近年働き方改革が進む一方、新型コロナウイルスの流行もあり、雇用のあり方に大きな変化が起きています。
日本の雇用は長年、年功序列や終身雇用制度がキーワードとなる「メンバーシップ型雇用」で構築されていましたが、近年は欧米で主流の「ジョブ型」への移行が活発に論議されています。
そこで今回は、メンバーシップ型雇用との違いも踏まえながら、日本でも導入企業が見られるジョブ型雇用の概念やメリット、問題点などを解説していきます。
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1.ジョブ型雇用とは?
ジョブ型雇用とは、勤務形態や職務内容など雇用にかかわる項目を明確に定め、定めた領域以外の労働実施はしないといった雇用スタイルです。
その名の通り、すでに存在する仕事に対し最適な人材をアサインするシステムのため、雇用契約の領域を超えた職務を雇用側は求めることはできず、労働者側もそれをおこなう必要がありません。限定的な条件を設けることで高い専門性を持つ人材を確保することがその狙いです。
また、ジョブ型雇用は仕事の範疇が明確化されていることから、人事評価や人材管理が容易です。コロナ禍をきっかけにテレワーク、リモートワークが浸透した現代において、適切な人材を採用しやすい雇用手法だといえるでしょう。
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2.ジョブ型雇用が注目されるようになった背景
ジョブ型雇用が注目されるきっかけとなったのは、2020年1月に日本経済団体連合会(経団連)が公表した報告です。
メンバーシップ型雇用を基本としつつジョブ型雇用を取り入れることによって、労働者が活躍できる場所や制度構築を推進する旨が含まれていました。
この報告を契機に、大手企業がジョブ型雇用を導入し、さらに注目を浴びることになりました。
上記以外にも、主に以下の3つのポイントがジョブ型雇用の注目度が上がった要因として考えられます。
2.1.テレワークの普及
新型コロナウイルスの影響により、従業員がオフィスを離れてそれぞれの場所で働くテレワークが普及したことは、ジョブ型雇用が注目されるようになった大きな要因の一つです。
従来のメンバーシップ型雇用の場合、それぞれの部門を率いる管理職が部下に役割を与え、業務にアサインするのが一般的でした。
このスタイルは同じオフィスで対面で働く場合には大きな不都合なく機能していましたが、部下の様子が見えないテレワークの環境下では難しいものです。
一方ジョブ型雇用であれば、あらかじめ一人ひとりが担うべき職務領域が明確化されているため、上司・部下双方とも業務管理に関するストレスは軽減されるでしょう。
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2.2.働き方の多様化
近年、働き方改革が本格化し、企業の副業・複業解禁や、ワークライフバランスを重視する制度の構築など、多様な働き方が推し進められています。
それにより、労働者はより自分らしい働き方を選択できるようになり、企業も慣習にとらわれない柔軟な人材採用に踏み切りやすくなりました。
そんな中、ジョブ型雇用は自らのスキルに対する正当な評価を得られる働き方として、専門スキルを持ち合わせるビジネスパーソンから注目されています。
2.3.スペシャリスト人材を求める企業の増加
技術革新が目覚ましい現代において、日本のみならず世界の舞台で通用する企業になるためには、スペシャリスト人材の確保は早急に対処すべき課題です。
メンバーシップ型雇用による新卒一括採用はゼネラリストの確保が比較的容易である半面、特定分野のスキルを極めたスペシャリストの確保には適していません。
ゼネラリストをゼロからスペシャリストに育て上げるには、時間や金銭的コストを大量に投入する必要があります。
その点、ジョブ型雇用によって特定の分野に精通しているスペシャリストを確保すれば、加速度的な事業拡大も見込めます。
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3.現在主流のメンバーシップ型雇用とは?
現状、日本の正社員雇用においての主流は「メンバーシップ型雇用」です。
メンバーシップ型雇用ジョブ型雇用とは反対に、勤務形態や職務内容、責任の範疇が明確化されておらず、会社の状況に合わせて流動的な対応が求められる雇用スタイルです。
「新卒一括採用」や「年功序列」といったキーワードが象徴的で、これは日本特有の採用システムとなります。
若い世代の労働力を大量に確保できる手段であるものの、専門性の高い人材の確保や育成が難しいことが課題となっています。
3.1.メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違い
メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の大きな違いは、仕事と人、どちらに視点を置くかにあります。
労働者側が会社や仕事に追従するメンバーシップ型雇用に対して、ジョブ型雇用はすでにある仕事をまっとうできる労働者をマッチングさせる形です。そのため、メンバーシップ型雇用では勤務地や勤務時間、職務内容などあらゆる雇用条件が変動する可能性があります。
一方、ジョブ型雇用はあらかじめ定めた勤務スタイルであるため業務に集中することができます。
また、報酬体系にも違いが見られます。メンバーシップ型雇用は、労働力の長期保有を目指すものであるため、年功序列による評価が一般的です。一方のジョブ型雇用では、本人のスキルに依存する評価となり、職務記述書と呼ばれる書類に記載される内容がすべてとなります。
日本においてはジョブ型雇用の導入はまだ十分ではありませんが、欧米ではさらに「タスク型雇用」といった新たな雇用形態が広まっています。タスク単位で人材をアサインする方式で、ジョブ型雇用よりも短期的なスパンで人材を雇用するスタイルです。
必要に応じて高い専門性を確保できるので、企業としては人材コストをおさえられるメリットがあります。ただし、労働者側から見ると、日雇いや短期派遣のような不安定さが否めないことから、懸念の声が上がっているのも事実です。
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3.2.実際に働くならどちらの雇用を選ぶ?
マイナビ転職が実施した「ジョブ型雇用と働き方への意識調査」(※)によると、勤務先において、現在の職種のままジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のどちらを選ぶか聞いたところ、メンバーシップ型雇用を望む割合が32.1%と、ジョブ型雇用の24.6%に比べてやや高いことが分かりました。
(【画像出典】マイナビ転職プレスリリース)
ただ、世代間で意識の違いがあり、30~50代ではメンバーシップ型雇用が上回るのに対し、20代はわずかにジョブ型雇用が上回る結果になりました。
(※2021年9月24日~9月27日、正規雇用者を対象にWEB調査を実施。有効回答数は700名(内訳:20~50代各175名))
また、ジョブ型雇用によって給料が上がると思うか聞いたところ、「変わらないと思う」が49.1%、「下がると思う」が13.3%となり、昇給は期待できないという見方が半数を超える結果となりました。
さらに、会社意向のジョブチェンジ(職務変更を伴う異動)についてどう思うかについては、メンバーシップ型でのジョブチェンジを伴う異動経験者は、複数の職務を経験することによって適性に気づく、スキルアップを実感するなどの傾向もあり、自分の職務内容を意識できている割合も高いことから、異動しながらキャリアの方向性を固められるのもメンバーシップ型雇用のメリットという声も挙がりました。
一方、新卒入社時に既にやりたいジョブがあるなど、キャリアの初期からジョブが定まっている人はジョブ型雇用への期待度が高い傾向にあることも分かりました。
この調査からも分かるように、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用は一概にどちらがいいと判断するのは難しく、どちらかといえば比較的若い世代からジョブ型雇用が広がっていく可能性があります。
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4.ジョブ型雇用のメリット
ジョブ型雇用の導入は働く側、企業側双方にメリットがあります。それぞれのメリットを具体的に見ていきましょう。
4.1.働く側のメリット
働く側のメリットとしては、主に以下の3つが考えられます。
4.1.1.自身の持つ専門的な知識やスキルを活かして働くことができる
ジョブ型雇用で採用されれば、自分の得意分野に集中して仕事に打ち込むことができます。
メンバーシップ型雇用では、時には望まない業務や働き方を強いられるケースもあります。しかし、ジョブ型雇用は雇用契約以外の業務を担うことがないため、自分の専門業務に専念できます。スキルを活かし効率的に成果を出せる環境が手に入ります。
メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に転身したい場合は、転職エージェントを活用して、自分に合う企業とのマッチングを行ってもらいましょう。
4.1.2.専門分野をより深く学ぶことができる
ジョブ型雇用であれば、働きながら学び続けることが可能になります。メンバーシップ型雇用のようなジョブローテーションは発生せず、業務は専門分野に限定されるため、日々専門分野のスキルを深められます。スキルが高まれば報酬に直結するため、さらなるモチベーションアップにもつながるでしょう。
4.1.3.異動や転勤がほとんどない
雇用形態などを契約時に定められるジョブ型雇用であれば、異動や転勤がほとんど発生しない働き方ができます。雇用契約締結時に定められた勤務地から変更を命じられることはありません。そのため、結婚している方や介護の必要があるご家族がいる方でも働きやすいでしょう。
4.2.企業側のメリット
企業側のメリットには以下のようなことが挙げられます。
4.2.1.スペシャリストを確保しやすい
専門分野に特化したスキルを持つスペシャリストの労働力を確保しやすくなるのが最も大きなメリットとなります。
未経験者を採用した場合、まずは仕事を教えるところから始まり、少しずつ仕事を任せながら育てていく必要があります。しかし、ジョブ型採用であれば今まさに欲しい人材をピンポイントで採用できるため、即戦力として活躍してもらえる可能性が高く、人材育成にかかるコストを削減することができます。
4.2.2.正当な評価がしやすくなる
従業員に対して正当な評価がしやすくなるのもメリットの一つです。
ジョブ型雇用で採用した場合、職務の範疇が明確化されるため評価の基準も一定になりやすく、会社や上司の主観ではない正当な評価が可能になると言われています。
また、職務の範疇が明確化していることで、雇用者と労働者の間にミスマッチが生じにくくなるため、トラブルのリスクを軽減できます。
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5.ジョブ型雇用のデメリット
多くのメリットがある一方で、ジョブ型雇用にはいくつかのデメリットもあります。
失敗を回避するためには良い面ばかりだけでなく課題についても把握しておきましょう。働く側、企業側双方の課題を見ていきます。
5.1.働く側にとっての大きな問題点とは?
働く側にとってのデメリットは、主に以下のようなことが挙げられます。
5.1.1.スキルを磨き続けなければいけない
ジョブ型雇用はメンバーシップ型雇用とは異なり、手厚い研修プログラムやフォローアップ制度などは用意されていません。そのため、労働者自身が能動的にスキルを身につける姿勢が必須です。
スキルと成果ありきの人事評価となってしまうため、企業側が求めるレベルに達していなければシビアな評価を受けることになります。
5.1.2.業務が無くなった場合の転職が難しい
ジョブ型雇用は仕事ありきで人材採用をおこなうため、担える業務がなくなればその時点で契約終了となる可能性もあります。
そうなると離職した状態で次の職場を探すことになるため、精神面でも金銭面でも負担が大きくなるでしょう。
そういった場合にはスキルを活かした転職がしやすい転職エージェントを活用することで、スムーズな転職活動を行いやすくなります。
5.2.企業側のデメリット
企業側のデメリットとしては以下のような点が挙げられます。
5.2.1.優秀な人材を長期保有するのが難しい
- 帰属意識の醸成が困難
- 臨機応変な組織編成ができない
- 優秀な人材を長期保有するのが難しい
ジョブ型雇用の強みは求める分野のスペシャリストを採用できることにありますが、そのぶん人材の動きは流動的です。従業員は自らのスキルをより高く評価してくれる場所を求めるため、メンバーシップ型雇用のように数十年在籍するケースは稀でしょう。
自社よりも良い条件を提示する企業が現れた場合は、入社から間もない時期であっても、他社に転職されてしまうことも考えられます。
5.2.2.臨機応変な組織編成が難しくなる
一時的に他部署や別支店で人員不足が発生した場合は、従業員の中から適切な人材を異動させて、業務にあたらせるといった対応を取るのが一般的です。
しかし、ジョブ型雇用で採用した従業員は業務範囲が決まっているため、他部署で人員が不足したからといって、簡単に異動させることはできません。
「1週間だけ違う部署に異動させる」「新規の案件が入るまでは違う業務にあたってもらう」といった、臨機応変な組織編成ができなくなるのもデメリットの一つです。
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5.2.3.制度や体制を見直す必要がある
日本においてジョブ型雇用を本格的に導入するには、現在主流となっているメンバーシップ型雇用における新卒一括採用を廃止することが必要となります。
しかし長年に渡り根付いたシステムを大幅に変更するのは現実的ではありません。
そのため、まずはジョブ型雇用に適用できる制度や体制づくりの推進に取り組むことが先決となるでしょう。具体的には、
- 新卒一括採用のあり方や採用人数の見直し
- 人事評価制度における正当性の検証
- 報酬制度の構築
などが考えられます。
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6.現在の仕事が合わないと感じた場合
現在の仕事が合わないと感じると、仕事がはかどらなかったりストレスが溜まったりする原因に繋がります。
ここでは、もし仕事が合わないと感じた時にできる対処法をご紹介します。
6.1.身近な人に相談する
仕事に関する悩みは、身近にいる友人や家族に相談をしてみましょう。
自分自身を理解してくれている人に相談をすれば、自分では気づかなかった客観的なアドバイスをもらえるかもしれません。
さらに、気軽に話し合えるという面でストレス解消にも繋がり、心も軽くなるでしょう。
6.2.自己分析をする
現在の仕事が自分と合わないのでは?と疑問が出てきたら、論理的に解決するために自己分析を行ってみましょう。
自己分析をすることで、自分にはどういった仕事が向いているのかが見えてきます。
今まで経験してきた仕事や持っているスキル、自分の長所や短所などを振り返ってみると、自分の強みや弱みが何か分かってきます。
これらを参考に転職活動を行えば、自分に合う仕事が見つかりやすくなるでしょう。
6.3.転職を考える
改善できる部分が重いつかなかったり、環境を変えたくなったりしたら転職も視野に入れましょう。
環境を変えることによって、自分の持つスキルを活かして今よりも条件の良い仕事に出会える可能性があります。
仕事に対する悩みから解放され、心が軽くなります。自分に合う仕事が見つかれば、スキルアップやモチベーション向上なども期待できるでしょう。
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7.転職エージェントを活用する
転職に関する悩みを抱えている場合は「転職エージェント」に相談するのもおすすめです。
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ジョブ型雇用・メンバーシップ型雇用、どちらもメリットとデメリットがあります。
大事なのは、「自分がどういう風に働きたいか」という部分なので、どちらが合うのか分からない場合は、キャリアアドバイザーに相談してみましょう。
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8.まとめ
ジョブ型雇用の浸透は、日本における働き方の多様化を一層推し進めるきっかけとなる可能性があります。一方、労働者にとっては望ましい人生を送るための一つの選択肢となる可能性もありますが、人事評価によっては厳しい結果を招くことにもなりえます。
ジョブ型雇用のメリットとデメリットをよく理解した上で、ジョブ型雇用が自分には向いているという方は検討してみてはいかがでしょうか。
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