退職時に有給休暇を消化することは法律で認められた労働者の権利ですが、現実にはスムーズに進まないケースも少なくありません。この記事では、退職時に有給休暇を消化する際のポイントや、万が一消化できない場合の対処法について解説します。円満退職に向けた有給休暇の正しい取得方法を詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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1 退職時の有給消化は可能?
「退職する際、余った有給休暇はどうなるのだろう」と疑問を感じる方も多いでしょう。結論、有給休暇は労働者の権利であるため、退職の際に全て消化しても問題ありません。
とはいえ、スムーズに消化するには事前に確認しておかなければならないこともあります。まずは、有給休暇の仕組みについて簡単にチェックしておきましょう。
1.1 そもそも有給休暇とは
有給休暇とは、給与が支払われる休暇であり、労働基準法で定められた労働者の権利です。入社から6か月以上勤務し、所定労働日の8割以上出勤することが付与の条件です。
勤続年数や勤務形態に応じて付与日数は異なりますが、週に5日以上、または30時間以上、もしくは1年間に217日以上勤務する一般的な労働者は、年間10日~20日の有給休暇が付与されます。
1.2 在職中なら有給休暇は自由に取得できる
有給休暇は理由を問わず取得でき、心身のリフレッシュや家族の行事参加など、私的な用途で利用可能です。取得には原則として事前の申請が必要ですが、会社側が正当な理由なく拒否することはできません。
なお、退職して会社から籍がなくなれば、付与されていた有給休暇も消滅してしまいます。退職後に余った有給休暇分の賃金を請求することはできないため、有給休暇を無駄にしたくない場合は在職中に消化する必要があります。
1.3 「時季変更権」が行使される場合もある
労働者は、いつでも好きなときに有給休暇を取得できますが、万が一申請が重なるなどして正常に業務が運営できない場合は、企業に与えられた時季変更権によって他の時季に変更を促されることもあります。
また、企業には年間10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、年5日の有給休暇を確実に取得させる「年5日の時季指定義務」が課されています。
従業員が自ら有給休暇を取得しない場合、企業は具体的な時季を指定して5日の有給休暇を取得させなければなりません。ただし、時季指定にあたっては、必ず従業員の希望を尊重することが求められます。
出典厚生労働省|年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説
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2 退職時に有給休暇を消化する2つの方法
退職時に有給休暇を消化する際は、「最終出社前に消化する」「最終出社後に消化する」という2つの方法があります。それぞれについて詳しく解説します。
2.1 最終出社日の前に消化する
事前に取得のスケジュールを立てながら、最終出社日までに全ての有給休暇を消化する方法です。このケースでは、最終出社日が退職日となります。
例えば、20日の有給休暇が余っている場合、通常の休日も含めて約1ヶ月の休暇が取得できるので、計画次第では十分な余裕を持って退職日を迎えられるのがメリットです。
ただし、休暇取得のスケジュールを共有しないと、業務の引継ぎが進まず周囲に迷惑をかけたり、かえって慌ただしくなったりする可能性もあるため注意が必要です。
2.2 最終出社日の後に消化する
最終出社日以降に余った有給休暇を取得し、全て消化した時点で退職を迎える方法です。このケースでは、最終出社日と退職日が異なります。
基本的に最終出社日以降は出社しなくても良いので、心身のリフレッシュにつながり、転職など新たな生活への準備も行いやすいのがメリットです。
会社からの連絡を防ぎつつ安心して有給休暇期間を過ごすため、最終出社日までに全ての業務を終わらせ、引継ぎも完璧に済ませておくようにしましょう。
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3 退職時スムーズに有給休暇を消化するには
退職時に全ての有給休暇を消化しようと思っていても、「結局使い切れずに余ってしまった」「引継ぎが終わらず取得できなかった」という声も耳にします。有給休暇をできるだけスムーズに消化するにはどうしたら良いのでしょうか。
3.1 残りの有給休暇を把握する
まず、現時点で何日の有給休暇が残っているかを把握することが大切です。有給休暇は前年使い切れなかった分が翌年に繰り越しとなりますが、有効期限は2年のため、翌年も使い切れないと消滅してしまいます。
例えば、11月1日に退職する場合、10月31日に有効期限を迎える有給休暇があれば、その分は使用できません。自分で正確な有給休暇の残日数を把握できていない場合は、直属の上司や人事部などに確認しましょう。
3.2 会社の就業規則を確認する
就業規則には、「退職は希望日の〇日前までに申し出る」といった内容が記載されていることがあります。余った有給休暇を全て消化するには、退職日がいつになるのかが重要になるため、就業規則をしっかり確認して退職日を調整しましょう。
併せて、有給休暇の取得についての規則もチェックしておくと安心です。
3.3 退職日までのスケジュールを立てる
まず、最終出社日や退職日を会社と調整し、それに基づいて有給休暇を取得できる期間を計算します。次に、業務の引継ぎや必要な手続きの期限を考慮して、具体的な日程を決めます。
事前に計画を立てておくことで、会社との調整が円滑になり、引継ぎの不備やトラブルを防ぎつつ、有給休暇を効率的に消化できます。
3.4 早めに引継ぎの準備をする
退職日が決まったらその情報を周囲に共有し、早めに引継ぎの準備を始めることが大切です。業務内容や担当案件を整理して、後任者が分かりやすいようにマニュアルや資料を作成しましょう。
早期に引継ぎを進めれば、情報共有や質問の時間を十分確保できるため、後任者の安心につながり退職日直前の慌ただしさも回避できます。
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4 退職日までに有給休暇を消化できない場合の対処法
有給休暇は、会社に在籍している間にしか取得できません。しかし、どうしても退職日までに有給休暇が消化できない場合はどうしたら良いのでしょうか。
4.1 残った有給休暇を買い取ってもらえるか相談する
原則として、有給休暇の買い取りは法律で認められていません。そもそも、有給休暇の目的は労働者に休息の機会を提供することであり、代わりに現金を支給するのは本来の趣旨に反するからです。
ただし、会社の就業規則で「退職時の未消化分を買い取る」といった内容が明記されていれば、例外的に認められるケースもあります。そのため、もし就業規則にそのような記載があるのであれば、上司や人事部などに相談してみましょう。
出典厚生労働省|Q8 年次有給休暇の買上げをしても法律違反にはなりませんか。
4.2 最終出社日をずらせるか確認する
退職日が決定した後に、残った有給休暇を消化しきれないと判明した場合は、最終出社日をずらして日数を確保するのも一つの方法です。
例えば、3月31日が退職日で5日間の有給休暇が残っている場合、3月26日を最終出社日とすれば全て消化できます。ただし、引継ぎや手続きの関係もあるため、自分だけで決めるのではなく周囲としっかり調整を行いましょう。
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5 退職時の有給消化で生じやすいトラブルと解決方法
退職時の有休消化では、さまざまなトラブルが考えられます。ここでは、4つのトラブル例と解決方法を紹介します。
5.1 上司から「有給消化はできない」と言われた
有給休暇は労働基準法で認められた労働者の権利であり、会社が正当な理由なく拒否することはできません。もちろん、退職時に残った有給休暇をまとめて取得しても何の問題もありません。
それにもかかわらず、「人手不足だから」「自己都合による退職だから」などの理由で上司から有給消化を拒否された場合は違法の可能性が高いため、まずは人事部に相談しましょう。
もし、会社が交渉に応じない場合は、最寄りの労働基準監督署に相談するのも有効です。
5.2 最終出社日を延ばすよう求められた
会社から最終出社日を延ばすよう求められたとしても、基本的に応じる必要はありません。安易に承諾した結果、有給休暇が全て消化できなくなるなどの不都合が生じる可能性があるため慎重に判断しましょう。
ただし、引継ぎが不十分なまま最終出社日を迎えると職場に大きな迷惑をかけてしまうため、余裕をもって退職準備を進めることが大切です。
5.3 引継ぎが終わらず有給休暇が取得できない
「計画通りに引継ぎが進まず、有給休暇を消化できる状況にない」という場合は、有給休暇の買い取りが可能かどうかを確認してみましょう。もし認められれば、有給休暇分の賃金が別途支払われることになります。
しかし、有給休暇の買い取りは一般的ではなく、そのような仕組みを導入していない企業が多いことも理解しておきましょう。
5.4 有給休暇のはずが欠勤扱いになっていた
有給休暇を取得したはずが欠勤扱いになっており、賃金が支払われていなかったというケースです。この場合は、まず有給休暇の申請が適切に行われていたかを確認するため、有給休暇の申請書や承認メール、勤怠管理システムの記録を見直しましょう。
その後、間違いがなければ上司や人事部などに確認し、証拠を提示したうえで正当な賃金の支払いを要求します。万が一、会社の対応が不十分な場合は、労働基準監督署など外部機関に相談する必要があります。
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6 退職時の有給消化に関わるQ&A
退職時の有給消化について、よくある質問と答えを紹介します。有給休暇中のボーナスや転職活動、連続取得日数など気になる項目をチェックしてみてください。
6.1 有給が残ったまま退職するとどうなる?
有給休暇は会社に在籍している労働者の権利であり、退職してしまえば権利も消滅するため、いくら日数が残っていたとしても退職後に取得することはできません。
会社は労働者に対し、全ての有給休暇を消化させる義務はなく、労働者から確認しない限りは未消化の有給休暇日数を提示してもらえない可能性もあります。
せっかくの有給休暇を無駄にしないためには、退職前に規定をしっかり確認して、具体的な消化方法を計画することが大切です。
6.2 有給消化中にボーナスはもらえる?
有給休暇中はあくまでも「通常の勤務」と同等の扱いであり、その期間がボーナスの査定期間に入っていれば原則としてボーナスの支給対象になります。
ただし、ボーナスは給与と異なり支給が義務付けられているものではありません。企業ごとに支給条件も異なるため、有給消化中は減額される可能性もあります。自社のルールについては、就業規則などで確認してみましょう。
6.3 40日間の有給休暇をまとめて消化できる?
有給休暇の連続取得日数に上限はありません。使い切れなかった分を翌年に繰り越すことで最大40日間の有給休暇が保有でき、それをまとめて消化することも可能です。
しかし、いきなりの取得は業務を停滞させる恐れがあるため、事前にしっかり引継ぎを行い職場に迷惑がかからないような配慮が求められます。
6.4 有給消化中に転職活動をしても良い?
有給消化中の転職活動は全く問題ありません。むしろ、退職後の生活を考えれば、有給消化の期間を利用して積極的に転職活動を行うべきと言えます。
ただし、実際に転職先が決定するまでには3カ月程度かかる場合もあるため、退職を意識したらなるべく早めに活動を始めることが大切です。
勤務をしながらの転職活動に不安がある方は、自分のスキルや希望に合った求人を提案してくれる転職エージェントを活用するのも良いでしょう。
6.5 有給消化中に働き始めても良い?
有給消化中はまだ会社に籍がある状態であり、その段階で他の仕事を始めるのは二重就労にあたります。
法的には問題ないものの、企業によっては副業などの二重就労を禁止している場合があるため、在籍中の企業と転職先の企業、両方の就業規則を確認しなければなりません。
また、雇用保険は重複加入ができないため、有給消化中に働き始める場合は在籍中の企業で、資格喪失手続きを行ってもらう必要があります。
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7 まとめ
退職時に有給休暇を消化することは労働者の権利であり、基本的に問題ありません。労働者に付与された有給休暇は、時期や理由にかかわらず、何日まとめて取得しても良いとされます。
ただし、引継ぎや業務の都合で会社側と調整が必要な場合があります。万が一「有給消化はできない」と言われた場合は、会社の就業規則を確認し、話し合いで解決を試みましょう。それでも解決しない場合は、労働基準監督署に相談するのも一つの方法です。
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