ODMとは? OEMとの違いをわかりやすく図解|身近な例やメリットも解説

ODMとは? OEMとの違いをわかりやすく図解|身近な例やメリットも解説

製造業に関する用語として、OEMという用語と意味は知っているけれども、ODMという用語は聞いた事がないし意味も知らない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、ODMの意味やOEMとの違いをわかりやすく解説します。また、ODMの生産例やメリットとデメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください

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1.ODMとは

ODM(Original Design manufacturing)とは、設計、生産までを委託して製品を製造することです。発注元企業は商品企画と販売のみを行います。似た用語で、よく知られているOEM(Original Equipment Manufacturing)では生産のみを委託するのに対して、一歩踏み込み、開発、設計までを任せてしまう委託生産の手法です。

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2.ODM生産をする理由

ODMの最大のメリットは、社内に開発ノウハウがなくても製品を用意できることです。このため、ラインナップを揃えるためにODM生産がよく利用されます。

例えば、自動車メーカーが社内リソースを高級車に集中させる方針を立てたとしても、軽自動車を求める顧客も維持したいという場合、軽自動車をODM生産して自社のラインナップとして維持するといった使い方です。

また、スーパーやコンビニなどが自社の顧客が求める商品企画を立て、ODM生産をし、自社ブランド製品(プライベートブランド商品)として販売することもあります。

例えば、単身者が顧客の主体である場合、一人分のミニパックの菓子類をODM生産し自社ブランドとして販売するようなケースです。

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(ODMとOEMの違い。よく知られるOEMは製造のみを委託する。ODMでは開発、設計、製造を委託する)

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3.ODM生産の例

当時は、ODM生産という言葉がありませんでしたが、NTTドコモのフィーチャーフォンがODM生産方式を採用していました。ドコモが商品企画を行い、「501シリーズ」などとして、必要な機能、スペックを定めます。これをNECや富士通といった国内携帯電話メーカーにODM生産を委託し、販売はあくまでもNTTドコモが行います。

そのため、生産しているメーカー名は前面には出されることはなく、NECが製造した機種はあくまでも「NTTドコモのN501」であり、富士通が製造した機種あくまでも「NTTドコモのF501」だったのです。

各メーカーに同じ企画で設計段階から競わせることでメーカーは差別化のためにさまざまな工夫をするようになり、その結果として、シリーズとしてのバラエティが広がりました。

また、消費者にとってはあくまでもNTTドコモの商品でありサポートや保証などもNTTドコモ1社が全責任を負うので、安心感を与えることができます。

NTTドコモは通信会社であり、携帯電話を製造するノウハウやリソースは持っていませんが、ODM生産を利用することで、豊かな商品ラインナップを提供することに成功しました。

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4.OEM生産の例

一方、設計と開発は自社で行い、生産のみを委託するOEMで有名な例はアップルのスマートフォンiPhoneです。

iPhoneの開発と設計はアップルが行います。しかし、製造については、台湾の鴻海精密工業(フォクスコン)に委託をします。実際は、開発、設計の段階から両社が協力をして行い、アップル側も製造に深く関与をしているので、共同製造に近くなっていますが、商品の品質を決定づける開発と設計はあくまでもアップルが主導して行います。

これにより、アップルは開発、設計ノウハウを蓄積することができ、高い品質と機能を維持しています。

電子製品の製造については、部品調達なども大きな業務であり、これも委託側のフォクスコンが行います。このため、電子製品のOEM生産では、OEMというよりもEMS(Electronics Manufacturing Service、電子機器製造受託サービス)という言葉を使うのが一般的になっています。電子製品の製造に関する業務を一手に引き受けるという語感の言葉です。

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5.ODM生産のメリット

ODM生産には主に5つのメリットがあります。

(1)開発、設計ノウハウがなくても製品を揃えられる

ODMは開発、設計から製造までを任せてしまう手法なので、開発、設計、製造のノウハウ、リソースがなくても製品を揃えることが可能です。

(2)開発リソースを集中させることができる

これにより、自社の研究、開発、設計リソースを、自社が最も得意とする分野に集中させ、質の高い製品を開発することができます。

(3)ブランド構築が短期間で行える

自社は最も得意な製品にリソースを集中させ、その他の製品をODM生産することで、商品ラインナップが幅広くなり、ブランド構築がしやすくなります。

(4)人材や設備投資のコストを削減できる

開発、設計、製造という工程を全てODMメーカーに任せられるため、その分に掛かるコストを削減できます。

人材や設備投資の費用はもちろん、教育コストや設備の管理運用費も不要になります。

(5)受託側はブランド構築の必要がない

ODM生産は受託生産をする企業にも大きなメリットがあります。それはブランド構築をしなくても生産をして利益を出せるということです。ブランド構築には生産とはまた異なる技術が必要で、時間もかかります。

技術はあってもブランド構築ができていない企業にとって、他社のブランドを通じて自社製品を販売できるのは大きなメリットになります。

このようなODM生産を続けながら、自社の知名度を高めていくことも可能になります。

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6.ODM生産のデメリット

ODM生産には次のような4つのデメリットがあるといえます。

(1)開発、設計、製造ノウハウが蓄積されない

商品企画と販売以外の、開発、設計、製造をすべて任せてしまうので、社内に蓄積されるノウハウが限定的になります。特に開発業務は、その試行錯誤から次の製品の企画も生まれてくることが多く、メーカーとしての力がなかなか向上しないことが多々あります。

(2)品質のコントロールが難しくなる

委託元企業にとっては、ODM受託企業に大きく依存する手法であるため、品質の管理が難しくなります。品質を向上させるためにODM受託企業と交渉をしても、ノウハウがないために主導権を取ることも難しくなります。

自社ブランドらしい製品を製造することも難しくなり、ブランドイメージがぼやけてしまう恐れもあります。最悪の場合、他社製品の寄せ集めを販売しているようなことになってしまいます。

(3)アイデアや営業秘密の漏洩リスクがある

自社で企画した製品に関わるアイデアや営業秘密が漏洩してしまうリスクもあります。

これらが外部に漏洩すると、自社よりも安い価格でコピー商品が作られたり、類似品が多く出回ったりする可能性があります。

知的財産権を確実に保護するためには、契約や法的措置を適切に行わなければなりません。

また、ODMメーカーへのアクセス権を制御するなどの対策も必要です。

(4)受託企業の責任が重くなりやすい

ODM生産を受託する企業では、開発、設計、製造まで請け負うので、その製品に何らかの問題が生じた場合、消費者に対する直接的な責任は負わなくても、発注元企業から厳しく責任を問われます。

例えば、設計に問題があり事故が起きた場合は、契約内容にもよりますが、製品の回収や再設計、再製造、あるいは損害賠償などを負うことになります。特に、健康被害のリスクがある食品や化粧品では、致命的な痛手になることもあり得ます。

7.ODMは長期運用が決め手になる

ODM生産を成功させるポイントは、長期運用であると言われます。ODMを発注する企業と、受託をして開発、設計、製造行う企業が信頼関係を構築し、長期にわたって関係を保ち続けることが成功の条件になります。

なぜなら、発注側は生産の多くのプロセスを受託企業に依存し、受託側は発注側のブランド力や販売力に依存をするという、相互に強く依存をする関係だからです。このような関係では、発注側が委託費を抑えて利益を拡大したい、受託側が自社ブランドを構築して独立したいと、自社の利益をだけを考えるような関係になると、瞬く間に関係が崩壊してしまいます。

それぞれが相手の利益も考え、両者でウィンウィンの関係になるように気を使い、長期で関係を続けていくことにより、ODM生産によるメリットが活かせるようになります。

8.「ODM」に似た言葉

これまで、ODMとOEMの違いやODMのメリットなどについて解説してきましたが、製造業で使われる用語の中に「ODM」と似た言葉は他にもありますので紹介します。

なお、「ODM広告」という言葉で使われるように、広告の分野で使われる「ODM」は「Outdoor Media(アウトドア・メディア)」のことで、駅や電車の中吊り広告をはじめ、家庭以外の場所で目にする広告の総称なので、混同しないようにしましょう。

(1)OBM

OBM「Original Brand Manufacturing」の略称で、自社ブランドを自社の工場で製造することをいいます。

元々OEMを受託していた企業が技術力などを向上させ、ODM、OBMと事業形態を成長させて自社ブランドを立ち上げるという流れがあります。

中国や台湾などの電子機器企業にそういった企業が多いです。

なお、行動分析の分野ではOBMは「Organizational behavior management」の略称で、組織行動マネージメントと言われています。

(2)EMS

先述の通り、EMS「Electronics Manufacturing Service」の略称で、電子機器製造受託サービスと訳されます。

EMSについてもう少し詳しく解説すると、ODMが設計から製造までの各工程を委託企業と相談しながら進めていくのに対して、EMSでは受託企業が製造の全工程を責任を持って請け負います。

そのため、委託側の企業からすると、製造に関わる工程をアウトソーシングする意味合いが強くなります。

また、EMS企業は自社ブランドを持たずに、受託した製品の生産だけを行う特徴があります。

なお、EMSにも他分野で様々な意味があり、「国際スピード郵便」「電気的筋肉刺激」「環境マネジメントシステム」などが挙げられます。

(3)PB

「Private Brand」の略称で、特定の小売業者や販売業者が、自社ブランドやラベルで商品を提供するビジネスモデルです。

一般的に、これらの商品はODMやOEMで委託生産されることがほとんどです。

独自のマーケティングで自社に合った製品を提供できる上に、大手ブランドの製品を仕入れた際と比較して利益率が高くなります。

また、他の競合商品との差別化も可能です。

製造者の欄にはODMやOEMメーカーの名前が表示されますが、ブランド名は小売業者や販売業者の名前となります。

9.まとめ

ODMとは、開発、設計、製造までを委託して生産する方式です。OEMが製造のみを委託するのに比べて、より踏み込んだ委託手法です。商品ラインナップを素早く揃えることができることから、電子製品だけでなく、食品、化粧品、アパレルブランドなどさまざまな分野で用いられるようになっています。

一方で、受託企業に対する依存度が高く、社内に開発、設計、製造のノウハウが蓄積されないというデメリットもあります。ODMを成功させる鍵は、発注企業と受託企業が信頼関係を構築し、長期で運用することだと言われています。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)
テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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