少子高齢化や生産年齢人口の減少により、人手不足や採用難の課題を抱える企業が増えている一方、経験者の採用が成果創出への近道であるため、新卒採用だけでなく企業側の中途採用に対する注目度は以前にも増して高くなっています。前回の記事では、転職経験者の本音や成功体験などをご紹介しましたが、それに対し、転職を考えたものの「実際は転職をしなかった」人たちはどのような思いを抱えているのでしょうか。
本記事では、社会人へのアンケート調査から、転職を考えてみたものの転職をしなかった理由や現在の状況を明らかにしていきます。「本当に後悔はないのか?」「どのように気持ちを切り替えたのか?」――転職をしなかった人たちの本音と今をお伝えします。これから転職活動を始める方や、転職活動に行きづまっている方は、ぜひ最後までお読みください。
【アンケート実施概要】
期間:2024年10月10日~10月19日
方法:インターネット調査(ランサーズ)
対象:転職を考えたことがある社会人20代~60代
回答数:301名
(※仕事辞めたい、会社がつらい...悩んでいる方は『仕事どうする!? 診断』の診断結果もご参考にしてください)
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1.転職をした人もしなかった人も「転職しようとした理由」に大きな違いはなし
アンケート調査の結果、転職を考えた経験がある人のうち「実際はしていない」人が全体の19%を占めました。転職を考えた人の8割以上が行動に移しているなかで、なぜ一定数の人は転職をしなかったのでしょうか。
「転職をしなかった人」に共通する特徴を見ていきたいと思います。
まずは、「転職をした」人と、「転職をしなかった」人が転職を考えた理由を比較しました。その結果、転職を考えた理由について大きな違いはなく、「給与・待遇への不満」「現在の仕事が合わない」「人間関係の悩み」などの課題を改善させたい気持ちが共通していることが分かりました。
転職したい事情や経緯、思いの強さなどは人によって異なるものです。ただし、背景にある理由と実際に転職したかどうかはあまり因果関係がないといえるかもしれません。
では、転職をしなかった人はなぜ転職に至らなかったのか、その理由を探っていきたいと思います。
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2.転職しなかった理由は「希望条件」や「会社の魅力」への不満が上位に
転職を考えたが、実際には転職をしなかった理由の上位には「希望する条件の仕事が見つからなかった」「魅力的な会社がなかった」ことがあげられました。
では、希望する条件や魅力的な会社とは、一体どのようなものなのでしょうか。転職活動においては、転職したいと考える根幹にある「問題」を解決することが大切です。しかしながら、さまざま情報や求人を見ていると、当初の自分の希望以上の条件などを求めてしまい、本質的な転職活動からずれてしまうケースが見受けられます。
そのような問題を解消するためには、自分の転職理由や望むキャリア像、具体的な条件などを言語化してみることをおすすめします。そのうえで、それぞれの希望の実現につながる仕事や会社を複数のツールを用いて探すことで、今まで見つからなかった可能性に出会えるかもしれません。
例えば、求人メディアや企業のホームページなどは、掲載された情報のみでの判断となりがちです。一方で、転職者向けのイベントや転職エージェントも活用することで、より具体的なキャリア観や働くイメージが明確になる場合があります。「希望する条件の仕事が見つからない」「魅力的な会社がない」と感じる人は、情報収集の幅を広げてみるとよいでしょう。
また、その他のコメントでは「転職理由が解決した」「転職活動の負担・不安が大きい」「転職活動の延期」に関連する内容があがりました。
【その他のコメント】
・部署移動させてもらうことで問題が解決したから。(流通・小売/20代/女性)
・嫌いな上司が退職したため。(メーカー/20代/女性)
・転職活動をする時間や労力的な負担が重く、そして何より精神的にハードルが高かった ため。(IT/30代/男性)
・現在の会社で資格をある程度取ってから転職活動をしたい。(不動産・建設/20代/女性)
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3.「現職の良さを発見」した人がいる一方、将来的な転職を検討する人も
さらに、「転職をしない」と決めた人たちがどのような気持ちで現職を継続することにしたのか見ていきます。回答者からは「いつか転職したいが、今は我慢しようと決めた」「現職の良さを見つけて、向き合おうと思った」といったコメントが多く見られました。ほかにも、現職での人事異動(社内公募)を狙ったり、ボーナス支給後に転職活動の再開を検討したりする声もあがりました。
転職をしない決断をした人の中でも、「いつか転職したい」という気持ちがあり、現職を続けながら情報収集をしている人もいるようです。
【現職を継続することにした人のコメント】
・今はまだ、その職場で学べることがあると上司に言われ、泣く泣く仕事を継続している。転職を諦めていないので仕事の合間をみながら資格の取得に励んでいる。(その他/20代/女性)
・時期的に今ではないと思ったのもあって、あと少し我慢しよう、ボーナスまではもう少し頑張ろうという気持ちで継続しました。(IT・通信/20代/女性)
・今より条件がいいところが見つかるまでは今の仕事を続けようと考えた。(運輸・物流/20代/女性)
・転職しようかと考えた時、自分に他の仕事で何が良いのかや仕事を探していた。仕事が忙しくなってきてそれどころではなくなった。今取り組んでいることが転職の際に役に立つかもしれないと考えたのもあります。(サービス/20代/女性)
・思うような転職先に入るにはまだ習得すべきスキルや経験があると捉え、現職にいったん腰を据えた。(サービス/30代/男性)
・根気よく探していれば自分の条件に合ったものが見つけられるのではないかと思いながら仕事に臨んでいました。(メーカー/50代/男性)
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4.転職しなかったことを「後悔していない」人が75%
「転職しなかったことを後悔しているか」という質問に対しては、75%の回答者が「後悔していない」と回答しました。自分の中で気持ちを整理し、切り替えたうえで現職を継続していることが分かります。
一方で、後悔している人については「今の環境に満足できない」や「転職していたら状況が改善されたのでは」といったコメントが多く見られました。一度は現職に向き合おうとしてみても、転職を考えた根本的な原因や事情が解決されていない場合、やはり転職していれば良かった、との思いに駆られるのは当然かもしれません。
●「今の環境に満足できない」ため、後悔している人のコメント
・今の仕事をいつまで続けるべきかわからない。(不動産・建設/20代/女性)
・会社への不満は募るばかり。(不動産・建設/30代/男性)
・給料も上がらず将来に期待できないからです。(メーカー/30代/男性)
・(転職していたら)違った人生を歩んでいるのではないかと思うときがある。(流通・小売/30代/男性)
●「転職していたら状況が改善された」ため、後悔している人のコメント
・結局転職をしていれば今頃は必要なスキルや経験もできて、きっとそれなりに仕事をやっていたと思う。思い切りが大事。(サービス/30代/男性)
・現状以上の大幅な収入増加が期待できない、もっと早く転職しておけばよかったかもと悩む。(金融/40代/男性)
・現職に残ると決断した直後は特に後悔しなかったが、数年経ってやはり転職しておけば良かったと思った。(その他/40代/女性)
・現職よりレベルが高く、条件の良い会社から何社か内定をもらっていた。内定先の会社に行けば、今よりも幅広い知見や高度なスキルを得られていたはずだし、キャリアの可能性がより広がっていたのではと後悔することがある。(その他/40代/女性)
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5.転職をしなかった人の半数が、現在も転職を検討中
「後悔していない」方も多くいる一方で、「転職をしなかった人」の半数が、現在も転職活動を考えていると回答しました。転職を考えるに至った理由が解決されない限り、悩みは解消しない可能性が高く、模索を続けている人が多い現状が分かりました。
また、転職活動を考えている人の半数近くが、インターネットなどを通じた情報収集をしていることが明らかになりました。ほかにも転職サイトや転職エージェントを活用して求人案件を確認したり、家族や知人に相談をしたりと、転職を検討している人の大半が具体的な準備をしているようです。
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6.再度転職を検討する際は信頼できるパートナーを見つけよう
本記事では、転職を考えたものの「転職をしなかった」理由や、現在の状況・気持ちについて考察しました。総合的に見ると、転職をしなかったとはいえ、転職したい根本的な原因や事情が解決されたわけではない方もいることが明らかになりました。
勤めている会社を辞め、新しい会社や環境に飛び込む必要があるのか。それは自分自身にしか分かりません。大切なのは、「転職をしたい」気持ちの理由を明確にすること。そのうえで、ありたい姿を考え、新しい自分を手に入れるために動くべきかを考えることです。
転職活動の過程では、落ち込むことやうまくいかないことも多々あるでしょう。また、希望する会社や仕事が見つけられないケースもあります。そのような際は、自分1人で解決しようとせず、信頼できる知人・友人や家族、転職エージェントに相談してみることをおすすめします。信頼できるパートナーを見つけ、自分自身を客観的に見つめ直すことが、転職活動を成功させる秘訣にもなるでしょう。
(調査・編集:VALUE WORKS)
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