業務の引き継ぎとは、異動や退職などで業務を離れる際に、担当していた業務を次の担当者へスムーズに移行するためのものです。引き継ぎが適切に行われないと、業務の停滞やトラブルの原因となることがあります。この記事では、引き継ぎの重要性や正しい手順に加えて、スムーズに行うための具体的なコツを紹介します。業務の継続性を保ち、効率的な業務の引き継ぎを目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。
関連記事【仕事の辞め方】必要な準備と転職活動を含めた退職までの流れ・注意点
「もしかしたら仕事頑張りすぎ!? 」そんな方へ
\無料・登録不要/
『仕事どうする!? 診断』を受ける >
1 業務の引き継ぎとは?
業務の引き継ぎとは、担当者が異動や退職などで業務を離れる際、後任者に必要な情報を伝えるプロセスです。業務の中断を最小限に抑えたり、ミスやトラブルを防いだりする役割があります。
引き継ぎでは、業務内容、進行中のプロジェクト、重要な連絡先、使うツールやシステムなどを詳細に伝える必要があります。
1.1 業務の引き継ぎが必要なシーン
業務の引継ぎが必要になるのは、仕事の担当者が変わるときです。具体的には、以下のようなシーンで業務の引継ぎが行われます。
- 退職するとき
- 他の部署へ異動するとき
- 育休・産休・病休で長期休暇に入るとき
- プロジェクトが終了したとき
1.2 「引き継ぎ」と「申し送り」の違い
「引き継ぎ」と似た言葉に「申し送り」があります。どちらも仕事の内容を前任者から後任者に伝えることですが、若干ニュアンスが異なります。
まず、「引き継ぎ」は「業務全体を後任者へ引き継ぐこと」なのに対して、「申し送り」は「業務の注意事項を他のメンバーに共有すること」といった意味を含みます。
つまり、「引き継ぎ」は前任者から後任者への長期的な業務移行を指し、「申し送り」は日常での短期的な情報共有に重点を置いた言葉といえます。
関連記事引継ぎ資料の役割とメリットは?記載すべき内容や作成のコツを解説
関連記事引継ぎの挨拶メールとは?基本構成や例文、送る際のマナーを紹介
関連記事【例文付き】新入社員へのメッセージを紹介!簡単な一言から名言まで
2 業務における引き継ぎの重要性
担当者が変わる際は、仕事の引き継ぎをしっかり行うことが大切です。ここでは、引き継ぎの重要性を改めて解説します。
2.1 滞りなく業務を進められる
担当者が異動や退職、長期休暇などで業務を離れる場合、適切な引き継ぎが行われなければ、業務が中断したり重要な情報が漏れてしまったりする可能性があります。業務の停滞は後任者の負担を増やすだけでなく、会社の業績にも悪影響を及ぼします。
スムーズな業務継続を行うには、引き継ぎを通じて進行中のタスクや業務の背景、関連する連絡先を、適切に後任者へ共有することが大切です。
2.2 ミスやトラブルを防げる
進行中のタスクや業務の詳細、注意すべき点が引き継がれていないと、後任者は正しい対応ができず、作業の遅延や連携不足が生じる恐れがあります。
もしも、正しい引き継ぎが行われていれば、後任者は安心して業務を進められるので、ミスやトラブルの発生を最小限に抑えられます。大きな損失を防ぐためにも、引き継ぎは重要なプロセスです。
2.3 他社からの信頼を維持できる
引き継ぎが不十分だと、取引先への対応が遅れたり重大なミスが発生したりする恐れがあります。このような状況が続けば、他社からの信頼を失い、今後の取引に悪影響を及ぼしかねません。
適切な引き継ぎを行うことで、担当者変更後も円滑な対応が可能となり、継続的に高品質なサービスを提供できます。結果として他社との良好な関係性を維持でき、組織の信頼性も保たれるでしょう。
関連記事有給とは?付与される条件や日数、賃金の計算方法をわかりやすく解説
関連記事「有休」と「有給」はどちらが正しい?意味の違いや使い方を解説
関連記事退職時の有給消化は問題ない?消化できない場合の対処法も解説
3 業務の引き継ぎがうまくいかない理由
引き継ぎの重要性を理解していても、なかなかスムーズに進まないこともあります。仕事の引き継ぎがうまくいかない場合、悪いのは前任者か後任者かといった点も含めて解説します。
3.1 引き継ぎ資料の準備が不十分
引き継ぎ資料が整理されておらず、伝える内容が断片的で具体性に欠ける場合、後任者は業務の全体像を把握できません。特に、業務手順や連絡先、注意点などの必要な情報が不足していると、口頭の指示が多くなり、伝えるべきことが抜けてしまう恐れもあります。
引き継ぎを円滑に進めるためには、業務の詳細や背景、参考資料を網羅した引き継ぎ資料をしっかり準備することが不可欠です。
3.2 引き継ぎの期間が足りない
十分な期間が確保されていないと、引き継ぎが急ぎ足で行われ、丁寧な説明ができないまま業務が移行せざるを得なくなります。その結果、後任者が業務の内容を把握できず、ミスや作業の遅延を招くリスクが高まります。
退職や異動、長期休暇などの日程が決まったら、前任者はすぐに引き継ぎの準備に入り、後任者とスケジュール調整を行う必要があります。もし、期間が短い場合でも、優先事項を明確にして効率的に情報共有を行うことが重要です。
3.3 後任者とコミュニケーションが取れていない
後任者とスケジュールが合わず、十分な対話ができないまま退職や異動の日を迎えてしまったというケースは、引き継ぎシーンでよく見られるあるあるです。
また、後任者からの質問にリアルタイムで答えられず、多くの疑問や不安を残したまま引き継ぎ期間が終了してしまうこともあります。こういった事態を避けるには、お互いが積極的にコミュニケーションを取り、双方向で情報を共有し合うことが大切です。
引き継ぎを受ける側である後任者も、決して受け身になることなく、疑問点をまとめたり実際の業務に携わったりして自ら情報を取りに行く姿勢を示しましょう。
3.4 後任者の知識や経験が不足している
後任者が業務に精通していないと、前任者が共有した情報を十分に理解できず、業務遂行に時間がかかったりミスが発生したりする恐れがあります。経験が浅く、仕事のできない後任者が相手だと、言いたいことが伝わらずにイライラしてしまうかもしれません。
そんなときは、伝え方を工夫することが大切です。専門用語を避けて簡潔に説明し、具体例を交えると理解が進みます。また、一度に多くの情報を詰め込まず、要点を絞り小分けに伝えるのも効果的です。後任者の努力を認めつつ、質問しやすい雰囲気を作ることを心掛けましょう。
関連記事「お世話になりました」の意味や正しい使い方、例文も合わせて紹介
関連記事退職の挨拶マナーは?実際に使えるスピーチやメールの例文もご紹介
4 いい加減な業務の引き継ぎが招くリスク
上記のような理由で引き継ぎがうまくいかず、「とりあえず仕事内容だけを簡単に共有しておこう」と考える方がいるかもしれません。しかし、いい加減な引き継ぎはさまざまなリスクを伴うため注意が必要です。
4.1 業務の効率化や生産性が低下する
いい加減な業務の引き継ぎを行うと、後任者が業務内容を把握できず、無駄な時間を費やしたり、重要なタスクを見逃したりする可能性があります。その結果、業務の遅延やミスが発生し、全体の生産性に悪影響を及ぼすことになります。
業務の停滞を防ぎ、高い生産性を維持するには、適切な引き継ぎが必要不可欠です。
4.2 会社の信頼性が低下する
引き継ぎが不十分だと、後任者が業務を適切に進められず、ミスや遅延が発生する可能性が高まります。これにより、取引先や顧客との信頼関係が損なわれ、会社に対する評価も低下してしまう恐れがあります。
業務の引き継ぎは、社内外の関係者に安心感を与える重要なプロセスです。後任者へしっかりと情報を引き継ぎ、業務を円滑に進めることが、会社全体の信頼性を維持するためには欠かせません。
4.3 後任者のモチベーションが低下する
業務を引き継ぐ後任者は、新しい仕事に対して少なからず不安やプレッシャーを感じています。そんなとき、いい加減な引き継ぎが行われれば、不安はますます拡大しモチベーションは低下してしまうでしょう。
引き継ぎは、後任者が自信を持って業務をこなせるよう支援するためのものでもあります。後任者に不安や混乱を与えないためには、丁寧な引き継ぎとサポートが必要です。
関連記事離職票とは?退職証明書との違いや手続き方法、記入のやり方についても説明
5 正しい業務の引き継ぎ手順
正しい引き継ぎを行うことで、後任者はミスや混乱を防ぎながら効率的に業務を進められます。そこで、ここでは正しい業務の引き継ぎ手順について解説します。
5.1 引き継ぎ内容をリストアップする
まずは、引き継ぎ内容をリストアップします。しかし、仕事量が多いと何を共有すべきか判断できないこともあるでしょう。そんなときは、とりあえず全ての仕事を洗い出し、優先度を考慮しながら整理していくのがおすすめです。
そうすることで漏れを防ぎ、より効率的な引き継ぎが可能になります。また、仕事内容だけでなく、業務に関連する担当者や重要な連絡先、必要な資料の保管場所などもまとめておくとスムーズです。
5.2 引き継ぎ資料を作成する
引き継ぎ資料には、業務の概要、進行中のプロジェクト、重要な作業手順、使用するツールやシステムなどを細かく記載します。その際、注意点や過去の問題点、解決策を明記すると、ミスを防ぎトラブルにも素早く対応できるため安心です。
さらに、経験の浅い後任者へ引き継ぐ場合は、実際の具体例や図解を交えると理解しやすくなります。なお、カレンダー形式でまとめられるテンプレートを使えば、タスクの時系列がぐちゃぐちゃして見づらいという問題も解決できます。
5.3 後任者とミーティングを行う
資料が完成したら、後任者とミーティングを行い、スケジュールや引き継ぎ内容を確認しておきましょう。ミーティングでは、引き継ぎの具体的な日程や進行状況を共有し、後任者が把握しておくべき業務の詳細を説明します。
また、業務に必要なツールや資料、連絡先なども一緒に確認し、不明点がないかをチェックしておくことも重要です。
5.4 実際の業務を一緒に進める
引き継ぎの際は、口頭の指示だけではなく、前任者と後任者が一緒に業務を進め、業務の流れや対応方法を実践形式で学べるようにします。
実際の業務を直接体験することで、後任者は引き継ぎ内容に関する理解を深められます。また、疑問点をその場で確認できるため、新しい業務への不安が減り、スムーズな業務の移行が実現するでしょう。
5.5 追加の説明やサポートを行う
引き継ぎの際に伝えきれなかった細かな点や、新たに発生した疑問に対してのフォローアップも重要です。定期的に確認を行い、進捗に応じたサポートを行いましょう。
特に、業務に慣れていない初期の段階では、後任者が困った際すぐに相談できる環境を作っておく必要があります。トラブルやミスを早期に解決することで、大きな問題に発展するのを防ぎ、後任者の自信やモチベーション向上にもつなげられます。
6 業務の引き継ぎを成功させるコツ
ここからは、引き継ぎを成功させるためのコツをいくつか紹介します。正しい手順で行っても、いまいち引き継ぎがうまくいかないという方は、ぜひチェックしてみてください。
6.1 早めに準備を始める
退職や異動、長期休暇の前は、関係者への挨拶や荷物の整理、各種手続きなど引き継ぎ以外にもやるべきことが山積みです。そのため、引き継ぎの準備を後回しにしていると、あっという間に時間がなくなり、十分な引き継ぎができなくなってしまう恐れがあります。
そのため、引き継ぎが必要な状況になったら、できるだけ早く準備を始めることが重要です。時間に余裕を持つことで引き継ぎ漏れを防ぎ、後任者ともしっかりコミュニケーションが取れます。急がず慎重に進めることが、引き継ぎを円滑に進める鍵となります。
6.2 業務の優先順位を明確にする
引き継ぎの際すべての業務を一度に説明するのではなく、まずは重要で緊急性の高い業務を優先的に伝えます。こうすることで、後任者はどの業務に注力すべきかを明確に理解できます。
また、優先順位をつけると後任者はより効率的に業務をこなせるため、引き継ぎの期間の短縮にもつながります。
6.3 関連業務を含めた全体像を伝える
引き継ぎが完了しても、後任者がなかなか自発的に仕事をこなせないケースもあります。そんなときは、引き継ぎ対象となる業務だけでなく、その業務がどのように他の業務と関連しているかを説明し、全体像を理解してもらうことが大切です。
業務の全体像を把握できると、進行状況や問題点をより適切に判断できるため、タスクの優先順位や調整がスムーズに行えるようになります。
6.4 口頭ではなく実践を通じて行う
手順の項目でも説明したように、引き継ぎは口頭ではなく実践を通じて行います。例えば、「システムへの入力を一緒に行いながら重要なポイントを伝える」「資料を作成してもらい、その場でチェックする」「書類の保管場所を一緒に確認する」といった方法です。
実践的な経験を積むことで、後任者は業務の流れや予期しない状況への対応力も身につけやすくなります。
6.5 過去のトラブルや失敗例も共有する
過去のトラブルや失敗例を共有することで、後任者は対応策を事前に確認できるため、同じミスを繰り返すリスクを減らせます。
失敗例を共有する際は、問題がどのように発生したのか、どのように解決したのか、そしてその経験から何を得たのかを説明します。業務の中で直面し得る問題をあらかじめ把握しておけば、後任者はより自信を持って仕事に打ち込めるでしょう。
6.6 担当者の変更を関係者全員に周知する
担当者の変更が関係者たちに周知されていないと、混乱や誤解を招き、引き継ぎが遅れてしまう可能性があります。そのため、いつ、どういった業務を引き継ぐのかをしっかり伝えておきましょう。
引き継ぎ中であることを周知すれば、関係者からのフィードバックやサポートが受けやすくなり、後任者が業務をこなしていく上での大きな助けにもなるでしょう。
関連記事昇進とは?昇格・昇給との違いや決定までのプロセスを解説!
関連記事降格とは?違法性のあるケースから降格になった際の対処法まで
関連記事転勤とは?異動との違いや目的、メリット・デメリットを解説
関連記事辞令とは?意味や種類、内示から発令までの流れを詳しく解説
転職を考え始めたら、
まずはプロにご相談ください
マイナビエージェントについて詳しく知る >
7 まとめ
業務の引き継ぎは、仕事を停滞させることなく、後任者へスムーズに役割を移行するための大切なプロセスです。まずは、引き継ぎ内容をリストアップし、引き継ぎ資料を丁寧に作成することが重要です。
実際の引き継ぎでは、口頭の指示だけでなく、実務を一緒にこなしながら手順を伝えます。また、過去のトラブルや失敗例を共有すると、後任者の対応力を強化できます。引き継ぎの重要性を理解し、滞りのない業務運営を目指しましょう。
\転職するか迷っていてもOK/
マイナビエージェントに無料登録して
転職サポートを受ける