コンセプチュアルスキルとは?構成する要素や重要性、高める方法とは

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コンセプチュアルスキルとは、物事の本質や共通点を見きわめて、組織や個人のパフォーマンスを最大限に高める能力です。

環境変化の予測が難しい「VUCA時代」を乗り越えるために、企業はコンセプチュアルスキルを身につけている人材を求めるでしょう。

この記事では、コンセプチュアルスキルの概要や構成する要素、重要性について解説します。併せて、コンセプチュアルスキルを高めるメリットと具体的な方法もまとめたので、参考にすることで、効率よくこの能力を身につけられるでしょう。

【関連記事】「スキルの定義とは?能力・知識との違いや種類、それぞれの意味について解説」

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1. コンセプチュアルスキルとは

コンセプチュアルスキル(概念化能力)とは、物事の本質や共通点を見きわめ、組織や個人のパフォーマンスを最大限に高める能力のことです。

具体的には、ロジカルシンキング(論理的思考力)や、洞察力、知的好奇心、応用力、柔軟性など複数の能力を総合的に捉えた概念で、マネジメント層に必須な能力とされています。

コンセプチュアルスキルを身につけると、複雑な出来事に直面したときに、適切な判断をして、課題を解決へと導くことができます。

【出典】グロービス経営大学院「コンセプチュアル・スキル」

post1130_img1.png【関連記事】「スキルアップとは?メリットや高めるための方法について徹底解説」

2. コンセプチュアルスキルの考え方や重要性

コンセプチュアルスキルは、提唱した経済学者によって考え方が多少異なります。

ロバート・カッツ氏が提唱した「カッツモデル」と、カッツモデルをもとに提唱された「ドラッカーモデル」について把握しておくと理解が深まるでしょう。

2.1. カッツモデル

カッツモデルとは、米国ハーバード大学の教授であり、経済学者であるロバート・カッツ氏が1950年代に提唱した理論のことです。

組織を3つの階層・3つのスキルにわけて、職階に応じて必要となる能力を整理したフレームワークのことを指します。

具体的には、組織のマネジメント層には「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つのスキルが重要だと示し、この理論が提唱されてから、さまざまな企業が人材育成や組織開発の方針などに取り入れてきました。

階層スキルの割合詳細
上級管理者(経営者層) コンセプチュアルスキル 物事を構造化・概念化してとらえる能力
中級管理者(管理職層) ヒューマンスキル 円滑な人間関係を構築する能力
新任管理者(チームリーダー、係長や主任など)
テクニカルスキル 業務遂行を円滑に進めるために必要な知識・専門能力・技能

「コンセプチュアルスキルがもっとも必要なのは上級管理者であり、中級管理者にはヒューマンスキル、新任管理者にはテクニカルスキルが求められる」というように、階層によって必要とされるスキルの度合いが異なることを提示しています。

【関連記事】「ヒューマンスキルとは?高めるメリットや構成要素、具体的な方法について」

2.2. ドラッカーモデル

ドラッカーモデルとは、「現代経営学(マネジメント)」 を発明したオーストリアの経済学者ピーター・ドラッカー氏がカッツモデルをもとに提唱した組織モデルのことです。

カッツモデルは、管理者の階層があがるにつれて、コンセプチュアルスキルの重要度が高まるとされています。

一方、ドラッカーモデルでは、管理者のみならず、全社員が同じレベルのコンセプチュアルスキルを身につけるべきだと述べています。

激しい変動が伴う「VUCA時代」を乗り越えるためには、社員一人ひとりの能力(高い自発性や柔軟性など)が重要であることが明らかになりました。

そのため、ここ数年ではドラッカーモデルに基づき、全社員にコンセプチュアルスキルを身につける研修や評価制度の導入など、さまざまな取り組みを進めている企業が増えています。

【出典】総務省「VUCA 時代を乗り越える職員の能力開発の方策【後編】」

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3. コンセプチュアルスキルを構成するさまざまな要素

コンセプチュアルスキルは、複数の能力を総合的に捉えた概念であり、おもに以下の能力要素で構成されています。

能力要素詳細
ロジカルシンキング(論理的思考) 物事を理論的に考え、最適な結論を導き出す能力
ラテラルシンキング(水平思考) 固定観念や先入観にとらわれずに自由に発想できる能力
クリティカルシンキング(批判的思考)
課題を発見して、問題解決に向けて考えられる能力
多面的視野
幅広い視野を持ち、多角的に分析できる能力
探究心
物事の本質を見きわめるために努力する能力
知的好奇心
さまざまなことに興味を示し、解き明かそうと努める能力
柔軟性
その場にあわせた臨機応変な対応ができる能力
応用力
既存の知識や事例を新たな事象に活用する能力
受容性
多様な価値観を受け入れて向き合える能力
洞察力
物事の本質を見抜く能力
チャレンジ精神
困難な失敗を恐れずに新しいことに挑戦できる能力
俯瞰能力
広い視野で全体像を捉えられる能力

これらの能力は、意識して思考・行動することで身につけられるので、12とおりのスキルレベルの向上を図りましょう。

3.1. ロジカルシンキング(論理的思考)

ロジカルシンキング(論理的思考力)とは、物事の要素を分解して整理し、矛盾のないよう道筋を立てて結論を導き出す思考法です。

ロジカルシンキングが身につけば、複雑な問題やトラブルが起きても、物事を理論的に考えられるため、最適な結論を導き出すことができます。

さまざまな事象に対して、共通点を丁寧に分析して、体系的に整理しながら両者の関係性を考察できる思考力が含まれており、コンセプチュアルスキルの「本質を見きわめる能力」に直結する力です。

ロジカルシンキングが行える人材は、成功事例の活用や、失敗要因の排除が得意ですので、目標達成までのロードマップを正確に描くことができます。

【関連記事】「ロジカルシンキングとは?簡単に身に着ける方法・鍛え方・メリットを解説」

3.2. ラテラルシンキング(水平思考)

ラテラルシンキング(水平思考)とは、常識や経験などの固定観念にとらわれずに、物事を多角的に考察し、自由で新しい発想を生み出すことができる思考法です。

具体的には、既存の方法では解決できない問題に直面したときに、別の角度から課題点を分析し、新たな解決策を生み出せます。

ラテラルシンキングが行える人材は、「このサービスの人気が高いからこんなニーズもあるかもしれない」など新しい仮説を立てられるため、企業に新たな価値を生む可能性もあるでしょう。

3.3. クリティカルシンキング(批判的思考)

クリティカルシンキング(批判的思考)とは、物事を批判的にとらえて、多様的な角度から検討・判断できる能力のことです。

環境変化の予測が難しい「VUCA時代」では、これまでの経験や知識だけでは通用しない事象が増えています。

未知の問題に対応するには、客観的な視点を意識しながら、論理的に自分の頭で考え抜く力=クリティカルシンキングが求められるのです。

3.4. 多面的視野

多面的視野とは、1つの事象に対して、あらゆる角度から分析・考察する力のことを指します。

問題やトラブルが発生したときに、異なる視点から解決策を探ったり、複数のアプローチを行ったりできる能力であり、コンセプチュアルスキルの代表的な要素です。

具体的には、ある課題に直面したときに自分視点で物事を判断するのではなく、他部署や顧客、取引先などさまざまな角度から原因を見つけ出し、解決へと導くことができます。

3.5. 探究心

探究心とは、物事の本質を見きわめるために努力する能力のことです。納得できる答えが見つかるまで粘り強く、調査や分析を行い、物事を深掘りして追及します。

物事の背景や、関連するデータなどの情報を徹底的に調べて理解を深めるため、新たなニーズやビジネスの社会的な意義の発見にもつながるでしょう。

探究心を身につけることで、本質的な課題を発見しやすくなるので、コンセプチュアルスキルの根幹を成す能力だと言えます。

3.6. 知的好奇心

知的好奇心とは、特定の分野や、未知のものに興味を示して、解き明かそうとする能力のことです。

知的好奇心のある人材は、積極的に情報収集を行い、自発的に学習や体験するように努めるため、新たなビジネスモデルを生み出せる可能性があります。

従来にはない新しいアイデアを組織に持ち込んだり、社内で定着している非合理的な慣習を改善したりできる重要な資質です。

3.7. 柔軟性

柔軟性とは、その場の環境や状況に応じて行動・分析を素早く行い、対応できる能力のことです。

イレギュラーな事象が起きても、冷静に向き合い、臨機応変にアプローチして、スムーズに問題を解決へと導くことができます。

柔軟性を身につければ、時代や社会的ニーズの変化に対して、敏感に捉えて的確かつ迅速に対応できるので、組織にとって重要な人材となるでしょう。

3.8. 応用力

応用力とは、既存の知識や事例を、新たな事象に活用する能力のことです。

コンセプチュアルスキルの特徴である「物事の共通点を見きわめる力」は、応用力と深く関係していると言えるでしょう。

応用力に長けている人材は、過去の経験から企業や事業の将来を予測できたり、他部署や他社の成功事例を取り入れられたりすることが特徴です。

3.9. 受容性

受容性とは、多様な価値観を受け入れ、向き合える力のことです。

グローバル化や、雇用形態の多様化などに伴い、さまざまな価値観や意見を尊重できる能力はビジネスパーソンにとって必要不可欠だと言えます。

受容性のある人は、複数の意見を比較検討し、より良い解決策を導き出すことができるので、会議や打ち合わせの内容および結果の質が向上するでしょう。

3.10. 洞察力

洞察力とは、物事の本質を見抜く力のことを指し、コンセプチュアルスキルにおいて重要な要素だと言えます。

洞察力のある人は、表面的なものだけでなく、見えていない部分も注意深く確認し、考察できる点が特徴です。

現在のビジネスに将来性があるかを見きわめられるため、企業や事業を持続させるために必要な能力だと言えます。

3.11. チャレンジ精神

チャレンジ精神とは、失敗や困難を恐れずに新たな物事へ挑戦できる能力です。急速に変化しているビジネスシーンにおいて、チャレンジ精神の育成が重要視されています。

チャレンジ精神のある人は、多様化する価値観やニーズに対して柔軟に対応できるので、新たなビジネスモデルを創出する可能性があります。

3.12. 俯瞰能力

俯瞰(ふかん)能力とは、物事や事象、思考を全体的に眺めて幅広く捉えられる能力のことです。

目の前で起きているトラブルだけに着目するのではなく、全体像を捉えられるため、スムーズに問題を解決へと導けます。

複雑な出来事に直面したときに、一部の問題を解決しようと視野が狭まる傾向にありますが、俯瞰能力があれば、広い視野で物事を見きわめて適切な判断を下すことができるのです。

post1130_img3.png【関連記事】「ビジネススキルにはどんなものがある?自分にあったスキルの見つけ方や習得方法について」

4. コンセプチュアルスキルを高めるメリット

コンセプチュアルスキルは、組織や個人のパフォーマンスを最大限に高められる能力です。

ここでは、コンセプチュアルスキルを高めることで、具体的にどのようなメリットをもたらし、価値を創出するのか解説します。

4.1. 生産性の向上・業務の効率化が図れる

コンセプチュアルスキルを身につけることで、日常業務の進め方や社内連絡の方法、会議の進行方法など、身近な事柄に対して変革をもたらす可能性があります。

コンセプチュアルスキルを構成する要素の「ラテラルシンキング(水平思考)」や「クリティカルシンキング(批判的思考)」によって、固定観念や先入観にとらわれずに自由に発想したり、課題点を発見できたりするため、より効率的かつ迅速な方法を見つけ出せるかもしれません。

従来のやり方やマニュアルを疑い、一人ひとりのパフォーマンスを高める改善策を見つけることで、生産性の向上や業務の効率化につながります。

4.2. イノベーションが起きやすくなる

コンセプチュアルスキルの特徴である「知的好奇心」や「チャレンジ精神」によって、イノベーションが起きやすくなるでしょう。

例えば、「このニーズがあるから○○な商品が売れる」といった思考に加え、「このニーズがあるならもっと深掘りした○○なニーズにも刺さるかもしれない」などと仮説を立てて、新たな顧客ニーズを創出することも可能です。
イノベーションによって生まれた商品やサービス、技術は、新しい価値創出や市場開拓を実現します。結果的に競合他社に模倣されるまで市場を勝ち得て、良いポジションを築くことができるでしょう。

4.3. リスクの回避や軽減につながる

コンセプチュアルスキルの高い人材は、リスクの回避および軽減できる特徴があります。

外部環境の変化を柔軟に受け入れて、流動的に対応できるため、「時代に乗り遅れる」「顧客ニーズを見誤る」といったトラブルを防げます。

また、過去の失敗事例から将来への影響を予測し、早期的に対策を講じることができる点もメリットです。

4.4. 課題の解決につながる

コンセプチュアルスキルを身につければ、問題の本質を適確に捉えられるので、迅速に解決のための施策を打ち出せるようになります。

複雑な問題が絡み合った事象に対しても、広い視野で調査・分析し、ボトルネックとなっている部分を見きわめられることもメリットです。

さらに、有効的な施策を講じて、組織としての行動も最適化されるでしょう。

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5. コンセプチュアルスキルを高める方法

コンセプチュアルスキルは、複数の能力要素を組み合わせた総体的な能力ですので、意識的に取り組まなければこの能力の向上を図ることができません。

ここでは、コンセプチュアルスキルを高める方法を具体的に解説します。できそうなものから取り組んでコンセプチュアルスキルを定着させましょう。

5.1. 物事の本質を見出すために抽象化する

コンセプチュアルスキルを高めるためには、スムーズに物事の本質を捉える力が必要になります。

複数の情報から共通点を見つけ出し、重要度の低い要素を排除する作業「抽象化」を行いましょう。

具体的には、「ほかの人が書いた文章や記事を要約する」「自分視点ではなく多角的に考える」といった習慣づけが大切です。

頭の中で考えるのも良いですが、アウトプットのために敢えて紙に書き出したり、図解して情報を整理したりすると抽象的思考が定着しやすくなるでしょう。

5.2. 漏れやダブりはないか確認する

漏れやダブりがないか確認する癖をつければ、コンセプチュアルスキルを高めることができます。

物事の1点だけを見るのではなく、全体的に把握して重複している事柄がないかを見きわめましょう。

感情的で偏った捉え方になっていないかを常に自分に問い、多角的に考えられるようになれば自然とコンセプチュアルスキルが養われます。

5.3. 言葉を定義し明確化にする

物事の全体的な構造や、要素に着目して自分の言葉で定義付けすることが大切です。

例えば、「業務の効率化とは?」「商談の成功法則とは?」というように言葉に定義付けを行い、ぼんやりとした事柄を明確にしましょう。

そうすることで、曖昧な事象に対して、課題点を見つけられたり、的確な改善策を打ち出したりできるようになります。

5.4. 物事を具体化して落とし込む

物事を抽象化し、定義付けしたら、具体化して行動や言動に落とし込んで実践で生かしましょう。

「とは?」という疑問に対して、自分の言葉で定義付けた後で「具体的には〜」「例えば〜」などでつなげて相手が理解しやすいようにまとめます。

事例や経験、具体的な手法などを挙げながら伝えると、相手がイメージしやすくなるので理解度を高められるでしょう。

1つの事象に対して共通点を見つけて抽象化し、その内容に重複がないか確認したうえで、言葉の定義付けと具体化を行います。この思考プロセスを繰り返すことでコンセプチュアルスキルが磨かれていくので、日頃から意識して実践を重ねましょう。

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7. まとめ

コンセプチュアルスキルは、幅広い能力を総合的に捉えた概念であり、論理的思考力やラテラルシンキング、クリティカルシンキングなどの能力要素で構成されています。

物事の本質を見出すために、抽象化したり、具体化して落とし込んだりといった思考プロセスを習慣的に行えば、コンセプチュアルスキルを身につけることが可能です。

変動の激しい現代社会を乗り越えるためには、マネジメント層だけではなく、組織全体でコンセプチュアルスキルの向上を図る取り組みに努めた方が良いでしょう。

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