昇格とは?昇進・昇給との違いや昇格試験合格のポイントを解説

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会社によっては、「昇格」という制度が設けられていますが、よく耳にする「昇進」や「昇給」との違いはどこにあるのでしょうか。本記事では、「昇格とはどのような会社が、何のために設けている制度か」「昇格するとどうなるか」、また「昇格するためにはどうすればいいのか」などの疑問に答える形で、昇格について詳しく説明していきます。

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1. 昇格とは

昇格(読み方:しょうかく)とは、会社で規定している「職能資格制度」において等級が上がることです。昇進や昇給とは異なる点に注意が必要です。

【出典】厚生労働省「職業能力評価基準について」

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1.1.昇格・昇進・昇給の違い

昇格と関連する用語に「昇進」「昇給」がありますが、それぞれの意味と、昇格との違いを確認しておきましょう。

・昇格

会社が職能資格制度を採用している場合、規定上の条件を満たす従業員を「昇格」させます。

通常は昇格すると、「総合職◯級」「一般職◯級」などの級数が増え、業務上の権限やそれに伴う責任が大きくなります。そのため、昇格した場合は昇給を伴うことが多い傾向です。

昇格は従業員の職務遂行能力に対する、社内における評価である(対外的に示すためのものではない)ことが特徴です。

・昇進

昇進とは、会社によって決まっている「職位」が上がることです。「課長に昇進する」などのように「役職」が上がることとほとんど同一と考えていいでしょう。

課長や部長などの肩書が名刺などにも記載されることからも分かるように、職位・役職は対外的に示す目的もあるものです。この点が、内部等級を基準とする昇格との大きな違いです。

昇進すると、上位の仕事や部下を含めたチーム(◯◯課・◯◯部など)の管理・監督を任せられる立場になります。役職手当が付くなど、昇格と同様に昇給がセットになっている場合が多いでしょう。

・昇給

昇給は、文字通り給料が増えることです。勤務年数によるもの、昇格または昇進による昇給など昇給の事由はさまざまです。

昇格・昇進は昇給を伴うケースが多いのですが、昇格・昇進がなくとも、勤務期間や業務範囲の拡充・変更などにより昇給することもあります。

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1.2.日本型終身雇用制度と昇格の関係

昇格を規定するのは会社が採用している職能資格制度です。「総合職◯級」「一般職◯級」といった「等級」は、公的な資格ではなくあくまで社内での評価であるため、他の会社に示すためのものではありません。

職能資格制度は、その会社での経験値や実績・貢献・能力が問われるため、日本型の終身雇用制度と強く結びついています。

1.3.公務員の昇格について

公務員には昇格昇給と定期昇給という2種類の昇給制度があります。昇格昇給は一般企業の職位にあたる「級」が上がるとともに昇給する制度であり、能力評価や在職期間によって決まります。なお、公務員の役職が上がることは「昇任」と言います。

一方、定期昇給は、文字通り定期的(年1回)に行われる昇給であり、人事評価や業績に基づいて昇給の程度が決定します。

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2.昇格基準を定める職能資格制度とは

職能資格制度は、多くの場合、終身雇用制度を前提とした評価制度です。

従来の日本型の人材マネジメントでは、その企業独自の知識や仕事の内容・進め方などの特殊知識・技能を持った人材の育成を重視します。そのため、職能資格制度を用いて社内の人材をランク付けしているのです。

ここでは、一般的な職能資格制度の評価基準を見ていきましょう。

2.1.成績評価

売上金額、目標達成率、実行スピード、ミスの少なさといった、具体的な数値で図ることができる評価基準です。

本人はもちろん、第三者からも分かりやすい基準のため、労働意欲のアップに繋げられやすい項目です。

2.2.情意評価

仕事への意欲や態度を測る評価基準です。周囲へのサポート、協調性、積極性といった面を評価します。

主観が入りやすく、評価する人によってもっとも差が出やすい項目なので、運用には注意が必要です。

2.3.能力評価

仕事に対してどれだけの能力を発揮できたか、どれだけ成長できたかなどを図る評価基準です。

企画力や提案力、理解力といった点を評価します。仕事を進める上での、自己啓発にも有効です。

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3.職能資格制度のメリット・デメリット

上記のような基準が設けられている職能資格制度には、企業にとってどのようなメリット・デメリットがあるのか、それぞれみていきましょう。

3.1.職能資格制度のメリット

職能資格制度には、主に以下のようなメリットがあります。

  • 終身雇用を前提としているため、社員が「会社内での業務遂行能力を高めること」に専念できる
  • 昇格へのモチベーションがそのまま知識・技能の習得につながる
  • 社員育成の計画・目的と昇格の制度を関連付け、社員の昇格への意欲を企業の成長・安定に直結することができる
  • 短期的な「業績」だけでなく、長期的な知識・技術の習得や会社への貢献を評価することが可能になる
  • 職能資格制度を通じて、従業員に求める「社員像」を伝えられる

結果的に企業は、会社に必要な特殊な技能・知識を身につけた社員を長期的・計画的に育成することができます。

3.2.職能資格制度のデメリット

さまざまなメリットがある一方で、職能資格制度にはデメリットもあります。

  • 評価基準があいまいになりがちで、評価者の主観的なものになりやすい
  • 会社特有の業務の練度などを評価するため、年功序列的な側面が強調される
  • 実績主義的評価(業務の結果、会社にもたらした売上や利益などを評価)と必ずしも一致しない
  • 職能資格を判定するための手続きなど、特別の管理体制が必要
  • パート・アルバイトのような、長期的な雇用ではない人材の評価方法としては機能しにくい

企業としては、過度に主観的にならず、実績とのバランスや短期的な労働者のモチベーションを意識した制度運用が求められるところです。

4.「昇格試験」が設けられていることが多い

昇格するためには通常「昇格試験」を受け、合格する必要がある企業や官庁が多いです。ここからは、昇格に必要な「昇格試験」について説明します。

4.1. 昇格試験の概要

昇格試験は多くの会社で、年に1~4回ほど行われます。試験の内容・受験資格などはさまざまで、企業方針によってどのような人材を昇格させるのかも異なります。

それでも共通する考え方はあります。会社が試験を行う目的・昇格試験の基本的な事項を押さえて挑戦するようにしましょう。

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4.2. 昇格試験の目的は?

まず、企業がなぜ昇格試験を行うのかを知っておくことが大切です。「昇格試験は時代遅れだ、くだらない」といった意見が聞かれることもありますが、試験の実施には合理的な理由がある場合も多いです。

企業が昇格を決定するために試験を行う主な理由・目的は3つあります。

  • 客観性・納得性の担保
  • 適性の事前確認
  • 将来性の見極め

客観性・納得性の担保というのは、「上司・管理職などの主観的な印象や個人的判断」で昇格できた、またはできなかった、といった本人や周囲の不満や反発を招かないようにする意図の現れです。

適性の事前確認は、現在の職務に対する知識・技能の習熟度や理解度に加えて、それまでより重要な仕事を任せられるかどうかを判断する目的を指します。「現状の仕事がこなせる」だけでなく、「もう一つ上のレベルの仕事ができる」人材が昇格に値します。

将来性とは、「更に上を目指す意欲とポテンシャルを持っているか」ということです。職能資格制度における昇格は「卒業制度」とも言われます。終身雇用の会社において、卒業=退職ではない以上、その意味するところは「次の段階への挑戦」を促すことです。向上の意識があることは、長期的な人材育成を目指す企業にとって重要な項目となります。

5.昇格試験の方法は主に3つ

昇格試験は、客観性・納得性を担保しつつ、社員の適性と将来性を評価することが目的でした。そのためにどのような試験が行われているのでしょうか?

代表的な3つの試験について、詳しい内容を見ていきましょう。

5.1.小論文

適性・将来性を判断するために、小論文の提出を求めることがあります。小論文は、締め切りを定めて提出させる場合と、試験会場で時間内に書かせる場合があります。

頻出するテーマは『職場での自分の役割と今後の課題』『務める部署の現状と課題・その対策』のように、「自分と周囲の仕事を客観的にみつめ、課題を抽出して解決策を提示する能力を確認するもの」が多く見られます。

上級になると、『会社全体が抱える問題・課題とその解決法の提示』『社会の中で会社が果たすべき役割・そのための課題抽出と解決』といったようなテーマが与えられることもあります。

5.2.性格検査・能力検査

業務に適した性格や能力を有しているか、またポテンシャルがどの程度かを検査するテストです。まとめて「適性検査」とも呼ばれます。一問一答形式・選択式であることが多く、客観性に優れていることが特徴です。試験というよりは、文字どおり受験者の能力・適性の傾向を数値化して判断材料とするための検査です。

一般的に、性格検査では、仕事へのモチベーションや組織風土・企業理念とのマッチング状態を測定し、能力検査は、効率性や問題解決の能力を判定します。また、時事問題や経済問題など一般常識問題が含まれる場合もあります。

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5.3.経営者や役員との面接

面接による評価は面接官の主観が入りやすく、客観性に劣るものの、現在でも多くの企業で重視されている試験方法です。職能資格制度の評価では、その性格上、仕事への姿勢・業務態度などの情実的な部分も影響します。それらを総合的に判断する上で、面接が重んじられるのはもっともなことと言えます。

面接では、『仕事の上で心がけていること』『これまでの仕事で大変だったこと・対処したこと』など、仕事とは全く関係のないことを聞かれることもあります。

面接に正解はありません。そのため、どのような質問にも理路整然とよどみなく答えられればそれに越したことはないのですが、実際はそううまくいかないでしょう。面接ではまず、人柄を見られています。取り繕わず、率直な回答を心がけた方が良い結果を生む可能性が高くなります。

5.4.語学試験

グローバル化が進む現代では、英語をはじめとする語学試験を昇格試験に含める企業も増えています。特に、海外との取引が多い企業や海外拠点・外国人従業員が多い企業では、語学試験が実施される可能性が高いでしょう。

試験の内容はさまざまですが、TOEICなどの外部の試験を利用することが多いです。TOEICの点数を昇格条件の1つとしている企業もあります。また、英語での面接などが行われることもあります。

5.5.プレゼンテーション

欧米の企業では昇格試験にプレゼンテーションが含まれるケースがよく見られますが、日本でもプレゼンテーションを試験項目に導入する企業が増えていると言われています。

プレゼンテーションでは、小論文と同じように「自身が携わる業務における課題と対応策」「企業のこれからについて」といったテーマで行われることもあれば、自身の実績や功績についてプレゼンテーションすることもあります。

プレゼンテーションを行うことによって、従業員の論理的思考力を含め、人前で説得力のある意見を展開できるかどうかを見極められます。他の試験項目もそうですが、プレゼンテーションは特に事前の準備が大切となってくる項目です。

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6.昇格試験に合格するために必要なこと

昇格に値すると判断されるためには、まず「周囲とのコミュニケーションが円滑にできていること」「現在の仕事を丁寧かつ効率的にこなしていること」などが最低限の条件となります。

さらに、昇格するためには、昇格試験に合格する必要があります。昇格試験に受かる人はどのような人なのか、試験合格に必要な能力について見ていきましょう。

6.1. 多角的な視点

小論文、性格・能力検査、面接のいずれにおいても、物事を多角的な視点から見る能力が欠かせません。上司・同僚・取引先・顧客など、自分だけでなく他の人の視点でも自分や周囲の仕事や状況を分析できるかが重要です。「他人の目を気にする」のではなく「客観的に分析して行動に反映する」ことを心がけましょう。

また、仕事以外の日常生活においても仕事のヒントを見出すような感覚を身につけるよう心がけると、自然と多角的な視点が身についてくるでしょう。

6.2. 論理的思考

小論文や面接で自分の考えたこと、感じたことを説明するときには論理的な思考が大切です。論理的とは、結論がはっきりしており、それに向かって段階的に話が発展していくことで、ただ理屈っぽく話すこととは違います。

例えば『今までの仕事で大変だったこと・解決に向けた努力の経験』を問われた場合、代表的な回答の仕方は「◯◯のプロジェクトでつまずきがありましたが、□□の取り組みを行ったことにより、プロジェクトがスムーズに進みました。その中で私は△△の役割を果たしました。」という内容となります。

その上で、必要なエピソードを付け加えて話に血肉を付け、不必要な話題は省く、ということができれば、面接でも小論文でも評価を得やすいでしょう。日々の会話やメールなどでも論理的な話し方・書き方を心がけるようにするとよいでしょう。

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6.3. 問題の本質・課題を捉える力

仕事上で発生した問題を解決、また良くない状況を改善するには、まず問題の本質を捉え、課題を抽出しなければなりません。昇格してより上のクラスで仕事をするためには、こうした能力の有無が問われます。業務の流れの中で、あるポイントでのミスが頻発しているときに、そこで働く人をただ責めるのでは不十分です。

本質を捉えるとは、「ミスなど問題の原因がどこにあるのか」、例えば「人にあるのか、業務フローにあるのか、別のシステム上の問題なのか」などを深堀りして把握することです。その上で、問題解決の道筋を見つけることが業務改善につながります。企業が求めているのはこうした本質を把握する能力をもった人材です。

7.昇格が難しいと感じたときの対処法

仕事を頑張っても上司や会社に認めてもらえず、昇格できずに悩んでいる方は、今の仕事が合っていない可能性もあります。部署を異動する、資格を取得するなどして、それでも難しい場合は転職を考えてみましょう。

7.1.部署異動を申し出る

部署によっては、昇格の基準があいまいでなかなか昇格させてもらえない場合もあります。他部署の同期がどんどん昇格していく中、自分だけが昇格できないようであれば、部署異動を申し出るのも1つの方法です。

部署を異動することで、自分の能力がより発揮できる職務を任せてもらえるかもしれません。また、上司や先輩との人間関係に悩む方にも、部署異動は効果的です。

7.2.資格を取得してみる

資格を取得することで、昇格できる可能性もあります。職務のスペシャリストであることを証明できれば、任せてもらえる仕事も増えて活躍の場が広がります。また、資格取得に向けた勉強を続けたという努力が認められて、仕事への意欲が評価されることも期待できます。

まずは、今の仕事に最適な資格が何かをしっかりリサーチしましょう。働きながらの勉強は大変ですが、資格取得は直近の昇格だけではなく、将来のさらなるキャリアアップにもきっと役立ちます。

7.3.転職を検討する

頑張って仕事をしているにもかかわらず、一向に昇格できないという場合は、そもそも今の仕事が合っていない可能性もあります。思い切って転職したことで、スキルを発揮してキャリアアップできたという人もいます。

しかし、自分の能力に合った仕事が見つかるのか、不安になる人も多いかもしれません。そんなときは転職エージェントに相談することをおすすめします。

株式会社マイナビが運営する転職エージェントサービス「マイナビエージェント」では、幅広い業界の中から一人ひとりに最適な企業を紹介するために面談を行なっています。

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8.昇格や昇進を望まない人も増えている?

働き方の多様化に伴い、昇格や昇進に対する意識にも変化が見られるようになりました。近年は、必ずしも昇格や昇進を望まない人が増えています。実際に、ここではその理由と、昇格や昇進を断りたいときの対処法を解説します。

8.1.昇格や昇進を望まない理由

昇格や昇進を望まない主な理由としては、以下のようなことが考えられます。

  • パート・アルバイトなど、会社に在籍するのは短期間であることが前提のため、昇格や昇進に興味がない
  • 人生の価値を仕事以外のことに見出しており、責任のある仕事や大変な仕事を敬遠している
  • 将来的に転職や独立を計画しているため、長期的な雇用を望んでおらず、特有の知識や技術の習得に積極的でない
  • 幅広い分野で働くことを望んでいるため、特有の知識や技術の習得に積極的でない

人生観や仕事に対する態度が各人各様であるように、会社における地位や待遇に対する考えもさまざまです。

特にこれからの社会においては、雇用する側である会社とそこで働く社員が、お互いの考え、仕事に対するスタンスをよく理解することが重要です。

8.2.昇格や昇進を辞退する方法

上記のような理由で、昇格や昇進を断りたいという方は多いでしょう。しかし、一般的に昇格や昇進に関しては、労働契約書に詳細が記載されていますそのため、従業員に拒否権はなく、基本的に辞退することはできません。もしも、正当な理由なく辞令を拒否した場合は、懲戒処分の対象となる可能性もあります。

しかし、「両親を介護中で負担を増やしたくない」「体調が悪く責任ある仕事は極力避けたい」「まだ能力が足りておらず昇格には不安がある」といった場合は、辞退したい気持ちを正直に伝えてみるのも一つの方法です。企業によっては、従業員の事情を考慮してくれることもあるでしょう。

【関連記事】「ジョブ型雇用とは? メンバーシップ型雇用との違いをわかりやすく解説」

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9. まとめ

終身雇用を前提とする会社はその多くが、自社の業務遂行に特化した人材を長期的に育成する目的で、昇格の基準を定めた職能資格制度を採用しています。

昇格のためには昇格試験をパスしなければなりませんが、試験に合格するには、多角的な視点で論理的に考え、問題の本質を捉える能力を示す必要があります。また、その会社での総合的な業務遂行能力が問われます。

この記事で学んだ昇格の基本を自分が働く会社に当てはめ、会社のニーズと自分の希望に適した判断・行動に結びつけてください。

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