賃上げ(昇給)とは? 定期昇給などの昇給制度、2023年の昇給率・平均額も紹介--2024年はどうなる?

賃上げ(昇給)とは? 定期昇給などの昇給制度、2023年の昇給率・平均額も紹介--2024年はどうなる?

会社を選ぶ際に気になる点が賃上げ(昇給)制度の有無です。仕事をする以上、できるだけ多くの収入を得たいと思うのは当然ですし、将来どのくらいの給与をもらえるか予測が立ったほうが人生設計をしやすいでしょう。

本記事では、日本で主として行われている主な賃上げの手法である定期昇給ベースアップとはどのようなものか、またその違いについて解説します。さらに、その他の昇給制度や最新の昇給率・平均額についても詳しく解説します。

昇給制度の基本を押さえて、仕事選び、会社選びに役立てましょう。

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1.賃上げ(昇給)とは

賃上げ(昇給)とは従業員(被雇用者)の賃金を上げることです。

そうした中、毎年一定の時期に行われる昇給を定期昇給といいます。

一方、定期昇給と混同しがちなベースアップという賃上げの手法もあります。

主な昇給の制度である両者の違いを把握し、会社(雇用者)がどのような形で賃上げしているのか把握しておきましょう。

1.1.定期昇給

定期昇給では通常、会社によって昇給の規定が定められており、勤続年数や昇格の度合いに応じて給与が決定されます。

そのため会社側は、従業員1人に支払う生涯賃金をある程度予測することができます。これは大きな利点です。

しかし定期昇給のデメリットとして、会社の業績に関わらず、勤続年数などによって半自動的に給与がアップしていくことが多いため、従業員のモチベーションにつながりにくい事があげられます。

1.2.ベースアップ

ベースアップは、個々の社員の評価等に関わらず従業員全員の賃金水準を引き上げる制度です。たとえば、「基本給を◯%増加させる」というように行われます。

一律なので計算が簡単であること、物価上昇などに応じて会社の利益を従業員に配分できることがメリットです。

半面、ベースアップによる基本給の底上げは会社にとって固定費の大きな増加となり、一度ベースアップした給与はなかなか下げられないため、将来的に大きな負担となる場合があります。

ベースアップについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

【関連記事】「【ベースアップ(ベア)とは】定期昇給との違いや実施企業が減少している理由」

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2.昇給制度の種類

昇給には定期昇給だけではなく、他にも様々な種類があります。

たとえば、臨時昇給のように不定期的に行われる昇給もあります。自動昇給考課昇給は定期的に行われることが多く、定期昇給の一部とも言えます。これらは昇給の理由に着目した概念です。

特別昇給が別段の功労があったときなどに行われるのに対し、普通昇給は通常の業務の範囲内で、資格取得などの技能向上や勤続年数が一定に達した場合に行われます。

このように、昇給制度にはさまざまな種類があります。ではここから、種類ごとに詳しく見ていきましょう。

2.1.臨時昇給

臨時昇級とは、会社の業績が好調な場合などに臨時で行われる昇給です。定期昇給と対立する概念として用いられる用語と言えます。

業績好調により全社員の基本給を一律引き上げれば、それがすなわちベースアップです。一部の従業員の功労を認めて昇給すれば、特別昇給となります。

2.2.自動昇給

自動昇給は勤続年数・年齢に応じて自動的に給与が増える仕組みです。能力や業績に関係なくすべての従業員が定期的に昇給します。定期的に行われるため、定期昇給の一部は自動昇給に該当します。

自動昇給がある会社では、将来の給与がある程度予測できます。これは従業員にとっても会社にとってもメリットになるでしょう。

ただし、業績に関わらず昇給が約束されているため、モチベーションのアップにはつながりにくいという欠点もあります。

【関連記事】「仕事へのモチベーション、どうしてもやる気のない時はどうすればいい!?」

2.3.考課昇給

考課昇給は、査定昇給とも呼ばれ、業績や勤務態度の評価によって行われる昇給のことです。定期昇給は考課昇給を含む場合があり、その場合、定期的に査定が行われ、昇給の可否・昇給率が決定されます。

こちらは査定によって昇給の額が変わるため、従業員のモチベーションにつながります。しかし、査定の方法が客観的であることが求められるほか、査定作業そのもののコストがかかります。

2.4.普通昇給

普通昇給は、技能・業務遂行能力が向上したときなどに採用される昇給です。考課昇給・自動昇給との区別が曖昧に感じられますが、普通昇給という言葉は通常、次項で説明する特別昇給との違いを強調して用いられます。

2.5.特別昇給

特別昇級とは、会社に特別な貢献、または格別の実績や功労があったときなどに特別に行われる昇給です。これと異なり、通常の事由で行われるのが普通昇給となります。

勤務成績が格別良好であった場合、通常の昇給規定で2段階以上アップする(飛び級)規定が設けられている点なども特別昇給の特徴です。

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3. 昇給額・昇給率とは?

昇給額は「以前の給与からの増額額」、昇給率は「以前の給与からの増加率」のことです。

それでは、昇給額と昇給率の計算方法や決定方法について詳しく解説していきます。

3.1. 昇給額・昇給率の計算方法

昇給額・昇給率の計算方法詳細
昇給額 ・昇給後の給与額 - 昇給前の給与
・昇給率 × 昇給前の給与額
昇給率 ・昇給後の給与額 ÷ 昇給前の給与
・昇給額 ÷ 昇給前の給与額

昇給額は、昇給後の給与額から昇給前の給与額を差し引いて求められます。また、昇給率と昇給前の給与額を乗じることでも昇給額を求めることが可能です。

例えば、昇給前の給与額が20万円、昇給後の給与額が20万2,000円の場合、20万2,000円 - 20万円 = 2,000円が昇給額と求められます。(昇給率1% × 昇給前の給与額20万円 = 2,000円)

昇給率は、昇給後の給与額から昇給前の給与額を除することで求められます。また、昇給額から昇給前の給与額を除することでも求めることが可能です。

例えば、基本給が昇給前20万円、昇給後20万2,000円の場合、20万2,000円 ÷ 20万円 = 1.01 = 101%から100%を引いた101%-100%=1%が昇給率と求められます。(昇給額2,000円 ÷ 昇給前の給与額20万円 = 0.01 = 1%、としても昇給率が求められます)

3.2. 昇給率は各企業の業績や各業種の状況により異なる

昇給率は、業種や企業ごとの業績により異なります。

一般社団法人 日本経済団体連合会「2021年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)」では、大手企業の昇給率が1.84%で8年ぶりに2%を割る結果と発表されましたが、これは新型コロナウイルス感染症の影響による各企業の業績不振が主な原因でした。

一方、2022年の集計結果では大手企業の昇給率が2.27%2023年の集計結果では大手企業の昇給率が3.99%という結果となりました。昇給率が前年比でアップした理由ですが、大手企業においては新型コロナウイルスによる悪影響が徐々におさまってきたこと、物価上昇に伴って賃上げする企業が見られたことなどが挙げられます。

また、2023年においては大手企業の中でも造船の昇給率が5.66%だったのに対し、紙・パルプは2.87%と大きく差が開きました。

これらのことから、昇給率は各企業の業績の推移や、各業種の状況に影響を受けて決まる要素が強いことが分かります。

【出典】一般社団法人 日本経済団体連合会「2021年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)」

【出典】一般社団法人 日本経済団体連合会「2022年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)」

【出典】一般社団法人 日本経済団体連合会「2023年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)」

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4. 2023年の業種別の昇給率と昇給額、平均はどれくらい?

昇給率と昇給額の平均について解説していきます。

● 大手企業の平均昇給額
● 中小企業の平均昇給額
● 公務員の平均昇給額
● 昨年との比較

それぞれの平均昇給額や比較を詳しく見ていきましょう。

4.1. 大手企業の2023年の業種別平均昇給額・平均昇給率

以下は、従業員500人以上、主要21業種大手241社を対象に実施された調査結果による業種別の平均昇給額と平均昇給率です。

業種平均昇給額平均昇給率
非鉄・金属 12,726円 4.03%
食品 13,573円 3.94%
繊維 14,911円 4.58%
紙 ・ パルプ 8,783円 2.87%
印刷 12,371円
4.01%
化学 14,961円 4.45%
ゴム 8,305円 2.89%
鉄鋼 8,550円 2.79%
機械金属 16,077円 5.03%
電気 11,541円 3.42%
自動車 13,383円 4.02%
造船 18,990円 5.66%
建設 23,389円 4.51%
商業 12,974円 3.28%
私鉄 11,718円 3.59%
貨物運送 - 4.00%
総平均 13,362円 3.99%

【出典】一般社団法人 日本経済団体連合会「2023年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)

4.2. 中小企業の2023年の業種別平均・平均昇給率

以下は、従業員数500人未満の17業種754社の中小企業を対象に実施された調査結果による業種別の平均昇給額と平均昇給率です。

業種平均昇給額平均昇給率
非鉄・金属 9,023円
3.37%
機械金属 8,841円 3.29%
電気機器 8,168円 2.95%
輸送用機器 7,533円 2.88%
化学 7,232円 2.68%
紙・パルプ 8,476円 3.34%
窯業 6,640円 2.32%
繊維 6,870円 2.90%
印刷・出版 8,023円 2.56%
食品 8,440円 3.24%
その他製造業 10,701円 3.70%
商業 7,919円 2.99%
金融 6,561円 2.72%
運輸・通信 5,857円 2.26%
土木・建設 9,108円 3.42%
ガス・電気 6,806円 2.40%
その他非製造業 6,077円 2.39%
総平均 8,012円 3.00%


【出典】一般社団法人 日本経済団体連合会「2023年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果(加重平均)」

4.3. 2023年の公務員の平均昇給額

以下は、国家公務員の給与(棒給)の年度別の昇給額と昇給率です。

年度昇給額昇給率
2023年度 3,869円 0.96%
2022年度 921円 0.23%
2021年度 -19円 0.00%
2020年度 -164円 -0.04%
2019年度 387円 0.09%
2018年度 655円 0.16%
2017年度 631円 0.15%
2016年度 708円 0.17%
2015年度 1,469円 0.36%
2014年度 1,090円 0.27%
2013年度 76円 0.02%
2012年度 -273円 -0.07%

【出典】内閣官房「国家公務員の給与(令和5年版)」

【出典】人事院「給与勧告の仕組み」

4.4. 2023年と2022年の比較

以下は、2023年度と2022年度の平均昇給額の比較をしたものです。国家公務員は年度別の直近で公表されている2023年度の昇給額を「差額」に記載しています。

昨年との比較大手企業中小企業国家公務員
2023年度 13,362円 8,012円 -
2022年度 7,562 5,036 -
2021年度 - - -
差額 +5,800円 +2,976円 +3,869円

上記の通り、前年度と比較すると事業規模問わず昇給額が増加していることがわかります。
昇給額が増加しているということは、多くの企業で業績が昨年度よりも伸びたことを意味します。

また、国家公務員の2023年度の昇給額は「3,869円」です。公務員の給与は、人事院が民間の4月分の給与(月例給)を調査・比較をして得られた較差を埋める勧告により定められます。

2022年が「+921円」であるのに対して2023年は「+3,869円」であるので、民間企業に勤めている人の給与が昨年よりも増加したことをあらわしています。

物価上昇基調が続く中、2024年の昇給率や昇給額がどうなるか従業員にとっては死活問題のため、春闘(※)の行方が気になるところです。

(※多くの企業にとって新年度となる4月に向けて、労働組合が労働条件について要求し、使用者(経営者)と交渉し決定すること。【出典】日本労働組合総連合会(連合)WEBサイト)

一方、日本の企業の大半は中小企業ですし、労働組合のない企業もあります。

大手企業だけでなく、こうした企業で経営側がどのような判断をするのかも注視すべきでしょう。

【出典】一般社団法人 日本経済団体連合会「2023年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)」

【出典】一般社団法人 日本経済団体連合会「2023年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果(加重平均)」

【出典】内閣官房「国家公務員の給与(令和5年版)」

5. 学歴による昇給額の差はある?

以下は、2013年から2022年(10年後)における「学歴別」の賃金の比較(昇給額)です。

学歴別賃金
高校
専門学校高専・短大大学大学院
2013年
20〜24歳
男性
192.9万円 195.3万円 215.4万円
2022年
30〜34歳
男性
263.8万円 275.0万円 290.0万円 319.3万円 357.3万円
昇給額 70.9万円 94.7万円 103.9万円 141.9万円
昇給率 36.8% 48.5% 48.2% 65.9%
学歴別賃金
高校
専門学校高専・短大大学大学院
2013年
20〜24歳
女性
173.3万円 195.3万円 209.1万円
2022年
30〜34歳
女性
214.4万円 248.4万円 244.6万円 279.2万円 343.3万円
昇給額 41.1万円 52.9万円 70.1万円 134.2万円
昇給率 23.7% 27.6% 33.5% 64.2%

【出典】厚生労働省「平成25年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況」、「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況

上記の通り、2013年から2022年(10年後)における賃金の比較(昇給額)は、男女ともに学歴に比例していることがわかります。

6.日本企業における昇給実施率

昇給率と同様に大切な指標として「昇給実施率」があります。昇給実施率は、事業規模別・業種別などでそれぞれ何%の企業が昇給を行ったかという割合です。

2023年4月25日に報告された、財務省の「地域企業における賃上げ等の動向について」の特別調査において昇給実施率は全体で62.1%(623社/1,004社)でした。前年2022年の38.7%(432社/1,115社)と比較すると大幅に上昇しています。

事業規模別では大企業が77.6%(318社)、中堅・中小企業が51.5%(305社)となっています。

また、昇給額と混同しがちなのが「賃金改定額」です。賃金改定額は、役職手当などを含んだ賃金全体の変化を表します。マイナスの変化、つまり賃金の減少も加味します。

2022年の統計では、全体の賃金改定額はプラス5,534円でした。この金額は月額の賃金を示します。また、改定後の賃金÷改定前の賃金を計算することによって「賃金改定率」が求められます。2022年の賃金改定率は全体で1.9%となっています。

【出典】財務省「地域企業における賃上げ等の動向について(特別調査)」

【出典】厚生労働省「令和4年 賃金引上げ等の実態に関する調査:結果の概要」

7.昇格と昇進との関連

昇給と似た概念に、昇格と昇進がありますが、それぞれとどのように関連しているのでしょうか?昇格や昇進との関連について理解しておきましょう。

7.1.昇格

社内での等級が上がることです。

「一般職◯級」「総合職◯級」などがよくみられる等級です。昇格すると権限の範囲が広くなり、より重要で難しい仕事を任せられるようになります。

それに応じて昇給も同時に行われる場合も多いです。

昇格について詳しくは以下の記事をご覧ください。

【関連記事】「【昇格とは】昇進・昇給との違い、昇格試験合格に必要なポイントを解説」

7.2.昇進

「課長」や「部長」といった肩書が付き、「職位(役職)」が上がることを昇進といいます。

役職がつく(または上がる)ため、より責任のある管理的な業務を行うようになります。

昇進についても、昇給を伴う場合があります。

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8.求人票で「昇給」制度の有無は注意すべき?

新卒で就職する場合も転職する場合もこれから働く会社の昇給制度は気になるところですが、求人票で確認できるのは昇給制度の有無、または前年昇給があったかどうかの実績までで、昇給制度の詳しい中身までは分かりません。

しかし、企業によっては、HPなどで昇給制度について詳しく説明しているところもあると思います。また、平均の給与支給額などを公表している場合もありますので合わせてチェックしておくとよいでしょう。

その他の企業の昇給制度については、面接などで確認することになります。面接時に昇給制度の確認をする際には、面接官に対して悪い印象を与えないように言葉に気をつけながら確認をしましょう。

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9.まとめ

仕事を選ぶ際に、給与体系、中でも昇給制度は重要な要素です。昇給の方法は定期昇給とそうでないものがあり、定期昇給が一般的ではあるものの、最近では完全な能力・実績主義の給与体系を採用している企業も見受けられるようになりました。

また、一口に昇給制度があるといっても、必ずしも毎年昇給が行われるかどうかは分かりません。昇給制度の内容も大切ですが、仕事・会社を選ぶ際には、業務の内容や労働環境も含めて総合的に判断する必要があります。

企業の昇給制度について検討する際には、本記事で得た知識を活用して正しく理解するようにしましょう。

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