ボトルネックとは? ボトルネックで生じるデメリットと解消する方法

ビジネススキル・マナー

ボトルネックという言葉を聞いてマイナスイメージをいだく方も多いと思いますが、今回はボトルネックの意味や例ボトルネックの原因ボトルネックで生じるデメリットと解消・予防する方法について解説します。

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1.ボトルネックとは

ボトルネック(Bottleneck)とは、工程や業務の一連の流れの中で、停滞や生産性の低下を招いている工程、業務のことです。

Bottleneckとはビンの首のことで、業務の渋滞が起きている場所という意味です。

ビジネス現場では省略をされて「ネック」と呼ばれることもあります。「⚪︎⚪︎工程がネックになっていて出荷量が増えない」などと使われます。

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2.ボトルネックの例

ボトルネックの例は、身近なところにもたくさんあります。

2.1.稟議書の承認がなかなかおりない

業務を進める上で、ボトルネックになりがちなのが稟議書です。

必要な備品の購入、事業の進行などで稟議を通さなければならないのは必要なルールですから当然のこととして、稟議書の承認待ちで業務が進められなくなってしまうということがよくあります。

稟議の内容に問題があり承認が遅れているのならともかく、承認をする管理職の誰かが手元に稟議書を止めておいているために遅れているとなると、チーム全体の士気も低下します。

2.2.メッセージを読まない

同じような問題で、上司がなかなかメッセージを読んでくれないという問題もボトルネックになります。

念のため、上司の了解を得てから進めようと考えている部下は、業務が進められなくなります。仕方なく、電話をかけたり、直接出向いて話をせざるを得なくなったりします。

そうであれば、そもそもメッセージなど使わず、最初から電話や対面でコミュニケーションをとった方がよかったという話になります。

2.3.機材が古くてよく故障する

製造業の工程の中で、古い機材を使用せざるを得ない箇所があり、しばしば故障や不具合のために停止してしまいます。

前工程部分は順調に製品をつくっていますが、この問題の工程の処理能力が下がるために、最終的に出荷できる製品数が少なくなってしまいます。

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3.ボトルネックが生じる原因

ボトルネックが生じる理由は、主に次の3つがあります。

3.1.人手不足による処理能力低下

人手不足により、特定の工程、業務の処理能力が下がってしまっている状態です。

前工程部分は順調ですが、問題の工程がそれを処理しきれません。後ろ工程部分は製品が送られてこないために、遊んでしまっている状態です。

3.2.業務の属人化、ブラックボックス化

業務の専門性が高く、特定の人にしか処理ができない状況になっている場合です。

周囲からは、その業務の生産性や効率が評価できないため、見ているしかありません。

また、その担当者が出張に出る、休暇を取るなどすると、代替が効かないため、全体の業務効率が大きく下がってしまいます。

3.3.アナログ業務が多い

アナログ業務はボトルネックの要因になりがちです。

例えば、稟議書が紙である場合と電子である場合、生産性が大きく違ってきます。なぜなら、アナログツールは社に戻らないと処理ができないからです。

担当者が出張や外出などで社を離れている間は処理が進まないため、ボトルネックになってしまうことがあります。デジタル業務であれば、外出先でも処理が可能であるため、このようなボトルネックが生じにくくなります。

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4.ボトルネックにより生じる問題

4.1.生産性が低下する

ボトルネック工程があると、他の工程の生産能力が高くても、最終成果物はボトルネック工程の制約を受けてしまいます。

例えば、ある製造工程が3つあり、工程1と工程3は1日5つの処理能力があるのに、工程2が3つの処理能力しかないと、最終成果物は1日3つになってしまいます。

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(典型的なボトルネックの例。工程2が3の処理能力しかないために、工程1では2の余剰成果物が生まれる。工程3では5の処理能力があるのに3の生産しかできない。全体として、3の成果物しか生まれないという状態になっている)

4.2.従業員の時間やコストを浪費する

工程1の従業員は、生産した製品がなぜ次の工程に回らないのか不思議に思い、連絡を取ったり、確認作業をしたりすることになります。

また、生産調整を議論する必要があるかもしれません。

一方、工程3の従業員は、なぜ必要な量の製品が回ってこないのかを不思議に思い、連絡を取ったり、確認作業をしたりすることになります。さらに、やるべきことがやれないため、業務中であるのに仕事がなくなって時間を無駄にしてしまうことになります。

ボトルネックが生じると、多くの従業員が確認作業に時間を取られたり、従業員の時間を無駄にしたりすることになり、時間とコストを浪費することになります。

4.3.精神的な余裕が減る

ボトルネックがあると、生産能力に見合った生産ができないために、あらゆる工程が目標達成にやきもきすることになります。

そのため、従業員の精神的な余裕が失われていきます。従業員の健康面にも悪影響を与えますし、ミスも誘発されやすくなります。

4.4.誤った改善投資

ボトルネックの存在に気がつかず、目標達成ができないことだけを問題にすると、往々にして最終工程に問題があると思い込みがちです。そして、最終工程の人員や機材を増やすという無駄な投資につながりがちです。

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5.ボトルネックを解消する手法

ボトルネックを解消するには、ボトルネック工程を強化すればいいという単純なものではありません。

ボトルネック工程が生まれるには、その原因があり、それを取り除けばいいのですが、現実はそう単純ではありません。

例えば、人手が足りないということが原因であったら、人を補充すればいいと考えがちですが、人手が足りないのは他の工程も同じです。ボトルネック工程だけに人材配置をすれば、他の工程から当然人材補充の要望が出てきてしまいます。すると、他の工程とボトルネック工程のギャップはわずかしか埋まらず、問題は解消できません。

製造工程は工程の流れが標準化されているので、比較的ボトルネック工程を発見しやすいですが、デスクワーク業務になると、業務の流れが複雑であり、多層的であるため、ボトルネック工程の発見すら難しいことがあります。そこで、よく使われるフレームワークがTOC理論です。

5.1.TOC理論とは

TOC理論とはTheory Of Constraints(制約条件の理論)というもので、ボトルネックを生じさせている制約条件を解消することで、生産性を向上させるというフレームワークです。

このTOC理論が単なる改善と異なるのは、制約条件をネガティブにとらえず、「制約条件の解消を行うことで、生産性は向上できる」というポジティブなとらえ方をすることです。そのため、制約条件のことをレバレッジポイントと呼ぶことがあります。

5.2.TOC理論を実践するための5つのステップ

TOC理論を活用して、ボトルネックを解消するには、次の5つのステップを実行し、繰り返していくことになります。

5.2.1.制約条件の抽出

まずは制約条件の特定が必要です。各工程、業務のパフォーマンスを可視化して、どの工程に問題があるかを特定し、そのボトルネックになっている要因を確定します。

例えば、熟練工の不足、設備の老朽化、効率の悪い手順などです。

5.2.2.制約条件の活用

TOC理論では、制約条件を解消するという考え方ではなく、制約条件を活用すると考えます。制約条件を解消することで、全体の工程の生産性があがるからです。制約条件が熟練工不足であるなら、他のプロセスから熟練工を異動させるなどの対応策を立案します。

5.2.3.制約条件への従属

TOC理論を実践する上で、最も難しいステップと言われるのが、この従属です。従属とは、全体すべてが制約条件の活用(解消)を最優先しなければならないということです。

例えば、制約条件が熟練工不足であるなら、他の工程から熟練工を異動させなければなりませんが、他の工程からは「それではウチの生産効率が下がる」という不満が出るかもしれません。

その理由は、工程ごとに目標達成度が設定されていて、熟練工が減ると、目標達成ができなくなるというものかもしれません。このような場合、制約条件の活用を最優先して、各工程の目標達成評価の基準を変える必要があります。

現実の業務工程は複雑で、全体を見渡した改善をすることは難しく、TOC理論によるボトルネック解消で、最も難易度の高いステップになります。実際に、このステップで挫折をしてしまうことが少なくありません。

5.2.4.制約条件の解消

状況が整ったところで、制約条件を解消する施策を実行します。これでボトルネックが解消され、全体の生産性が向上することになります。

5.2.5.新たな制約条件の抽出

TOC理論で、もうひとつの重要なポイントが、この改善プロセスを回し続けるということです。なぜなら、ひとつの制約条件が解消されると、今度はまったく別の場所に制約条件が生まれることになるからです。

新たな制約条件を発見し、その活用に従属をし、解消をしていく。これを繰り返すことで、工程全体の生産性があがるだけでなく、全体の工程プロセスが洗練されていきます。これがTOC理論の目指しているものです。

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6.ボトルネックを予防するには

ボトルネックは生じないに越したことはありません。そのためには、あらかじめ予防をしておき、ボトルネックが生じる兆候を早めに察知をして対応をするということが必要になります。初期段階であれば、その工程内の工夫で解消することが可能なことも多いからです。

ボトルネックを予防するには、工程のすべてを可視化しておくことが何よりも大切です。また、その可視化した素材を全員で共有をしていくことも重要です。誰かが問題点を発見することもありますし、議論をする時にも前提となる素材があるために、正確で素早い対応が可能になります。

6.1.工程表を作成する

工程表を作成し、工程を可視化しておくことが何より重要です。ガントチャートなどのチャート形式にし、生産量や工程間の関係なども記述しておきます。

6.2.ODSCの定義を行なっておく

ODSCとは、目的(Objectives)、成果物(Deliverables)、Success Criteria(成功基準)の3つのことです。ごく常識的な工程の目的と目標、判断基準を明確にすることです。

この3つを言語化、数値化、可視化をして全員で共有しておくというのが何より大切なことになります。改善の議論をする時に、「目標に沿っていない」「成果物の質や量に寄与しない」「成功基準達成に寄与しない」結論を出さずに済むようになるからです。

6.3.スキルマップを作成する

業務や工程に関わるスタッフが持っているスキルマップをつくり、どのような人材がいるかを可視化しておくことも大切です。ボトルネックは、多くの場合、人員不足、熟練人材不足で起こりますから、人材を移動するだけで解決に結びつくことがあります。

そのためには、社内にはどのような人材がいて、どのようなスキルを持っているかを可視化しておくことが大切です。

また、スキルマップから人員補充計画を立てることもでき、採用戦略にも寄与することができます。

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7.まとめ

ボトルネックとは、工程や業務の一連の流れの中で、停滞や生産性の低下を招いている工程、業務のことです。ボトルネックは、さまざまな負の影響を与え、生産性を低下させます。

しかし、TOC理論ではボトルネックを生じさせている制約条件を取り除くことで生産性があがるという考え方のもと、5つのステップでボトルネックを解消し、生産性を連続的に向上させていく手法を提案しています。

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原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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