辞令とは企業が人事に関して決定した事項を、従業員に通知する文書のことです。一概に辞令と言っても「昇格辞令」「異動辞令」「退職辞令」など多くの種類があります。この記事では、辞令にはどのような意味があるのかを解説したうえで、種類、時期、流れ、記載事項など、辞令に関するさまざまな情報を紹介します。
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1 辞令とは
辞令とは、人事に関する決定事項を従業員に通知する文書のことであり、読み方は「じれい」です。まずは、辞令が出る意味や関係する言葉について、また辞令はいつ発令されるのかといった点を解説していきます。
1.1 辞令が出る意味
辞令は従業員に対して、特定の職務や職位に就くことを通知したり、他の勤務地で働くよう指示したりするために出されます。具体的には、「課長への昇進」「〇〇支店への転勤」といった指示であり、辞令が出ることで従業員は情報を正確に把握できます。
このように辞令の対象者だけでなく、その他の従業員にも大きな影響を与える辞令は、社内掲示などで全従業員に公表されます。一方、給与に関する辞令など、本人にのみ通知される辞令もあります。
1.2 「内示」「発令」「任命」との違い
辞令に関係する言葉として「内示」「発令」「任命」があります。ここでは、それぞれの言葉の意味や辞令との違いを解説します。
1.2.1 内示との違い
内示とは辞令対象者の従業員や直属の上司に対して、辞令の内容を内々に通告することを指します。まだ正式な決定事項ではなく、非公式の内容であるため、当事者のみに直接口頭で伝えられるのが一般的です。
内示が実施されることで、当事者は異動に備える時間が確保でき、正式な辞令が出た後はよりスムーズな異動が可能になります。
1.2.2 発令との違い
発令とは、命令や指令、通達を公に出すことであり、日常生活でも「雷注意報の発令」など、よく耳にする言葉です。辞令においては「異動辞令を発令する」といった使い方をします。
また、辞令が発令された日は「辞令発令日」となり、正式に交付される辞令に記載されます。
1.2.3 任命との違い
任命とは、特定の職位や役職を担当する者を指名して、正式にその職に就かせることを示す言葉です。具体的には「〇月〇日付で△△を営業部部長に任命する」といった使い方をします。異動や昇進、または新しいポジションへの就任などが、一般的な任命の場面です。
1.3 辞令はいつ発令される?
辞令が発令される時期は特に決まっていません。ただし、一般的には下半期に向けて新体制の構築が検討されやすい、10月が多いとされています。また、国家公務員は繁忙期の期首を避けた7月頃が多い傾向です。
そのほか、新入社員の配属先が決定する時期や、昇進試験の結果が出る時期など、辞令の種類や行事日程により、発令のタイミングは異なります。
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2 辞令の主な種類
一口に辞令と言っても、役職や給与に関わるものに加えて、勤務地や雇用形態の変更を命じるものなど、実にさまざまな種類があります。ここでは、企業で発令される主な辞令を紹介します。
辞令の種類 | 辞令の内容 |
---|---|
採用辞令 | 採用決定を通知する辞令であり、配属先や基本給が記載されることもあります。 |
昇進辞令 | 役職や職位が上がる際に交付される辞令です。 |
昇格辞令 | 職務等級制度などを導入している企業において、等級が上がる際に交付される辞令です。 |
昇給辞令 | 給与の引き上げを通知する辞令で、昇給後の金額も記載されます。 |
減給辞令 | 給与の引き下げを通知する辞令で、減給の期間や割合、理由が記載されることがあります。 |
異動辞令 | 今とは異なる職位や部署への配置転換を命じる辞令です。 |
転勤辞令 | 本社から支社など、勤務地の変更を命じる辞令です。 |
出張辞令 | 出張を命じる辞令で、場所や期間、目的などが記載されます。 |
出向辞令 | 別の企業や部門で一定期間継続して勤務することを命じる辞令です。 |
転籍辞令 | 雇用契約を終了し、別の企業への転籍を通知する辞令です。 |
復職辞令 | 長期間休業していた従業員が復職する際に交付される辞令です。 |
配属辞令 | 部署や部門への配属を命じる辞令です。 |
配置転換辞令 | 主に職務の変更を命じる辞令です。 |
退職辞令 | 退職を命じる辞令で、定年退職や依願退職、懲戒退職の際に交付されます。 |
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3 辞令が発令されるまでの流れ
実際、辞令はどのような手順を踏んで発令されるのでしょうか。ここでは、辞令が発令されるまでの流れを解説します。
3.1 口頭で内示が行われる
まずは、辞令対象者や直属の上司に口頭で内示が行われます。事前に辞令の内容を告知することで、対象者は引き継ぎの準備や引っ越しの手続きなど、ゆっくり余裕を持って進められます。
ただし、内示の内容は正式な決定事項ではないため、内示を受けたとしても他者に口外してはいけません。
3.2 辞令書が作成される
本人に渡したり、社内に公表したりするための辞令書が作成されます。人事に関する決定事項はどのような形で告知しても問題ないため、必ずしも辞令書を作成しなければならないわけではありません。
しかし、社内ルールに沿った辞令書を作成すれば、辞令の内容を本人またはそのほかの従業員へ確実に周知でき、内容に証拠能力を持たせることも可能です。辞令書は書類で作成されることがあれば、メールの場合もあります。
3.3 書類・メール・掲示板で公表される
辞令の内容が公表されます。公表の方法は、書類の配布、社内メールの配信、掲示板への掲示など企業によって異なります。なお、辞令の内容によっては本人のみに通知され、公表されない場合もあります。
3.4 辞令交付式が開催される
企業によっては辞令交付式が開催されることがあります。辞令交付式とはセレモニー形式で行われる辞令の交付です。一般的には、企業のトップや上司が辞令の内容を公表し、対象者に辞令書を授与します。辞令を受けた従業員は、感謝の気持ちや仕事への意欲を挨拶で伝えます。
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4 辞令の内容とテンプレート
辞令にどのような内容を記載すべきかは、辞令の種類によって異なりますが、トラブルを防ぐために必要最低限の情報を簡潔に記載することが重要です。ここでは、辞令に記載すべき主な内容と、種類ごとのテンプレートを紹介します。
4.1 辞令に記載すべき内容
辞令に記載すべき主な内容には以下のようなものがあります。後で見返した際に、辞令の内容を正確に把握できるような項目を記載すべきでしょう。
- 発令日
- 誰から誰への辞令か
- 辞令の種類
- 具体的な期間や場所
4.2 昇進辞令のテンプレート
昇格辞令で使えるテンプレートは以下の通りです。
令和〇年〇月〇日
辞令
〇〇 〇〇殿
〇年〇月〇日付をもって、営業部第一課長の任を解き、同日付をもって営業部部長を命ずる。
以上
〇〇〇〇株式会社
代表取締役 〇〇
4.3 異動辞令のテンプレート
異動辞令で使えるテンプレートは以下の通りです。
令和〇年〇月〇日
辞令
〇〇 〇〇殿
〇年〇月〇日付をもって、現職の任を解き、〇〇への異動を命ずる。
以上
〇〇〇〇株式会社
代表取締役 〇〇
4.4 採用辞令のテンプレート
採用辞令で使えるテンプレートは以下の通りです。
令和〇年〇月〇日
採用辞令
〇〇 〇〇殿
〇年〇月〇日付をもって、貴殿を〇〇〇〇株式会社の正社員に採用する。
〇〇部〇〇課勤務を命ずる。
なお、基本給として〇〇円を支給する。
以上
〇〇〇〇株式会社
代表取締役 〇〇
4.5 退職辞令のテンプレート
退職辞令で使えるテンプレートは以下の通りです。
令和〇年〇月〇日
辞令
営業部 〇〇 〇〇殿
貴殿は〇年〇月〇日付をもって、当社の社内規定第〇条により定年退職となることを、ここに通知する。
以上
〇〇〇〇株式会社
代表取締役 〇〇
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5 辞令に法的効力はある?
さまざまな種類がある辞令ですが、辞令を拒否したいケースもあるでしょう。そもそも法的効力はあるのでしょうか。ここでは、辞令の効力について説明します。
5.1 法的効力はないが、一定の拘束力はある
辞令書そのものに法的効力はありません。なぜなら、企業の正式な決定を従業員に伝える際、辞令を交付しなければならないといった法律はないからです。
しかし、企業と従業員の間では労働契約が結ばれているため、辞令の内容は一定の拘束力を持っています。つまり、企業は辞令を交付する義務は負わないが、従業員は企業の発令した辞令に従う義務があるということです。
5.2 基本的に辞令は拒否できない
多くの企業では就業規則や労働契約において、人事に関する規定を定めています。一般的に、人事に関わる決定を行う人事権は企業が有しており、労働契約を結んだ時点で従業員も同意したことになります。
そのため、基本的に従業員は企業から出された辞令を拒否することはできません。もしも、正当な理由なく辞令を拒否した場合は業務命令違反となり、企業から懲戒処分を与えられる可能性もあります。
5.3 辞令を拒否できるケース
就業規則に定められている条件を逸脱した辞令は、拒否することができます。例えば、勤務地や職務が限定されているにもかかわらず、転勤や異動の辞令が出た場合などです。
また、明らかな法令違反や権利の濫用となる辞令は、当然ながら拒否できます。さらに、従業員の同意が必要な辞令が一方的に発令された場合も、辞令自体が無効になる可能性があります。
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6 辞令を断りたいときの対処法
辞令を断りたい時は、具体的にどうすればいいのでしょうか。ここでは、辞令を断りたいと思ったときの対処法を説明します。
6.1 正当な辞令かどうかを確認する
上述したように、辞令を拒否できるケースは限られています。そのため、辞令を断りたいと思ったら、まずはその辞令が正当なものかどうかを確認しましょう。
辞令に正当性があれば、拒否することは難しくなりますが、拒否したい理由を上司や人事部に相談することで、自分が納得のいく条件を提示してもらえる可能性もあります。
6.2 難しい場合は転職を視野に入れる
拒否することが難しいのであれば、思い切って転職を検討するのも一つの方法です。例えば、転勤辞令を断りたいと思った場合、「勤務地限定正社員制度」を導入している企業に転職することで、転勤の心配なく働き続けることができます。
給与や職務に関しても、自分の納得する条件の企業に転職できれば、今後も望まない辞令を気にすることなく安心して働けます。
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7 まとめ
辞令によって、企業は人事に関する重要な決定事項を従業員に通知します。辞令には給与や勤務地の変更、採用や退職の告知など、内容によって多くの種類があります。
辞令そのものに法的効力はありませんが、辞令の内容は一定の拘束力をもちます。従業員は正当な理由のある辞令を断ることができません。そのため、どうしても辞令を拒否したい場合は、転職を視野に入れるのも一つの選択肢です。
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