ボーナスからはさまざまな税金や保険料が控除されます。そのため、「実際に受け取った手取りの金額は、思った以上に少なかった」と感じる方も多いのではないでしょうか。本記事ではボーナスから引かれる税金や保険料の計算方法について解説します。また、ケース別の手取り額シミュレーションも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
【関連記事】「ボーナス・賞与とは?もらえる時期・平均額・手取りの計算方法を紹介」
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1 ボーナスの手取り額が思っていた額と違う?
夏と冬に支給されるボーナスは、会社員にとって働く楽しみの1つではないでしょうか。しかし、「給与の〇ヶ月分」という支給額に喜んだのも束の間、口座に振り込まれた額は予想よりも少なく、がっかりしてしまったという方がいるかもしれません。
実際、ボーナスの金額はどのように決められているのでしょうか。
1.1 そもそもボーナスとは?
ボーナスとは、毎月の固定給以外に支給される賃金のことで、一般的には夏と冬に支給されます。しかし、月々の給与のように労働基準法による定めはないため、必ず支給しなければならないものではありません。
実際、令和4年度に夏期ボーナスが支給されたのは全業種の66.8%、冬期ボーナスが支給されたのは70.5%でした。
このように、ボーナスを支給している企業は多いものの、支給がない企業も3割程度存在します。もしも、ボーナスがないことに不満を感じているのであれば、ボーナス制度がしっかりしている企業への転職を考えてもよいかもしれません。
【出典】厚生労働省「毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査):結果の概要」
1.2 ボーナスの種類
ボーナスには下記の通り大きく分けて3つの種類があります。
・基本給連動型賞与
給与の基本給に対して、支給月数をかけた金額を支給するのが基本給連動型賞与です。支給月数は企業が独自に決定できます。例えば基本給が200,000円、支給月数が2カ月分であれば、ボーナス額は「200,000円×2ヵ月分=400,000円」となります。
・業績連動型賞与
会社や個人の業績に応じた金額を支給するのが業績連動型賞与です。基本給連動型賞与とは異なり、業績によって支給額は毎回変化します。また、基本給が同じでも、部署の業績や個人の貢献度によって支給額の差が大きくなるのが特徴です。
・決算賞与
一般的に、会社の決算期の結果に基づいて支給される賞与です。決算の状況によっては支給されなかったり、支給額が大きく変化したりすることも多い賞与です。
1.3 額面と手取り額の違い
額面とは、会社から支払われる支給総額のことです。一方、手取り額とは額面から税金や保険料が引かれた後の、実際に受け取る金額のことを指します。
給与と同様にボーナスからもさまざまな税金や保険料が引かれるため、通常は額面よりも手取り額の方が少なくなります。
【関連記事】「夏・冬のボーナスの額はいつ決まる?査定期間や査定の仕組みを解説」
2 ボーナスにかかる税金・保険料と計算方法
ここでは、ボーナスの手取り額を知るために、ボーナスにかかる税金と保険料について説明します。具体的な計算方法も紹介しますので、参考にしてください。
2.1 所得税
ボーナスにかかる所得税を計算する手順は以下の通りです。
①前月の給与-(社会保険料+厚生年金保険料)=基準額
②基準額と扶養人数を使用し、国税庁の「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表」から所得税率を確認
③(賞与-社会保険料)×所得税率=所得税
ボーナスにかかる所得税は、前月の給与や扶養人数により大きく変わるのが特徴です。
2.2 健康保険料
健康保険料は以下の計算で算出されます。
標準賞与額×健康保険料率=健康保険料
標準賞与額とは、賞与の総額から1,000円未満を切り捨てた額です。健康保険料率は加入している保険組合によって異なります。
また、健康保険料は企業と従業員が折半で納付します。そのため、実際の金額は計算で算出した金額の半分ということになります。
2.3 厚生年金保険料
厚生年金保険料は以下の計算で算出されます。
標準賞与額×厚生年金保険料率(18.3%)=厚生年金保険料
厚生年金保険料率は、現在18.3%で固定されています。また、こちらも健康保険料と同様に、企業と従業員の折半となります。
2.4 雇用保険料
雇用保険料は以下の計算で算出されます。
賞与総支給額×雇用保険料率(0.6%)=雇用保険料
従業員が負担する令和5年度の雇用保険料率は0.6%です。また、雇用保険料を計算する際は、1,000円未満を切り捨てる標準賞与額ではなく、賞与の総支給額を使用することには注意が必要です。
3 ボーナスに社会保険料がかからないケースもある
通常ボーナスには、上記の通り社会保険料がかかりますが、一方でかからないケースも存在します。
3.1 支給された月の末日までに退職した場合
例えば、12月10日にボーナスが支給され15日に退職した場合、ボーナスに社会保険料はかかりません。なぜなら、月末に在籍していない場合、その月は社会保険料がかからないという決まりがあるからです。
転職を検討している方は、退職日について事前にしっかりと確認しておきましょう。
3.2 産休・育休中に支給された場合
ボーナス支給月の末日を含み、連続した1ヵ月超の産前産後休業・育児休業を取得している場合、社会保険料は免除されます。
例えば、12月10日にボーナスが支給され、12月15日から1ヶ月以上の産休・育休を取得する場合、ボーナスには社会保険がかからないことになります。
【関連記事】「退職予定でもボーナスはもらえる?損しないタイミングと注意点を解説」
4 ケース別にボーナスの手取り額をシミュレーション
ここでは、実際のボーナス手取り額はいくらになるのか、年齢・支給額別のシミュレーションを一覧で紹介します。
【出典】全国健康保険協会「都道府県毎の保険料率」
【出典】日本年金機構「厚生年金保険料額表」
【出典】厚生労働省「令和5年度の雇用保険料率について」
【出典】国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 5 年分)」
4.1 20代会社員:ボーナス支給額30万円の場合
以下条件の20代会社員について、ボーナスの手取り額のシミュレーションを行いました。
・20代会社員
・ボーナス支給額:30万円
・社会保険料控除後の前月給与:24万円
・独身
・協会けんぽ加入(東京都)
健康保険料 | 300,000×10%×1/2=15,000 |
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厚生年金保険料 | 300,000×18.3%×1/2=27,450 |
雇用保険料 | 300,000×0.6%=1,800 |
所得税 | (300,000-15,000-27,450-1,800)×4.084%=10,444 |
控除額合計 | 15,000+27,450+1,800+10,444=54,694 |
手取り額 | 300,000-54,694=245,306 |
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4.2 30代会社員:ボーナス支給額50万円の場合
以下条件の30代会社員について、ボーナスの手取り額のシミュレーションを行いました。
・30代会社員
・ボーナス支給額:50万円
・社会保険料控除後の前月給与:34万円
・独身
・協会けんぽ加入(東京都)
健康保険料 | 500,000×10%×1/2=25,000 |
---|---|
厚生年金保険料 | 500,000×18.3%×1/2=45,750 |
雇用保険料 | 500,000×0.6%=3,000 |
所得税 | (500,000-25,000-45,750-3,000)×10.210%=43,520 |
控除額合計 | 25,000+45,750+3,000+43,520=117,270 |
手取り額 | 500,000-117,270=382,730 |
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4.3 40代会社員:ボーナス支給額80万円の場合
以下条件の40代会社員について、ボーナスの手取り額のシミュレーションを行いました。
・40代会社員
・ボーナス支給額:80万円
・社会保険料控除後の前月給与:54万円
・扶養親族1人
・協会けんぽ加入(東京都)
健康保険料 | 800,000×10%×1/2=40,000 |
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厚生年金保険料 | 800,000×18.3%×1/2=73,200 |
雇用保険料 | 800,000×0.6%=4,800 |
所得税 | (800,000-40,000-73,200-4,800)×18.378%=125,337 |
控除額合計 | 40,000+73,200+4,800+125,337=243,337 |
手取り額 | 800,000-243,337=556,663 |
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4.4 50代会社員:ボーナス支給額150万円の場合
以下条件の50代会社員について、ボーナスの手取り額のシミュレーションを行いました。
・50代会社員
・ボーナス支給額:150万円
・社会保険料控除後の前月給与:84万円
・扶養親族2人
・協会けんぽ加入(東京都)
健康保険料 | 1,500,000×10%×1/2=75,000 |
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厚生年金保険料 | 1,500,000×18.3%×1/2=137,250 |
雇用保険料 | 1,500,000×0.6%=9,000 |
所得税 | (1,500,000-75,000-137,250-9,000)×26.546%=339,456 |
控除額合計 | 75,000+137,250+9,000+339,456=560,706 |
手取り額 | 1,500,000-560,706=939,294 |
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5 ボーナスの手取りの平均はどのくらい?
自分のボーナスの手取り額をシミュレーションできたところで、その金額が世間的に見て多いのか少ないのかわからない、という方もいるかもしれません。そこでここでは、厚生労働省の調査を参考に、ボーナスの手取り額の平均値について考察していきます。
【出典】厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年9月分結果速報等」
【出典】厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果速報等」
5.1 全体のボーナス手取り平均は31万円前後
令和5年度の夏のボーナス(夏季賞与)では、賞与支給事業所における労働者一人あたりの平均支給額は397,129円でした。また、冬のボーナス(年末賞与)では、平均支給額は395,647円でした。
手取り額は支給総額の8割程度であることが多いので、実際に従業員たちが受け取った金額の平均は1度のボーナスで31万円前後であると考えられます。年間で考えると、60万円以上受け取っている計算になります。
5.2 産業や企業規模によっても大きく異なる
厚生労働省の調査結果には、産業別・企業規模(労働者数)別でも平均値が出ています。これを見ると、それぞれの種別でボーナスの支給額にも大きな差があることがわかります。
例えば、令和5年度の夏のボーナスの場合、電気・ガス業や情報通信業では平均が70万円を超えているのに対し、飲食サービス業等では6万円程度にとどまっています。
また、企業規模が大きくなるほどボーナスの額も多くなる傾向があり、同じく令和5年度の夏のボーナスでは、5~29人の企業の場合は平均で27万円程度、500人以上の場合は65万円以上の平均値が出ています。
ボーナス額は年収にも大きく影響しますので、転職などを考えている方はこういった点も頭に入れておくことをおすすめします。
【関連記事】「手取りとは?額面との違いや計算方法、年代別の平均額を紹介」
6 手取り額が増える?税金負担が軽くなる所得控除とは
税金や社会保険料を計算する際に、特定の条件を満たす個人や法人が一定額を差し引いて計算することができる控除を「所得控除」といいます。
税金のベースとなる課税所得額を減少させることで、納税者は実際の所得よりも少ない金額に対して税金を支払うことになり、結果として税負担の軽減と手取り額の増加に繋がります。ただし、所得控除は年末調整での申告、または確定申告が必要ですので、忘れずに行いましょう。
現在認められている所得控除は以下の通りです。
- 雑損控除
- 医療費控除
- セルフメディケーション税制
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 寡婦・寡夫控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- ひとり親控除
- 扶養控除
- 基礎控除
【関連記事】「年収とは?手取り・所得との違いや確認方法を紹介!」
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7 まとめ
給与と同様にボーナスからも税金や保険料が引かれるため、実際の手取り額は額面より少なくなります。「毎回いくらくらい引かれているのか」「手取り額はだいたいいくらになるのか」など、ボーナスの税金や保険料について知りたい方は、おおまかな計算方法を知っておくと良いでしょう。
また、手取り額を少しでも増やすためには、所得控除の申請を忘れずに行うことが大切です。
もしも、ボーナスの手取り額に不満を感じる場合は、思い切って転職をするというのも一つの選択肢です。キャリアを生かせば、思わぬ収入アップが見込めるかもしれません。自身の市場価値を知りたい場合は、マイナビエージェントのキャリアアドバイザーにご相談ください。
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