ブレインストーミングとは? 成功させる4つの原則、ブレストのメリット・進め方を解説

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ブレインストーミング(ブレスト)を会社で実施したことがあるという人も多いかと思います。今回は、ブレインストーミングを成功させる4つの原則ブレストのメリットや進め方を解説します。

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1.ブレインストーミングとは

ブレインストーミング(Brainstorming)とは、豊かな発想のアイディアを出すための集団発想法のことです。言葉どおり、脳に嵐を起こし、通常では出てこない発想を得ることがねらいです。

アスリートがよく「ゾーンに入る」という表現を使います。集中をすることで、無意識で体が動くようになり、実力以上の能力を発揮できるようになる状態のことです。

ブレインストーミングでは、多数のアイディアを次々と出すことにより、脳がゾーンに入り、通常では出てこない発想のアイディアが生まれることを期待します。

日本標準規格JISの用語集では「ブレーンストーミング」の表記が採用されていますが、現在では「ブレインストーミング」と表記するのが一般的のようです。また、日本では「ブレスト」という略称もよく使われます。

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2.ブレストとディスカッションの違い

ブレインストーミングであっても、ディスカッションであっても、一定の結論を出し、アクションプランを設定して、次の行動につなげるという点は変わりありません。しかし、ブレインストーミングは足し算の発想法、ディスカッションは引き算の発想法と言うことができます。

ブレインストーミングはゼロの状態からアイディアを出す手法で、他人が出したアイディアを批評、否定すること禁止されています。他人のアイディアを否定するのではなく、それを拡張したり、他のアイディアと連結したりすることで、さらに高次元のアイディアに発展させていき、最終的に、実施可能なアイディアを得ることが目的です。

一方、ディスカッションはアイディアを批評し合い、アイディアの問題点を抽出して解決法を考えることで、実施可能なアイディアを得ることが目的です。

一般に、企画の初期段階ではブレインストーミングを行ない、ある程度の方向性が見えてきた段階でディスカッションに移行をしてきます。

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3.ブレインストーミングを成功させるための4つの原則

ブレインストーミングを成功させるには、4つの原則を守る必要があります。

3.1.判断をしない、批判をしない、結論を求めない

「他人が出したアイディアを批判しない」というのが最大の原則です。「それはどうかな? 現実的じゃないな」という批判をすると、自由な発想を妨げてしまいます。

許されるのは「だったら、こうしたらどうかな?」とアイディアに追加のアイディアを付け加えることです。

ブレインストーミングでは、他人のアイディアに刺激されて、思いもしなかった発想ができるようになることが最大のねらいなので、批判をしたい気持ちがある時は、欠点を指摘するのではなく、欠点を補うアイディアを出すようにします。

また、途中で焦って結論に収束させようとすると、発想の幅もそれに伴い狭まっていき、結局、凡庸なアイディアしか出なかったという結果に終わりがちです。結論は出た方が好ましいですが、そこにこだわらずにアイディアの幅を広げるように進めます。

3.2.粗い考えを歓迎する

一般的な会議で「こんなアイディアを出したら笑われるのではないか」と思って口を閉じてしまうことはよくあります。しかし、ブレインストーミングではそのようなアイディアも出すべきであり、周囲はそれを批判すべきではありません。

なぜならブレインストーミングで、次のアクションプランに結びつくようなアイディアがいきなり出てくることはきわめて稀(まれ)だからです。一般的には凡庸なアイディアでも、他人がそれに刺激を受けてより高次元のアイディアを発想し、別の人がそれに刺激を受けてということが繰り返されていく中で、普通のディスカッションでは産まれ得なかったアイディアに到達することがブレインストーミングのねらいだからです。

3.3.アイディアの量を重視する

ブレインストーミングではアイディアの質よりも量を重視します。

参加者を集中状態に置いてゾーンに入ることで、通常の発想では生まれないアイディアに到達することが目的だからです。

例えば、商品名を決定するブレインストーミングでは、メトロノームなどを使って「5秒に1個」アイディアを出すなどということを行ないます。意外な結びつきから、今までになかった発想に到達することがあります。

3.4.アイディアを結合し発展させる

参加者各自がアイディアを考えてきて、それを発表するというだけであれば、わざわざブレインストーミングをする必要はありません。

ブレインストーミングのねらいはAというアイディアとBというアイディアが結びついて、新たな発想が生まれることです。ですので、他人が何かアイディアを出して興味を持ったら、それに付加できるアイディアを出していきます。こうすることで、最初の発言者の何気ないアイディアが、最後には既存の価値観を打破するアイディアに結びつくこともあります。

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4.ブレインストーミングのメリット

ブレインストーミングは、部外者から見ると、参加者は楽しそうで賑やかで、遊んでいるかのように見えることもあります。

また、ブレインストーミングは毎回必ず具体的な成果や結論が出るというものではありません。そのため、組織の中にはブレインストーミングに批判的だったり、懐疑的だったりする人がいることがあります。

しかし、それでもブレインストーミングを定期的に行なう必要があるのは、次のようなメリットがあるからです。

4.1.柔軟な発想でのアイディア出しが可能

一人で考えても素晴らしいアイディアはなかなか出てきません。それは天才と呼ばれる人であってもそうです。

人は物事を考える時に、自分なりのフレームワークを使います。そのため、フレームワークから外れる発想は出てきにくいです。

しかし、ブレインストーミングで自分と異なる他人のフレームワークに刺激されることで、従来できなかった発想ができるようになります。

4.2.短時間で多数のアイディアが集められる

ブレインストーミングは、アイディアの質よりも量を優先する手法です。

そのため、質はともかく量においてはじゅうぶんすぎるほどのアイディアが生まれてきます。採用できるアイディアは少なくても、それらを組み合わせることで高次元のアイディアに昇華をさせることも可能です。

また、記録に残しておけば、状況が変わった時に使えるアイディアがすでに出されていたということも起こります。

4.3.チームの結束力が高まる

ブレインストーミングはゲーム性の高い発想法で、参加しているメンバーは楽しい時間をすごすことができます。

また、そこで生まれたアイディアは個人の所有物ではなく、複数の人の発想を合成したものであることから、全員で生み出したアイディアということになります。これがチームの結束力にいい影響を与えます。

4.4.心理的安全性を確保できる

ブレインストーミングでは、他人の意見を批判することは厳禁で、どんなアイディアでも許容するのが、優れたアイディアにたどりつく大きなポイントになります。

また、一定の節度さえあれば、冗談を言ったり、脱線したりすることも、アイディアの生成を促進する作用があるため許容されます。

「こんなことを言っても批判されない、叱責されない」という体験をすることで、安心して業務に向き合える心理的安全性を感じることができるようになります。

4.5.トランザクティブメモリーを強化できる

組織ではメンバーの間でのナレッジの共有が重要になります。しかし、大規模なサービスを展開する中で、すべての知識を全員が持つということには無理があります。

そこで、重要になっているのがトランザクティブメモリー(Transactive Memory)です。直訳すると「対人交流の記憶」という意味です。

具体的には「このサービスのこの部分については誰が詳しい」という知識を全員で共有することです。

このトランザクティブメモリーの共有ができていれば、サービスで困難に直面した時に自分で解決をすることはできなくても、最も詳しい人の顔がすぐに浮かび、協力を求めて解決にあたることができます。

ブレインストーミングを行なっていくと、どの参加者がどの方面の知識を持っているかがわかるようになり、トランザクティブメモリーの共有が進んでいきます。

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5.ブレインストーミングの進め方

ブレインストーミングには一定の進め方とポイントがあります。

5.1.目標を設定する

ブレインストーミングでアイディア出しをしてそれでおしまいというのでは何の成果も生まれません。まずは目標をきちんと設定しておくことが何よりも重要です。

例えば「ヨーグルトの新しいフレーバーを考える」など、アイディアの枠組みをあらかじめつくっておきます。

5.2.ファシリテーターを選出する

ブレインストーミングで成果を出せるかどうかは、ファシリテーターの力量によるところが大きいため、ファシリテーターの選出が重要になります。

ファシリテーターは司会でも議長でもなく、中立的な立場でブレインストーミングの進行を促します。脱線して誤った方向に進みそうになったら、制止をするのではなく、うまく本線に戻すなど、経験と人間力が要求されるポジションです。

一般的には、そのチームの責任者などの管理職から選びがちですが、そうなると参加者は上司の顔色を見るというバイアスがかかってしまうため、かえってうまくいかなくなることもあります。

上下関係がなく、中立的な立場の人を選ぶ必要があります。

5.3.文脈を共有する

なぜ、そのブレインストーミングを行うのか、その背景や理由を全員で共有する必要があります。ブレインストーミングを始める前に、ファシリテーターが説明をして全員に納得してもらいます。

例えば、目標は「ヨーグルトの新しいフレーバーを考える」ですが、なぜ考えなければならないかというと「10歳以下の子どもの摂取量が減少しているから」だと説明されれば、誰もが子どもが好きそうな味をヨーグルトに取り入れてみようと発想の方向性を決めることができ、アイディアが出やすくなります。

5.4.時間を設定する

ブレインストーミングは、いいアイディアが出るまで延々続けても意味がありません。これ以上いいアイディアが出ない状態というのは、ブレインストーミングの設定に何か問題があることで起こります。そのまま続けても時間が無駄になるため、いったん終了して、仕切り直しをすべきです。

そのため、あらかじめ時間を決めておくといいでしょう。30分では短すぎで、1時間では長すぎるかもしれません。アイディア出しの時間は30分から1時間の間で設定するとうまくいきます。

5.5.順番にアイディアを出してもらう

ブレインストーミングは、ある人の発言が他の人を刺激して、連鎖反応のようにアイディアが生まれてくる状態をつくることが目的です。

しかし、いきなりそういう状態にはなりません。中にはなかなか発言しない人もいます。

それを防ぐために、最初の一周は全員に1分ずつ順番にアイディアを出してもらうというやり方も有効です。そこで優れたアイディアが出てくるのを期待するのではなく、参加者のエンジンを温めることが目的です。

5.6.アイディアを記録しながら整理をする

アイディアを出したらそのままでは意味がありません。何らかの記録に残す必要があります。かといって、書記を置いて議事録をつくるというやり方にはあまりなじみません。そこで、よく使われるのが、付箋とホワイトボードまたは壁です。

アイディアを出した人は、その要約を付箋に自分で書いて、ホワイトボードや壁に貼ります。次にアイディアを出した人も同じように付箋を貼ります。この時どこに貼るかが重要で、自然にアイディアのグルーピングができていきます。

グルーピングの状況を見ながら、不足しているアイディア、結合できるアイディアが見えてきて、新しいアイディアが生まれてくるようになります。ファシリテーターは、このグルーピングを適宜修正していきます。

ブレインストーミングの可視化ツール、整理のためのフレームワークにはさまざまな手法がありますが、高度なツールや複雑な整理フレームワークの導入は慎重になるべきです。

高度なツールを使うと、それを使いこなすことに気を取られたり、ツールが提供している枠組みに縛られたりしてしまって、かえって自由な発想を妨げてしまうことがあります。

最初は付箋とホワイトボードというシンプルなツールを使い、それで問題を感じるようであれば、ツールを導入することを考えます。

5.7.アイディアに投票をする

ブレインストーミングが終わったら、アイディアの評価をします。ブレインストーミング中は評価をせず、終わってから評価をするというのがポイントです。

この評価も、実現性、発想力など多角的な視点で行なうのが好ましいため、ドット投票がよく使われます。

各メンバーに丸いシールを一定数渡して、評価したアイディアの付箋の横に貼っていってもらいます。

5.8.アクションプランを設定する

アイディアの評価を受けて、どのアイディアを実行に移すかを議論し、その後の調査、資料収集、場合によってはアイディアの実現の実行プランを考えます。

このアクションプランの設定は、複数回のブレインストーミングを経て行われることもあります。

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6.ブレインストーミングが失敗をする理由

ブレインストーミングを成功させるのは簡単ではなく、しばしば単なる雑談会で終わってしまいます。それを避けるために、ブレインストーミングが失敗する理由を知っておく必要があります。

6.1.参加者に上下関係がある

最も典型的な失敗例は、チームの管理職上司がファシリテーターとなり、チームメンバーが参加をするというケースです。多くのメンバーが上司の手前アイディアを口にできないと、みずから発想の幅を限定してしまいがちです。

また、なにか上司が興味を示すアイディアを出さなければならないという気持ちも発想の幅を限定してしまい、凡庸なアイディアしか出てこないことになりがちです。

6.2.参加者に偏りがある

特定の集団だけ集まってもあまりブレインストーミングの効果はあがりにくいです。

例えば、毎日顔を合わせて業務に向かっているチームメンバーでブレインストーミングを行なっても、日頃の雑談の延長で終わってしまうこともあります。

別の部課の人、業種が異なる人、男性女性、年齢など、ブレインストーミングの参加者に多様性がある方が、さまざまな角度からの意見が出て、それに刺激されて優れたアイディアが生まれやすくなります。

6.3.一人がほとんどの発言をしてしまう

ありがちな失敗で、上司が参加しているケースや、アイディアを出すのが得意な人が参加しているケースです。ファシリテーターが、他の人の発言を促す必要があります。

6.4.アイディアが出てこない

誰もが沈黙をしてしまい、何もアイディアが出てこない状態です。

原因は主に2つあります。

ひとつは、参加者が他のことに気を取られていて集中できていない場合です。納品間際の忙しい時間帯にブレインストーミングが設定されるなどがあります。

また、問題設定が曖昧すぎてアイディアの出しようがないということもあります。

例えば「業績悪化を反転させるアイディア」などと言われても、広すぎてとっかかりがありません。ファシリテーターがブレインストーミングの開催時期、問題設定などをやり直す必要があります。

6.5.話がテーマからどんどんずれていく

話がどんどん本来のテーマからずれていき、雑談会で終わってしまうケースです。多少の脱線は、新たな視点を得るために許容すべきですが、ある程度のところで、ファシリテーターが話を本筋に戻す必要があります。

6.6.アクションプランに結びつかない

アイディアはたくさん出たけど、それが次のアクションに結びつかないという失敗もよくあります。これもファシリテーターの力量の問題です。ブレインストーミングは最初どんどん多様なアイディアを出していきますが、頃合いを見計らって、今度はアイディアを収束させる方向に導いていく必要があります。

これは簡単なスキルではなく、知識や経験が必要になります。外部のファシリテーター講習を受講させるなど、ファシリテーターの育成も継続的に行なう必要があります。

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7.まとめ

ブレインストーミングとは、豊かな発想のアイディアを出すための集団発想法のことです。ブレインストーミングでは、多数のアイディアを次々と出すことにより、メンバーの思考が刺激し合い、通常では出てこない発想のアイディアを生むことがねらいです。

ブレインストーミングをただの雑談会で終わらせずに、アクションプランの設定という成果に結びつけるには、ファシリテーターの力量が重要になってきます。

ブレインストーミングを業務の質をあげるために活用するのであれば、外部の講習などを活用して、ファシリテーターを継続的に育成していくことが重要になります。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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