OEMとは? 具体例をもとにOEM製品の意味をわかりやすく解説

OEMとは? 具体例をもとにOEM製品の意味をわかりやすく解説

OEMという言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、何の略称なのかやその意味、どういったものがOEM製品にあたるのか具体的には分からない、といった方も多いと思います。今回はそうした方に、OEMという言葉の意味や、OEM製品について具体例をもとに解説します。

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1.「OEM」とは!?

OEM(読み方:オーイーエム)とは、「Original:本来の」「Equipment:製品」「Manufacturere:製造業者」それぞれの頭文字をとった用語です。直訳すれば、「製品の本来の製造業者」となり、さまざまな理由から、自社で製造した製品を、自社ブランドではなく、他社のブランドで販売する製造業社のこと指します。

ビジネスシーンでは、例えば、「この製品は、◯◯社によるOEM製品です」、「OEM生産も含めると生産台数は世界一です」、などと使われます。

でも、これだけだとまだよく分かりませんよね。そこで本記事では、OEM製品の具体的な例を挙げながら、OEM製品・OEM商品とは何なのかをわかりやすく解説します。

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2.OEMが最も進んでいるのが自動車業界

まず、OEMが最も進んでいるのが自動車業界です。見た目はまったく同じなのに、エンブレムと車名が違うという車の存在に気がついている方も多いでしょう。例えば、ダイハツの軽自動車「ウェイク」は、トヨタから「ピクシスメガ」として販売されていました。もちろん、いずれもダイハツが製造していた自動車です(2022年8月生産終了)。

なぜ、このようなOEMをするのでしょうか。それは、ダイハツにとってもトヨタにとってもメリットがあるからです。ダイハツにとっては、巨大な販売力を持っているトヨタブランドでも販売することで、販売台数が大幅に増加することが狙えます。

一方、トヨタにとっては、従来製造してこなかった軽自動車を、工場投資、開発投資なしでラインナップに加えることができます。トヨタの自動車を購入する人は、家族用のセカンドカーとして軽自動車を購入することがありますが、従来はこのような顧客を逃していました。それがOEM供給によってラインナップを充実させ、顧客の要望に応えられるようになりました。

OEMは供給する方、供給される方の両方にメリットのある方式なのです。現在では、ホンダを除くほとんどの乗用車メーカーが、軽自動車メーカーからOEM供給を受けています。

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3.受託生産に近いケースも

OEMは、OEMメーカーが製造販売している商品を、他の販売力のあるブランドに供給をして販売をするというのが基本ですが、受託生産に近いケースもあります。化粧品や雑貨、アパレル用品などは、販売力のあるブランドが商品の企画、設計を行い、実際の製造は他社に委託するという例があります。

この場合、商品のブランド価値を守るために、OEMメーカーは同じ商品を独自に販売しないという契約になっていることが多いようです。OEMというよりは、委託生産と呼んだ方がわかりやすいのですが、実際にはOEM生産と呼ばれることが多いようです。

4.OEM供給元の製品の方がお得なのが一般的

OEMでは、原則、同じ製品が複数のブランドから発売されることになります。では、どちらを買うのがお得でしょうか。自動車や家電製品、化粧品などの場合は、OEM供給元の製品の方がお得なのが一般的です

OEM供給を受けて販売する力のあるブランドは、ブランド力があるために価格を維持できますが、供給する側はブランド力がそこまでではないので、価格が下がりやすいのです。賢い買い物をする人は、欲しい商品のOEM供給元を調べて、そちらの製品を買ったりします。中身は同じ商品なので、お得ですよね。

ただし、自動車などの場合は、OEM供給を受けるブランドは、アフターケアなどのサービスを充実させていることが多いので、どちらで買うのがお得なのかは、よく考えて判断する必要があります。

5.OEM供給される側のブランドで購入した方がお得なOEM製品も

逆に、OEM供給される側のブランドで購入した方がお得なOEM製品もあります。スーパーやコンビニで販売しているPB(プライベートブランド)製品です。

スーパー、コンビニといった流通業は、原則製造拠点を持っていません。それがオリジナルのブランドの洗剤や飲料といったものを販売しているのです。これもOEM供給を受けているので、OEM製品と呼んでもおかしくありませんが、流通業界の慣習でPB製品と呼ばれています。

PB製品の場合は、オリジナルよりもPBの方が価格が低い場合がほとんどです。OEM生産企業では、生産工場を100%の稼働させることはできません。売れないのに作っても仕方がないからです。しかし、工場では、生産してもしなくても、人件費などの経費が勤務時間分かかってしまいます。

スーパーやコンビニは、この工場が空いている時間帯にPB商品を作ってもらいます。そのため、ものすごく安く生産することができ、価格もオリジナル製品よりも安くすることができるのです。パッケージは違うものの、中身は同じですから、お得です。

6.OEM委託側のメリット

OEMを委託するブランド側には、次のようなメリットがあります。

6.1.小さな投資で商品の生産が可能になる

自社でオリジナル製品を開発製造するには、自社工場や生産技術を自前で用意する必要があります。これには莫大な初期投資がかかることになります。

しかし、OEMで委託生産をすれば、委託先企業の生産設備を使って、このような初期投資を抑えることができます。

6.2.生産技術の開発が不要

自社でオリジナル製品を開発製造するには、生産技術の開発と蓄積が必要になります。

しかし、それを獲得するには長い時間が必要となります。

OEMで委託生産をすれば、委託先企業の保有している生産技術を使って、このような開発と蓄積に必要な期間が短縮できます。

6.3.在庫コスト負担の軽減

自社で生産設備を持つと、その設備、配置した人員を遊ばせると生産コストが上がってしまうため、できるだけ長時間稼働させようとするため、生産数の調整が簡単ではなくなります。

そのため、ある程度は余剰に生産をしておき、倉庫に在庫としてストックをしておくことになります。

しかし、在庫を持つだけでも倉庫費用や管理などのコストがかかります。OEMで委託生産をすると、委託先企業では複数の生産ライン、人員を組み合わせて、複数の商品の小ロット生産が可能となります。

このため、必要な分だけを製造することができ、在庫に関するコスト負担が軽減されます。

6.4.製品ラインナップを揃えることができる

多くの企業は、できるだけ幅広い消費者に製品を提供したいと考えます。

例えば、単身者向けの製品と既婚者向けの製品の両方を提供していれば、ある消費者が結婚をしても、自社ブランドを使ってもらえる可能性があるからです。

ただ、ひとつの企業で幅広い製品の製造をすることは容易ではありません。

しかし、OEMで委託生産をすれば、商品をラインナップを短期間に揃えることができます。

7.OEM受託側のメリット

OEMを受託して製造する側の企業には次のようなメリットがあります。

7.1.生産ラインの稼働率が上昇する

生産設備は24時間くまなく稼働するというのが理想的な状態です。稼働時間が短くても、設備投資や人件費は大きくは下がらないため、稼働する時間が長くなれば、生産コストは下がっていきます。

OEM受託企業では、自社の生産設備、人員を最適配置することにより、稼働率を上げ、生産コストを下げることができます。

7.2.在庫を管理する必要がない

クライアントから委託を受けて製品を生産する場合は、生産数を指定されることがほとんどです。当然、指定されて生産した分は引き受けてもらえるため、作り過ぎた在庫を保管したり、数の管理をしたりする必要はありません。

自社で在庫を抱えすぎることなく利益を得られるのは、OEMを受託する大きなメリットです。</span

7.3.技術力が向上する

OEM生産をする時は、委託をする企業が生産技術やノウハウを提供することがあります。

また、要求される技術水準も高いことが多くなります。これによりOEM受託企業では技術力を上げることができ、より高付加価値の製品のOEM受託製造が可能になっていきます。

さらに、さらに技術力が高まれば、自社ブランドで製品を開発製造することも可能となり、ビジネスの幅を広げることができます。

8.OEM委託側のデメリット

OEMを委託するブランド側には次のようなデメリットもあります。

8.1.自社の生産技術が伸びづらい

生産を委託してしまい、自社では生産をしないのですから、生産技術の蓄積ができません。

そのため、どの製品を自社製造して、どの製品をOEM委託製造するかは、自社の技術力の成長を考えて戦略的に決定する必要があります。

8.2.OEM委託先(OEM受託元)が将来の競合になる可能性がある

OEM委託先(OEM受託元)は、製品の生産技術、ノウハウを手に入れることになります。

OEM委託先企業の技術力が向上すれば、自社ブランドで同類の製品を開発製造して販売することも予想されます。

OEM委託先企業が将来の競合になる可能性もあります。

そのため、OEM製造を委託する場合には、単なる委託製造ではなく、どのように相手先と提携をしていくのかという長期的な視点が必要になります。

8.3.原材料の高騰などで利益が減ることもある

製品の原材料価格は常に一定とは限りません。社会情勢の変化や気候の変動によって、急激に高騰することも考えられます。その際、自社で生産しているのであれば、原材料の見直し、入手ルートの変更、作業フローの最適化、人件費削減など、さまざまな方法でコストカットがおこなえます。

しかし、委託先にそのようなコストカットを求めることは難しいため、当初の予定よりも利益が減ってしまう可能性があります。

とはいえ、たとえ一時的に利益率が減少したとしても、自社で生産するより委託した方が大きなメリットを得られることは十分考えられます。OEMでの生産を委託をする際は、目先の利益だけでなく総合的な判断が必要です。

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9.OEM受託側のデメリット

OEMを受託する側には次のようなデメリットもあります。

9.1.生産量のコントロールができない

OEM生産の生産量は、委託した側の注文に応じて変わります。委託する側では、コントロールできません。生産量が一定ではないということは、すなわち利益も安定しないということです。

そのため、いつでも生産量が変化しても対応できる柔軟な体制をとっておくことが必要になります。

9.2自社ブランドの展開に制限が生まれる

OEMの受託生産をする場合、委託するブランド側との契約により、同類の製品を自社で製造販売することはできにくくなるのが一般的です。

当然ながら、OEM受託生産で使われる技術も、勝手に自社の製品に活かすことはできません。

そのため、OEM受託生産と自社ブランド品の製造の長期的な戦略を立てる必要があります。

9.3.製造技術流出の恐れがある

クライアントから委託を受けることで、自社の技術やノウハウがクライアントに流出してしまう恐れがあります。長年かけて築き上げた技術が流出することで、簡単に同等の競合品を作られてしまうかもしれません。

そのためOEM受託の際は、クライアントと秘密保持契約を締結する必要があります。

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10.OEM供給関係は"秘密の関係"なの!?

ときどき「この商品、実は◯◯社のOEM生産なんだよ」と声を潜めて教えてくれる人がいますが、OEM供給関係は秘密でもタブーでもありません。大手企業では、OEM契約を提携したことをマスコミ発表していますし、商品ラベルや取扱説明書には製造業社の名前がしっかりと明記されています。

OEM生産は、消費者に隠すようなことではありません。OEM供給元は製造者としての責任を負い、OEMの供給を受け販売する側は販売者としての責任を負うという立派なビジネスモデルです。ただ、消費者に向けて積極的にアピールするようなことでもないというだけのことです。

商品を手にしたら、商品ラベルや取扱説明書の製造業社の名前を見るようにしてみてください。きっとあちこちで、意外なOEM関係を発見できるでしょう。

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11.まとめ

なお、OEMは本来は「製品の本来の製造業者」の意味で、企業を指す言葉ですが、最近ではOriginal Equipment Manufacturing(オリジナル製品の製造)と理解して、OEM供給、OEM元、OEM先などと使うこともあります。誤用と言えば誤用なのですが、そういう使われ方が広がっていることも頭の隅にとどめておいてください。

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