リスキル(リスキリング)とは?注目されるようになった背景やリカレントとの違いについて紹介

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リスキル(リスキング)とは、新しい技術や資格を習得する取り組みのことを指します。リスキルは、予測不可能な現代において人材戦略の主軸になるものだと言えるでしょう。

この記事では、リスキルの定義や意味、リカレントとの違い、重要視される理由・背景について解説します。

あわせて、リスキルのメリット・デメリット、進め方や注意点もまとめたので、参考にすれば効果的な導入を実現できるでしょう。

【関連記事】「スキルの定義とは?能力・知識との違いや種類、それぞれの意味について解説」

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1. リスキル(リスキリング)とは

リスキル(リスキング)とは、新しい技術や資格を習得する取り組みのことです。

経済産業省で2021年に行われた「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」では、リスキルは下記のように定義づけられています。

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること

なお同資料では、リスキルは単なる「学び直し」ではなく「これからも職業で価値を創出し続けるために、必要なスキルを学ぶ」という点が強調されています。

【出典】厚生労働省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」

1.1. ビジネスにおけるリスキル(リスキリング)の意味

変化の著しいVUCA時代を生き抜くために、従業員一人ひとりが新しいスキルを習得し、組織力を高める必要があります。

そこで2020年のダボス会議(世界経済フォーラム)にて、「リスキル革命」が提唱されたことにより、世界的に認知度が高まりました。

リスキルの目的は、時代に適したスキルを養い、社会の変化に適応することや、新しい知識や技術を得てこれまでとは違う業界・職種で活躍することが挙げられます。

1.2. リカレントとの違い

リカレントは、生涯にわたり教育と就労のサイクルを繰り返すことを指し、リスキルとは学びの方法が異なります。

リカレントは「何かを学ぶために一度現職を離れて、教育機関で学び直して仕事に戻る」という流れを繰り返すことが特徴です。

一方、リスキルは仕事を続けながら、現職に必要なスキルの向上を目的として学習します。

1.3. アップスキリング・アウトスキリングとの違い

リスキルは、新たなスキルを取得するための取り組みを指すのに対し、アップスキリングは既存のスキルを伸ばすことを目的としています。

また、アウトスキリングとは、人材整理の対象となる可能性がある従業員に対して、成長産業への転職に役立つスキル育成を実施します。

リスキルやアップスキリングは自社に貢献することを前提としたスキル教育ですが、アウトスキリングのみ社外への転職を前提としている点が大きな違いです。

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2. リスキル(リスキリング)が重要視されるようになった背景

リスキルは、海外では既に浸透している概念ですが、日本ではここ数年で重要視されるようになりました。ここでは、国内でリスキルが注目されるようになった背景について解説します。

2.1. 働き方や考え方の多様化

働き方改革が施行され、企業は働き方や考え方の多様化に向けた柔軟な取り組みが求められています。

テレワークやフレックスタイム制度の採用など新たな働き方が急速に広がり、状況の変化に伴い、オンライン会議ツールや、チャットツールなどが導入されました。

それをきっかけとして、従業員のITリテラシーを高めなければ、社内情報の漏えいや作業効率の低下につながると危機感を覚えた企業も多いでしょう。

結果的に、多くの企業がリスキルの必要性を感じ、導入を開始しているのです。

2.2. DX推進によるデジタル化

DX推進とは、企業内で最新のIT技術を活用して、業務の取り組み方を新しく変革・改善する試みのことです。

企業がDX推進に向けた取り組みをする際に、DX人材の不足が懸念されるでしょう。

そこで、リスキルによって下記のような能力を高められると、スムーズにDX人材を育成できることから、注目されるようになりました。

  • デジタルツールの使い方
  • ITリテラシー
  • プログラミングスキル
  • マーケティングスキル

2.3. 技能・技術継承問題

ここ数年は、少子高齢化に伴い、ベテランの技術を引き継ぐ若手が減少傾向にあることが社会問題へと発展しています。

技能・技術継承問題の原因は、若手が少ないだけではなく、ベテランが若手の指導を行う時間がとれない、または指導法に課題があるといった点が挙げられます。

そこで、リスキルを導入すれば、外部機関も活用しながら若手がスムーズに技術の向上を図れるでしょう。

技能・技術継承問題が深刻化している業界ほど、リスキルの重要性を理解できているのです。

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3. リスキル(リスキリング)のメリット

リスキル(リスキング)推進によってどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、具体的な利点を5つ挙げて解説するので、導入を検討している方は参考にしてみてください。

3.1. 生産性の向上・業務の効率化

リスキルの推進により、従業員一人ひとりの知識や技術力が向上し、組織全体のスキルアップが期待できます。

例えば、AIツールのスキルを習得し、計算やデータ入力が自動化された場合、大幅な時間短縮が実現され、浮いた時間をほかの業務にあてることが可能です。

それによって、業務を効率的に遂行できるようになり、生産性の向上にもつながるでしょう。

3.2. 企業価値の向上

現場で働く従業員は、直接消費者と関わりを持つため、従業員一人ひとりのスキルが高まれば、企業価値の向上にもつながります。

また、従業員が新たなスキルを習得し、それをほかの社員に共有することで、より社会に価値を提供できる団体になれるでしょう。

3.3. キャリアアップ

スキルアップすることで、社内でのキャリアアップにつながります。

仕事の難易度が上がったり、専門性が高まり、これまでの経験を応用して活躍できたりすれば、それに見合った条件や報酬を得られるため、昇進や昇給が期待できます。

3.4. イノベーションの促進

リスキル推進により、企業のイノベーションの促進ができます。

イノベーションとは、新たな考えや技術を取り入れて、これまでになかった価値を生み出し、社会にインパクトのある変革をもたらすことを意味します。

リスキルの取り組みによって、従業員は新たなスキルを身につけることができ、考え方や価値観が大きく変わる可能性もあるでしょう。

とくにこれまでに経験のしたことがない分野の知識を得ることで、それが刺激となり、新たな発想を生み、従業員の企画や提案が事業成長につながる場合もあります。

3.5. 採用コストの削減・定着率の向上

リスキルを推進することで、従業員が新たなスキルを習得できるので、新しく人材を採用したり、一から育成したりといった採用・教育コストの削減につながります。

また、組織力の向上を共通の目標として、スキルを身につけていくうちに、「自分は企業にとって必要な存在」だと感じられ、自分の立場や業務に誇りを持てるようになるでしょう。

「新しいスキルを習得したい」「スキルを磨いて貢献したい」と考える優秀な人材の流出を防げる点もメリットです。

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4. リスキル(リスキリング)のデメリット

業務の効率化や生産性・企業価値の向上などさまざまなメリットが期待されるリスキル(リスキリング)ですが、下記のようなデメリットも存在します。

  • 人材育成の体制を整える必要があるため、取り組むまでに負担がかかる
  • 人によってはモチベーションの低下につながる可能性がある
  • キャリアアップにつながり、身につけたスキルを武器に転職されるリスクがある

リスキル(リスキリング)を進めるにあたって、人材育成の体制を整える必要があります。それによって、従来とは異なる負担がかかり、モチベーションが低下してしまう従業員もいるでしょう。

また、リスキルによって習得したスキルを武器に、キャリアアップを目的とした転職を考える人が出てくるリスクもあります。

優秀な人材が外部に流れないように、リスキルの重要性について理解度を高めたり、労働環境や条件を見直したりする必要があるかもしれません。

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5. リスキル(リスキリング)の注意点

リスキル(リスキリング)は、企業と従業員の双方にとってメリットが大きい取り組みですが、前述のとおりリスクもあるので注意点を押さえておかなければなりません。

ここでは、意識すべきポイントを3つの視点から解説します。

5.1. リスキルの必要性を周知させる

リスキルを推進する場合は、従業員一人ひとりの理解を深める必要があります。

一人でも必要性を感じられない従業員がいればマイナスな言動が漏れる可能性があり、組織全体のモチベーションダウンにつながるかもしれません。

リスキルの必要性を周知する際には、経営陣がトップメッセージとして伝えることが大切です。

重要度の高さが従業員に伝わるので、現場での理解が得られ、時間捻出などの施策も実施しやすくなるでしょう。

5.2. スキル獲得に取り組みやすい環境整備を行う

リスキルを実施する際には、従業員がスキルの獲得に専念しやすい環境を整えることが大切です。

従業員は、日常業務に加えて、新たなスキルを得るための勉強をしなければならないので、負担が大きくなる恐れがあります。

そのため、スキル獲得に取り組んでいる間は、ほかの従業員がフォローしたり、難易度の高い業務を減らしたりして調整しましょう。

また、明確な評価制度を設けて、スキル習得後には昇格や昇進などのメリットを得られるように工夫することも大切です。

5.3. 獲得したスキルを発揮する環境を作っておく

企業側は、従業員が獲得したスキルを発揮できる環境を構築することも重要です。

習得したスキルは実践的に鍛えることで定着および伸ばしやすくなります。実践の場を設けることで、どれくらい力が付いたのか実感しやすく、モチベーションの向上にもつながるでしょう。

具体的には、獲得したスキルをほかの従業員に共有する時間を設けたり、新たな業務に挑戦してもらったりすると良いかもしれません。

また、従業員がベテラン社員の前で発言しやすいような環境・雰囲気づくりをすることも大切です。

6. リスキル(リスキリング)の進め方

リスキル(リスキング)を導入する際には、下記の手順を踏むと、効果的に進められます。

  1. 現状の課題やスキルを可視化する
  2. 必要なスキルの選定を行う
  3. 教育プログラム・カリキュラムを選定する
  4. スキル獲得の環境を整備する
  5. 取得後の状況やヒアリングを行う

円滑にリスキルを推進するためには、どれも欠かせない要素ですので、可能な限り5つの手順どおりに進めましょう。

6.1. 現状の課題やスキルを可視化する

手当たりしだいに人気のスキルを取得していくのではなく、自社にとって重要度の高いものを選定しなければなりません。

そのためには、自社における現状の課題や、重要度の高いスキルを可視化し、優先順位をつけていく必要があります。

新規事業につながるような新しい学びを求めるのか、いまの事業を成長させるためのスキルが必要なのかによって、スキル選定が大きく異なります。

企業側がリスキルに期待していることを事前に整理しておけば、従業員の学びの方向性が定まりやすくなるでしょう。

6.2. 必要なスキルの選定を行う

数あるビジネススキルのなかから、自社に必要なスキルをピックアップします。

人事や現場の部門など部署ごとにニーズに合ったスキルを選定することで、組織全体のスキルアップにつながるでしょう。

また、リスキルの必要性や取り組みについて従業員に周知する際には、どのようなスキルが身につき、どういった未来が待っているのかを具体的にイメージできるように伝えることが大切です。

6.3. 教育プログラム・カリキュラムを選定する

自社の従業員に必要なスキルをいくつかピックアップしたら、それに適した教育プログラム・カリキュラムを選定しましょう。

教育プログラムやカリキュラムは社内で用意することもできますが、その分野に精通したプロフェッショナルが在籍していない場合は、外部の専門家に任せるのも1つの手段です。

なお、政府がリスキルを推進していることに伴い、デジタル人材育成のサービスを展開する企業も増えてきています。

自社が必要としているリスキルの目的に合致したサービスを導入することで、従業員の負担を抑えられるでしょう。

6.4. スキル獲得の環境を整備する

教育プログラムやカリキュラムによって、得たスキルを実践的に鍛えることで定着しやすくなります。

習得したスキルを現場で生かせるような機会を作れば、自身の能力が向上したことを自覚しやすくなる点もメリットです。

自尊心や自己肯定感の向上にもつながるので、スキルを生かせる環境を構築し、力試しをしましょう。

また、リスキルの取り組みによって、リソース不足になる恐れもあるので、カバーし合えるようにスケジュールやタスクの難易度を調整することも大切です。

6.5. 取得後の状況やヒアリングを行う

リスキルの取り組みによって、従業員にどのような効果があったのかを測定しましょう。

具体的には、スキルセットの習得状況をチェックし、スキルを得たことによる生産性の向上度合いを確かめます。

あわせて、従業員に大きな負担がかかっていないかをヒアリングして、無理のない取り組みができているのかを把握することも大切です。

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7. まとめ

リスキルは、新しいスキルを働きながら習得する取り組みのことを指します。リスキル推進によって従業員一人ひとりのスキルが高まり、企業における組織力の底上げにつながるでしょう。

リスキルを行う際には、従業員に必要性やメリットを周知し、取り組みやすい環境を整備することが大切です。

リスキルの効果を最大限に発揮させるために、長期的な視点で捉えて、PDCAサイクルを回しながら繰り返し行いましょう。

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