出向とは?左遷・派遣との違いや給与の支払いについて徹底解説!

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出向とは、一部の社員をグループ会社や他の組織に派遣する制度です。主な目的として、人材育成や雇用の調整、戦略的な人材配置などが挙げられます。出向にはさまざまなメリットがある一方で、ややネガティブなイメージを持つ方もいます。実際、出向にはどのような側面があるのでしょうか。この記事では、出向の目的や注意点を詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

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1 そもそも出向とは?

出向(しゅっこう)とは所属する企業と何らかの関係を持ちながら、別の企業や部門で一定期間継続して勤務することを指します。

一般的には、親会社から子会社へ派遣されるというイメージがありますが、異業種の企業同士であっても出向契約を結ぶことは可能です。これにより、特に関係性がない企業や規模が大きく異なる企業にも出向になる可能性があります。

出向期間についての定めはなく、数ヶ月という短期間なこともあれば、数年という長期間の出向期間を設定することも可能です。

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関連記事「【異動の挨拶の基本】メールやスピーチのポイントや実際に使える例文をパターン別に紹介」

2 出向には2種類の形式がある

出向には「在籍出向」「転籍出向」という2種類の形式があります。ここでは、それぞれの特徴を説明します。

2.1 在籍出向

在籍出向とは所属先の企業との雇用関係を維持したまま、出向先の企業で働く形態を指します。所属先企業の社員であることに変わりはありませんが、業務については出向先の指示に従う必要があります。

在籍出向は所属先企業との雇用契約が結ばれたままなので、企業は貴重な人材を手離すことなく、閑散期や業績悪化時のみ出向先の業務に携わらせることが可能です。

2.2 転籍出向

転籍出向とは所属先の企業との雇用関係を解消したうえで、出向先企業と新たな雇用契約を結び働くことです。転籍出向となった従業員は出向先企業の従業員となるため、元の企業に戻ることはほぼありません。

転職と同じ状況ではあるものの、転職が従業員自ら選択するのに対して、転籍出向は出向元企業の意思が大きく関係している点で異なっています。

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3 出向と間違えやすい制度との違い

ここでは、出向と似た意味を持つ4つの制度について、それぞれの特徴と違いを紹介します。混同しないように、意味をしっかり確認しておきましょう。

3.1 異動との違い

異動とは企業や団体で働く従業員が、ほかの職位や部署に配置転換されることを指します。配置転換全体を異動と呼ぶため、転勤や出向も異動の中に含まれています。

また、実質的な配置転換だけでなく、昇格や降格、採用や退職といった人事に関わる形態の変化も異動に含まれる種類の一つです。

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3.2 転勤との違い

転勤とは従業員の勤務地が変更になる異動のことです。たとえば、東京支店から大阪支店への異動のように勤務地が大きく変わり、住所の変更が必要になるのが一般的です。ただし、近隣の支店へ異動するだけで、住所変更は必要ないケースもあります。

【関連記事】「転勤とは?異動との違いや目的、メリット・デメリットを解説」

3.3 派遣との違い

派遣事業者と従業員が雇用契約を結び、派遣業者が企業に従業員を派遣する業務形態です。つまり、実質的に従業員を雇っているのは派遣業者であり、従業員と企業の間には雇用契約がありません。

3.4 左遷との違い

左遷とは一般的に、仕事で大きなミスをしたり、仕事に適応していなかったりする人を配置転換することです。懲罰的な意味合いで使う場面が多いことから、あまりいいイメージがないかもしれません。出向=左遷と理解している方もいるのではないでしょうか。

しかし、実際左遷はビジネス用語ではなく、明確な基準もありません。そのため、降格を意味する左遷だと思っていたら、実は人材育成のための転勤だったということもあります。

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4 出向の目的は?

企業が出向を行うのには、さまざまな目的があります。ここでは、出向の主な目的を3つ紹介します。

4.1 従業員のスキル向上のため

出向社員は出向先の企業で、新しいスキルや知識を習得できます。在籍出向であれば、そうして得たスキルや知識を出向元の企業に持ち帰ることで、組織全体の能力向上も期待できます。出向は従業員のスキルや知識の向上とともに、企業全体の成長のために実施されています。

4.2 企業同士の関係構築のため

出向は、異なる企業間の協力を強化するために行われることがあります。優秀な従業員を出向させることで、企業同士の関係構築に繋がります。また、出向社員が築いた人脈は、企業にとっても大きなプラス材料となります。

4.3 雇用調整のため

一時的な業績の悪化などにより、雇用調整が必要になった場合も実施されることがあります。在籍出向であれば雇用契約を破棄することなく、従業員の生活を守り、企業の人件費を減らす効果も期待できます。

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5 出向のメリット・デメリット

出向にはメリットとデメリットの両方が存在します。ここからは、出向元企業、出向先企業、出向社員というそれぞれの立場から、メリットとデメリットを解説します。

5.1 出向元企業のメリット・デメリット

まず、出向元企業のメリットは目的の項目でも述べた通り、従業員や企業の能力を向上させられることです。また、優秀な人材との雇用契約を維持したまま、一時的に雇用調整ができることもメリットの一つです。

一方、優秀な社員がほかの企業に出向してしまうことで、業務遂行に支障が出たり、業績が悪化してしまう懸念もあります。

5.2 出向先企業のメリット・デメリット

出向社員を受け入れる出向先企業のメリットとしては、自社にはない考えやスキルが持ち込まれて、社内が活性化することが挙げられます。また、出向社員の受け入れは企業同士の連携強化にも繋がります。

ただし、出向社員を受け入れるには、相応のサポート体制を整えなければなりません。人件費に加えて、時間的コストも必要です。また、業務を支障なく行えて、即戦力となる社員が来てくれるのかどうかがわからない点もデメリットと言えます。

5.3 出向社員のメリット・デメリット

出向は悪いイメージで捉えられがちですが、実際は前向きな理由で導入している企業も多く、社員にとっても新しい技術と知識を習得できるチャンスと言えます。雇用契約はそのままに、異なる企業で働ける機会はそうそうあるものではありません。新しく得たスキルを生かせば、元の企業に戻っても仕事の幅を広げられるでしょう。

一方、一から新しい仕事を覚えなければならないことをストレスに感じる方や、新しいコミュニティでの人間関係構築が苦手な方にとっては、デメリットとなる場合もあります。

6 出向社員の給与・保険・福利厚生はどちらの企業が担う?

転籍出向の場合は、元企業との契約は解除になるため、給与や保険は新しく雇用契約を結ぶ出向先の企業が担うことになります。では、元企業との契約を保持したまま出向になる在籍出向の場合はどうなのでしょうか。給与、保険、福利厚生それぞれについて見ていきましょう。

【出典】厚生労働省「出向早わかりガイドブック令和3年8月版」

6.1 給与・賞与

出向社員の給与や賞与については、どちらの企業が負担すべきといった明確なルールは定められていません。そのため、出向元企業と出向先企業の話し合いによって決められます。

主な支給方法には、出向先企業が出向社員に直接支給する方法や、出向先が出向元に負担金を支払い、出向元が出向社員に支給する方法などがあります。

6.2 保険

健康保険や厚生年金保険に関しては、原則として給与の支払いを担当している企業が担います。もしも、双方から給与が支給されているのであれば、出向社員がどちらかを選択した上で、賃金の負担額に応じて按分された保険料を、双方の企業が担います。

雇用保険については、給与の支払いを行っている企業が担いますが、双方から支払われている場合は、支給額が多い方の企業が負担します。また、労災保険については、実際に勤務している出向先の負担です。

6.3 福利厚生

福利厚生については制度自体が任意のものであり、企業によって内容が大きく異なります。出向社員が出向元と出向先、どちらの福利厚生が受けられるのかについても明確な定めはないため、出向規定を確認するようにしましょう。

7 出向に際して取り交わされる書類

出向に際しては、企業間または企業と出向者間でさまざまな種類が取り交わされます。ここでは、出向時に重要な3種類の書類について説明します。

7.1 出向契約書

出向元と出向先の間で取り交わされるのが「出向契約書」です。出向社員の情報から、具体的な出向期間、職務内容、就業規則、給与負担など、出向に関する主な事項を記載します。

7.2 出向辞令

出向元が出向社員に交付するのが「出向辞令」です。具体的には、「〇月〇日付をもって〇〇への出向を命ずる」といった内容で、対象社員に出向を命じます。

【関連記事】辞令とは?意味や種類、内示から発令までの流れを詳しく解説

7.3 出向通知書

出向元が出向社員に提示するのが「出向通知書」です。この通知書には、出向契約で取り決められた出向期間や出向先での勤務内容、待遇などが具体的に記載されています。

8 出向を拒否できるケースとは

出向を命じられた場合、基本的に拒否することはできません。ただし、例外として拒否できるケースも存在します。ここでは、出向を拒否できる主なケースを4つ紹介します。

8.1 雇用契約書に出向命令権の記載がない場合

企業と従業員の間で交わされる雇用契約書に、出向の可能性があることが明記されている場合、従業員はそれに同意したとみなされるため、基本的に出向命令を拒否することはできません。

逆に、こういった「出向命令権」の記載がない場合、企業は出向を命じることができないことになります。

8.2 企業都合による不当な出向の場合

全く必要性がない出向や、権利の濫用とみられる出向は拒否できる可能性があります。たとえば、企業や従業員の成長に全く寄与しないと考えられる場合や、パワハラ・セクハラを内部告発した際の報復とみられる場合などです。

出向命令に納得できないと感じるのであれば、まずは企業に出向の理由や目的を確認するのがいいでしょう。

【関連記事】「退職勧奨とは?違法になるケースや受けた場合の対処法を解説」

8.3 出向によって大きな不利益を被る場合

賃金が大きく減額されるなど、出向によって従業員が不利益を被る場合は、出向自体が違法となる可能性があります。

また、他に適任者がいるにもかかわらず、育児や介護を一人で担っている従業員に出向を命じるのは、不利益を課す出向とみなされ拒否できる可能性が高まります。

8.4 転籍出向の場合

転籍出向は従業員との雇用契約を破棄して、新たな企業での雇用を促すものです。転籍出向には、企業都合による雇用調整の意味合いが含まれることが多く、必ず従業員の同意が必要になります。

つまり、企業側は一方的に転籍出向を命じることはできません。ただし、業績悪化による雇用調整を理由に転籍出向を提案された場合は、思い切って転職をした方が、キャリアアップに繋がる可能性があります。

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9 まとめ

出向には在籍出向と転籍出向という2つの種類があります。在籍出向は元の企業に籍を置いたまま、異なる企業でさまざまな経験値を獲得できます。一般的にあまりいいイメージを持たれない出向ですが、実は従業員にとっても企業にとっても大きなメリットがあるのです。

一方、転籍出向は雇用調整の意味合いで実施されることがあります。もしも、転籍出向に納得できない場合は拒否することも可能ですが、思い切って転職することで、新たな道が開ける可能性もあります。出向をポジティブに捉えて、将来のキャリアアップに繋げましょう。

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