
【ブルーオーシャン戦略とは】戦略を立てるフレームワークを具体例で紹介
企業の事業戦略として「ブルーオーシャン戦略」という用語を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、どのような戦略なのでしょうか。今回は「ブルーオーシャン戦略」の意味と戦略を立てるフレームワークを具体例を用いて説明します。
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1.ブルーオーシャン戦略とは
ブルーオーシャン(青い海)戦略とは、従来存在しなかった新しい領域で事業を展開していく戦略のことです。
新しい市場を創造して事業を展開するため、他社との競合が少なく、大きな利益を獲得することが可能になります。
対立する言葉は、レッドーオーシャン(赤い海)です。
競合企業と熾烈な競争をしながら戦うもので、コモディティ化が進み、継続的に利益を出し続けることが不可能になっている状態です。
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2.ブルーオーシャン戦略が可能になる理由
この世界に、従来誰も創造しなかった、まったく新しい市場というのはなかなか存在しません。
そのような市場は思いつくことは難しく、思いついたとしても消費者が理解をできないためビジネスとして成立しにくいです。
2.1.既存市場を拡張して新しい市場を創造する
ブルーオーシャンは、既存の商品やサービスを改善して、従来とは大きく異なる市場を発見することです。
例えば、アップルのiPhoneが切り開いたスマートフォン市場もまったく新しい市場ではありません。従来の携帯電話市場を拡張したものと考えることができます。
しかし、パーソナルコンピューターで使われていたアプリの考え方を持ち込み、アプリを小さな画面でも快適に扱えるようにマルチタッチディスプレイを導入するというイノベーションを起こしたため、私たちはまったく新しいデバイスであるかのように感じました。
このように、ブルーオーシャン戦略とは、既存の商品やサービスを見直して、従来とは異なる市場をねらう戦略です。
2.2.低コストと差別化を同時に追求するバリューイノベーション
従来の競争戦略の考え方では、低コストと差別化を両立することは不可能だとされていました。低価格で商品を提供しようとすると標準品に近づいていき、個性は薄れていきます。差別化をするために個性を出そうとすると、コストがかかります。
しかし、顧客に提供する価値に着目したバリューイノベーション(価値のイノベーション)の考え方を取り入れると低コストと差別化の両立が可能になります。
例えば、1,200円という低価格でヘアカットサービスを提供してきた「QBハウス」(※2023年4月から1,350円に値上げされると報道されています)。低価格が最大のセールスポイントになっていますが、もうひとつのバリューが「10分という短時間でカットが終わる」ことです。
(※【参考】日本経済新聞)
フルサービスを提供する理髪店の場合は、1時間近く時間がかかることもあり、仕事の合間に利用することは難しいケースもあり、休日でもそれだけの時間を割く必要があります。
しかし、QBハウスの場合は、時間をあまりかけずにカットでき、これが大きな価値となっています。
顧客に提供する価値に注目することで、バリューイノベーションが可能になり、新たな市場=ブルーオーシャンを発見していくというのがブルーオーシャン戦略です。
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3.ブルーオーシャン戦略のフレームワーク
ブルーオーシャン戦略を行うには、戦略キャンバスとアクションマトリクスという2つのフレームワークを使うのが基本です。
3.1.戦略キャンバス
戦略キャンバスとは、自社とライバルを、戦略的な観点で数値化をし、チャート化したものです。
例えば、ある国内飛行機会社が、鉄道に対抗するためにブルーオーシャン戦略をとることを考えます。顧客に提供する価値ごとにそれぞれを数値化し、チャートにしていきます。
ここでは、あくまでも例なので、主観的な値を入れて戦略キャンバスを作成していますが、本来はデータに基づいた正確な評価値を入れます。
(顧客に提供する価値ごとに自社とライバルの評価を数値化したチャートを作成する)
このチャートを見ると、鉄道と飛行機のチャートには乖離部分(空白地帯)があり、ここを補うようなサービスを創出することで、新たな顧客を獲得できる、すなわち新たな市場=ブルーオーシャンを創造できる可能性があります。
3.2.アクションマトリクス
アクションマトリクスとは、次のような4つの操作を行なっていくことです。
(アクションマトリクスでは、戦略キャンバスに対して4つの操作を行う)
「付け加える」「取り除く」は、大胆な改革で、従来なかった価値を追加する、あるいは不要な価値を思い切って取り除いてしまうことです。
また、改善は従来提供していた価値を増やす、または減らすことです。先に作成した戦略キャンバスに対して、この4つの操作をしていきながら、ブルーオーシャンを模索していきます。
3.2.1.取り除く
取り除くは、不要だと思える価値の提供を思い切ってやめてしまうことです。飛行機の場合、機内サービスは過剰になっていると指摘されることもあり、必要としていない乗客もいます。
睡眠や読書、仕事の妨げになると感じている人も中にはいます。そうであれば、思い切って機内サービスを廃止し、必要な人はコールボタンを押すことで、サービスを受けられる方式にします。
3.2.2.減らす
国内航空の場合、フライト時間は最大でも2~3時間程度です。その移動で客室内の必要以上の快適さを必ずしも必要としない人もいます。
そこで、映画の上映や音楽の提供サービス、新聞、雑誌の提供サービスを思い切って減らしてしまいます。
どうしても快適に移動したい人にはビジネスクラスなどの座席を用意して、必要なコストを支払ってもらいます。
3.2.3.追加する
新たな価値を提供します。目的地の空港で降りたら、多くの人が空港バスからレンタカー、タクシーなどを利用します。機内でこのようなアクセスの予約サービスを提供し、チケットも購入できるようにします。
これにより、多くの乗客が時間を無駄にせず、目的地までの移動ができるようになります。
また、提供するサービスを減らし、必要とする乗客にはコストを支払って利用してもらうことで、料金の透明性が高まります。低価格であることよりも、料金の透明性が高く受益者負担が見えやすいサービスの方が公平性が高いと感じる人が増えています。
3.2.4.増やす
利用する飛行機の機材を小型のものに変更し、便数を増やすことで利便性を高めます。便数が増えることで、利用の幅が広がり、万が一乗り遅れても次の便で移動できるという安心感を提供することができます。
3.3.アクションマトリクスで戦略キャンバスを変更する
このような4つのアクションを考えながら、戦略キャンバスのチャートを変更し、それが新しい市場=ブルーオーシャンになっているかどうかを確かめます。
(顧客に提供する価値に4つのアクション操作を行い、新たなチャートがブルーオーシャンになっていることを確認する)
ここで例にしたLCC(Low Cost Carrier)の場合、スピード(移動時間)は飛行機である以上、従来の航空会社と同じですが、価格面や空港から市内へのアクセス、便数などを改善することで、鉄道と飛行機の空白地帯の市場を獲得できそうです。
さらに、価格の透明性を提供することで、合理的な考え方を好む層のリピートも期待できそうです。
LCC各社はそれぞれに戦略が異なっていますが、基本的には既存の航空会社から出発をして、ブルーオーシャン戦略を使って、新たな市場を生み出した例です。
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4.まとめ
ブルーオーシャン戦略とは、従来存在しなかった新しい領域で事業を展開していく戦略のことです。
新しい市場を創造して事業を展開するため、他社との競合が少なく、大きな利益を獲得することが可能になります。
戦略キャンバスとアクションマトリクスという2つのフレームワークを使って、既存商品、既存サービスにバリューイノベーションを起こすことで、新たな市場を模索していきます。
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