お金の不安から、退職したくてもなかなか行動に移せずにいる方は少なくありません。たしかに、十分な貯金がない状態で退職を考えるのは誰しも不安を感じるものです。しかし、退職後に必要なお金や、利用できる制度を確認しながら準備を進めることで、今後の選択肢を広げられる場合があります。
この記事では、「仕事を辞めたいけれどお金がない」と悩んでいる方に向けて、退職後に必要となるお金の目安や、お金の不安を和らげるための対処法を紹介します。
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1. 仕事を辞めたいけどお金がない場合はどうする?
イラスト:斉田直世 漫画の続きはこちら>
仕事を辞めたくても、「貯金ないのに辞めるのは心配」「生活を維持できないかもしれない」といった理由から、なかなか行動に移せず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。しかし、お金に不安がある状態であっても、無理をしながら働き続けることが必ずしも最善の選択とは限りません。
利用できる制度や対処法を知ることで選択肢が広がる可能性もありますので、まずは現在の状況を整理したうえで、自分に合った選択肢を落ち着いて検討することが大切です。
1.1.経済的な支援を受けられる公的な制度もある
現職を辞めて次の仕事が決まるまでの間には、公的な制度によって経済的な支援を受けられることがあります。雇用保険に加入していた方は、離職前の被保険者期間などの要件を満たし、就職する意思と能力があり、求職活動を行っている場合に、雇用保険の基本手当を受け取れることがあります。
また、国の求職者支援制度を利用すれば、職業訓練を受講できるだけでなく、一定の要件のもとで職業訓練受講給付金を受け取ることも可能です。
そのほか、状況によっては健康保険や年金の減免・納付猶予を申請できる可能性があり、経済的負担を減らせるでしょう。
このように、生活費を補ったり支出を削減したりできる制度は複数ありますので、あらかじめ確認しておくことが大切です。これらの制度については後ほど詳しく解説します。
1.2.心身の負担が大きい場合は体調を優先する
退職が必要だと感じた場合でも、生活への影響を考慮して働きながら転職活動を進める方が少なくありません。
しかし、心身への大きな負担を感じている場合は、お金への不安があったとしても、体調を優先して現在の環境から距離を置いたほうが良いこともあるでしょう。
特に次のような状態が続いている時は、医療機関や公的相談窓口、社内の相談窓口などに相談しながら、今後の対処について検討することをおすすめします。
- 会社に行こうとすると涙が出たり動悸がしたりする
- 眠れない、または眠ってもすぐに目が覚めてしまう
- 食欲が極端に落ちている、または食べ方が大きく変わっている
- 何をしても楽しめない、以前は好きだったことにも興味が持てない
など
1.3.有給の取得や異動など辞める以外の選択肢も検討する
「仕事を辞めたい」と感じる原因によっては、有給休暇の取得や部署異動の申し出など、退職以外の方法で対処できるケースもあります。
それが、業務量や役割の調整によって改善できることなのか、部署や上司の変更など職場内の環境調整が必要なのか、転職によって環境を変えることが選択肢になるのかを整理してみましょう。
例えば、一時的な疲れを感じている場合は、有給休暇を取得して休むことで、今後の働き方を考える時間を確保できる場合があります。業務量の多さや仕事内容への不満、人間関係の悩みなどが理由の場合は、異動や配置換えで改善できる可能性もあります。
また、貯金なしで退職するのが心配な方や、次の仕事探しにハードルを感じている方は、今の職場で働き方を調整しながら、あらためて退職について考え直したり退職準備を進めたりするのも選択肢の一つです。
2. 退職後の生活に必要なお金
退職後の生活に不安を感じたときは、どのような支出があるのかを把握することで必要な準備や利用できる制度を検討しやすくなります。退職後の生活を考えるうえで、知っておきたい主な支出について見ていきましょう。
2.1. 生活費
食費、光熱費、家賃、通信費などは、仕事を辞めた後も継続して発生する主な支出です。
総務省統計局の家計調査によると、2026年1~3月期の単身世帯の消費支出は、1カ月あたり平均170,459円でした。
ただし、実際に必要となる生活費は、住んでいる地域や家族構成、生活スタイルなどによって異なるため、退職後の生活を考える際は、自身の家計状況をもとに必要な金額を把握しておくことが大切です。
出典総務省統計局「家計調査 2026年(令和8年)1~3月期平均」
2.2. 健康保険・年金・住民税
まず健康保険については、退職日までに継続して2カ月以上の被保険者期間がある場合、最長2年間、退職前に加入していた健康保険の任意継続被保険者となれる制度を利用できます。
ただし、退職後は会社負担がなくなるため、保険料は全額自己負担(上限あり)です。任意継続を希望する場合は、資格喪失日(退職日の翌日等)から20日以内に申出が必要です。
任意継続を利用しない場合は、国民健康保険へ加入する、または要件を満たせば家族の健康保険の被扶養者になるといった選択肢があります。任意継続と国民健康保険の保険料に加え、家族の健康保険の被扶養者になれるかどうかも確認し、負担を比較して選ぶと良いでしょう。
次に年金ですが、前職で厚生年金に加入しており、すぐに次の会社へ入社しない場合は、原則として国民年金への切り替えが必要です。
また、住民税は前年の所得をもとに課税されるため、退職後も納付が必要になる場合があります。退職時期によっては、退職前の給与から残りの住民税を一括で徴収されることもありますが、納付書で自分で支払うケースもあります。具体的な納付方法は、勤務先や市区町村に確認しましょう。
なお、それぞれの減免・納付猶予制度については、次項で詳しく説明します。
出典全国健康保険協会「健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について」
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2.3. 転職に向けた活動費
退職後に転職活動を予定している場合は、そのための費用もあらかじめ考えておくと安心です。
例えば、面接や会社説明会に参加する際の交通費のほか、必要に応じてスーツや靴などの購入費用がかかることもあります。
また、新しい分野への挑戦を考えている場合は、資格取得や学習にかかる費用を準備しておくことで、より幅広い選択肢を検討しやすくなるでしょう。
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3. 退職前に確認しておきたい制度や支援
退職後の生活を考える際は、利用できる制度や支援についても事前に確認しておくと安心です。ここでは、退職前に知っておきたい主な制度や支援について紹介します。
3.1. 失業手当(雇用保険の基本手当)
退職後の生活を支える公的な制度として、失業手当(雇用保険の基本手当)があります。自己都合退職の場合、原則として離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上あるなど、一定の要件を満たすと受給対象となります。会社都合退職や、やむを得ない理由による退職の場合は、受給資格の要件が異なることがあります。
2025年4月1日以降の自己都合退職では、ハローワークで求職の手続きを行った後、まず7日間の「待期期間」があり、その後、原則1カ月の「給付制限期間」を経て、失業の認定を受けた期間について基本手当が支給されます。実際の振込時期は、求職申込みの時期や失業認定日などによって異なります。
ただし、過去5年間に正当な理由のない自己都合退職による給付制限を2回以上受けている場合などは、給付制限期間が3カ月となることがあります。
なお、雇用保険の加入期間や離職時の年齢などによって、受け取れる金額や支給日数は異なります。詳細な受給条件や必要書類、手続きの流れについては、管轄のハローワークなどで最新の情報を確認しましょう。
ひとことコメント
【監修】社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表 特定社会保険労務士:岡佳伸
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退職後の生活設計は「辞めた後に何とかする」よりも、辞める前に制度を押さえておくほど安心感が増します。
ポイントの第一は、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)は給付日数・受給要件・給付制限の有無が重要で、自己都合か会社都合か、離職日や離職歴、教育訓練の受講状況によって扱いが変わることです。
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3.2.健康保険や年金の減免・納付猶予
国民健康保険については、倒産・解雇などにより離職した「特定受給資格者」や、雇止めなどにより離職した「特定理由離職者」と認められた場合、前年の給与所得を100分の30として国民健康保険料・保険税を算定する軽減措置を受けられることがあります。
更に、自治体によっては、収入の減少や災害などの事情により納付が困難となった場合、国民健康保険料・保険税の減免や徴収猶予が認められることがあります。制度の有無や要件は自治体によって異なるため、居住地の市区町村に確認しましょう。
また、国民年金についても、失業や収入の減少によって納付が難しくなった場合は、年金保険料の免除制度や納付猶予制度を利用できることがあります。
失業した方を対象とした特例制度もあり、前年の所得が多い場合でも免除や納付猶予の対象となることもありますので、詳細は居住地の市区町村窓口や年金事務所で確認しましょう。
ひとことコメント
【監修】社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表 特定社会保険労務士:岡佳伸
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辞める前に制度を押さえておくべきポイントの第二は、健康保険は任意継続・国民健康保険・家族の扶養など選択肢があり、手続期限を過ぎると選べなくなること、住民税や国民年金・国民健康保険料(税)は退職後に負担感が出やすいことです。
離職票や退職理由の確認も含め、早めにハローワークや加入先へ相談し、取りこぼしを防ぎましょう。
3.3.求職者支援制度
求職者支援制度とは、雇用保険の基本手当を受給できない方などを対象に、無料の職業訓練を実施し、一定の要件を満たす場合には職業訓練受講給付金を支給する制度です。失業手当(雇用保険の基本手当)を受給できない方や、受給期間が終了した方なども利用可能です。
制度を利用すると、ハローワークの支援を受けながら、IT・事務・介護・医療事務などさまざまな分野の職業訓練を受講できます。また、本人や世帯の収入・資産など一定の要件を満たし、ハローワークの支援指示を受けた場合は、月額10万円の職業訓練受講手当などを受給しながら訓練を受講できることがあります。給付の要件や内容は、最新の制度案内を確認してください。
3.4.自治体の自立相談支援窓口
各自治体に設置されている「自立相談支援窓口」では、退職後の収入減少や生活費への不安、再就職に向けた悩みなどを相談できるほか、状況に応じて利用できる支援制度も案内してもらえます。
また、家計改善のアドバイスや今後の生活設計に関する支援を受けられることもあるため、退職後のお金に不安を感じている場合は、こうした相談窓口の存在を知っておくだけでも心の余裕につながるでしょう。
4. 退職後のお金が不安なときにできる現実的な対処法
退職を優先した方が良いケースもあるとはいえ、お金の不安から辞めたくても辞められないと感じている方も多いでしょう。そこで、ここからは退職後のお金の不安に備えるための現実的な対処法を5つ解説します。
4.1. 働きながら少しずつ転職活動を進めてみる
お金の不安を抑える方法として、「今の仕事を続けながら少しずつ転職活動を進める」という選択肢があります。転職先の入社日や雇用条件などを確認したうえで退職を申し出る方法もあります。次の仕事が決まってから退職することで、収入が途切れる期間を短くできる可能性があります。ただし、選考や入社時期の調整には時間がかかる場合もあるため、心身の状態を優先し、無理のない範囲で進めましょう。
ただし、心身の不調が強い場合や現在の職場で働き続けることが難しい場合は、無理をしない方が良いケースもあります。現在の状況を踏まえながら、できる範囲で今後の働き方を検討してみましょう。
4.2. 生活費を見直して貯蓄を増やす
今の仕事を続けながら、日々の生活費を見直し、少しずつ貯蓄を増やしていくのも現実的な方法です。
例えば、「スマートフォンの契約プランを見直してみる」「使用していないサブスクリプションを解約する」といった固定費の見直しは、無理なく支出を抑えることにつながります。
また、「自炊の回数を少しだけ増やしてみる」「コンビニへ立ち寄る頻度を減らしてみる」といった生活習慣を意識することで、少しずつ家計に余裕が生まれるかもしれません。
支出を見直して一定の貯蓄を確保できれば、退職後の生活に対する不安が和らぎ、今後の働き方についても落ち着いて考えやすくなるでしょう。
4.3. ボーナスを受け取った後の退職を検討する
勤務先でボーナスが支給される予定があり、退職時期を調整できる状況ならば、ボーナスを受け取った後の退職を検討するのも一つの方法です。
ボーナスを受け取ることで、退職後の生活費や転職活動にかかる費用に充てられる資金を確保しやすくなり、退職後のお金に対する不安を和らげることにつながるかもしれません。
ただし、ボーナスの支給条件や算定基準は会社によって異なります。支給日に在籍していることが条件となっているケースもあるため、就業規則などを事前に確認しておくと安心です。
なお、心身の状態や職場環境によっては、ボーナスを待たずに退職した方が良い場合もありますので、無理のない範囲で退職時期を考え、自分に合った選択をしましょう。
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4.4. 生活環境の調整を視野に入れる
一人暮らしをしている方で、本人が希望し、家族との合意や安全面、通勤・転職活動への影響などを確認できる場合は、一時的に家族と同居することも選択肢の一つです。生活費の負担を軽減できる可能性があるほか、身近に相談できる人がいることで、気持ちの面でも支えを得られる場合があります。
しかし、家庭の事情や居住環境により、実家に戻ることが難しい方も少なくありません。そのような場合は、家賃の低い住居への住み替えを検討したり、自治体の相談窓口を利用したりする方法もあります。
周囲の協力や利用できる支援を視野に入れながら、自分に合った方法を検討しましょう。
4.5. 無理のない範囲での「副業」も選択肢
体調や生活に支障のない範囲で、副業に取り組んでみるのも一つの方法です。近年は、自宅で取り組める業務委託の仕事や、短時間のアルバイトなど、働き方の選択肢が広がっています。
本業を続けながら別に収入を得ることで、もしもの時のための備えを増やせるかもしれません。更に、副業を通じて今後のキャリアに役立つスキルを身につけられる可能性もあります。
ただし、収入が安定するとは限らないため、無理のない範囲で検討することが大切です。また、勤務先によっては副業が認められていないケースがありますので、副業を始める際は事前に就業規則をしっかりと確認しましょう。
また、本業との両立によって負担が大きくなることも考えられるため、自身の体調や生活とのバランスを考えながら無理のない範囲で取り組むことが大切です。
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5. 納得できる転職には無理のない準備が大切
退職後のお金に不安があると、焦りから十分に比較検討できないまま次の仕事を決めてしまうこともあります。そのため、できる範囲で準備を進めながら、自分に合った働き方や職場を見極めていくことが大切です。
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