有給(有給休暇)とは、労働者が一定の条件を満たすことで取得できる休暇で、休暇中も賃金が支払われるのが特徴です。仕事と生活のバランスを保つための重要な制度ですが、付与される条件や日数、賃金の計算方法などについて正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。この記事では、有給休暇の基礎知識から取得方法までわかりやすく解説するので、有給休暇を活用するための参考にしてください。
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1 有給とは?
「有給」とは「年次有給休暇」の略語であり、給与の支払われる休暇を指します。勤務形態や継続年数によって付与される日数は異なりますが、有給休暇の取得は労働者の権利として保障されています。
なお、「有給」は「無給」の対義語としても使われることがあり、その場合は「給与が発生する」という意味になります。
1.1 有給休暇はどういう時に使う?
有給休暇の取得は労働者の権利であり、どのような使い方をしても問題ありません。一般的には、以下のように個人的な理由で仕事を休みたいときに使用されています。
- 体調不良や通院、健康診断のため
- 家族や友人のイベントに参加するため
- 旅行などリフレッシュのため
- 子供の看病や送り迎えのため
- 資格の勉強や受験など自己啓発のため
1.2 有給休暇が与えられる条件
有給休暇が与えられる条件は、以下2つの要件をどちらも満たしていることです。
- 雇い入れの日から起算して、6カ月継続勤務している
- 全所定労働日の8割以上出勤している
その後は、継続勤務1年ごとに前1年間の全労働日の8割以上出勤していると、所定の有給休暇が与えられます。
1.3 有給休暇は1日・半日・時間単位で取得できる
有給休暇は1日単位で取得するのが基本原則ですが、労働者が希望し、使用者が問題ないと判断した場合は半日単位で取得することもできます。
また、年に5日を限度として時間単位での取得も可能です。ただし、時間単位の取得には労使協定の定めが必要なため、自社にそのような定めがあるかどうかを確認する必要があります。
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2 有給休暇の付与日数
有給休暇の付与日数は、勤務形態や継続年数によって異なります。ここでは、一般的な労働者と、パートやアルバイトなど所定労働日数が少ない労働者に分けて説明します。
出典厚生労働省|年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
2.1 一般的な労働者の場合
週の所定労働日数が5日以上、または週の所定労働時間が30時間以上、もしくは1年間の所定労働日数が217日以上の労働者には、以下の有給休暇が付与されます。
勤務年数 | 6カ月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 | 5年6カ月 | 6年6カ月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
2.2 所定労働日数が少ない労働者の場合
パートやアルバイトなど、週の所定労働日数が4日以下かつ、週所定労働時間が30時間未満の労働者は、労働日数や労働時間によって付与される日数が異なります。
①週の所定労働日数が4日、または1年間の所定労働日数が169日~216日
勤務年数 | 6カ月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 | 5年6カ月 | 6年6カ月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
②週の所定労働日数が3日、または1年間の所定労働日数が121日~168日
勤務年数 | 6カ月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 | 5年6カ月 | 6年6カ月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
③週の所定労働日数が2日、または1年間の所定労働日数が73日~120日
勤務年数 | 6カ月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 | 5年6カ月 | 6年6カ月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 3日 | 4日 | 5日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
④週の所定労働日数が1日、または1年間の所定労働日数が48日~72日
勤務年数 | 6カ月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 |
---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 |
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3 有給休暇が付与される基準日
付与される日数がわかったところで、実際にいつ取得できるようになるのかという「有給休暇の基準日」について見ていきましょう。
3.1 原則は入社から6カ月後
先述したように、有給休暇の付与には「6カ月の継続勤務」という条件があるため、原則、入社から6カ月後に付与されます。例えば、4月1日が入社日の場合は10月1日に付与が行われ、翌年以降もこの10月1日が基準日となります。
ただし、企業によっては入社日や入社から3カ月後などに前倒しで付与する場合もあります。有給の付与には「8割出勤」という条件がありますが、この場合、短縮した期間中は全て出勤したとみなして出勤率が算出されます。
また、万が一、6カ月経過前に退職したとしても、取得した有給休暇が無給扱いになることはありません。このように、労働者にとって不利益にはならない基準日の変更は認められています。
3.2 4月に一斉付与されることも多い
原則、6カ月後に付与される有給休暇ですが、入社日が異なると基準日もバラバラになり、企業側の管理が煩雑になってしまう可能性があります。
そのため、まずは入社日に付与し、翌年からは4月1日に基準日を統一するという企業も増えています。このように、有給休暇の基準日は企業によって異なるため、就業規則をしっかり確認しておくことが大切です。
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4 有給休暇の賃金計算方法
有給休暇の賃金は、労働基準法第39条第9項により「平均賃金」「通常の賃金」「標準報酬日額」のいずれかで支払われるとされます。それぞれの内容や、金額の算出方法について解説します。
4.1 平均賃金
過去3カ月における1日あたりの平均賃金が支給されます。平均賃金を算出するには、以下2つの計算方法があり、どちらか高い方が選択されます。
①過去3カ月の賃金合計÷過去3カ月の暦日数
②過去3カ月の賃金合計÷過去3カ月の労働日数×0.6
例えば、過去3カ月の賃金合計が30万円、暦日数が91日、労働日数が50日だった場合、①の計算方法では「300,000÷91=3,296円」、②の計算方法では「300,000÷50×0.6=3,600円」となるため、高い方の3,600円が支給されます。
4.2 通常の賃金
通常労働したときと同じだけの賃金が支給されます。月給制の場合は「月給÷当月の所定労働日数」で算出した金額、日給制の場合はそのままの金額です。
また、時給制の場合は「時給×普段の所定労働時間」で計算します。パートやアルバイトでも、1日の労働時間が常に一定の場合は、上記の平均賃金ではなくこちらの通常賃金が選択されることが多い傾向です。
4.3 標準報酬日額
健康保険料の算定で使用される「標準報酬月額」を使用する方法です。社会保険に加入している企業は、従業員の標準報酬月額を把握しているため、「標準報酬月額÷30」と日割り計算すれば簡単に算出できます。
ただし、稀に平均賃金や通常の賃金よりも少なく算出されてしまうことがあるため、企業がこの方法を選択するには労使協定が必要です。
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5 有給休暇の取り方
有給休暇を取りたいと思ったら、どのような手順を踏めば良いのでしょうか。ここでは、有給休暇の取り方について説明します。
5.1 労働者は理由を述べず自由に取得できる
労働基準法附則第136条において、「使用者は有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしてはならない」という旨が記載されています。
つまり、有給休暇は理由を伝えず自由に取得して良いものであり、企業が取得を拒むことは許されません。もしも、「理由を言わないと取得できない」「10日以上連続して取得してはいけない」などの定めが合った場合は、違法の可能性が高くなります。
ただし、同じ時期に有給休暇の申請が重なるなど正常に業務が運営できない場合は、企業に与えられた時季変更権によって、他の時季に変更を促されることもあります。
5.2 具体的な申請方法は企業ごとに異なる
有給休暇の基本的な運用ルールは法律で定められているものの、具体的な申請方法は企業ごとに異なります。例えば、申請書類の形式や記載方法、いつまでに申請するかといった期限には法的な定めがないため、自社のルールに従わなければなりません。
一般的には、規定の申請書類に必要事項を記入し、2日~1週間前までに担当者へ提出します。一方、近年は申請書類を廃止し、社内メールやチャット、クラウドサービスを利用した申請方法に切り替える企業も増えています。
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6 年5日の時季指定義務とは
「年5日の時季指定義務」とは、企業が年間10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、年5日の有給休暇を確実に取得させる義務のことです。労働環境の改善を目指す働き方改革関連法の一環として、2019年4月に施行されました。
企業側は、従業員が自ら有給休暇を取得しない場合、具体的な時季を指定して5日の有給休暇を取得させなければなりません。ただし、時季指定にあたっては、必ず従業員の希望を尊重することが求められます。
出典厚生労働省|年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説
7 有給休暇を使い切れなかった場合はどうなる?
もしも、付与された有給休暇が1年で使い切れずに余ってしまった場合はどうなるのでしょうか。ここでは余った有給休暇の「繰り越し」と「買い取り」について解説します。
7.1 繰り越しは可能だが2年で時効となる
付与された有給休暇のうち、未使用分は翌年度に繰り越し、翌年度に付与された分と合算して使用することができます。有給休暇の最大付与日数である20日を翌年に繰り越すと、最大40日の有給休暇を保有できる計算です。
ただし、有給休暇の時効は2年間であるため、繰り越した分を翌年度も使い切れなかった場合は、消滅してしまいます。例えば、2024年4月1日に付与された有給休暇は、2026年3月31日までに消化しないと権利を失うことになります。
7.2 企業による買い取りは原則NG
原則として、有給休暇の買い取りは法律で認められていません。そもそも、有給休暇の目的は労働者に休息の機会を提供することであり、代わりに現金を支給するのは本来の趣旨に反するからです。
ただし、企業が独自に付与する休暇など、法定日数を超える分については買い取りが認められています。また、就業規則で「退職時の未消化分」「時効で消滅した分」の買い取りについて明記していれば、例外的に認められるケースもあります。
いずれも、従業員が不利益を被ることなく、法律で定められた有給休暇の運用ルールを遵守していることが条件です。
出典厚生労働省|Q8 年次有給休暇の買上げをしても法律違反にはなりませんか。
8 有給休暇が取得しづらい時の対処法
原則として、有給休暇はいつでも自由に取得できます。付与された分は、理由を述べることなく連続で一気に取得しても問題ありません。
しかし、実際は「仕事に穴を空けられない」「上司が滅多に休まない」などの理由で、有給休暇を取得しづらいと感じている方も多いのではないでしょうか。ここでは、そんなときの対処法を3つ紹介します。
8.1 取得予定を事前に共有する
「職場に迷惑をかけるのが心配」という場合は、前もって取得予定を共有しておきましょう。早めに伝えることで、チーム全体のスケジュール調整や業務の引き継ぎがスムーズに進み、職場への負担を軽減できます。
また、取得予定をオープンにすることは、他のメンバーが休暇を取りやすい雰囲気を作る効果もあり、結果として職場の働きやすさ向上にもつながります。
8.2 上司や人事部、労働基準監督署に相談する
職場全体に有給休暇が取得しづらい雰囲気がある場合は、上司や人事部に相談してみましょう。「仕事を引き継ぐ人がいない」「休まず働いている人が多い」など、取得しづらい理由を明確にし、職場全体で解決策を話し合う機会を持つことで、改善のきっかけになる場合があります。
社内の相談で解決しない場合は、労働基準監督署に相談することも選択肢の一つです。有給休暇は法律で保障された権利であり、不当な制限を受けることはありません。一人で悩まず、適切な相談先に助けを求めることで、安心して休暇を取得できる環境を整えましょう。
8.3 それでも取得しづらい場合は転職を検討する
職場の文化や上司の態度などによって有給休暇を取得しづらい雰囲気があると、自由に休めないことでストレスが増大してしまう恐れがあります。
そのような場合は、転職を検討するのも一つの方法です。有給休暇が取りやすく、従業員の権利を尊重する企業は多くあります。転職によって有給休暇の取得が当たり前の環境に身を置けば、生活の質が向上し、長期的に見てもプラスとなるでしょう。
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9 まとめ
有給休暇は、労働者が心身をリフレッシュしながら仕事の質を高めるための重要な権利です。付与される条件は「入社後6カ月間継続勤務し、その間の出勤率が8割以上」など、労働基準法で明確に定められています。
付与日数は勤続年数に応じて増加し、基本的に通常勤務時と同じ賃金が支払われます。なお、有給休暇の申請方法や買い取りについては、企業独自のルールが設けられている場合があるため、就業規則などで確認しておくことが大切です。
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