「有休」と「有給」はどちらも有給休暇を略した言葉ですが、どちらを使用すべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。この記事では、「有休」と「有給」の違いや正しい使い方を詳しく解説します。また、有給休暇の基礎知識に加えて、「有休」と「有給」同様、混同しやすい労務用語もいくつか紹介するので、ビジネスシーンにおける正しい言葉の使い方の参考にしてください。
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1 「有休」と「有給」の違いは?
「有給休暇」を指す場合、「有休」と「有給」のどちらが正しいのでしょうか。ここでは、それぞれの言葉の違いを詳しく解説します。
1.1 「有給休暇」として使うならどちらも正しい
「有休」と「有給」は共に「有給休暇」を表す略語であり、どちらを使用しても間違いではありません。それぞれ略す文字が異なるだけで、「有給休暇」を意味することに違いはなく、どちらも正しいと言えます。
1.2 「有給」は「給料が有る」という意味でも使用される
「有休」と「有給」はどちらも「有給休暇」を意味しますが、「有給」は「無給」の対義語であり、「給料が有る」という意味で使用されることもあります。
そもそも、「有給休暇」は「給料が支給される休暇」という意味であり、「有給」と「休暇」を組み合わせてできた言葉です。
一方、「有休」は「有給休暇」の略語以外に意味を持ちません。このように、「有休」と「有給」には微妙な意味の違いがあることを覚えておきましょう。
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2 「有休」と「有給」の使い方
上記の違いを踏まえ、実生活における「有休」と「有給」の使い方を紹介します。「有給休暇」として使う場合と、「給料が有る」という意味で使う場合の例文です。
【有給休暇として使用する場合】
- 有休(有給)は入社6か月後から取得可能です。
- 明日、有休(有給)を取って家族と旅行に行く予定です。
- 有休(有給)申請書を記入しました。
【給料が有るという意味で使用する場合】
- 有給のボランティアプログラムに参加してみませんか?
- 当社では有給の研修期間を1か月間設けています。
- この仕事は有給で行われるため、収入を得ながら経験を積むことができます。
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3 「有給休暇」を表すその他の言葉
有給休暇を表す言葉には、「有休」と「有給」の他にも以下のようなものがあります。
- 年次有給休暇
- 年次休暇
- 年次有給
- 年休
厚生労働省のHPなどでは、正式名称である「年次有給休暇」と表記しているケースが多く見られます。また、その年次有給休暇を略した「年休」という表現もよく使用されます。
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4 有給休暇の基礎知識
ここからは、有給休暇に関する基礎知識を解説します。付与条件や日数、申請方法などを確認しておきましょう。
4.1 付与される条件
有給休暇が与えられる条件は、以下2つの要件をどちらも満たしていることです。
- 雇い入れの日から起算して、6カ月継続勤務している
- 全所定労働日の8割以上出勤している
その後は、継続勤務1年ごとに前1年間の全労働日の8割以上出勤していると、所定の有給休暇が与えられます。
4.2 付与される日数
有給休暇の付与日数は、勤務形態や継続年数によって異なります。ここでは、一般的な労働者と、パートやアルバイトなど所定労働日数が少ない労働者に分けて説明します。
一般的な労働者の場合
週の所定労働日数が5日以上、または週の所定労働時間が30時間以上、もしくは1年間の所定労働日数が217日以上の労働者には、以下の有給休暇が付与されます。
勤務年数 | 6カ月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 | 5年6カ月 | 6年6カ月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
所定労働日数が少ない労働者の場合
パートやアルバイトなど、週の所定労働日数が4日以下かつ、週所定労働時間が30時間未満の労働者は、労働日数や労働時間によって付与される日数が異なります。
具体的な付与日数は以下のとおりです。
週の所定 労働日数 | 1年間の所定 労働日数 | 勤務日数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6カ月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 | 5年6カ月 | 6年6カ月 以上 | |||
4日 | 169日~216日 | 付与日数 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 48日~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
出典厚生労働省|年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
4.3 付与される基準日
有給休暇の付与には「6カ月の継続勤務」という条件があるため、原則、入社から6カ月後に指定の日数が付与されます。例えば、4月1日が入社日の場合は10月1日に付与が行われ、翌年以降もこの10月1日が基準日となります。
しかし、従業員の入社日が異なると基準日もバラバラになり、企業側の管理が煩雑になってしまう可能性があります。そのため、企業によっては6カ月を待たず入社日に付与し、翌年以降は4月1日に基準日を統一するといったケースも見られます。
有給の付与には「8割出勤」という条件がありますが、この場合、短縮した期間中は全て出勤したとみなして出勤率が算出されます。
また、万が一、6カ月経過前に退職したとしても、取得した有給休暇が無給扱いになることはありません。このように、労働者にとって不利益にはならない基準日の変更は認められています。
4.4 受け取れる賃金
有給休暇の賃金は、労働基準法第39条第9項により「平均賃金」「通常の賃金」「標準報酬日額」のいずれかで支払われるとされます。
平均賃金
過去3カ月における1日あたりの平均賃金が支給されます。平均賃金を算出するには、以下2つの計算方法があり、どちらか高い方が選択されます。
①過去3カ月の賃金合計÷過去3カ月の暦日数
②過去3カ月の賃金合計÷過去3カ月の労働日数×0.6
通常の賃金
通常労働したときと同じだけの賃金が支給されます。月給制の場合は「月給÷当月の所定労働日数」で算出した金額、日給制の場合はそのままの金額です。
また、時給制の場合は「時給×普段の所定労働時間」で計算します。パートやアルバイトでも、1日の労働時間が常に一定の場合は、上記の平均賃金ではなくこちらの通常賃金が選択されることが多い傾向です。
標準報酬日額
健康保険料の算定で使用される「標準報酬月額」を使用する方法です。社会保険に加入している企業は、従業員の標準報酬月額を把握しているため、「標準報酬月額÷30」と日割り計算すれば簡単に算出できます。
ただし、稀に平均賃金や通常の賃金よりも少なく算出されてしまうことがあるため、企業がこの方法を選択するには労使協定が必要です。
4.5 申請方法
具体的な申請方法は企業ごとに異なります。例えば、申請書類の形式や記載方法、いつまでに申請するかといった期限には法的な定めがないため、自社のルールに従わなければなりません。
一般的には、規定の申請書類に必要事項を記入し、2日~1週間前までに担当者へ提出します。ただし、近年は申請書類を廃止して、社内メールやチャット、クラウドサービスを利用した申請方法に切り替える企業も増えています。
4.6 年5日の時季指定義務について
「年5日の時季指定義務」とは、企業が年間10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、年5日の有給休暇を確実に取得させる義務のことです。労働環境の改善を目指す働き方改革関連法の一環として、2019年4月に施行されました。
企業側は、従業員が自ら有給休暇を取得しない場合、具体的な時季を指定して5日の有給休暇を取得させなければなりません。ただし、時季指定にあたっては、必ず従業員の希望を尊重することが求められます。
出典厚生労働省|年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説
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5 有給休暇でよくある疑問
「1日単位以外で取得できるのか」「使い切れなかった分はどうなるのか」「退職前に全て消化できるのか」など、有給休暇にまつわる疑問を解説していきます。
5.1 半日や時間単位で取得できる?
有給休暇は1日単位で取得するのが基本原則ですが、労働者が希望し、使用者が問題ないと判断した場合は半日単位で取得することもできます。
また、年に5日を限度として時間単位での取得も可能です。ただし、時間単位の取得には労使協定の定めが必要なため、自社にそのような定めがあるかどうかを確認する必要があります。
5.1 使い切れなかった分は消滅する?
使い切れずに余った有給休暇は、翌年度に繰り越すことができます。繰り越された分は、翌年度に付与される分と合算可能なため、有給休暇の最大付与日数である20日を繰り越すと、最大40日の有給休暇を保有できる計算です。
ただし、有給休暇の時効は2年間であり、繰り越した分を翌年度も使い切れなかった場合は、消滅してしまいます。例えば、2024年4月1日に付与された有給休暇は、2026年3月31日までに消化しないと権利を失うことになります。
5.3 退職前に消化しても良い?
退職前に有給休暇が残っている場合は、全て消化してから退職して問題ありません。有給休暇は労働者の権利であり、企業が取得を拒否することはできない決まりです。
もし、繰り越し分と合わせて40日間の有給休暇が余っていれば、40日連続で休んでから退職しても良いことになります。
ただし、同じ時期に有給休暇の申請が重なるなど正常に業務が運営できない場合は、企業に与えられた時季変更権によって、他の時季に変更を促されることもあります。
このような事態を避けるためには、退職日直前や繁忙期の申請を避け、余裕をもったスケジュールで消化するのがおすすめです。
出典厚生労働省|Q8 年次有給休暇の買上げをしても法律違反にはなりませんか。
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6 混同しやすい労務用語
ここでは、「有休」「有給」と同様に、違いが分かりづらい労務用語をいくつか紹介します。それぞれの意味を正しく理解し、混同しないよう注意しましょう。
6.1 「振替休日」と「代替休日」
振替休日とは、会社が休日に労働を指示する際、事前に他の日を休日として指定することです。本来は休日であった日が「労働日」となりますが、予め別日に「休日」を振り替えているため休日労働とはみなされず、通常の労働時間として扱われます。
一方、代替休日は「代休」とも呼ばれ、休日に労働した際、後日代わりの休日が与えられることを指します。この場合、休日が振り替えられたことにはならないので、労働は休日労働とみなされ、休日の割増賃金が支給されます。
6.2 「法定労働時間」と「所定労働時間」
法定労働時間は法律で定められた労働時間の上限であり、労働基準法第32条において「1日8時間、週40時間」と明記されています。
対する所定労働時間は、会社が就業規則や労働契約で定めた「1日および1週間の労働時間」であり、法定労働時間を超えない範囲で自由に設定可能です。所定労働時間を超えても、法定労働時間内であれば時間外労働とはみなされません。
6.3 「時間外労働」と「休日労働」
時間外労働とは、法定労働時間である「1日8時間、週40時間」を超えて働くことです。時間外労働では、25%以上の割増賃金が発生します。
対して、休日労働は法定休日である「週に1日以上の休日」に働くことを指します。休日労働では35%以上の割増賃金が発生しますが、会社が独自に設けた法定外休日の労働は、時間外労働とみなされる場合があります。
出典厚生労働省 静岡労働局|労働基準法の概要(時間外及び休日労働)
6.4 「退職金」と「解雇予告手当」
退職金とは、会社の規定に基づき退職時に支給される報酬です。法的な義務はないものの、会社が退職金制度を設けている場合は、就業規則や労働契約に従って支払われます。
一方、解雇予告手当は、使用者が労働者を解雇する際に支払われる金銭です。労働基準法第20条では、「使用者は解雇の30日前に予告しなければならず、できない場合は30日分以上の平均賃金を支払う必要がある」といった旨が明記されています。
例えば、10日前に解雇を通知された場合は、「30日 - 10日 = 20日分」の平均賃金が解雇予告手当として支払われることになります。
6.5 「在宅ワーク」と「テレワーク」
在宅ワークとは、主に自宅を拠点にして行う仕事であり、フリーランスや個人事業主、企業に雇用されている従業員が自宅から業務を行うことを指します。
一方、テレワークはICT(情報通信技術)を活用して、場所にとらわれず柔軟に働くことです。自宅以外にも、カフェやコワーキングスペースなど幅広い場所で働く形態を指します。
つまり、テレワークという大きな枠組みの中に、自宅を拠点とする在宅ワークも含まれています。
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7 まとめ
「有休」と「有給」はどちらも「有給休暇」を指す言葉であり、基本的にはどちらを使用しても問題ありません。ただし、厳密には意味の違いがあるため、正しく理解しておくことが大切です。
また、有給休暇には「年次有給休暇」「年休」など、さまざまな呼び方が存在します。さらに、表記は似ていても意味が全く異なる労務用語も多くあるため、混同しないようしっかり確認しておきましょう。
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