ボーナス(賞与)から所得税はどれくらい引かれる?税金の仕組みを知ろう

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会社員にとって最も嬉しいもののひとつがボーナス。月給とは別にまとまったお金が受け取れるのは嬉しいですし、働くやる気に繋がりますよね。

そんなボーナスですが、なんだかよくわからないものが色々と引かれた結果、予想より少なくなってしまい、残念だと思ったことはありませんか?

今回は、ボーナスからなにが引かれているのか、なぜ引かれているのかを解説していきます。

【関連記事】「ボーナス・賞与とは?もらえる時期・平均額・手取りの計算方法を紹介」

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1.ボーナス(賞与)とは?

1.1 ボーナスは年収に含む?

ボーナスとは、月給とは別に支給される賃金のことで、賞与とも言います。

賃貸契約時や転職時などに年収を聞かれる際は、ボーナスも含めた収入を言うことが一般的です。会社員の場合、年二回、夏と冬に支給されることが多いです。

【関連記事】「年収はボーナス含む?手取り・年俸との違いや金額の計算方法を解説!」

【関連記事】「夏・冬のボーナス支給はいつ? 会社員と公務員の支給日・平均額、引かれる額の計算方法」


1.2 ボーナスは絶対にもらえるの?

実はボーナスは絶対にもらえるわけではありません

ボーナスは月給とは違い、労働基準法による定めがないからです。そのため、企業側がボーナスの支給額や時期を決めることができます。後ほど詳しく述べますが、令和5年年末においてボーナスが出ない企業は約3割ありました。

また、支給額も企業側に決定権があります。月給○カ月分という決め方、個人の業績や頑張りを重視して評価する決め方、企業の決算を重視する決め方、またこれらを組み合わせた決め方などがあります。そのため、会社が変われば支給額が変わることはもちろん、同じ会社の中でもそれぞれの人の支給額が大きく違うということがあります。

新卒などで4月に入社した場合、最初の夏のボーナスは出ない、もしくは寸志程度ということも多いです。

【関連記事】「ボーナスがない会社は何割?賞与なしの会社で働くメリットや注意点」

【関連記事】「新卒のボーナス平均額は?一年目の夏・冬はいくらもらえる?」


1.3 平均支給額と実際に支給されている割合

次に実際に支給されている平均支給額と、支給されている事業所の割合を見ていきましょう。

厚生労働省が発表している令和6年2月分の毎月勤労統計調査によると、事業所規模5人以上の支給事業所における令和5年の年末賞与は、労働者一人平均39万5647円、支給事業所数割合は69.0%でした。業種別に分けた場合のそれぞれの項目が高い業種と低い業種をランキングにしてみました。

支給事業所における労働者一人平均賞与額

高い低い
電気・ガス業 80万3194円 飲食・サービス業等 6万9234円
情報通信業 71万3,851円 生活関連サービス等 17万269円
金融業、保険業 64万5024円 その他のサービス業 23万9074円
学術研究業 63万490円 医療、福祉 29万826円

支給事業所数割合

高い低い
鉱業、採石業等 100.0% 飲食・サービス業等 45.2%
複合サービス事業 96.0% 生活関連サービス等 49.5%
電気・ガス業 92.0% 運輸業、郵便業 65.8%
金融業、保険業 91.3% 情報通信業 69.3%

【出典】厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果速報:《特別集計》令和5年年末賞与(一人平均)」

業種が変わると、平均支給額と支給事業者数割合も大きく変わることが分かります。

自身のボーナスに不満がある場合は他業種への転職も考えてみてもいいかもしれません。

厚生労働省のホームページではもっと様々な業種や項目が載っていますので、参考にしてみてください。

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【関連記事】「ボーナスの平均額は?年齢・業種・規模別に紹介!手取り額の計算方法も」

【関連記事】「20代のボーナス平均額は?手取り額から大企業の支給額まで徹底解説」

【関連記事】「30代のボーナス平均額は?男女別・業種別など項目ごとに詳しく紹介」

2. ボーナスからはなにが引かれるの?

ボーナスの支給額が30万円だった場合、そのまま30万円を受け取れるのでしょうか?

結論からいうと、そのまま受け取れるわけではありません。なにが引かれるかを見ていきましょう。

2.1 ボーナスから引かれるもの

ボーナスからも月給と同じように税金と社会保険料が引かれます。税金としては所得税が引かれ、住民税は引かれません。

しかし、ボーナスは年収に含まれています。住民税は前年の年収から計算するので、次の年の税金で払っているともいえます。

退職して収入がない場合でも、住民税は前年の年収で計算するので注意が必要です。

2.2 なぜボーナスから社会保険料が引かれるの?

なぜボーナスからも社会保険料が引かれるのでしょうか?

月給からも引かれている社会保険料がボーナスからも引かれるのは、二重に払っている気がして、なんだか納得できない気持ちになる人も多いのではないでしょうか。

実はこれには理由があります。

ボーナスに社会保険料がかからないとなると、月給を低く設定してその分ボーナスを高く設定すれば、社員に支給する年収は同じでも社会保険料を低くすることが出来てしまいます。

実際に、1994年から2003年まではボーナスから引かれる社会保険料は「特別保険料」という名目で、一律1%で労使折半(企業と従業員が折半で納付すること)でした。この制度では、いわゆる保険料逃れをする企業が多かったため、2003年に現在の制度に変わりました。

受け取るボーナスの手取りは減ってしまいましたが、公平に社会保険料を負担するための制度だといえます。

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【関連記事】「中小企業のボーナス平均額は?支給なしの割合や大企業との差も解説」

【関連記事】「育休中でもボーナスはもらえる?減額されるケースや控除についても解説」

3. 社会保険料が引かれる仕組みを解説

ボーナスから引かれるものは所得税と社会保険料および雇用保険料です。40歳以上の人はそれに加え介護保険料も徴収されます。社会保険料とは、健康保険料、厚生年金保険料です。

社会保険料・雇用保険料がそれぞれ、どのような計算式かを見ていきます。

【健康保険料】
健康保険料=標準賞与額×健康保険料率×1/2
・標準賞与額とは、賞与の総額から1,000円未満を切り捨てた額です。
・健康保険料は加入している健康保険組合(協会)によって異なります。
・健康保険料は労使折半で納付するため、1/2をかけます。

【厚生年金保険料】
厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険料率(18.3%)×1/2
・厚生年金保険料率は、令和6年現在、18.3%で固定されています。
・厚生年金保険料は労使折半で納付するため、1/2をかけます。

【出典】日本年金機構「厚生年金保険料制度」

【雇用保険料】
雇用保険料=賞与総支給額×雇用保険料(0.6%)
・令和6年度の従業員が負担する雇用保険料は0.6%です。
・農林水産・清酒製造の事業及び、建設の事業の従業員が負担する雇用保険料は0.7%です。
・雇用保険料を計算する際は標準賞与額ではなく、賞与の総支給額を使用します。

【出典】厚生労働省「雇用保険料について」

【介護保険料】
介護保険料=標準賞与額×介護保険料率×1/2
・介護保険料は40歳以上になると徴収されます。
・介護保険料も健康保険料と同様に、加入している健康保険組合(協会)によって異なります。
・介護保険料は労使折半で納付するため、1/2をかけます。

以上が賞与から引かれる社会保険料の計算式です。

次章では所得税について解説します。

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【関連記事】「社会保険とは?公的医療保険と公的年金について詳しく解説!【社会人のためのお金の勉強】」

【関連記事】「給料から引かれる税金とは?所得税と住民税について詳しく解説!【社会人のためのお金の勉強】」

4.ボーナスからいくら所得税が引かれるか計算してみよう

4.1 ボーナスの所得税率

ボーナスの所得税は次の計算式で算出します。

【所得税】
所得税=(賞与総支給額-社会保険料)×所得税率

【出典】国税庁「賞与に対する源泉徴収」

つまり、ボーナスの額面から、前章で解説した社会保険料すべてを引いた数字に所得税率をかけると所得税が分かります

この所得税率は、自身の前月給与額(社会保険料控除後)と扶養している人数に応じて決まります。

例えば、社会保険料を引いたあとの前月の給与が24万円だった場合の所得税率は、扶養している人数が0人だと4.084%、扶養している人数が1人だと2.042%と2倍の差があります。

社会保険料を引いた後の前月の給与が26万円だった場合の所得税率は、扶養人数が0人だと所得税率は6.126%、1人だと4.084%、2人だと2.042%です。

このように所得税率は細かく分けられています。給与が高ければ税率が上がり、扶養人数が多ければ税率が下がります。

【出典】国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 5 年分)」


4.2 実際にいくら引かれるか

それではボーナスの社会保険料等と所得税がいくら引かれるのか実際に計算してみましょう。なお、賞与に定額減税が適用される場合の所得税はこの限りではありません。

39歳以下で東京在住、加入している健康保険は全国健康保険協会(協会けんぽ)だとします。その場合、令和6年の健康保険料率は9.98%です。

《例1:ボーナスが30万円、社会保険料を引いたあとの前月の給与は24万円だった場合》

【社会保険料の計算】

① 【健康保険料】標準賞与額×健康保険料率×1/2
30万円×0.0998×1/2=1万4970円

② 【厚生年金保険料】標準賞与額×厚生年金保険料率(18.3%)×1/2
30万円×0.183×1/2=2万7450円
       
③ 【雇用保険料】賞与総支給額×雇用保険料率(0.6%)
30万円×0.006=1800円

① +②+③が引かれる社会保険料等です。この場合、まず44,220円が30万円から引かれます。

次に所得税です。所得税は1円未満の小数点以下の端数は切り捨てます。

【所得税の計算】

【所得税】(賞与総支給額-社会保険料)×所得税率

扶養人数0人  (30万円-4万4220円)×0.04084=1万446円
扶養人数1人  (30万円-4万4220円)×0.02042=5223円

この所得税と社会保険料等を足したものを30万円から差し引けばボーナスの手取りが出ます。

【手取り】

扶養人数0人の場合 24万5334円
扶養人数1人の場合 25万557円

《例2:ボーナスが50万円、社会保険料を引いたあとの前月の給与は26万円だった場合》

【社会保険料の計算】

① 【健康保険料】標準賞与額×健康保険料率×1/2
50万円×0.0998×1/2=2万4950円

② 【厚生年金保険料】標準賞与額×厚生年金保険料率(18.3%)×1/2
50万円×0.183×1/2=4万5750円
       
③ 【雇用保険料】賞与総支給額×雇用保険料率(0.6%)
50万円×0.006=3000円

この場合、まず7万3700円が50万円から引かれます。

次に所得税です。

【所得税の計算】

扶養人数0人   (50万円-7万4700円)×0.06126=2万6053円
扶養人数1人   (50万円-7万4700円)×0.04084=1万7369円
扶養人数2人   (50万円-7万4700円)×0.02042=8684円

となります。50万円からこの所得税と社会保険料等を引けばボーナスの手取りが出ます。

【手取り】

扶養人数0人の場合 39万9247円
扶養人数1人の場合 40万7931円
扶養人数2人の場合 41万6616円


《例3:ボーナスが100万円、社会保険料を引いたあとの前月の給与は40万円だった場合》

50歳で東京在住、加入している健康保険は全国健康保険協会(協会けんぽ)で扶養人数は3人。ボーナスが100万円だった場合はどうなるでしょうか。

【社会保険料の計算】

① 【健康保険料(介護保険料込み)】標準賞与額×健康保険料率×1/2
100万円×0.1158×1/2 = 5万7900円

② 【厚生年金保険料】標準賞与額×厚生年金保険料率(18.3%)×1/2
100万円×0.183×1/2=9万1500円

③ 【雇用保険料】賞与総支給額×雇用保険料率(0.6%)
100万円×0.006=6000円

この場合、まず15万5400円が100万円から引かれます。

次に所得税です。扶養人数は3人です。

【所得税の計算】

(100万円-15万5400円)×0.26546=22万4207円

となります。100万円からこの所得税と社会保険料等を引けばボーナスの手取りが出ます。

【手取り】

62万393円

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【関連記事】「ボーナスの手取り額を計算する方法は?引かれる税金と保険料を解説!」

【関連記事】「手取りとは? 年々減っている!? 計算方法や年代別平均額を紹介!」

5. 引かれた税金は年末に取り戻すことができる可能性も。


ボーナスに限りませんが、年末調整でその年に納めた所得税の一部が返ってくる場合があります。その年に払った生命保険や個人年金の保険料、住宅ローンなどについて申告すると所得税の一部が還付されることがあります。これらは所得控除・税額控除になりますが、月々の源泉徴収には反映されていないためです。忘れずにしっかりと申告しましょう。

ボーナスの場合、賞与支給日の前月の給与が残業などでいつもよりも多かった場合、ボーナスの所得税率が本来よりも高くなるので、年末調整の際に超過分が還付されます。

逆に、ボーナスの支給額が多く給与総額に占めるボーナスの割合が大きい場合、ボーナスの所得税率が本来よりも低くなっているので、年末調整で還付金が減ったり、追加徴収が行われたりする場合もあります。

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6. まとめ


ボーナスも給与と同様に税金と社会保険料および雇用保険料が引かれます。また、ボーナスの支給額や支給時期は企業側が決められるので会社によって大きく異なります。ボーナスの所得税率は収入が上がると税率が高くなり、扶養人数が増えると税率が低くなります。
給与からなにがどれくらい引かれているかを知っておくことは重要です。介護保険料など、40歳以上のタイミングで新しくかかり始める社会保険料もあるので知っておきましょう。

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監修:西原憲一

株式会社UFPF代表取締役、西原会計事務所代表。税理士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。大阪府で生まれる。大阪市立大学商学部卒業、2000年に独立。税務に関するコンサルティング、相続・事業承継設計、資産運用などお金にまつわるアドバイスを、多数の顧客への実務として日々行う。金融機関などのさまざまな金融セミナーの講師としても活躍。

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