社内の事例共有会などで「ベストプラクティス」という単語を聞いたことがある方も多いと思います。今回はベストプラクティスの意味やベストプラクティスに関する考え方、ベストプラクティスを採用するメリットとデメリット、導入の手順について解説します。
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1.ベストプラクティスとは
ベストプラクティス(Best Practice)とは「最良の実践」という意味で、最良事例のことを指します。最善慣行と呼ばれることもあります。
近年では、業界などの優れた成功事例集を「ベストプラクティス集」と呼ぶようになっています。
ただし、ベストプラクティスの「ベスト」の意味の解釈には注意が必要です。文脈によって、微妙に異なるニュアンスで使われることがあるからです。
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2.ベストプラクティスについての3つの考え方
ベストプラクティスの「ベスト」には、異なる考え方があります。
ベストプラクティスを参考にする時は、この「ベスト」の意味の違いについて認識しておくことが大切です。
2.1.成功事例としてのベストプラクティス
特定の業務を遂行する上で最善の策のことを指します。
さまざまなチャンネルから常にベストプラクティスを収集、研究し、自社の業務プロセスを改善していくことができます。
業務プロセスは、日々課題を抽出し、それを改善していくという試行錯誤の積み重ねが必要になりますが、他のベストプラクティスを参考にすることで、一気に改善を進めることもできます。
ただし、他社にとってのベストプラクティスが、自社にとってもベストプラクティスであるとは限らないため、自社に合わせて改良することも必要です。
2.2.業界標準としてのベストプラクティス
必ずしも自社にとって最善の方法ではなくても、業界で広く用い要られているのであればそれがベストプラクティスになることもあります。そのため、業界標準になっている手法をベストプラクティスと呼ぶこともあります。
例えば、業務端末で使うプラットフォームをMacにするかWindowsにするかという問題があります。どちらも自社にとって一長一短で大きな差が見られないのであれば、業界標準の方がベストプラクティスになります。他社と連絡を取る、業務上の提携をするといった時に、障害になりにくいからです。
また、業界の中でノウハウが蓄積されるために、関連するベストプラクティスを収集しやすくなります。
自社にとってのベストプラクティスを導入する場合は、自社内の業務効率だけを考えるのではなく、外部との連携面での業務効率も考慮する必要があります。その意味で、業界標準は多くの場合、ベストプラクティスになっています。
2.3.反面教師としてのバッドプラクティス
ベストプラクティスの収集だけでなく、反面教師としてのバッドプラクティスも収集しておく必要があります。特に、事故事例はよく収集し、予防策を講じておく必要があります。
最近では、サイバー攻撃や個人情報流出などの事例収集を行い、自社の手法の点検をしておく必要があります。
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3.ベストプラクティスを採用するメリット
ベストプラクティスを収集し、自社で採用していくことには、次のようなメリットがあります。
3.1.高速で業務プロセスを改善していくことができる
業務プロセスを自力で改善していくのには時間がかかります。多くの場合、課題が生じて、それを議論し、対応策を練り、実施をしていくというプロセスが必要になるからです。
しかし、他社のベストプラクティスを参考に改善を行うと、このプロセスが短縮でき、一気に業務プロセスを改善することができます。
3.2.未経験の課題にも対応することができる
自力で業務プロセスを改善していく手法は、課題の発生に応じて対応策を実施するという形になるため、課題が発生しないことには改善が行われません。そうすると、たまたま自社で発生しなかった課題については、対応策が取られないということになります。
一方、ベストプラクティスは他社の事例を参考にするため、他社が経験している課題に対しての対応策が盛り込まれています。ベストプラクティスを導入することで、未知の課題に対する対応策も獲得することができます。
3.3.常に改善をし続けていくことができる
業務プロセスの改善意欲は、自社の業務プロセスに課題感を感じている時は強くなりますが、逆に課題感が薄い時は弱くなってしまいます。一般に、課題感が出てから、改善策を考えるということになりがちで、後手に回ることが多くなります。結果として、違和感を持ちながら業務を遂行する時間が長くなってしまいます。
一方、他社のベストプラクティスを取り込む仕組みをいったん構築すると、自社の業務プロセスに課題がなくても、ベストプラクティスの収集を進め、導入検証を行うようになるため、常に業務プロセスを改善していく体制が整えられます。
3.4.時代に対応していくことができる
自社の業務プロセスに課題を感じていなくても、時代が進歩すれば、相対的な課題が生まれてしまうことがあります。
例えば、自社では紙ベースの書類システムを使っていて、それに問題を感じなくても、周囲がペーパーレスになれば、あらゆる意思決定が相対的に遅くなってしまいます。
しかも、この相対的な課題は、内部にいると気がつきにくいという性質があります。他社のベストプラクティスを導入することで、このような相対的な課題についても改善することが可能になります。
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4.ベストプラクティスを採用するデメリット
ベストプラクティスの採用にはデメリットもあります。
4.1.ベストプラクティスがベストとは限らない
業務プロセスは本来実際に使いながら改善をしていくのが基本です。ベストプラクティスの導入はさまざまなメリットがありますが、その改善プロセスをスキップしてしまうようなところがあります。
そのため、自社とは合わない部分も導入されてしまい、かえって課題を多くしてしまうこともあります。
ベストプラクティスは、あくまでもそれを実施した企業にとってベストであって、導入する企業にとってもベストであるとは限りません。導入時には、そこをよく検討し、自社にフィットするように改善をしていくことが必要になります。
4.2.企業の個性が失われやすい
ベストプラクティスの多くは業界標準となっています。ベストプラクティスを追求していくと、業界標準に近づいていくことが多くなります。それにより、企業の個性が失われてしまうこともあります。
どのような部分にベストプラクティスを導入し、どのような部分には企業の個性を活かすのか、メリハリをつけることも大切です。
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5.ベストプラクティスを活用する手順
ベストプラクティスを活用していくには、次のような手順が一般的です。
5.1.調査
まず、参考になりそうな成功事例を収集し、それを評価する必要があります。
調査の最初は、公的機関が収集公開しているベストプラクティス事例集などを収集するところから始めます。
例えば、次のようなものがあります。
北海道庁が発行している働き方改革に関する事例集です。同様の事例集は、多くの自治体が発行しています。
経済産業省が発行しているダイバーシティ経営(多様化経営)を進める企業の事例集です。
(3)「経済安全保障上の課題への対応(民間ベストプラクティス集)」
経済産業省が発行している技術流出とビジネス環境の予見性低下について民間企業がどのような対策をしているかの事例をまとめたものです。
中小企業庁が発行している下請適正取引のためのガイドラインです。産業別に、大量のベストプラクティスが掲載されています。
5.2.評価
調査をしたベストプラクティスが、自社にも適用できるとは限りません。また、導入にあたって改変をしなければならない部分もあります。そのような導入を前提にした評価を行います。必要があれば、さらに深い情報収集をしたり、視察したりします。
5.3.ベンチマーキング
ひとつのベストプラクティスを評価するのではなく、同じプロセスに関する複数のベストプラクティスを比較分析することがベンチマーキングです。
特に競合他社のベストプラクティスと、自社のベストプラクティス(とされていたもの)を詳細に分析することが必要になります。競合他社との競争に有利になるだけでなく、同じ製品やサービスを扱っているため、プロセスの詳細な検討が可能になります。
5.4.導入
複数のベストプラクティスから、自社向けのベストプラクティスが構築できたら導入をしてみます。当初は小さな範囲で導入し、課題を改善しながら、拡大してきます。
5.5.改善サイクル
導入して終わりではなく、ここからが重要になります。評価して、課題を抽出し、改善していく必要があります。これにより、他社から学んだベストプラクティスが、自社のベストプラクティスになっていきます。
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6.まとめ
ベストプラクティスとは「最良の実践」という意味で、最良事例のことを指します。最善慣行と呼ばれることもあります。近年では、業界などの優れた事例集を「ベストプラクティス集」と呼ぶようになっています。
他社のベストプラクティスを自社に導入することで、短期間に確実に業務プロセスを改善することができます。
一方、他社のベストプラクティスが必ずしも自社にフィットするとは限らないため、課題抽出と改善を行なっていき、自社のベストプラクティスに成長させていく必要があります。
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