社会人になると至る所で耳にする「ロジカルシンキング」という言葉。しかし、その意味をきちんと理解し実践できている方は少ないのではないかと思います。
今回は、ロジカルシンキングの概念やメリット、種類、実践するための鍛え方について解説していきます。仕事をする上できっと役に立つ思考法ですので、ぜひ参考にしてみてください。
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1.ロジカルシンキングとは?
ロジカルシンキングとは、物事の要素を分解して整理し、矛盾のないよう道筋を立てて結論を導き出す思考法のことで、英語の「Logical」と「Thinking」を合わせた言葉です。Logical:ロジカルとは「論理的な、筋の通った」、Thinking:シンキングとは「考え、思考」という意味で、日本語では「論理的思考」と呼ばれています。ロジカルシンキングが身につくと、順序だてて話をすることができるようになるため、自分の言いたい事がなかなか相手に伝わらない、つい感情的に話をしてしまうということが少なくなり、相手によりわかりやすく物事を伝えられるようになります。
1.1.クリティカルシンキングとの違い
クリティカルシンキング(critical thinking)とは「目の前にある情報や自分達が立てている仮説はそもそも正しいものなのか」と、俯瞰した視点であらゆる可能性を探る思考法です。
英語のクリティカル(critical:批評の、批判的な)とシンキング(Thinking:考え、思考)を合わせた言葉で、日本語では「批判的思考」と呼ばれています。
物事の筋道を順序立てて考え一貫性を重視するロジカルシンキングとは異なり、要所要所で適切な疑いを持ちながら結論を導き出すのがクリティカルシンキングです。
1.2.ラテラルシンキングとの違い
ラテラルシンキング(lateral thinking)とは、物事を思考する前提となる既成観念を捨て去り、多面的な視点を持って斬新で独創的な結論を導く思考法です。
英語のラテラル(lateral :側部、側面)とシンキング(Thinking:考え、思考)を合わせた言葉で、日本語では「水平思考」と呼ばれています。
物事を縦掘りし深めていくロジカルシンキングに対して、既成の型にとらわれず思考を横に広げていくことで、新たな可能性や選択肢、アイディアを見出すのがラテラルシンキングです。
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2.ロジカルシンキングで得られるメリット
ロジカルシンキングを身につけると、主に以下に挙げる5つのメリットを得ることができます。
2.1.提案力や説得力が増す
ロジカルシンキングが身につくことで、企画会議やプレゼンテーションの場面で説得力のある提案が行えるようになります。相手が何を求め、それに対してどう答えていくのかが汲み取れるようになるため、自分の意見が通りやすく、さらに相手の納得感を得られるようになります。筋道の通った思考によって矛盾や曖昧さが排除されるため、反対意見にも的確な回答を用意できるはずです。
2.2.課題の深堀ができる
感覚で何となく物事を判断したり、計画性がなくその場しのぎで進めたりといったことがなくなります。全体像を大雑把に捉えるのではなく、それぞれの要素の相関関係や因果関係を踏まえながら思考を深めていくため、課題をより深く掘り下げた的確な分析が行えるようになります。
2.3.生産性が向上する
ロジカルシンキングにより、冷静に見極めることができれば、物事の本質を的確に捉えられるようになります。同じような議論を延々と交わしたり、長々と悩み続けたりして時間を無駄に浪費することがなくなり、本来力を入れるべきポイントに注力できるようになるため、生産性の向上が期待できます。
2.4.円滑なコミュニケーションが取れる
ミーティングや商談の場面でも筋道を立てた論理的な伝え方ができるようになります。同時に、相手の主張を分析してより正確に捉えることができるようにもなるため、円滑なコミュニケーションが取れるようになります。また、コミュニケーションが円滑になることで意思決定から実行までのスピード感が増すことも期待できます。
2.5.問題の発生・原因を特定しやすくなる
ロジカルシンキングの基本のフレームワークは、物事の要素を細分化することから始まります。大きな物事を構成する一つひとつの要素にも目を向けやすくなるため、より的を射た問題発生・原因の特定が可能となります。その過程を経て導き出した結論はより解像度が高いものとなり、問題解決に効果を発揮します。
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3.ロジカルシンキングの弱み
上記のようなメリットがある一方、ロジカルシンキングにもデメリットがあります。
ロジカルシンキングは、すでに存在する前提をもとに展開していく思考法です。そのため、斬新なアイディアの創出や未来の創造など、今ここにないものを構築する際にはうまく対応できない思考法といえます。
ロジカルシンキングを活用する際には、そうした弱みもあらかじめ踏まえておきましょう。
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4.ロジカルシンキングのいろいろ
ロジカルシンキングには、いくつかの理論展開手法や概念があります。今回は以下の5種類について紹介します。
4.1.理論を積み重ねる「演繹法(三段論法)」
演繹(えんえき)法とは、一般的に存在するルールに事象を当てはめ、そこで出る結論がルールに合致したものかを見る手法で、別名「三段論法」とも呼ばれています。
以下は、演繹法をわかりやすく表現した有名な一例です。
ルール:人間はいつか死ぬ
事象:ソクラテスは人間である
結論:ソクラテスはいつか死ぬ
上記のように、すでに存在する前提から結論付ける手法となっています。ただし、あくまでもルールありきの手法のため、ルール自体が存在しなかったり誤っていたりすると論理展開が成立しません。
4.2.共通点から導き出す「帰納法」
帰納法は、複数の実例から共通点を探り信憑性の高い結論を導く手法です。例えば、安眠効果があると言われている商品を利用した家族や友人、SNSの発信者など複数の人物がいずれも「安眠効果が得られた」と感じれば、「その商品を利用すれば質の高い睡眠が得られる」という結論が導かれます。つまり、共通点を証明できる実例をより多く収集することがポイントとなります。
ただし、その実例が少なかったり、誤りがあったりする場合、共通点を探る際やそこから結論を導き出す際に齟齬が生じる場合もあります。
4.3.対立する2つの要素を組み合わせる「弁証法」
弁証法とは、対立もしくは矛盾する2つの事柄や意見について、そのどちらも切り捨てずに済む統合案を導き出す手法です。たとえば、「お菓子を食べたい」という案とそれと対立する「お菓子は糖質が多いので控えるべき」という案がある場合、「糖質カットされているお菓子を食べる」という方法がその解決案として導き出されます。
弁証法は、複数の意見を活用したい場合や順序立てた結論付けがうまくいかない場合などに適しています。
4.4.結論を頂点に置く「ピラミッド構造」
ピラミッド構造とは、話の結論、それを証明する根拠、その根拠に対する根拠を順番に述べていく手法です。頂点に位置する結論に複数の根拠がぶら下がる展開となるため、その形状から「ピラミッド構造」と呼ばれています。帰納法のように、複数の実例から結論を導く手法での活用が効果的です。
4.5.パターンとして落とし込む「フレームワーク思考」
フレームワーク思考はロジカルシンキングの基本的な概念として浸透しているもので、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)やロジックツリーと呼ばれるフレームワークがあります。
MECEは「モレなく・ダブりなく」という意味で、以下のような意味を持つ単語から成り立っています。
M:Mutually(お互いに)
E:Exclusive(重複なく)
C:Collectively(全体的に)
E:Exhaustive(漏れがない)
物事を進める上で複数の要素同士に重複がなく、全体を通して漏れが生じないことを目指すフレームワークです。
ロジックツリーは、MECEで分解された要素をツリー形式に並べることで深掘りを図るものです。横軸に同等レベルの要素を配置し、縦軸はロジックで結びつける形で作成します。要素がわかりやすく可視化できるため、ロジカルシンキングでの活用に最適なフレームワークとされています。
4.6.基礎のない状態から考える「ゼロベース思考」
ゼロベース思考とは、自分の中にある先入観や固定観念を捨てて、まっさらの状態から物事を考えることです。先入観や固定観念は新たな選択肢や創造力を奪い、物事が拡大・発展する可能性を狭めます。ゼロベース思考によって思考の枠を取り払うことで、柔軟さや斬新さのある発想ができるようになります。
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5.ロジカルシンキングの鍛え方
新しい考え方を定着させたり考え方の癖を修正したりするのは簡単なことではありません。ここでは、ロジカルシンキングを鍛え、基礎を定着させるための方法を紹介します。
5.1.日常の会話・業務で意識して使う
ロジカルシンキングの基礎を定着させるためには、ここぞという場面だけでなく日常的にその思考法を取り入れるのが近道です。始めは難しく感じるかもしれませんが、いつも反射的にしている日常会話、何気ない日常業務の中でもロジカルシンキングを意識するようにすると、徐々に習慣化され定着が早くなります。
5.2.スマホアプリで例題を解いてみる
ロジカルシンキングを現場で適切に活用するためには、知識を学ぶだけではなく、その知識を応用する力も必要です。その応用力を鍛えるには、スマホアプリで提供されているロジカルシンキングの練習問題を解くことをおすすめします。スマホアプリなら学びへのハードルも低く、これからロジカルシンキングを身につけようという場合の入り口としても最適です。
5.3.本や動画で体系的に学ぶ
ロジカルシンキングをより体系的に学びたいなら、本や動画から情報を取り入れてみましょう。本であれば時間や場所にとらわれることなく学べます。活字を見続けることに抵抗がある場合や耳から情報を取り入れたい場合は動画もおすすめです。今はYouTubeなどの動画サイトでわかりやすく噛み砕いて解説しているコンテンツもあるので、参考にしてみましょう。
5.4.ディベートやセルフディベートを行う
ディベートとは、ある議題について再生派と反対派に分かれ、相手や第三者を説得できるよう主張を展開するものです。セルフディベートでは、どちらの立場も自分1人で行います。
ディベート、あるいはセルフディベートをすることで賛成と反対の両方の視点を持つことができ、客観性が身に付いて考え方の幅も広がります。
また、自分の立場に反対する意見を想定して主張を構築するため、クリティカルシンキングができるとも言えます。自分の思考の癖を改善したり、自分が持っているバイアスを発見したりすることができます。
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6.ロジカルシンキングを活用する際の注意点
ロジカルシンキングを活用するにあたっては、いくつかの注意すべき点があります。
最悪の場合、人間関係を悪化させてしまうこともあるため、しっかりチェックしておきましょう。
6.1.根拠や結論を明確にする
自分の頭の中ではしっかり整理できているつもりでも、根拠や結論を求められたときにうまく説明できないことがあります。
その結果相手に考えが伝わらず、つい感情的になってしまう人もいます。
ロジカルシンキングを実践する際は、「なぜそのような行動をしているのか」「結果として何が得られるか」といった点を明確にしておくことが重要です。
6.2.相手を理解して尊重する
自身の考えを順序立ててわかりやすく説明できることは、ロジカルシンキングの大きなメリットです。
しかし、理路整然と正論を主張するだけでは、相手に嫌な印象を与えてしまう可能性があります。
まずは、相手の言う事に耳を傾けて、相手の気持ちを理解したり尊重したりすることが大切です。
ロジカルシンキング自体を目的とせず、あくまでも合理性を達成する手段として正しく活用しましょう。
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7.まとめ
ここでは、ロジカルシンキングの概要や身につけることによるメリットなどを解説してきました。
長い社会人生活を送る上で、ロジカルシンキングは身につけておいて損はない思考法です。効率的に業務をこなせるようになるだけでなく、上司や同僚とのスムーズなコミュニケーションにつなげることもできます。ぜひあなたもこのスキルを身につけ、一目置かれるビジネスパーソンへと成長してください。
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