コーチングとは、目標達成に向けた方向性や必要な課題を明確にし、課題を乗り越えるために実現可能な方法で行動を支援することです。従来のトップダウン型とは異なり、相手の自発的な行動を促す手法として近年、ビジネスシーンで注目されており、人材育成などに活用されています。
今回は、コーチングの基礎知識や効果、具体的な進め方、学び方などについて解説します。
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1.コーチングの意味や定義とは?
コーチングとは、コーチがクライアントの目標達成を支援し、より理想的な未来へ導く手法です。
コーチは、問いかけながら話を聞くことで相手と信頼関係を築き、考えを引き出すことで、本当に望むことや課題に相手が気づき、自発的に行動できるよう促します。
コーチングを活用すれば、相手の目標や達成方法が明確になり、主体的に前進しやすくなります。この手法は、取引先との関係強化はもちろん、社員教育など幅広い場面で活用されています。
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2.コーチングの由来と歴史
コーチングという言葉は、もともと「馬車」を意味する「コーチ(Coach)」から派生した言葉です。馬車が人を目的地へと運ぶように、「人の目標達成を助ける」という意味で使われるようになりました。
出版物では、1959年にハーバード大学助教授(当時)のマイルズ・ メイス氏が著書「The Growth and Development of Executives」で、「マネジメントにおいてコーチングは重要なスキルである」と述べたのが最初の記録とされています。
現在では、コーチングの手法や効果を解説する書籍が多数出版されています。
3.コーチングの目的
コーチングの目的は、「現状」と「目指す結果」の間に生じているギャップを解消することです。
コーチは相手を導く役割を担いますが、その過程で見えてくる外部要因は、あくまでも情報の一つにすぎません。大切なのは、相手が潜在的に持っている意識や感情を引き出し、その人にとって最適な答えへと導くことです。
また、コーチングにおいては「一般論や多数派が正しい」という考え方はありません。
コーチングを通して、新たな気づきを得たり、自分の意思を再認識したりすることができます。コーチはそれらを踏まえながら、相手の現在地とゴールを一致させるためにさまざまなアプローチを試み、ギャップの解消を目指します。
4.コーチングと類似する手法、それぞれの違いとは
前述の通り、コーチングの目的は、「現状」と「目指す結果」の間に生じるギャップを解消することです。このコーチングと似た手法に、「ティーチング」「コンサルティング」「カウンセリング」が挙げられます。
ここでは、これらとコーチングとの違いについて具体的に解説します。
4.1.ティーチング
ティーチングとは、その名の通り、能力や経験のある指導者が技術や知識を「教える」ことで、対象となる人物の目標達成を支援する手法です。
主に親と子、教師と生徒、先輩と後輩、上司と部下などの関係性において成立し、私たちは多くの場面で双方の立場を経験しています。コーチングが「問いかけて聞く」に重きを置くのに対し、ティーチングは一方的に伝達する点が特徴です。
4.2.コンサルティング
コンサルティングとは、相手の抱える問題や課題に対して、その分野の専門家として具体的な助言やアドバイスを行い、新しい知識や、的確で効果的な解決策を提示する手法です。
コーチングと比べて、短期間に明確な成果が求められる傾向にあります。
4.3.カウンセリング
カウンセリングとは、その人の悩みや不安などネガティブな感情に寄り添い原因の解消を後押しする手法で、心身の回復に重きが置かれています。
コーチングのように答えを教えることはせず、答えにつながる要素や自分自身がすでに持っている答えに気付いてもらうことが目的です。
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5.コーチングのメリット
コーチングは、コーチが内面にアプローチし答えを引き出すことで相手を目標達成に導きます。それにより、以下のようなメリットがもたらされます。
● 自覚していなかった感情や思考に気付き、未来の選択肢が増える
● 課題と向き合い乗り越えるまでのプロセスが学べる
● ありのままの自分を受け入れられるようになる
● 目標達成の成功体験により自信が得られる
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6.コーチングのデメリット
一方で、コーチングには以下のようなデメリットも想定されます。
● コーチのスキルやコーチとの相性によって得られる効果に差が出る
● 自分と向き合うことで、コーチングを受けた側が辛くなる可能性がある
● 自主性がなければ目標達成が遠のく
● 長期的視点に基づく手法のため、問題の根本的な解決に即効性はない
クライアントが置かれている状況によっては、必ずしもコーチングが適しているとは限らないことを覚えておきましょう。
7.コーチングの進め方
コーチングの進め方にはさまざまな方法があります。今回はその中でも基本的な流れを紹介していきます。
7.1.現状と課題の確認
まずはクライアントの現状を整理します。そこから相手にとって問題となっている事柄を明確にします。この際に重要なのは、客観的事実と自分自身の思い込みによって作り出された事実を正確に分けることです。
また、コーチングは数ヵ月間に渡り継続的に行われるものであり、コーチとクライアントの信頼関係の構築を意識したコミュニケーションが重要です。信頼関係の程度によってコーチングの目的が達成できるかどうかが決まると言っても良いでしょう。
7.2.目的(ゴール)の決定
コーチングを行う目的(ゴール)を決めます。そのためには、相手がどのような状態になることを望んでいるのか具体化する必要があります。今後の課題をよりクリアにするためにも、できる限り明確に言語化していくことが重要です。
さらに、なぜゴールを目指すのか、またゴールに到達した際に得られるメリットまで掘り下げておくと、今後の自発性を促すことにもつながります。
併せて、ゴールに向かうにあたって発生する障害やリスクについても把握しておくことが必要です。
7.3.課題や目標達成に必要なリソースの明確化
現状から具体化したゴールに到達する間に、どのような過程でどのようなギャップが生じるのかを想定します。
そして、ギャップ解消のためにはどのような行動が必要なのか、ギャップ解消に効果的な人や環境、物、知識などのリソースを明確化します。リソースは、他人や環境から与えられるものに限らず、すでに相手が持っているものも含まれます。
7.4.ロードマップの作成
ここまで述べたことが明確化されたら、ロードマップを作成します。ギャップ解消のために考えられる行動のアイディアや選択肢を思いつく限りリストアップし、その中から実行可能なものをクライアントが選択します。
強制するのではなく、いつまでにどのような行動をしてどのような結果を手に入れるのかを自身にコミットしてもらうことが重要です。ここで自発的な行動を促すことで、相手がゴールに到達できる可能性が高まります。
8.コーチングスキルの基本
コーチングのセッションでは、対象を深く理解するためのスキルが求められます。コーチングの基礎となる3つのスキルについて見ていきましょう。
8.1.傾聴
傾聴は、相手と真摯に向き合いじっくりと話を聴くスキルです。決して相手を否定したり決めつけたりせず、理解と共感を示しながら、話が尽きるまで聴きます。
自分の言葉で感情や思考を話し、その話をコーチが傾聴することで、今までにない気付きを得られる可能性があります。そのためにも、コーチは安心感を与えられるような雰囲気作りをする必要があります。
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8.2.質問
コーチングでの質問は、相手の気付きを引き出すために行います。質問者であるコーチの興味関心や情報収集目的によるものではなく、あくまでも相手側の内面にある本音や課題を引き出し、本人に認識してもらうためのものです。
質問の際には、威圧感を与えないために「なぜ(Why)」ではなく「何を(What)」を使うようにします。
【質問例】
・何があなたにそのような選択をさせたと思う?
・ダメだと思った理由は何だと思う?
・自分では何が問題だと感じている?
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8.3.フィードバック
コーチングにおけるフィードバックは一般的な評価とは意味合いが異なり、コーチ自身の感想をそのまま伝えることを意味しています。コーチングを受けた相手は、客観的視点を得られることで新たな課題に気付くことができます。
コーチ側の意見を押し付けるのではなく、あくまでもアイ(I)メッセージ「私は●●のように思う」というような形で伝えるようにしましょう。
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9.コーチングが機能しないときの対処法
「効果が実感できない」という場合は、以下の理由が考えられます。
●コーチングに適した仕事内容ではない
●コーチのスキルが足りない
コーチングがうまく機能していないと感じる場合は、まずこれらに当てはまっていないかをチェックしましょう。
「コーチングよりティーチングが適した仕事ではないか」「コーチのスキルは仕事内容に合っているか」といった点を見直して、できるだけ早く改善することが重要です。
10.コーチングを学ぶ
これまでコーチングの基本や進め方、コーチングが機能しないときの対処法などを解説しました。実際にコーチングを行うには、知識のインプットはもちろん、アウトプットも重要です。
インプットとアウトプットを繰り返すことで、コーチングの学習効果が高まります。ここでは、コーチングの学び方を紹介します。
10.1.参考書を活用する
コーチングを学ぶには、知識を体系的にまとめている参考書の活用がおすすめです。簡単に学習を始められるだけでなく、自分に合ったレベルの本を選択できるため、知識獲得に適しています。
特に「部下との接し方が分からない」「自発的な動きを引き出せない」などの悩みを抱える人は、書籍で知識を蓄えながらコーチングを実践していくと良いでしょう。
10.2.eラーニングを活用する
ネット環境さえあれば、場所を問わずにいつでもオンライン学習が可能なeラーニングもおすすめの学習方法です。PCやタブレット、スマホなどのデバイスで、テキストや動画形式の教材を利用できるため、短期間で効率的に知識を習得できます。
eラーニングは、映像や音を通じて記憶することができ、五感を活用したインプットが効果的に働くこともあります。
10.3.資格取得を目指す
コーチングの資格は、さまざまな団体によって認定されており、それぞれの団体が独自の基準での資格を設けています。コーチングを行うために資格は必須ではありませんが、資格取得によるメリットは多いです。
コーチングの資格は種類や内容、レベルなどがそれぞれ異なるため、自分に合う資格を選んで学習することで、効率的に学習できます。また、資格を取得することで、実力を客観的に証明できる点も大きな強みとなります。主な資格については以下で紹介します。
11.コーチング資格の種類
ここでは、主なコーチング資格の種類や特徴を解説するので、コーチングレベルを高めたい方はぜひ取得を目指してみましょう。
11.1.国際コーチング連盟(ICF)認定資格
国際コーチング連盟(ICF)は、2024年2月時点で世界166カ国、59,754人以上の会員が所属している世界最大の非営利団体です。認定資格は以下の3種類が用意されています。
・アソシエイト・サーティファイド・コーチ(ACC)
・プロフェショナル・サーティファイド・コーチ(PCC)
・マスター認定コーチ(MCC)
ただし、これらは国際コーチング連盟(ICF)がプログラムを提供しているものではなく、他団体のプログラムを独自の育成基準で評価する形です。下に進むにつれて求められるコーチング経験が増え、トレーニング期間も長くなります。
なお、これらの認定資格を受検するためには、あらかじめコーチ・トレーニング・プログラム(ACTP)を修了する必要があります。
出典ICF Japan Chapter | 一般社団法人国際コーチング連盟 日本支部「国際コーチング連盟(ICF)認定資格」
11.2.(一財)生涯学習開発財団認定コーチ資格
一般財団法人生涯学習開発財団認定コーチ資格は、1998年にスタートした日本で最初の「コーチ認定制度」です。これまで延べ9,800人(2023年1月時点)が認定コーチ資格を取得しています。
コーチングの市場を日本に作ってきた、日本におけるコーチングのスタンダードとなる資格です。認定コーチ資格は以下の3種類が用意されており、それぞれの認定資格には2年間の有効期限が定められています。
・認定コーチ(初級者)
・認定プロフェッショナルコーチ(中級者)
・認定マスターコーチ(上級者)
これらの認定コーチ資格の取得には「コーチ・エィ アカデミア」でのプログラム修了が必須です。
出典コーチ・エィ アカデミア「(一財)生涯学習開発財団認定コーチ資格 」
11.3.日本コーチ連盟認定資格
一般社団法人日本コーチ連盟は、コーチングの研究と普及を目的として2002年に発足しました。公開講座や検定試験の実施、コーチング技能養成学校の運営を行っています。
認定資格は以下3種類です。
・日本コーチ連盟認定コーチング・ファシリテータ
・日本コーチ連盟認定コーチ
・日本コーチ連盟認定プロフェッショナル・コーチ
まずは初級にあたる「日本コーチ連盟認定コーチング・ファシリテータ」の取得を目指します。定められた養成プログラムを修了すれば受験資格が得られます。
出典一般社団法人日本コーチ連盟「コーチングを学びたい方のために 日本コーチ連盟 | 資格、講座、研修」
11.4.CPCC
CPCC(Certified Professional Co-Active Coach)は、CTIジャパンが認定するコーチング資格です。コーチングの世界標準として認められているもので、前述した国際コーチ連盟(ICF)に世界で初めて認定を受けています。
認定資格は、「基礎コース」「応用コース」「上級コース」の3つに分かれています。
■基礎コース
■応用コース
- フルフィルメント・コース(Fulfillment)
- バランス・コース(Balance)
- プロセス・コース(Process)
- シナジー・コース(Synargy)
■上級コース
基礎コースは経験を問わず誰でも受講できますが、応用コースを受講するには基礎コースの修了が必須です。
また、上級コースを受講するには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
・基礎・応用コースをすべて受講・修了していること
・有料クライアントを5名以上抱えていること
・CPCC(Certified Professional Co-Active Coach)、かつPCC(Professional Certified Coach)の資格を持つコーチをつけていること
さらに、上級コースを修了するには、すべてのカリキュラムを終了し、必要事項を満たした上で、口頭による資格試験に合格する必要があります。
スキルアップを目指すなら
まずはプロにご相談ください
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12.まとめ
コーチングは、相手の考えや感情を否定したり強制したりせず、ありのままの自分を生かしながらより良い人生の実現を目指す手法です。自分自身が受けるのはもちろん、コーチングスキルの習得はキャリアや環境に左右されない武器となります。
いきなり始める勇気がない方は、まずコーチングの体験セッションなどを活用し、コーチングの空気感を味わってみてはいかがでしょうか。そうした経験が、双方から見た自分の特性をつかむきっかけとなり、自身の成長にもつながるかもしれません。
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