【カスタマージャーニーマップとは】作成に必要な要素と方法、活用メリット

【カスタマージャーニーマップとは】作成に必要な要素と方法、活用メリット

ビジネスには顧客視点が必須ですが、顧客の視点といっても、どうやったら客観的、実用的にそれを知ることができるのでしょうか。そうした疑問を解決してくれるのが「カスタマージャーニーマップ」です。

今回は、「カスタマージャーニーマップ」作成に必要な要素と作成方法、活用するメリットを解説します。

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1.カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップとは、顧客(カスタマー)の行動遷移(ジャーニー)を可視化(マップ)したものです。例えば、ある消費者が商品を購入するに至るまでには、その商品を知り、興味を持ち、調べて、販売している場所を探し、購入します。

また、法人ビジネスでも、顧客企業の担当者は、ある領域の製品の調査を行い、資料を請求し、販社主催のセミナーに出席し、営業担当者と面談をして、購入を決めます。このような顧客が購入に至るまでの行動遷移を可視化したものがカスタマージャーニーマップです。

2.カスタマージャーニーマップの例

次の例は、レイルヨーロッパのカスタマージャーニーマップです。レイルヨーロッパは、欧州の鉄道バスのチケットが購入できるフランス国鉄とスイス国鉄が共同出資している公益法人です。消費者が旅行の計画を立て、チケットを購入、予約をし、旅行に出かけ、旅行後に楽しむところまでが、時間軸にそって整理されています。

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(カスタマージャーニーマップのサンプルとしてよく使われるレイルヨーロッパ作成のもの。顧客が旅行をするまでの行動が可視化され整理されている。画像出典はこちら)

3.カスタマージャーニーマップに必要な要素

一般にカスタマージャーニーマップに整理すべきものとして挙げられるのが、次の4つです。

(1)ペルソナ

対象となる顧客の属性を設定していきます。性別、年齢などの基本属性だけでなく、趣味や性格など、特定の誰かを思い浮かべるレベルで設定していきます。そのことにより、各ステージでどのような行動を取るかを想像しやすくなります。

(2)行動とタッチポイント

それぞれのステージで、対象顧客がどのような行動を取り、どのような手法で企業と接触するかを記載していきます。例えば、「スマートフォンアプリから予約」「電話で問い合わせ」などです。

(3)顧客の考え

その行動の時に、顧客がどのように考えるのかを具体的に記載していきます。「時間がないのでスマホで予約しよう」「どのように予約をすればいいのかがわからず不安なので、電話で対話をしながら予約したい」などです。

(4)顧客の感情

それぞれのステージで、顧客がどのような感情を持つかを記載します。「スマホで予約ができて便利だ」「予約がほんとうにできたのかどうか不安だ」などです。

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4.カスタマージャーニーマップが必要な理由

カスタマージャーニーマップが必要になっている理由は、世の中が複雑になったからです。インターネット以前の時代、人がある商品を購入するまでのジャーニーは一本道でした。マスメディア広告で商品の存在を知り、店頭で購入するというシンプルなものでした。

しかし、現在では、マスメディア広告の他にネット広告もあり、さらにはSNSやブログなどの口コミに近いメディアもあります。自分で情報を探して見つけることもあれば、インフルエンサーが紹介する情報に受け身で接することもあります。商品と出会う方法もネット、ECサイト、店頭と多様化しています。

このため、商品購入に至るまでのプロセスが複雑化をしているため、カスタマージャーニーマップを描いて、整理をする必要があるのです。

5.カスタマージャーニーマップを作成するメリット

カスタマージャーニーマップを描くことには、次のようなメリットがあります。

(1)顧客と企業の関わりの全体像が把握できる

顧客と企業のタッチポイントが多様化しているため、現場にいると、自分の担当範囲のことしか理解ができなくなります。顧客が対面や電話などの強いタッチを求めているのに、チャットやメールの弱いタッチの担当者は、その顧客からの要望を理不尽に感じてしまうことがあります。しかし、カスタマージャーニーマップが描けていれば、適切なタッチポイントに誘導することができるようになります。

(2)各部門の共通言語ができる

ひとつの商品を販売するのには、開発、企画、マーケティング、販売、店舗/EC運営、サポートなどさまざまな部門の担当者が関わります。これだけ多くの人が関わると、自分の担当部分しか見えなくなり、どんな業務であっても自分のやりやすい方法に落とし込んで進めがちです。それぞれの部門が自分のやりやすい方法で業務を進めると、連携が取れなくなり、顧客の不満足を生んでしまうことになります。

カスタマージャーニーマップがあると、各部門の担当者にも全体像が見えるようになり、他部門との連携を考えた業務の進め方ができるようになります。

(3)理想と現実のギャップを認識できるようになる

カスタマージャーニーマップには、現在の状況ではなく、理想の状況を描いていきます。そのため、本来やらなければならないことが現状ではできていないということがすぐにわかるようになります。

例えば、商品と出会う最初のステージではメディア広告と自社サイト、店頭のタッチポイントしか用意していないのに、商品購入後に購入者が商品情報をSNSで拡散することを期待しているとしたら、最初のステージでのタッチポイントにSNSを用意しなければならないことがすぐにわかります。

(4)現場レベルの適切なKPIが設定できるようになる

KPI(Key Performance Indicator)の設定は、今ではどの企業でも行われていることですが、適切なKPIの設定は簡単ではありません。「売上20%増」のような大雑把なものはKPIとは呼べず、ただの数値努力目標です。その目標を達成するのにどう行動したらいいのかというところに結びつきません。

一方で、「商品情報リツート数1日1万件」というKPIでは、そもそもその1万件の根拠が曖昧だったりします。KPIというのは本来、適切な数値目標を設定して、それを達成するには何をすればいいのかが現場ですぐにわかるものではなくてはなりません。往々にして、ただの曖昧な努力目標になってしまっています。

カスタマージャーニーマップが描けていると、例えば、消費者が商品情報を知るタッチポイントが、メディア広告、店頭、SNSの3つであるとしたら、闇雲にSNSでのリツート数を上げる目標設定は意味がないことがわかります。その後の資料請求、購入、口コミ拡散などに消費者がどのような遷移(ジャーニー)をたどるのかを見れば、SNSでどの程度商品情報がリツイートされるかが判明します。適切で実現可能なKPIが設定できるようになり、現場が動きやすくなります。

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6.カスタマージャーニーマップの育て方

カスタマージャーニーマップは、一度作って終わりではありません。最初の段階は、各担当者が集まり、ブレーンストーミングのような感覚で、このステージでは、消費者は「たぶんこう考える」「たぶんこう感じるはずだ」という内容でかまいません。

しかし、重要なのはそこからです。「たぶんスマホ購入は便利だと感じてくれる」という項目があったら、それが本当なのかどうかの裏付けが必要になります。つまり、カスタマージャーニーマップをつくることで、顧客に対するアンケートやフィードバックを計画することができるようになります。

その集計結果は、カスタマージャーニーマップに反映をしていきます。中には想像とは大きく異なる事実も出てくるので、そのたびにカスタマージャーニーマップを修正していきます。さらに、内容の裏付け調査を進め、修正するということを繰り返していきます。

カスタマージャーニーマップは、旅程表ではなく地図です。一度、旅程表を決めたら何があってもその通りに行動するというのではなく、地図を見ながら目的地に近くなるようにルートを選んでいくためのものです。各担当者がカスタマージャーニーマップを共有していることで、道に迷わずに目的地に進むためのものです。

7.カスタマージャーニーマップ作成の方法

(1)サンプルやテンプレートを探す

カスタマージャーニーマップを始めるには、まずサンプルやテンプレートを集めます。また、カスタマージャーニーマップを作るツールアプリなども多数登場しています。可視化するためのマップなので、日本語情報にこだわる必要はなく、「custmer journey map example」などで検索をしてみてください。豊富な事例が見つかります。その中から、興味が持てるマップを真似することから始めます。

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(レゴが作成したカスマタージャーニーマップ。旅行に行って帰ってくるまでが円形グラフで表現されている。カスタマージャーニーマップに決まりはなく、オリジナルのマップを作ることが最終的な目標になる。画像出典はこちら)

(2)スタッフでプラクティスを行う

カスタマージャーニーマップを作るスタッフで、まずは簡単な練習を行います。例題としては身近な題材が好ましく、例えば「ディスニーランドに1泊旅行して帰ってくるまでのマップ」などを自分視点で描いてみます。時間的な余裕があれば、全員が一緒に作業をし、余裕がなければ作業は各自で行い、それぞれが同じ例題で作ったマップを発表しあい、違いを分析します。これにより、各自がどのような項目をカスタマージャーニーマップに盛り込むべきなのかがわかってきます。

(3)ブレーンストーミング方式でプロトタイプマップを作る

全員が集まり、自由な意見交換をしながら、業務用のカスタマージャーニーマップを作っていきます。多くの場合、ホワイトボードや壁に大きなマップのフォーマットを描き、そこに項目を付箋で貼っていくというやり方をします。そして、重要度順に並べ直し、プロトタイプのマップを完成させます。

(4)裏付け調査を行い、マップの精度を高めていく

マップの各項目に客観的な裏付けをするために、顧客に対するアンケートやフィードバックを計画し、マップの精度を高めていきます。あとは、この作成、修正、裏付けのサイクルを繰り返していきます。

8.まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客が企業と関わる一連の行動を時間軸に沿って、顧客の思考、感情などをまとめていくものです。顧客が企業に対してどのような行動をとりながら、商品購入などをしているのかが可視化をされ、顧客満足度を高めることができるようになります。

ネットには豊富なサンプル、テンプレート、ツールがあるので、個人レベル、チーム内で作成してみるだけであればすぐにできます。

toC企業にとっても、toB企業にとっても、タッチポイントが多様化、複雑化し、顧客満足度が売上に直結するようになっているため、カスタマージャーニーマップは重要な業務ツールとして考えられるようになっています。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)
テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。