「齟齬(そご)」とは、意見や行動が食い違って物事がうまく進まなくなる状態を指します。似た言葉に「相違」もありますが、実は意味合いは異なります。ビジネスシーンでよく使われる言葉は、正しく理解していないと、思わぬトラブルを招いたり、恥ずかしい思いをしたりすることもあるため注意が必要です。
本記事では、齟齬の意味や使い方、類義語・対義語、齟齬を使った例文を解説します。さらに、齟齬が生じる原因や防止策も説明するので、ぜひご参考にしてください。
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1. 「齟齬」とは?読み方と意味について
齟齬(そご)とは、双方の言動にずれや食い違いが生じ、噛み合わなくなることで物事が思い通りに進まなくなる状態を指します。また、そうした状態となることを「齟齬(そご)が生じる」と表現します。
漢字を見てみると、どちらの字にも偏に「歯」が使われています。「齟」には噛み合わない、「齬」には食い違うという意味があり、漢字から意味が連想しやすい言葉でもあります。
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2. 「齟齬」と「相違(そうい)」の違いとは?
齟齬と混同されがちな言葉に「相違(そうい)」があります。
齟齬が「食い違う」「噛み合わない」といったすれ違いの意味を持つのに対して、相違は2つの物事に明確な違いが見られる状況を指しています。
齟齬は2つの物事が「ずれている」、相違は2つの物事が「合わない」とイメージすると、違いがわかりやすいかもしれません。
齟齬と相違の違いを例文で表すと、以下のとおりです。
2.1. 齟齬が生じている例
田中さん:「僕は四季の中で冬が一番好きです。佐藤さんはいつが好きですか?」
佐藤さん:「私は海と花火大会が好きです。」
田中さんは春夏秋冬の四季の中で、いつが一番好きか佐藤さんに聞きました。しかし、佐藤さんは夏に行われる好きなイベントを答えています。
質問に対する答えが異なり会話が噛み合っていないため、「齟齬」の状態と言えます。
2.2. 相違が生じている例
田中さん:「僕は四季の中で冬が一番好きです。佐藤さんはいつが好きですか?」
佐藤さん:「私は寒いのが苦手なので夏が好きです。」
田中さんは冬が好きですが、佐藤さんは夏が好きと答えています。
お互いに好きな季節が異なるため、「相違」の状態と言えます。
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3. 齟齬の類義語
ここからは、「齟齬」と同様の意味を持つ類義語について紹介します。
「齟齬がある」「齟齬が生じる」と言いたいときには、主に以下の言葉で言い換えられます。
■行き違い(いきちがい)
食い違いや誤解が生じること。
・クライアントと行き違いがあったようで、サンプル品の到着は次週です。
■不一致(ふいっち)
それぞれが一致しないこと。
・チームの解散理由は、方向性の不一致だ。
■ずれ
基準や標準からはずれた状態にあること。考え方や感じ方に隔たりがあること。
・世代によって価値観にずれがある。
■軋轢(あつれき)
人間関係が悪化すること、摩擦が起きること。
・リーダーのワンマンな言動によって、チーム間に軋轢が生まれている。
■不協和音(ふきょうわおん)
同時に響く複数の音が調和しないこと。
・今週からスタートしたプロジェクトに早くも不協和音が生じている。
4. 齟齬の対義語
「齟齬」と反対の意味を持つ言葉は、以下のようなものが挙げられます。
■疎通(そつう)
滞っていたものが通じ合うこと。
・しばらく揉めていた同僚とようやく意思疎通が取れた。
■合致(がっち)
複数のものがぴったりと一致すること。
・社長と部長の意見が合致した。
■符合(ふごう)
物事がぴったりと合うこと。
・今回の会議で全員の意見が符合した。
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5. 【状況別】齟齬を使った例文
齟齬を使った例文には以下のようなものが挙げられます。
こうした使い方をマスターしておくことで、ビジネスパーソンとしてのレベルを上げることができます。
■行き違っている場合
・立場が違うのだから、お互い齟齬があるのも仕方ない。
・佐藤さんと田中さんの見解には、大きな齟齬があります。
■食い違っている場合
・その報告書の内容は事実と齟齬をきたすものだ。
・初動の遅延が売上実績に大きな齟齬をきたした。
■噛み合わない場合
・先方との連絡に行き違いがあり、今週のスケジュールに齟齬が生じているようだ。
・見通しが甘いと、計画に齟齬が生じることになる。
6. 齟齬を使う際の注意点
齟齬はややネガティブな意味合いを持つ言葉です。また、齟齬による責任の所在は、基本的にどちらか一方だけに追及できるものではありません。そのため、ビジネスシーンで使用する際には特に注意が必要です。
こちらが意図していなくても、相手に不快感を与えてしまう可能性があるためです。
具体的には以下のような点に注意しましょう。
6.1. 目上の方への使用は避ける
ネガティブな要素を含む「齟齬」という言葉は、使い方によって批判的に受け取られてしまう可能性もあります。
例えば、プロジェクトの内容に食い違いが発生した際、「齟齬が生じている」と伝えると、相手は「一方的に自分が責められている」「責任を追求されている」と感じてしまうかもしれません。
そのため、上司や取引先に対しては使わないほうがいいでしょう。
6.2. 自分に非があるときは使用しない
自分に明らかな非がある場合も、「齟齬」を使用するのは止めましょう。
自分のミスにより食い違いや行き違いは生じているにもかかわらず、「齟齬」を使用してしまうと、「ミスを認めない人」「言い訳をして責任逃れをする人」という印象を与えてしまいます。
自分に非があるときは、素直に非を認めて謝罪することが重要です。
6.3. 齟齬のNG例文と言い換え方法
齟齬という言葉を使用する際は、言い回しに注意が必要です。
例えば、上司に対して「部長とのお話でスケジュールの認識に齟齬があったようですので、本日中の対応は難しいです」と答えてしまうのは適切ではありません。この表現は、上司にも責任の一端があると言っているようにとらえられてしまいます。
この場合は、「大変申し訳ございません。私の認識不足によりスケジュール管理に問題があったため、本日中の対応が難しい状況です」と謝罪するのが望ましい対応です。
また、「私の認識に齟齬があり、商品を用意できませんでした」という言い方も避けたほうがいいでしょう。自分の認識に誤りがあった場合は、「商品に関して私の認識が間違っており、用意することができませんでした。大変申し訳ございません」と素直に謝ることが大切です。
さらに、謝罪とあわせていつまでに対応するか具体的な日程を提示すると、上司や取引先からの理解を得やすくなります。
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7. 齟齬は英語で何という?
「齟齬」の英語表現についても紹介します。英語では、以下のような単語が「齟齬」と同じような意味を持ちます。
■discrepancy
本来一致するはずのデータや結果などに不一致があること。
・There is a discrepancy between their statements.(彼らの陳述には齟齬がある)
■mismatch
考え方や性質などがマッチしていない、つまり合っていないこと。
・There seems to be a mismatch in their ideas about the product.(製品についての彼らの考え方に齟齬があるようだ)
8. 齟齬が生じる原因と対策
ここまで「齟齬」の意味や使い方について解説してきました。
ここでは、ビジネスにおいて認識の齟齬が生じてしまう原因と、そうならないための対策を紹介します。
8.1. 齟齬が生じる3つの原因
ある事柄に関して認識の齟齬が生じやすいのは、話し手と聞き手の間で十分なコミュニケーションが取れておらず、共有した内容について別の解釈ができてしまう余地がある場合です。
そういったミスコミュニケーションが生じる要素として、以下の3つが挙げられます。
- 情報の歪曲:情報を伝える際に個人の価値観が介在してしまう
- 情報の省略:「詳しく説明しなくてもわかるだろう」という思い込みから伝えるべき情報を省略してしまう
- 情報の一般化:期日を「今日中」など人によって解釈が異なる言葉を使う
このような要素が原因で、ミスコミュニケーションが生じるのです。では、これらを防ぐにはどのような対策を講じればいいのでしょうか。
8.2. 内容を具体化して記録に残す
認識齟齬を防ぐためには、「伝える内容をより具体的にする」ことと「コミュニケーションを記録に残す」ことが有効です。
例えば、期日を「今日中」と伝えると、「16時まで」や「19時まで」など受け取り方にばらつきが出ることがあるため、「18時まで」などと具体的に示す必要があります。
また、期日を指定された側は、「今日中と言うのは18時頃まででよろしいでしょうか」と確認し、作業前に具体的な時間を共有すべきです。
さらに、口頭でのコミュニケーションは議事録やメモとして記録し、情報の歪曲を防ぎましょう。
8.3. 第三者の介入によって齟齬を解消する
すでに齟齬が生じていて、当事者同士では意見のすり合わせが難しい場合は、第三者を間に入れることで解決につながることもあります。
例えば、プロジェクト全体を把握している上司や責任者が、当事者それぞれの主張を整理し、客観的な立場で調整を図ることで、解決に近づけられる可能性があります。
このように、第三者の客観的な意見によって齟齬が生じている根本原因が解消されることもあるため、問題が深刻化する前に早めに対処しましょう。
8.4. 齟齬によって新たな発見につながることも
齟齬を解消するには、意見や行動の食い違いを深掘りすることが有効ですが、その過程で新たな発見につながる場合もあります。
意見をすり合わせる中で、齟齬の原因となる問題点が明らかになるだけでなく、新しいアイデアやビジネスモデルが生まれるきっかけになることもあるでしょう。齟齬をマイナスにとらえるのではなく、プラスに活かすことも大切です。
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9. 「齟齬」と同様に間違いやすい言葉
「齟齬」の他に、メールや手紙で間違いやすい言葉について以下の記事でご紹介していますので、併せてご覧ください。
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10. まとめ
「齟齬」とは、意見や行動が食い違い、物事がうまく進まなくなる状態のことです。また、そうした状態となることを「齟齬(そご)が生じる」と表現します。
「行き違い」や「ずれ」とほぼ同義ですが、ややネガティブな印象を持つ言葉のため、目上の方に対してや、自分に非がある状況では避けるのが無難です。
齟齬が生じることを防ぐには、伝える内容をできるだけ具体的にしたり、口頭でのやり取りはメモに残したりするなど、認識を共有しやすい工夫を意識することが重要です。こうした工夫を意識して、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
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