近年はメールやチャットでのやり取りが増えていますが、感情や情報を丁寧に伝えたいときは手紙が最適です。手紙は相手に誠実さを示せるというメリットがある一方で、書き方を間違えるとかえって悪い印象を与えてしまう可能性もあります。そこで、本記事では例文を挙げながら、正しい手紙の書き方を詳しく解説します。
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1 正しい手紙の書き方とは
手紙は送る相手に気遣いと丁寧さを伝えられるツールです。メールやチャットとは異なり届くまでに時間を要しますが、その分気持ちを込めることができます。
一方で、手紙には守るべき多くのマナーがあり、間違った書き方をすると相手に失礼な印象を与えかねません。そのため、特にビジネスの相手や目上の方に手紙を出す機会がある方は、マナーを守った正しい手紙の書き方を覚えておく必要があります。
1.1 「縦書き」と「横書き」を使い分ける
一般的に、縦書きの手紙はフォーマルな印象を与えます。そのため、ビジネスシーンで出す手紙や目上の方に宛てた手紙は、縦書きで書くのがマナーです。また、謝罪文やお礼状といった手紙も縦書きで記します。
一方、横書きはやわらかくカジュアルな印象なので、親しい友人や仲のいい同僚など、気心の知れた方への手紙で使用しましょう。
1.2 基本構成に沿って書く
手紙には基本的な構成があります。特に改まった手紙では、「何から書き始めればいいのか」「どうやって締めくくればいいのか」「自分や相手の名前はどこに書けばいいのか」など、迷うことが多いかもしれません。
しかし、基本構成に沿って書けば、手紙の書き方に慣れていない場合でもマナーを守った手紙を書き上げることができます。詳しい基本構成は次項で紹介します。
1.3 「頭語・結語」は正しい組み合わせで使う
「頭語・結語」とは、手紙の冒頭と本文の最後に入れる言葉です。頭語と結語は正しい組み合わせで使わなければなりません。例えば、「拝啓・敬具」「前略・草々」などの組み合わせがよく知られています。
また、手紙の内容によっても適した「頭語・結語」があります。代表的な頭語と結語は以下の通りです。
手紙の内容 | 頭語 | 結語 |
---|---|---|
一般的な手紙 | 拝啓、拝呈、拝白、啓上 | 敬具、敬白、拝具、かしこ |
改まった手紙 | 謹啓、謹呈、恭啓 | 謹言、敬白、かしこ |
急を要する手紙 | 急啓、急呈 | 敬具、草々、かしこ |
前文を省略した手紙 | 前略、冠省 | 草々、不一、かしこ |
「かしこ」はどの頭語とも組み合わせできる結語ですが、女性しか使用できないため注意が必要です。
1.4 季節に合った「時候の挨拶」を入れる
時候の挨拶とは、頭語の後につなげて書く季節や気候に関する言葉です。本文の前置きとして入れることで手紙に季節感を出し、より丁寧な印象を与えられます。
ここでは、ビジネスシーンや目上の方への手紙で、時候の挨拶として使用できる季節に合った言葉を紹介します。時候の挨拶として使う場合は、「〇〇の候」「〇〇の折」「〇〇のみぎり」といった形で記載します。
1月 | 厳冬(げんとう)、初春(しょしゅん)、寒冷(かんれい) |
---|---|
2月 | 向春(こうしゅん)、梅花(ばいか)、立春(りっしゅん) |
3月 | 弥生(やよい)、早春(そうしゅん)、啓蟄(けいちつ) |
4月 | 春陽(しゅんよう)、春爛漫(はるらんまん)、若草(わかくさ) |
5月 | 新緑(しんりょく)、立夏(りっか)、向暑(こうしょ) |
6月 | 初夏(しょか)、芒種(ぼうしゅ)、入梅(にゅうばい) |
7月 | 小暑(しょうしょ)、酷暑(こくしょ)、猛暑(もうしょ) |
8月 | 盛夏(せいか)、残暑(ざんしょ)、初秋(しょしゅう) |
9月 | 爽秋(そうしゅう)、秋涼(しゅうりょう)、処暑(しょしょ) |
10月 | 清秋(せいしゅう)、寒露(かんろ)、秋麗(しゅうれい) |
11月 | 向寒(こうかん)、残菊(ざんぎく)、立冬(りっとう) |
12月 | 師走(しわす)、大雪(たいせつ)、寒冷(かんれい) |
親しい友人や親族に向けたプライベートな手紙であれば、ひな祭り、運動会、クリスマスなどより身近な季節の話題に触れて、時候の挨拶とするのもいいでしょう。
【関連記事】「季語とは?春夏秋冬の季語一覧や有名俳句、時候の挨拶例文を紹介」
【関連記事】「【年間の月別「時候の挨拶・季節の挨拶」一覧】例文や注意点も紹介」
2 手紙の基本構成
ここからは、一般的な手紙の基本構成を解説していきます。マナー違反を防ぐためには、基本構成に沿って書くことが大切です。
2.1 前文
前文は、上記で紹介した「頭語」と「時候の挨拶」を記した部分です。時候の挨拶の後、通常ビジネスシーンでは相手の繁栄を祝う文章を、プライベートでは相手の健康を気遣う文章を添えます。
手紙の書き出しに悩むという方でも、前文を入れることでスムーズに手紙を書き始めることができます。
【例】
・拝啓 向春のみぎり、皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
・謹啓 清秋の候、貴社にはますますご清栄の由大慶に存じます。
・拝啓 クリスマスのイルミネーションが街を彩る季節となりました。その後お変わりなくお過ごしでしょうか。
2.2 主文
この手紙で最も伝えたいことを書く部分です。前文の後、改行してから1文字空けたうえで、「さて、~」と書き出すのが一般的です。
主文はあまり長くなりすぎないように注意して、簡潔でわかりやすい内容になるよう心がけましょう。また、手紙の目的を明確にするためにも、一通の手紙で伝えることは一つだけにしましょう。
2.3 末文
末文は、手紙を締めくくる結びの挨拶と「結語」を記した部分です。ここで、もう一度季節の挨拶を入れて、相手の繁栄や健康を願う文章を添えます。その後、頭語に適した結語を入れます。
【例】
・落ち葉散りしく時節、皆様のご多祥を心よりお祈り申し上げます。
・春寒のみぎり、お身体を大切になさってください。
・天候不順の折から、健康には十分ご留意ください。
2.4 後付
後付は、手紙を書いた日付、差出人の名前、宛名を記す部分です。日付は「令和〇年〇月〇日」と書くのが正式な形式です。ただし、プライベートの手紙であれば月日だけでも問題ありません。お祝いの手紙であれば「令和〇年〇月吉日」とするのもいいでしょう。
また、宛名には必ず敬称を付けます。敬称については、後の項で詳しく解説します。
【関連記事】「ビジネスメールの書き出しマナー!パターン別に例文をご紹介」
【関連記事】「【保存版】ビジネスメールの結び・締め言葉の基本マナーと例文集」
3 【種類別】手紙の書き方例文
ここからは、種類別の手紙の書き方を例文で紹介します。ビジネスシーンやプライベートで手紙を書く際の参考にしてください。
3.1 目上の方へお礼をする際の手紙の書き方例文
まず、目上の方へ送る手紙の書き方です。ここでは、目上の方から頂き物をした際のお礼文を例に挙げて紹介します。
拝啓
初雪の候、〇〇様におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、このたびは過分なお心遣いをいただき、誠にありがとうございました。ご厚意に感謝し、心から御礼申し上げます。
今後とも変わらぬご厚誼を賜りますよう、お願い申し上げます。
年末に向けご多忙とは存じますが、どうぞ体調を崩されませんようご留意ください。
甚だ略儀ながら、書中にてお礼申し上げます。
敬具
令和〇年〇月〇日
〇〇(差出人氏名)
〇〇様(宛名)
食べ物や日常使いするものであれば、食べたり使ったりした際の気持ちを具体的に添えるのもいいでしょう。
3.2 取引先担当者へ挨拶する際の手紙の書き方例文
転勤、退職、事務所移転など、取引先へ挨拶状を出す機会は多くあります。ここでは、お世話になった取引先担当者へ出す、転勤時の挨拶文を紹介します。
謹啓
早春の候 〇〇様におかれましては益々ご活躍のこととお喜び申し上げます。
さて、私こと
このたび〇〇支店勤務を命ぜられ過日赴任いたしました。
〇〇支店在勤中は、公私ともに一方ならぬご厚情を賜り厚くお礼申し上げます。
今後もご縁を大切にし、新天地にて職務に専心努力いたす所存でございます。
どうぞ変わらぬ ご指導ご交誼の程よろしくお願い申し上げます。
まずは略儀ながら書面をもちましてご挨拶申し上げます。
敬具
令和〇年〇月〇日
株式会社□□ △△課
〇〇(差出人氏名)
株式会社△△
専務取締役 〇〇 様 (宛名)
前半の「さて、私こと」には「私ごとで恐縮ですが」という意味があります。自分を表す言葉であるため、謙遜の意味を込めて文末に記載します。横書きでは右詰め、縦書きでは下詰めの位置です。
3.3 親しい人へ宛てた簡単な手紙の書き方例文
両親や友人などの親しい人へ、ちょっとしたお礼や近況報告をしたいときの例文です。ここでは前文を省略する書き方を紹介します。
前略 失礼いたします。
先日は食事にお誘いいただきありがとうございました。とても楽しい時間を過ごすことができました。
また次回お会いできるのを楽しみにしております。
草々
3.4 自分の近況を知らせる手紙の書き方例文
久しく会っていない友人に、自分の近況を知らせる際の書き方例文です。まずは本文に入る前文で、相手の状況や健康を伺う挨拶を入れましょう。
拝啓
5月も後半となり初夏の訪れを感じる時期となりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
さて、
(本文)
過ごしやすい時季とはいえ、刻々と変わりゆく季節、どうぞお風邪など召されませぬようご自愛ください。
敬具
令和〇年〇月
〇〇(差出人氏名)
〇〇様(宛名)
4 宛名と敬称の正しい書き方
相手の大切なお名前である宛名は、手紙の中でも特に重要な部分です。書き方を間違えると失礼にあたるので、正しい書き方を覚えておきましょう。
まず、書き方の例でも紹介したように、宛名は手紙の最後に記入します。取引先の担当者に出す場合は、相手の会社名や役職も記入します。封筒の宛名も同様です。
また、宛名に付ける敬称の使い分けも重要なポイントです。一般的に、個人に宛てて出す場合は「様」、企業や部署など団体に宛てて出す場合は「御中」を使用します。敬称を併用して使うのはNGです。
【関連記事】「宛名の正しい書き方とは?敬称の使い分けや上手く書くためのコツも」
【関連記事】「【例文付き】「拝啓」の意味とは?手紙での使用方法を解説」
【関連記事】「【例文付き】「敬具」の使い方とは?正しい位置や言い換え方法も」
5 マナー違反?手紙を書く際の注意点
手紙を書く際は、その他にも守るべきルールがあります。せっかく書いた手紙がマナー違反にならないよう、注意点をしっかりチェックしておきましょう。
5.1 自分を行頭、相手を下方に書くのは避ける
一般的な手紙では、自分を指す「私」などの言葉を、行の始めに書くのはマナー違反とされています。そのため、自分を指す言葉は行の中央や下方になるように、文字数を調整する必要があります。
また、相手の名前を行の下方に書くことも、失礼な印象を与えるため避けた方がいいでしょう。さらに、名前は行をまたいで分けて書くのもNGです。
5.2 便箋の種類と枚数にも気を遣う
ビジネスシーンで出す手紙は、白地の便箋に書くのがマナーです。クリーム色やベージュなど黄味を帯びた白ではなく、真っ白なものを選びましょう。
また、弔事の手紙を書く場合は、不幸が重なることを避けるという意味を込めて、一枚の便箋で出すようにします。
一方、正式な手紙では二枚以上の便箋で出すのが望ましいとされています。「一枚の手紙は縁起が悪い」「一枚では文面が透けてしまう」など、さまざまな理由があります。もしも、一枚で手紙が終わってしまう場合は、白紙の便箋を一枚重ねて出すといいでしょう。
5.3 二重敬語に注意する
二重敬語とは、「ご覧になられましたか」「拝受させていただきました」など、本来一つしか使用してはいけない同じ種類の敬語を、二つ重ねて使用した言葉のことです。話し言葉ではもちろん、書き言葉としても不適切な言葉なので、使用しないよう注意しましょう。
5.4 手紙を出す時期を間違えない
何かを頂いたときのお礼状は、できるだけ早く出すのが基本です。その他、挨拶状やお見舞い状についても、それぞれ適切な時期を守って出すようにしましょう。
頂き物のお礼状 | 品物を受け取ったらできるだけ早く出す(遅くても3日以内) |
---|---|
転勤・異動の挨拶 | 転勤・異動前に出す(急な人事異動の場合は1ヶ月以内) |
社長・役員交代の挨拶 | 交代から1ヶ月以内 |
移転・引っ越しの挨拶 | 転居から1ヶ月以内 |
暑中見舞い | 小暑(7月7日頃)から立秋の前日(8月7日頃)まで |
残暑見舞い | 立秋(8月8日頃)から8月末頃まで |
寒中見舞い | 松の内(1月7日頃)から立春(2月4日頃)まで |
5.5 「追伸」は目上の方に使用しない
追伸は、本文と関係のない内容を付け加えたいときに使います。手紙の一番最後、後付の後に「追伸」と記載して、一文を添えます。
ただし、目上の方へ使うのは失礼にあたるとされています。そのため、目上の方への手紙で一言添えたい場合は、「末筆ながら」「末筆ではございますが」という表現を使用しましょう。
6 使用NG!避けるべき「忌み言葉」とは
忌み言葉とは「縁起が悪い」「不吉である」と、一般的に広く信じられている言葉であり、手紙を書く際は避けた方がいいとされています。うっかり使用することのないように、あらかじめチェックしておきましょう。
6.1 お祝いの手紙における忌み言葉
就職、昇進、結婚、出産など、お祝いの際に送る手紙で避けるべき忌み言葉には、以下のようなものがあります。
閉じる、切れる、終わる、倒れる、短い、去年、離れる、消える、失う、落ちる
6.2 お見舞いやお悔やみの手紙における忌み言葉
体調を崩されている方への手紙や、故人を偲ぶお悔やみの手紙において、避けるべき忌み言葉には以下のようなものがあります。
浮かばれない、大変、苦しむ、次々、いよいよ、再び、引き続き、四、九
7 その他手紙の書き方
手紙の書き方については、以下の記事でもご紹介しています。併せてご覧ください。
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8 まとめ
手紙は自分の気持ちや感情を、より丁寧に相手へ伝えたいとき、もっとも適したツールであると言えます。チャットやメールが普及した現代でも、やはり手書きの手紙をもらうと嬉しいと感じる人は多くいます。
ただし、手紙にはチャットやメールにはない決まりやマナーが多いのも事実です。相手に自分の気持ちを正確に伝えながら好印象を持ってもらうためには、正しい手紙の書き方を覚えることが大切です。ぜひこの記事を参考にして、思いが伝わる手紙を送りましょう。
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