近年TVのニュースやインターネット、新聞などの記事などでよく目にするようになった「働き方改革」という言葉。労働のあり方を変える新しい取り組みとして広く浸透し始めていますが、あなたはその目的やポイントを正しく理解していますでしょうか?
働き方改革は、企業の経営者や人事労務の担当者だけの問題ではなく、社会や組織の一員である私たちすべてがそれによってどんな影響があるのかを知っておくべき重要なキーワードです。
今回は、働き方改革の概要からメリット・デメリットなど、把握しておきたい内容を紹介していきます。
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目次
1.働き方改革ってなに?目的や背景は?
2.働き方改革の概要や課題とは
3.働き方改革のメリット
4.働き方改革のデメリット
5.働き方改革推進のために助成金が設定されている
6.今後、働き方改革にどう対応していければいいのか
7.働きやすい会社に転職するなら
8.まとめ
1.働き方改革ってなに?目的や背景は?
ここ数年、日本では人材不足が顕著でした。新型コロナウイルス感染拡大の影響で少し事情が変わってきているのですが、基本的には、総人口の減少にともない、労働力の中核を担う生産年齢人口(15歳以上65歳未)の減少が加速しており、多くの企業が慢性的な人材不足の影響をうけています。
その状況を鑑みて2019年4月に施行されたのが「働き方改革関連法」です。政府は、働き方改革の推進により、定年後の高齢者や子供をもつ女性の安定的な雇用や、働き方のニーズの変化や事情に幅広く対応できる社会の仕組みを創造することで、生産年齢人口の底上げを目指しています。
また、そうした取り組みにより日本経済や企業のさらなる成長を実現していくことが目標として定められています。
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2.働き方改革の概要や課題とは
働き方改革関連法は、働く現場において日本が直面するさまざまな課題を解決し、変革を目指しています。では、実際の働く現場にはどんな課題があるのでしょうか。また、それに対してどのような解決を目指すのでしょうか。
2.1.長時間労働の是正
人材不足の状況下にある企業では一人ひとりにかかる負担が大きく、長時間労働を強いられるケースが多くなっています。従業員の長時間労働が慢性化すれば、疲労が蓄積しパフォーマンスが低下するだけでなく、心身の健康を脅かすことにつながります。
また、子育て世代や介護者を抱える従業員にとっては、長時間労働と家庭の両立には高いハードルがあります。ライフワークバランスを維持できなければ少子高齢化にさらに拍車がかかり、日本経済や企業にとって一層困難な時代が到来します。
長時間労働を是正することにより、上記のような懸念を払拭し、安定的な労働環境を整えることが一つの目標とされています。
2.2.雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
これまで、正規労働者と非正規労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣社員)との間には、長きにわたってあらゆる労働条件において不合理な待遇差が存在していました。働き方改革では、そんな状況を打破することが求められています。
非正規労働者を正規労働者と同等の待遇で迎え入れることは、非正規労働者により強い労働意欲を持たせることにつながり、高いパフォーマンスが期待できるようになります。また、待遇差による不平等を排除することは結果的に安定的な企業経営にも結びつきます。
2.3.柔軟な働き方がしやすい環境整備
日本の高度成長を支えたといわれ続けてきた終身雇用制度は、もはや過去の産物です。終身雇用制度の柱である年功序列が崩壊しつつある今、人々の多くは一つの企業で定年まで勤めあげることに価値を見出せなくなり、企業が労働者を選ぶ時代から、労働者が企業を選ぶ時代に移り変わっています。
この時代に人々が求めるのは、それぞれのキャリアビジョンやライフプランを実現するための柔軟な働き方です。副業、兼業、テレワークの導入などにより従業員それぞれの立場や家庭、プライベートの時間を守る労働システムを構築することが求められています。
3.働き方改革のメリット
働き方改革の推進は、企業側、従業員側双方にさまざまな効果をもたらします。まずは、企業、従業員別にメリットを紹介していきます。
3.1.企業
3.1.1.生産性向上
長時間労働の是正を行うことで、従業員一人ひとりの生産性が向上します。限りある時間の中でいかに効率良く業務をこなしていくかという工夫が求められるため、従業員の意識は根本的に改革されていくはずです。
3.1.2.人材不足の解消
企業側は、今まで以上に優秀な人材確保のチャンスに恵まれます。働き方改革に積極的に取り組むことにより、求職者から「従業員のキャリアビジョンやライフプランを大切にする企業」と見なされ、人材採用の場面で高い評価が得られるからです。
3.2.従業員
3.2.1.キャリアビジョン、ライフスタイルに合った働き方の実現
自らのキャリアビジョンやライフスタイルに合った職場環境や働き方を自由に選択できるようになります。副業や新たなスキルの習得に励んだり、趣味や家族との時間を多く取ったりするなど、より人生を充実させるための時間が手に入りやすくなります。
3.2.2.子育てや介護との両立
これまでは子育て世代の女性や家族の介護問題を抱える従業員は仕事とプライベートの両立が難しく、働き方の見直しを余儀なくされるケースが多くありました。しかし、働き方改革により柔軟な働き方が実現することで、プライベートな事情による仕事への制限を減らすことができます。
4.働き方改革のデメリット
メリットの一方で、働き方改革にはデメリットも存在します。良い部分だけでなく、リスクとなり得る部分も理解しておきましょう。
4.1.企業
4.1.1.人件費の増加
働き方改革関連法では、非正規雇用労働者に対して正規雇用労働者と同等の待遇を与えることを定めています。これにより、ある程度の人件費の増加が避けられない企業もあるでしょう。
しかし、これはあくまでも短期視点でのデメリットです。長期視点でみれば、定着率のアップにより新規の採用コストや新人教育にかける手間が省け、それが従業員の心身の疲労やストレスの軽減にもつながって、業績の向上が期待できます。
4.1.2.違反すると罰則が適用される
働き方改革関連法の罰則の中には、違反した企業に対して罰金などを科すものがあります。そのため、企業側は確実に遵守しなければなりません。
4.1.3.導入コストがかかる
働き方改革を進める上で重要なのは、「業務をいかに効率化できるか」という点です。
しかし、業務効率化を図るには新しいシステムやツールが必要になるため、導入コストがかかる場合が多いです。
ただし、業務効率化に成功すれば、結果的に、働き方改革で問題点の一つとされる労働時間の見直しによる従業員の負担を軽減することに繋がります。
4.2.従業員
4.2.1.人件費の増加
労働生産性に重点がおかれ、時間単位での賃金制度でなくなってしまうと、今まで支給されていた時間外労働手当が減少することになります。残業代がないと生活がなりたたない人にとっては、今後の人生そのものを脅かす大きなデメリットとなります。
4.2.2.より成果が求められる
長時間労働の是正がおこなわれても、一人ひとりが抱える業務量が減るわけではありません。むしろ、状況や立場によっては増加する可能性もあります。そのため、従来よりも短い労働時間の中で、今までと同等か、あるいはそれ以上の成果を出すことが求められます。
5.働き方改革推進のために助成金が設定されている
政府は、企業の働き方改革の推進を後押しするため、さまざまな助成金制度を用意しています。ここでは、その一部を紹介していきます。
5.1.業務改善助成金
企業の生産性向上をサポートし、事業場内の最低賃金の引上げを目指す制度です。設備投資をおこない、それによって一定額以上引き上げが実現した場合、設備投資費用の一部が助成されます。
5.2.キャリアアップ助成金
非正規労働者に該当する有期契約労働者、短時間労働者、派遣社員などのキャリアアップを促進する制度です。非正規労働者の公正な待遇への取り組みを実施した企業に対し、規定額が助成されます。
5.3.時間外労働等改善助成金
生産性向上を目指し、労働時間削減や年次有給休暇取得の促進を行うことによって、働きやすい職場環境を整備することをサポートする制度です。長時間労働の改善に取り組む企業に対し、取り組み費用の一部が助成されます。
6.今後、働き方改革にどう対応していけばいいのか
働き方改革に対応していくためには、まず自らが置かれている現状を適切に把握することが重要です。現状を把握しなければ、課題を見つけることも、またそれを改善することもできません。
まずは、就業規則や雇用契約をあらためてチェックするなど、就業実態のリサーチからはじめましょう。その後、課題の精査をおこない、解決を図るための具体的なアクションに落とし込みます。
この際に重要なのは、現実的に実行可能、かつ自社にフィットする提案を考えることです。自社の社風や企業理念に沿った提案であれば、比較的スムーズに改革できるはず。そして、改革にあたっては随時進行状況を把握し、効果測定を行うと良いでしょう。
7.働きやすい会社に転職するなら
転職を考えている場合、仕事とプライベートを両立しやすい環境で働ける企業に転職したいですよね。
株式会社マイナビが運営する転職エージェントサービス「マイナビエージェント」は、キャリアドバイザーが企業の人事担当者や現場の社員、トップと交流を持っていることが多いため、実際の社内の様子や雰囲気を教えてもらうことができます。
企業のホームページや転職サイトなどを見ただけでは、実際にどのくらい働きやすいのかわからないことは多いです。
「働き始めたら残業が多かった」と後悔しないためにも、人間関係の良さや働きやすさを重視して転職先を探したいと考えている方は、転職のプロである「マイナビエージェント」のキャリアアドバイザーに相談してみましょう。
8.まとめ
働き方改革関連法の施行をきっかけに、仕事に対する柔軟な対応や新しい意識を持つことが、企業にも従業員にも求められています。
働き方改革は、働く人一人ひとりのキャリアアップや充実した生活の実現に多大な成果を発揮するものです。取り組みの定着まではさまざまなハードルがあることも想定されますが、今回紹介したメリット・デメリットを踏まえ、ぜひ新しい労働環境と将来のビジョンを創造してください。