コロナ禍で

コロナ禍で"社会的成功者"にメンタル不調者増--気軽に相談しづらい実態も

長引くコロナ禍の中、自由な行動が制限されたり、先行きが見通せなかったりして、精神面で不調に陥る人も多いようです。今回は、株式会社NTTデータ経営研究所が実施した「働く人のメンタルヘルスとサービス・ギャップの実態調査」(以下、同調査)を参考に、コロナ禍が働く人にもたらしたメンタル面での影響についてみていきます。

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同調査は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターのうち50名以上の企業に勤めている人を対象に、2021年6月28日~7月5日に実施されました(分析サンプルサイズ:1,022名(男性515名、女性507名))。

1.働く人のメンタル不調の実態(特にコロナまん延以降のストレス増加について)

同調査では、WHO-5精神的健康状態表を用いて調査参加者の精神的健康状態(メンタル不調の程度)を測定し、合計点数が13点未満の参加者については「精神的健康度が低い」とみなしたということです。集計の結果、463名(45.3%)において精神的健康度が低い状態にあることが分かりました。

さらに「コロナまん延以降にストレスや悩みが増加しましたか」という質問を行ったところ、精神的健康度が低い人のうち、6割にあたる277名においてコロナまん延以降にストレスや悩みが増加していることが分かりました。特に年齢や就労状況、同居人の有無によってストレスなどの増加有無が異なる結果となっています(図表2参照)。

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(【画像出典】NTTデータ経営研究所プレスリリース)

2.ストレスチェックテストや社内外の相談窓口におけるサービス・ギャップの実態

次に精神的健康度が低く、コロナまん延以降にストレスや悩みが増加している人々における、メンタルヘルスケアへのサービス・ギャップの実態を明らかにしました。

まず前提としてサービスの提供状況に関する過去の調査によると、50名以上の企業では、91.5%がストレスチェックテストを実施しており、73.3%が事業場外資源も含めて労働者に相談先を提供していることが分かりました。

次に精神的健康度が低い人々のうち、コロナまん延以降にストレスが増加した群(以下、ストレス増加群)とストレスの増加はみられない群(以下、ストレス増加なし群)とで比較分析を行いました。

その結果、ストレス増加群はストレスチェックテストや社内外の相談窓口を認知しているものの、回答したり利用したりすることへ抵抗を感じていることが分かりました。

さらにストレスの増加有無にかかわらず、6-7割が社内外の相談窓口を利用したことがないことが明らかとなりました(図表3参照)。

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(【画像出典】NTTデータ経営研究所プレスリリース)

抵抗を感じる理由として、社内の相談窓口に関しては「面談の内容が周囲に漏れるのが不安だから(24.4%)」「面談でどのようなことをするのか分からないから(23.1%)」という回答が多く、社外の相談窓口に関しては「そもそも社外のカウンセラー等の専門家が何かよく分からないから(24.4%)」「相談窓口でどのようなことをするのか分からないから(15.6%)」という回答が多かったということです。

3.NTTデータ経営研究所による考察

NTTデータ経営研究所では、同本調査の結果から、コロナ以降のメンタル不調者とサービス・ギャップの特徴について掴むことができたとし、以下の考察を行っています。

まず、コロナまん延以降にストレスなどが増加した人々の特徴として、40-50代で雇用が安定しており、テレワークができて同居者もいるという状況は、安定した生活を送っているように考えられものの、昨今の社会情勢の大きな変化に伴い、「これまで安定した環境に長くいた分、かえって環境変化に対するストレスや悩みを感じやすくなっていることが推察できる」としています。

過去の調査では、失業者や配偶者がいない中年男性の自殺率の高さ、また、コロナのまん延以降は若者の自殺数の増加が指摘されていますが、同調査を通して、「過去の調査とは異なる層においてもコロナまん延以降のメンタル不調のリスクが見受けられ、ケアが必要であることが示唆される」(NTTデータ経営研究所)。

さらに、コロナまん延以降にストレスなどが増加したメンタル不調者におけるサービス・ギャップの実態を明らかにした調査の結果として、ストレス増加群の相談窓口の利用率は3割程度と低く、背景には主に三つの課題があると考えられるとしています。

一つ目は、社内の相談窓口の場合、面談した内容が周囲に漏れてしまうのではないかという不安、二つ目は、社内外関係なく相談窓口に携わる専門家や面談での実施内容が分からないという不安、三つ目は、社外の相談窓口への認知率は3-4割程度であるように認知の低さです。

NTTデータ経営研究所は、サービス・ギャップを解決する一つの手がかりとして、「近年、行動経済学で注目されている「ナッジ」の活用が考えられる」とし、「明らかとなった三つの課題においては、背景の一つに認知バイアスが想定される。各認知バイアスをふまえて「ナッジ」を活用すると、図表4に示されるメンタルヘルス対策が考えられる」と分析しています。

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(【画像出典】NTTデータ経営研究所プレスリリース)

同調査では企業のメンタルヘルス対策として社内外の相談窓口に対象を絞りましたが、実際には相談窓口だけではなく、呼吸法などのセルフストレスケアや上司や同僚といった身近な人への相談など、状況に応じたさまざまなケアがあります。

しかしながら、NTTデータ経営研究所では、「従業員が自身に合うメンタルケアを選択することは難しいことが想定される」とし、「どのような場合にどのケアを選ぶとよいのか、従業員の意思決定をサポートするガイドを作成することも有効だろう。さらに40-50代の"社会的成功"者は、これまでメンタルヘルスを相談することが当たり前ではない上に、今まで上手くやってきた自分が不調になるという状況に置かれて、認知的なギャップ(認知不協和)が発生していることが考えられる」との指摘をしています。

NTTデータ経営研究所は「安心して気軽に相談することができるという「心理的安全性」を担保することが重要である」と提言しています。

(【記事出典】NTTデータ経営研究所プレスリリース「「働く人のメンタルヘルスとサービス・ギャップの実態調査」コロナ禍で40-50代の「社会的成功者」にメンタル不調者が増加~必要なケアが届いていないサービス・ギャップが明らかに~」)

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