【ベースアップ(ベア)とは】定期昇給との違いや実施企業が減少している理由

【ベースアップ(ベア)とは】定期昇給との違いや実施企業が減少している理由

ニュースなどでベースアップや定期昇給といった用語を聞いたことがある方も多いと思いますが、その正確な意味を把握している人は意外に少ないのではないでしょうか。

この記事では、ベースアップの意味を中心に、関連する用語である定期昇給や賞与との違いなどについて解説します。この機会に、ぜひベースアップや定期昇給について理解していただければと思います。

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1.ベースアップ(ベア)とは?

ベースアップとは、「base up」と英単語を組み合わせて作られた和製英語です。欧米のように職務給が採用されている地域では聞かない日本独特の名称といえます。

ベースアップとは、全社員の給料水準を一律で引き上げることで、ベースである基本給に対する昇給額や昇給率を意味することが多いです。

会社の業績が良い場合などにベースアップの割合が上昇して、勤続年数や役職に関係なく全社員一律で給与額などがアップします。

「ベースアップ5%」であれば、全社員が基本給から5%、給与がアップするといった仕組みです。

それではよく聞く「定期昇給」や「賞与」との違いは何なのでしょうか。

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1.1.定期昇給との違い

ベースアップと類似した用語に「定期昇給」がありますが、定期昇給とは、一般的には社員の年齢や勤続年数にあわせて昇給することです。また、定期昇給は一般的には個人のスキルや能力、実績ではなく会社に在籍する期間が長いほど給与がアップすることが多いです。

また、定期昇給は毎年1~2回、決まった月に設定することが多いです。ただし、定期昇給は会社の業績により昇給の機会があることを意味しており、毎年必ず昇給するわけではありません。

1.2.賞与との違い

賞与とは一般的に"ボーナス"と呼ばれるものです。毎月の固定給とは別に支払われる特別な給与を意味します。日本の企業では一般的に、夏と冬に賞与を支給します。基本給(定期給与)は、毎月1回以上、決められた期日に支給することが労働基準法により決められています。

ただし、賞与については支払時期をいつにするかは決められていません。賞与を年に3回支給する企業もあれば、支給しない企業があるなどさまざまです。一般的には企業の業績により賞与を支給することが多いため、必ず支給されるものではありません。

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2.ベースアップの役割と定期昇給の役割

前述の通りベースアップは、全社員の給料水準を一律で引き上げることを意味し、多くの場合、基本給に対しての昇給額や昇給率を意味します。これに対し、定期昇給は経験や勤続年数などをもとに定期的な昇給があることです。それでは、それぞれの制度の役割は何なのでしょうか。

以下でベースアップや定期昇給の役割をご説明します。それぞれの役割を理解して、現職での取り組み方や転職時の企業選びに役立ててください。

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2.1.ベースアップの役割

ベースアップの役割には以下の2点があります。

  • 評価指標
  • 名目賃金調整

企業の収益が向上したり生産力が上昇したりした企業では、ベースアップが従業員に対する評価指数となります。基本給が上がれば、従業員のモチベーションも高まるため、企業としては継続的な利益増加を期待してのものだといえるでしょう。

一方で企業収益や生産性が減少すれば、ベースアップをしないことが正当化されます。このように生産性とベースアップの関係性は強い事がわかります。

また、ベースアップをすることで賃金の目減りを調整することができます。名目賃金の調整としてベースアップが役立つということです。とはいえ、21世紀に入るとベースアップを見送る企業が増えています。

企業としてはデフレ下でベースアップをしてしまうと、基本給を簡単に下げることができないことになります。企業がベースアップに容易に踏み切ることができないのはこのような理由があります。

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2.2.定期昇給の役割

定期昇給は企業側からすると、全社員を対象とするベースアップよりも負担が少ないです。勤続年数や年齢に応じて昇給することが多いため、昇給率の高い社員が退職してそれを補填する新入社員が入社するため、企業側の負担を軽減する役割があります。

社員は勤続年数により給与がアップするため、ローンを組むなどの将来設計が立てやすい面があるでしょう。ただし、企業の業績により昇給を見送るケースがあるため、入社したら退職するまで昇給があるとはいい切れません。

3.ベースアップでよく聞く「春闘(春季闘争)」とは

ベースアップに関して、毎年2月になると「春闘(春季闘争)」という言葉がメディアを賑わします。正式名称は「春季生活闘争」ですが、この春闘は、多くの企業が新年度とする4月に向けて労働組合が労働条件について経営者に要求することです。

春闘は大手企業を中心にして労働組合が経営陣に要求する時期が2月、経営陣が回答する時期が3月であることから春闘と呼ばれています。また、春闘で労働組合が要求するのは、月々の給与や賞与などの金銭的な条件だけではありません。

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ワークライフバランスの実現など、働き方についても交渉がなされます。春闘が終了すると、厚生労働省が「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」を発表して春闘の内容を公開します。

例年、春闘は3月に山場をむかえますが、準備はかなり前から始まっています。日本労働組合総連合会(連合)は、8月ごろから検討を始めて、12月上旬には春闘の方針を発表して春闘に臨みます。

(参考:「労働・賃金・雇用 春季生活闘争 2021年春闘」(連合))

特に中小企業は大手企業よりも賃金水準が低い現状があるものの、それぞれの産業のなかでふさわしい賃金水準に到達するために要求を検討することが多いようです。

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4.ベースアップを行う企業は減少している?

高度経済成長期においては日本全体が好景気であったため、多くの企業が毎年2%~5%くらいのベースアップを実施していました。しかし、1990年代初頭にバブルが崩壊して以後は景気が低迷したため、多くの企業が春闘におけるベースアップの要求を拒否するケースが増えてきました。

(参考:「ベースアップ率の推移」(野村総合研究所))

近年では新型コロナウイルス感染症の影響を理由に、ベースアップを見送る企業もあります。これも景気が落ち込み、多くの企業がベースアップに積極的になれない点が影響しているといえます。

また、企業が年功序列や終身雇用ではなく、実力主義に転じていることもベースアップを行う企業が減少しているもう一つの大きな要因です。厚生労働省が発表した「令和2年賃金引上げ等の実態に関する調査概況」によると、ベースアップを実施する企業は定期昇給する企業よりも少ないことがわかりました。

なかには定期昇給とベースアップの区別を設けない企業もあり、ベースアップに積極的ではない企業が存在することがわかります。

(参考:「令和2年賃金引上げ等の実態に関する調査概況」(厚生労働省))

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5.まとめ

この記事では、ベースアップの意味や役割や定期昇給、賞与との違い、春闘などについて解説しました。ベースアップは、基本給に対する昇給額や昇給率を意味することが多く、春闘により経営陣と交渉が可能です。

年々、ベースアップを行う企業が少なくなってはいますが、大企業や中小企業ともに産業ごとにふさわしい賃金に達するような要求がなされています。

賃上げに関する一つの方法としてのベースアップも頭に入れておくと、転職活動などに役立つかもしれません。

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