連記事】「為替介入とは? 介入の目的と影響は!?----"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(16)」

【関連記事】「実質賃金とは? なぜマイナスが続いている!?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(17)」

【関連記事】「「人手不足」の問題点は!? どうすればいい?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(18)」

【関連記事】「利上げとは? 住宅ローンへの影響は?--"金融スキマ世代"に送る『鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説』(19)」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

鈴木ともみがキャスターを務める『WORLD MARKETZ』(東京MXテレビ・ストックボイスTV)は平日夜22:00~23:00生放送(鈴木ともみは月曜日担当)。最新のグローバルな金融経済ニュースをリアルタイムでお伝えする国際金融報道番組。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

著者:鈴木ともみ

経済キャスター、国士舘大学政経学部兼任講師、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員、日本記者クラブ会員記者、ファイナンシャル・プランナー。
埼玉大学大学院人文社会科学研究科経済経営専攻博士前期課程を修了し、経済学修士を取得。地上波初の株式市況中継TV番組『東京マーケットワイド』『WORLD MARKETZ』、『Tokyo Financial Street』(ストックボイスTV)にてキャスターを務める他、TOKYO-FM、ラジオNIKKEI等ラジオ番組にも出演。NIKKEI STYLE、マイナビ、FinTech Journal、日経QUICK等にてコラムを連載。国内外の政治家、企業経営者、ハリウッドスター等へのインタビュー多数。主な著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)『資産寿命を延ばす逆算力』(シャスタインターナショナル刊)。

この記事をシェア

  • facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • X(旧Twitter)

同じカテゴリから
記事を探す

連載・インタビュー

同じキーワードから
記事を探す

求人情報

TOPへ