人事異動は何のため?目的やフロー、拒否できるケースを徹底解説!

人事異動は何のため?目的やフロー、拒否できるケースを徹底解説!

人事異動は多くの企業で定期的に行われています。部署内での異動もあれば、別の支店へ異動になることもあります。そもそも、こういった人事異動は何のために行われているのでしょうか。この記事では人事異動の目的やからくり、メリット・デメリットなどについて詳しく解説します。

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1 人事異動とは

人事異動とは企業や団体などの組織内で、従業員が今とは異なる職位や部署に配置転換されることを指します。ここではまず、人事異動の種類や時期といった基本を解説します。

なお、同じ読み方で「移動」という言葉がありますが、これは物や人が別の場所に移るという意味です。一方、「異動」は地位や職務の変化といった人事的な要素を含むのが一般的です。意味を混同しないように、移動と異動の違いを明確にしておきましょう。

1.1 人事異動には多くの種類がある

一口に異動と言っても、その種類はさまざまです。ここでは、一般的な人事異動の種類を簡単に説明します。

1.1.1 配置転換

企業内で部署や担当する仕事が変わることを指します。例えば、人事部から経理部への異動、営業職から総務職への異動などは配置転換にあたります。

1.1.2 転勤

勤務地が変わる異動を指します。東京支店から大阪支店への異動など、住所変更が必要な場合もあれば、近隣の支店への異動など居住地の変更を伴わないこともあります。

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1.1.3 出向

出向には在籍出向と転籍出向という2種類があり、在籍出向は所属する企業との雇用契約を継続したまま、他の企業や組織に派遣されることを指します。一方、転籍出向は所属企業との雇用契約を解除してから、新たな企業と契約を結んで働くことです。

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1.1.4 転籍

所属していた企業との雇用契約を終了させて、新たな企業と雇用関係を結び就業することです。退職して新たな企業で働くという意味では「転職」とも言えますが、転籍は所属していた企業の意向が影響するという点が、個人で判断する転職とは異なります。

1.1.5 昇格・降格

平社員から係長へ」「係長から課長へ」といった昇格や、「課長から係長へ」といった降格も人事異動に含まれます。

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1.2 人事異動が行われる時期は?

人事異動の時期は企業や組織によって異なるものの、一般的には年度末である3月や、上半期と下半期の中間である9月~10月頃がもっとも多い傾向です。

また、プロジェクトの終始時期や組織の改編が行われる際は、大規模な人事異動が実施されることもあります。

1.3 人事異動を希望してもいい?

他の部署や勤務地への異動を希望する場合、上司に異動願いを出すことはできます。しかし、異動を決定する権限は企業側にあるため、実際に希望が通るかどうかは企業の判断に委ねられます。

どうしても他部署に異動したいのであれば、異動先で必要になるスキルを習得したり、現在の部署で相応の結果を出したりして、上司にアピールするのも一つの方法です。

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2 人事異動の目的とは

人事異動には従業員のスキルや経験を最大限に活用したり、組織全体の機能を正常化したりといった、さまざまな目的があります。ここでは、企業が人事異動を行う主な目的を4つ紹介します。

2.1 組織が健全に成長していくため

人事異動により適切なポジションへ人材が配置にされることで、組織の業務がスムーズに遂行されるようになり、生産性や効率が向上します。

また、専門性のある人材を柔軟に配置することで、企業は変動する市場や業界への適応性を高めることができます。このように、企業が健全に成長していくためには、適切な人事異動が必要不可欠です。

2.2 従業員の能力を最大限に発揮させるため

従業員の得意分野や意欲に合わせたポジションへの人事異動は、個々のスキルを最大限に引き出して、業務に新たな視点をもたらします

また、人事異動により大きなプロジェクトを任せたり、リーダーシップの機会を提供したりすれば、従業員の成長意欲を刺激してモチベーションをアップさせることも可能になります。

2.3 不正やマンネリ化を防止するため

人事異動は同じポジションに留まり続けることで生じる、従業員のマンネリ化打破が期待できます。新たな部署に異動させることで、これまでとは違った視点やアイディアが浮かぶ可能性があります。

また、異動は不正行為の予防策としても有効です。一人の従業員が長期間同じポジションに居続けると、業務の透明性がなくなり、外部からの監視の目も行き届きづらくなります。部署の風通しを良くするためにも、定期的な人事異動が必要です。

2.4 人材を育成するため

人事異動によりこれまでとは異なる業務に携わってもらうことで、従業員の視野を広げスキルの向上も期待できます。従業員により多くの仕事を経験させることは、結果として企業の成長にもつながります。

また、人事異動によってこれまで接点のなかった人との関わりも生まれるため、従業員の人脈も広がります。

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3 人事異動のメリット・デメリット

ここからは、人事異動のメリットとデメリットを従業員側と企業側の視点から見ていきます。それぞれの立場で異なるメリットやデメリットが存在するので、ぜひチェックしてください。

3.1 従業員側のメリット・デメリット

まず、従業員側のメリットとしては、スキルの向上や新しい人間関係の構築が挙げられます。異動先で新たなスキルを身につけたり、人脈を構築したりすることは、今後のキャリア形成にも大きな影響を及ぼします。また、いい緊張感を持ったまま仕事に臨めるのもメリットの一つです。

一方、頻繁な人事異動があると、せっかく仕事を覚えてもまた一から覚え直さなければならないため、専門的な知識が身につきづらくなる懸念もあります。さらに、転勤で新しい土地に異動になる場合は、慣れない生活にストレスを感じてしまう場合もあります。

3.2 企業側のメリット・デメリット

企業側のメリットとしては目的の項目で紹介したように、組織の健全な成長や人材の育成、不正の防止などが挙げられます。

一方、引き継ぎの時間的コストが発生することや、誤った人材配置で逆に業績が悪化してしまう可能性があることなどはデメリットです。また、意にそぐわない異動を命じられた従業員が退職してしまうリスクもあります。

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4 人事異動の対象になりやすい社員とは

異動の対象になる社員にはどのような特徴があるのでしょうか。異動理由は企業や組織の方針によって異なりますが、一般的に異動になりやすい社員の特徴を4つ紹介します。

4.1 仕事の成果が出せていない社員

配属後、一定年数が経過しても成果をあげられなかったり、大きなミスを繰り返してしまったりする社員は、そもそもその業務が合っていない可能性があります。

個人が持つ能力やスキルの適性が、配置されているポジションに合わないと判断された場合は、異動が提案されることがあります。

4.2 異動の希望を出している社員

自ら異動を希望している社員は、当然ながら対象者の候補に挙げられやすくなります。前述したように、異動の希望は通らないことが多いものの、異動に向けて努力している姿勢と成果が認められれば、希望を受け入れてもらえる可能性もあります。

4.3 今後の成長が期待できる若手社員

若くて能力とやる気のある社員を異動させれば、新たな場所で多くの経験を積ませることができます。

さまざまな知見に触れて仕事の幅を広げさせることで、将来的に企業の業績に寄与してもらうのが狙いです。このように、有望な若手社員の人材の育成も人事異動の大きな目的の一つです。

4.4 長期間異動していない社員

長期間同じ部署や支店で仕事をしている社員も、異動の対象になりやすくなります。どのくらいの期間で異動の対象になるかは企業によって異なりますが、概ね2~4年程度のサイクルで異動を実施する企業が多くなっています

従業員の不正を防ぎつつ職場を活性化するためにも、一定期間が経過したら異動をさせるという方針の企業が多いようです。

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5 人事異動のフロー

実際、人事異動はどのように行われるのでしょうか。ここでは、企業が実施する具体的な人事異動のフローを紹介します。

5.1 部署や人材の調査を行う

適切な人材配置を行うためには、綿密な調査が必要です。しっかり調査を行うことで、部署や従業員のニーズを理解することができます。

そのため、まず企業はそれぞれの部署でどういった問題や課題があるかを調査して、それぞれの従業員のスキルや能力を評価します。

5.2 異動対象者を決定する

さまざまな調査を行った後に異動対象者を決定します。新しい職務をどれだけ効果的に遂行できるか、環境が変化することへの適応力はあるか、異動がキャリア育成に有効であるかなどの点が考慮されます。

5.3 内示のあと辞令を出す

対象者が決定したら、企業はまず内示を行います。内示とは、異動対象者本人や上司だけに異動の決定を伝えることです。正式な公表前に行われるもので、内示を受けたことは口外しないのがルールです。

その後、正式な辞令が発令されて、社内メールや書類、掲示板などの方法で他の従業員にも公表されます。

【関連記事】辞令とは?意味や種類、内示から発令までの流れを詳しく解説

5.4 異動後のサポートを行う

異動した従業員が、いち早く新しい職場に慣れてポテンシャルを発揮できるように、企業は適切なフォローを行わなければなりません。

異動したことで精神的な負担はないか、ほかの従業員とコミュニケーションは取れているかといった点を細かくフォローすることで、離職率の低下にも繋がります。もしも、スキルを補完する必要があれば、研修や勉強会などの開催も効果的です。

6 人事異動の内示後にすべきことは?

従業員が人事異動の内示を受けたあとにすべきことを紹介します。内示後スムーズに異動を行うためには、主に以下3つの行動が必要です。

6.1 発令日を確認する

内示を受けた段階では、まだ正式な辞令がおりたとは言えません。また、口外は禁止であるため、異動に向けた準備もできない状態です。そのため、辞令が発令される日や実際の異動日を確認しておきましょう。

内示から発令までの期間は企業によって異なりますが、一般的には1週間~1ヶ月程度であることが多い傾向です。

6.2 挨拶状を作成する

辞令が発令されたら、取引先に異動の挨拶をしなければなりません。頻繁に会う関係性の深い取引先には、直接出向いて対面で挨拶を行うのが基本です。

そのほかの取引先には、異動になることを伝える挨拶状を作成して送付しましょう。以下に、基本的な異動の挨拶状例文を紹介します。ここでは横書きで記載していますが、実際は縦書きのはがきで送るのが一般的です。

拝啓 〇〇の候 皆様にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます


                          さて わたくしこと

このたび〇月〇日付をもちまして 〇〇支店勤務を命ぜられ過日着任いたしました

〇〇在勤中は 公私にわたり多大なるご厚情を賜り厚く御礼申し上げます

皆様からいただいたご教示を生かし 新任地でも鋭意専心努力してまいる所存ですので

今後とも何卒ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます

まずは略儀ながら書中をもってご挨拶申し上げます

                               敬具

株式会社 〇〇
〇〇 〇〇〇 
(差出人名)

なお、冒頭の「さて わたくしこと」は自分を表現する言葉であり、謙遜の意味を込めて文頭ではなく文末に記載するのがマナーです。横書きでは右端、縦書きの場合は一番下に配置します。

関連記事「【異動の挨拶の基本】メールやスピーチのポイントや実際に使える例文をパターン別に紹介」

6.3 引き継ぎ書を作成する

新しい担当者が業務やプロジェクトを円滑に進められるように、引き継ぎ書を作成しましょう。業務のやり方や進捗状況をできるだけわかりやすくまとめることで、異動に伴うミスや伝達の漏れを最小限に抑えることができます

7 人事異動を拒否できるケース

企業から異動を命じられた場合は、基本的に拒否することはできません。しかし、例外として拒否が認められるケースもあります。ここでは、主なケースを3つ紹介します。

7.1 動機が不当である場合

例えば、「気に入らない部下を他店へ異動させた」「退職を促すために適性のない部署へ異動させた」など、上司のパワハラやいやがらせによる異動は、辞令を拒否できる可能性があります。

【関連記事】「退職勧奨とは?違法になるケースや受けた場合の対処法を解説」

7.2 雇用契約書の条件と異なっている場合

雇用契約書で居住地や職種が限定されている場合、その条件を逸脱した異動は、契約者である従業員の承諾を得る必要があります。

例えば、「勤務地は〇〇支店に限る」「従事する職務は〇〇のみとする」といった記載があれば、企業は従業員に対して、他県への転勤や職務変更を命令することはできません。

7.3 従業員に大きな不利益が生じる場合

異動することで従業員に大きな不利益が生じる場合も、拒否できる可能性があります。例えば、「介護や育児を一人で担っている」といったケースです。企業側はこのような従業員に対して、適切な配慮を行わなければなりません。

ただし、「子どもがまだ小さいから」「通勤時間が長くなり大変だから」といった理由では、異動命令を拒否することは難しいでしょう。

8 人事異動を断りたいときの対処法

上記のケースに当てはまらない場合でも、人事異動を断りたいと思うことがあるかもしれません。どうしても人事異動が受け入れられない場合の対処法を解説します。

8.1 上司に相談してみる

異動を受け入れがたい場合は、上司にその旨を相談してみましょう。相談することで、なぜ異動が嫌なのかという理由が明白になります。もしも、異動に不安を感じているのであれば、その不安を解消する方法を上司と一緒に考えてみることで、異動を前向きに捉えられるようになるかもしれません。

8.2 転職を検討してみる

自分が好きな仕事を精力的にこなしていたのに、急な異動を命じられてショックを受けたという人も少なくありません。また、勤務地の変更は家族の負担になることもあります。

そのような場合は、思い切って転職を検討するのも一つの方法です。転職することで、これまでのキャリアやスキルを活かしながら、自分の希望する条件で働き続けられる可能性があります。

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9 まとめ

人事異動は企業と従業員、双方にとって大切で意味のあるものです。定期的なサイクルで人事異動が行われることによって、企業の健全な成長と従業員のスキルアップを促すことができます。異動を命じられた場合は、基本的に拒否することはできないため、スムーズに次の業務にあたれるよう準備しなければなりません。

もしも、意にそぐわない異動を命じられた場合は、新たな転職先を見つけてキャリアアップを目指すのもいい方法です。この記事を参考にして、異動の意味をしっかり理解しておきましょう。

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