何らかの事情で今の職場を離れることになった場合、気になるのはその後の収入だと思います。そんな時の生活の支えとなるのが「求職者給付」(いわゆる「失業手当」)です。
その時になって焦ることのないよう、離職を考える場合は失業手当の受給条件や受給の概要、手続きの流れなどを確認しておきましょう。
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1.求職者給付(失業手当)とは?
求職者給付(失業手当)とは、雇用保険に入っていた方が何らかの理由で会社を離職した場合、次の就職先を探す間に支給される手当です。
支給には諸々の条件を満たす必要があり、支給期間や金額は雇用保険の加入実績や年齢などによって異なります。
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2.求職者給付(失業手当)を受給するための条件
失業手当は、失業すれば誰でももらえるという訳ではありません。受給には以下3つの条件があります。
2.1.失業状態である
まず、受給のためには失業していることが大前提となります。ここで示す失業状態とは、再就職する意思と能力がありながらも再就職が叶わず、積極的な求職活動を行っている状態です。正式名称が「求職者給付」であるのはこのためです。自ら事業を始める、家業に従事する、何らかの理由で就職活動を行わないという場合は該当しません。
2.2.通算の雇用保険加入期間が12ヵ月以上
離職日前の2年間において、通算で12ヵ月以上の雇用保険加入期間(被保険者期間)が必要です。ただし、以下に該当する方は離職日前1年間に通算6ヵ月以上の加入期間があれば該当者とみなされます。
●特定理由離職者
病気や家庭事情など正当な理由により離職した方、期間の定めのある労働契約が満了し、本人が更新を希望したにもかかわらず契約更新されず離職した方
●特定受給資格者
解雇や倒産によって離職した方(会社都合)
2.3.ハローワークに求職の申し込みをしている
失業手当の受給には、ハローワークの窓口で職業紹介などを含めた積極的な求職活動を行う必要があります。そのため、最寄りのハローワークで「求職申込み」手続きを完了しなければなりません。
手続きが完了すると「ハローワーク受付票」が発行され、その後、失業手当の受給手続きに進む形となります。
3.失業手当をもらえる期間
失業手当を受給できる期間は、離職理由や被保険者期間、年齢によっても異なります。詳しく見ていきましょう。
3.1.自己都合退社の場合
自己都合による退職の場合は年齢による変動はなく、被保険者期間によって以下のように失業手当の受給期間が定められています。
3.2.特定理由離職者の場合
特定理由離職者は、「自己都合退社」に含まれる方と「特定受給資格者」に含まれる方の2つに分かれます。
●自己都合退社
病気や家庭事情など正当な理由により離職した方
●特定受給資格者
期間の定めのある労働契約が満了し、本人が更新を希望したにもかかわらず契約更新されず離職した方
どちらに区分されるかにより、失業手当の受給期間は異なります。詳細はハローワークのホームページを確認してください。
3.3.特定受給資格者の場合
特定受給資格者の該当者は、年齢と被保険者期間によって以下のように失業手当の受給期間が定められています。
4.失業手当はいくらもらえる?計算方法は?
失業手当で受給できる金額は、離職前の給与や離職時の年齢によって変動します。
計算方法は、まず「賃金日額」を算出し、その金額に年齢に応じた給付率をかけることで、失業手当で1日あたりにもらえる「基本手当日額」が求められます。
・賃金日額=離職日直前の6ヵ月間の給与(賞与やインセンティブ等を除く)の合計÷180日
・基本手当日額=賃金日額×給付率(60歳未満:50~80%、60~65歳未満:45~80%)
なお、基本手当日額には以下の通り最低額と最高額の基準が設けられています。
最低額は失業手当で最低限支給が保証される金額で、万が一上記に基づいて算出した基本手当日額が下回っていたとしても受け取ることが可能です。
一方、最高額は失業手当で受け取れる最高額と定められており、基本手当日額が最高額を上回っていたとしても受け取れるのは最高額分のみとなります。
5.失業手当の申し込み方法
失業保険の申し込みは、以下の手順に沿って行います。
5.1.必要書類の準備
まずは失業保険の申し込みに必要な書類を用意します。会社側が用意してくれるものと、自分で用意すべきものがあります。会社側が用意するものに関しては、発行時期や受け取り方法をあらかじめ確認しておきましょう。
■会社から発行されるもの
・雇用保険被保険者離職票(-1、2)
・雇用保険被保険者証(すでに渡されている場合もあり)
■自分で用意するもの
・身元確認書類(①のいずれか1種類、もしくは②のうち異なる2種類)
①運転免許証、マイナンバーカード、運転経歴証明書、官公署発行の身分証明書・資格証明書(写真付き)など
②児童扶養手当証書、公的医療保険の被保険者証など
・個人番号確認書類のうち1種類
マイナンバーカード、通知カード、住民票記載事項証明書
・印鑑
・写真2枚(最近のもの、縦3.0cm×横2.5cm、正面上半身)
・本人名義の預金通帳、もしくはキャッシュカード
5.2.ハローワークでの手続き
必要書類が揃ったら、居住地域を管轄するハローワークへ出向きます。はじめに「求職の申込み」を済ませると、その後失業手当の受給資格に該当しているかの確認がおこなわれます。受給資格を満たしていると判断されると「雇用保険受給資格者のしおり」が配布され、説明会の日時が指定されます。
5.3.雇用保険説明会への参加
指定日時に実施される雇用保険受給者初回説明会に参加します。雇用保険受給資格者のしおり、筆記用具、印鑑を忘れずに持参しましょう。
この説明会では最初の失業認定日(失業状態であることをハローワーク側で確認する日)が通知され、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が配布されます。この書類は、その後失業手当を受け取る上で必要となるため大切に保管しておきましょう。
5.4.失業認定日に求職中であることを報告
失業認定日に再度ハローワークに出向き、失業の認定を受けます。説明会時に配布された「雇用保険受給資格者証」と一緒に、これまでの求職活動状況を記入した「失業認定申告書」を提出します。失業状態であることが認められるには、前回の認定日から原則2回以上(初回は認定期間中に1回以上)の求職活動の実績が必要となります。
5.5.手当の受給
失業認定日から5営業日程度で指定口座に失業手当が振り込まれます。その後は、受給期間の上限日数を限度に、再就職が決まるまで4週間に一度の失業認定を受けることで、失業手当の受給が可能です。
6.失業手当受給のメリット・デメリット
失業手当の受給には、メリットもあれば、デメリットもあります。その両方を踏まえ、自分にとって最適な求職活動計画を立てていきましょう。
6.1.メリット:落ち着いて求職活動が行える
失業手当を受給する最大のメリットは、金銭面の保障が得られることで焦らず求職活動に打ち込めることです。離職前よりも収入は減りますが、最低限の生活を維持することは可能です。
ただし、失業手当の受給期間には限りがあるので、受給金額と貯金など手元にあるお金を把握し、計画的な求職活動を行っていきましょう。
6.2.デメリット:働いていない期間ができてしまう
職務経歴に空白期間があることが求職活動においてネガティブな要素となってしまう可能性があります。企業の採用担当者は、離職期間が長ければ長いほど「なぜこんなに期間が空いているのか」「うちでちゃんと働けるのだろうか」といった不安を感じてしまう方もいます。
また、失業手当があることにより気持ちが緩み、やる気を失ってしまったり、生活リズムが乱れたりという弊害も考えられます。
7.受給中に覚えておくと良いこと
最後に、離職者の早期再就職を促進するために設けられている支援制度や、注意すべき重要事項を紹介します。
7.1.再就職手当
再就職手当は、失業手当受給期間中に安定した仕事に就職できた場合に受給できる手当です。早期の再就職であるほど給付率が高くなるため、求職活動におけるモチベーションの向上につながるかもしれません。
ただし、再就職手当の受給には「所定給付残日数が3分の1以上」「過去3年間の就職で再就職手当・常用就職支度手当を受給していない」など、いくつかの条件があります。
■再就職手当支給額
・失業手当の所定給付日数が3分の2以上残っている場合
支給額=基本手当日額×所定給付残日数×70%
・失業手当の所定給付日数が3分の1以上残っている場合
支給額=基本手当日額×所定給付残日数×60%
※基本手当日額の上限
離職時60歳未満:6,195円
離職時60歳以上65歳未満:5,013円
7.2.公共職業訓練
公共職業訓練は、主に求職者に対して求職活動で必要となるスキルを無料で提供するものです(※テキスト代除く)。
ITや介護、調理、美容など学べる分野は多岐に渡り、それぞれ3ヵ月~2年程度の訓練期間が設けられています。失業手当を受給しながらこの先仕事で活用できるスキルが学べるだけでなく、ハローワークから求職活動のサポートも受けられます。
7.3.求職者支援訓練
求職者支援訓練は、失業手当が受給できない方、もしくは受給期間が終了した方を対象とした訓練です。公共職業訓練と同様に就職に必要な学びやサポートが受けられ、要件を満たしている場合は月額10万円の給付金の受給も可能です。
ただし、本人・世帯の収入や金融資産の制限、原則すべての訓練日に出席することなど、給付金の支給条件は細かく定められており、これらすべてを満たさなければ受給はできません。
7.4.不正受給をした場合
虚偽の申告や不正により失業手当を不正受給した場合、支給は即刻停止となり、不正受給した金額の返還が求められます。悪質と判断された場合には返還額の2倍相当の金額を納付しなければなりません。
不正受給とみなされる行為としては、求職活動の実績や収入について虚偽の申告を行ったり、何らかの仕事に就いた事実を失業認定申告書で報告しなかったりすることなどが挙げられます。たとえ自分では不正受給の自覚がなくても、受給のルールを守らなければ不正受給を疑われる可能性もあります。わからないことは自己判断せず、失業手当の担当窓口へ相談するようにしましょう。
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8.まとめ
再就職の目途が立たない段階ではその後の生活に不安を感じるかもしれませんが、失業手当は求職活動中の大きな支えとなる給付制度です。離職予定がある方はもちろん、現状予定がないという方も流れを把握しておき、いざという時にすぐ動き出せるように準備しておきましょう。
また、給付までの流れをスムーズに進めるためには、離職票をいかに早く受け取れるかが重要となります。離職の際には、会社の人事担当者といつ、どのように受け渡しをするのか、きちんと打ち合わせをしておきましょう。
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