メーカーエンジニアの職種図鑑

回路設計

回路設計は「デジタル回路設計」と「アナログ回路設計」に大別され、機器の内部にある電子回路の設計を行います。

回路設計の女性

「回路設計って具体的にどんな仕事なのだろう」「未経験から目指せる仕事?」など、
回路設計の仕事に興味関心を持ち、
もっと詳しい情報が知りたいという人もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、回路設計の仕事内容、魅力ややりがい、難しさや大変さ、
年収、向いている人、必要な知識やスキルなどを解説します。

ひとまず概要を知りたいという人から、モノづくりに携われる仕事がしたい、
手に職をつけて長く安定的に働きたい、最新技術に触れられる環境に身を置きたいという人まで、
ぜひ参考にしてみてください。

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この記事のまとめ

  • 身の回りのあらゆる電子機器などが正常に稼働するために活用される回路設計の技術。

  • 回路設計の年収は、350万円~800万円の間が一般的。

  • 回路設計におすすめの資格は、「情報処理技術者試験」「EMC設計技術者資格」「CAD利用技術者試験」の3種類が挙げられる。

回路設計とは

回路設計とは

電子回路は身の回りの機器の多くに備わっていますが、その回路の設計を行うのが回路設計の仕事です。

回路は、デジタル信号を扱うデジタル回路と、アナログ信号を扱うアナログ回路に大別されます。デジタル回路は数値などの論理演算を行ってデジタル信号を処理する回路で、アナログ回路は電気信号などのアナログ信号を変換・調整する機能を持った回路です。

デジタル回路が安定的に動作するためにはアナログ回路が必要となります。そのため、回路設計の仕事では、アナログ回路とデジタル回路、両方の知識があったほうが良いとされています。

回路設計の仕事内容

回路設計の仕事内容には、デジタル回路設計とアナログ回路設計の2種類があります。回路設計技術者を目指すのであればどちらかをコアスキルとして身につける必要がありますが、製造する機器によってデジタルとアナログの使われ方や比重に違いが見られるため、興味のある機器や企業に合わせて選択するのも一つの方法です。

デジタル回路設計

デジタル回路設計は、デジタル信号の入出力や情報の演算を行う電子回路を設計します。デジタル回路の設計では、途方もない数のロジックを効率よく組み立てるために、デジタル信号などの入出力を一つずつ考えるのではなく、専用の「EDAツール」と呼ばれるソフトウェアを使うなどして、ある程度の自動化が可能になっています。

アナログ回路設計

アナログ回路を設計するには、デジタル回路設計に比べて経験を積んだエンジニアの力が重要になってきます。理論上は問題なく動作するはずなのに部品の配置場所が違うだけで特性が変わってくるなどの難しさがあり、目指す特性に早くたどり着くためには経験や感覚が必要となります。

ただ、近年はアナログ回路設計をサポートする設計支援ツールの開発も進み、経験の浅い設計者でも最適なアナログ設計が行えるようになってきています。

回路設計の魅力ややりがい

回路設計の魅力とやりがいは、人々の生活に欠かせないあらゆる製品の中枢をなす部分に携われる点にあります。

これまでは電子機器とは見なされていなかった家電製品のデジタル化や、通信機能・人工知能を搭載する自動車の登場など、あらゆるものにおいて電子回路は切り離せない時代となりました。

また、知識や技術力を高めれば高めるほど世の中に求められるモノづくりを実現できるようになる点も、回路設計の面白さです。

すでに私たちの生活に定着している製品たちも、回路設計者の斬新な発想から生まれたものかもしれません。あらゆるアイディアは知識や技術の下地があるからこそもたらされるものであることを考えれば、日々の些細な作業の中にも魅力ややりがいを見出せるようになるでしょう。

回路設計の難しさや大変さ

回路設計の難しさや大変さは、回路設計者としてあり続ける限り学びや情報収集に費やす労力を惜しんではいけないという点です。

回路設計の分野は網羅すべき専門知識が幅広く、さらに高い専門性が求められます。加えて、近年はAIやIoT技術の進化も目覚ましいことから、多方面にアンテナを張り巡らせて知識や情報をキャッチアップしていく必要があります。

「自分はいまのままで満足している」と思っていると、いつの間にか新たな技術や情報に追いつけなくなり、働き続けることに苦痛を覚えてしまう可能性もあります。

回路設計者の年収はどれくらい?

実際に掲載されている求人によると、回路設計者の年収は350万円~800万円となっています。最小値と最大値では大きなギャップが生じている状況です。

ここから読み取れるのは、回路設計者の年収は個人のスキルの影響を受ける可能性が高いということです。同時に、回路設計者を欲している企業の多くは、回路設計者の技術力や経験にふさわしい対価を支払っていることもうかがえます。

また、企業によっては給与を「経験・年齢・能力を考慮して決定する」としているケースもあることからも、回路設計者としてより高い専門性を身につけ会社に貢献するであろうと評価された場合、年収アップの余地があるでしょう。

回路設計者に必要なスキルや知識

回路設計の仕事に就くうえでは、身につけておくべきスキルや知識があります。いますぐでなくても、いずれ学んでおいて良かったと思う瞬間が訪れるはずなので、意識しておくと良いでしょう。

初期に必要な知識

最初は、過去の設計を参考にしながら回路を設計できるようになることを目指します。そのためには、回路理論をはじめ、電子回路、電磁気学、CAD、制御工学の基礎などの知識を身につける必要があります。

以下、概要を簡単にご紹介します。

回路理論

DC(直流回路)とAC(交流回路)などの電気回路を本質的に解析する理論

電子回路

トランジスタなどの素子を用いて構成する回路

電磁気学

電気・磁気の現象に関する分野の総称

CAD

製図を行うための設計支援ツール

制御工学

機械に意図する動きをおこなわせるための理論

中堅レベルに必要となる知識

回路設計者として中堅レベルになると、自らの設計思想をベースに回路を設計できるようになることを目指します。そのためには、デジタル回路とアナログ回路の知識や技術に加えて、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの電子機器と、それらをつなぐネットワークに関する理論を示す通信工学の知識も必要です。

ほかにも、制御工学、低消費電力設計やノイズ対策(EMC対策)、さらには各種計測やシミュレーション、信頼性を高めるための工学的なアプローチも求められます。

コミュニケーション能力

チームを組みプロジェクトに参加する回路設計者にはコミュニケーション能力も必要です。相手の言わんとすることを過不足なく汲み取り、自分の意見や意思をわかりやすく、かつトラブルを招かない形で伝えられれば、仕事の進行もスムーズになるでしょう。

情報収集力・分析力

回路設計者の業務では、高い情報収集力と、収集した情報の分析力が必須です。

技術の進化が目覚ましい電気・電子分野では、常にアンテナを張り巡らせて情報を取りに行く必要があります。そして、収集した情報に対する理解を深めたり、手持ちの情報や知識、技術とかけ合わせたりしながら分析していく力も求められます。

論理的思考力

回路設計に従事するうえで、論理的思考力は欠かせないスキルです。仕様を実現する結果を得るためには、どの要素を組み合わせるか、どのような方法が考えられるかを、筋道を立てて考えることが重要となります。

英語力

一見関連のないように思える英語力ですが、回路設計には必要なスキルです。その理由は、技術関連の最新情報は英語で発表されるケースが多いためです。ネイティブレベルは必要ありませんが、大筋を理解できる英語力があるとよいでしょう。

回路設計者に向いている人の特徴

回路設計者の仕事に向いているといわれる人にはいくつかの共通点が見られます。以下の3点に該当する人は、回路設計者として活躍できる可能性が高い人です。

モノづくりが好きな人

純粋にモノ作りが好きな人、モノづくりに情熱を注げる人は、回路設計に向いているといえます。

回路設計は技術職のため作業に集中、没頭できる仕事です。そのため、モノづくりが好きな人にとっては全力で取り組める仕事といえるのではないでしょうか。

チャレンジするのが好きな人

回路設計の業務では、仮説検証やトライアンドエラーを繰り返しながらゴールを目指していきます。したがって、いろいろな可能性を見出し躊躇せず新しいことにチャレンジできる人は、早く実績を積んでいけるでしょう。

細かい作業が好きな人

回路設計の業務では、場合によって試作機を自ら製作する場合があります。その際には手元の細かい作業が生じるケースもあるため、そうした手作業に苦労を感じず腰を据えて取り組める人は向いているといえます。

回路設計におすすめの資格

回路設計の仕事に就く上で、必ず取得しなければならない資格というものはありません。

ただ、持っていると実務に役立ったり、自身のスキルや実力の証明となる資格はあります。

以下3つは、回路設計におすすめの資格なので、ぜひチェックしてみましょう

情報処理技術者試験

「情報処理技術者試験」とは、情報処理を扱う技術者として一定水準の技術力を備えていることを証明する資格です。全11種類から構成されている国家資格で、IT分野を幅広く網羅しています。

その中で、回路設計者に最初におすすめしたい資格は、「基本情報処理技術者試験」です。情報処理技術の基礎的な知識を有している証明となります。論理回路やソフトウェアなど情報処理の基本を幅広く押さえられるので、回路設計の仕事を続けるうえで役立つ知識を習得できるでしょう。

なお、基本情報技術者試験に合格後は「応用情報技術者試験」を目指すのが一般的です。基本情報技術者試験の上位資格の位置付けのため、より深く専門的なスキルを身につけていることが証明できます。

回路設計では豊富な知識が新たなアイディアを創出するケースも多いため、情報処理系の資格は全般的に習得しておくことをおすすめします。

EMC設計技術者資格

高度な回路設計の能力を示す資格の一つが「EMC設計技術者資格」です。EMC(Electromagnetic Compatibility)とは「電磁両立性」と訳され、有害な電磁波を発することなく、かつ周りからの電磁波の影響を受けないような性質のことを指しています。アメリカの非営利団体と日本の一般社団法人によって創設された世界共通試験となっており、合格するとEMC技術を用いた回路設計に対する技術力が証明できます。

試験では、EMCの原理原則から上流工程まで幅広く知識を問われるため、実務にダイレクトに活きる資格です。ただし、学士以上、または実務経験5年以上のみ受験が認められているため、回路設計にある程度精通した人物が受験することが想定されています。

CAD利用技術者試験

「CAD利用技術者試験」とは、CADの取り扱いスキルを証明する資格です。回路設計の図面作成にCADは必須なため、取得は実務に好影響を与えるでしょう。

なお、CAD利用技術者試験は2種類用意されています。一つは平面的な製図のスキルを問う「2次元CAD利用技術者」、2つ目は立体的な製図スキルを問う「3次元CAD利用技術者」です。

2次元CAD利用技術者は、基礎・2級・1級の3階級が設けられています。そのうち1級に関しては、機械・建築・トレースの3分野に分かれており、それぞれ受験・認定される形です。3次元CAD利用技術者は、2級・準1級・1級と、こちらも3階級となっています。

回路設計者にとって実務で避けては通れないCADシステムのスキル習得・証明となるので、取得しておいて損はない資格です。

回路設計者の転職先やキャリアパス

回路設計者として就職・転職した後、将来的にキャリアアップのために転職することもあるかもしれません。その際、どのような転職先が考えられるのかご紹介します。併せて、回路設計者としてこの先どのようなキャリアパスが描けるのかも把握しておきましょう。

転職先

回路設計者の転職先としては、電子回路を用いるメーカーへの転職が基本となるでしょう。その場合、自社製品の開発に携わることになるので、取り扱い製品に関する技術力や知識が深く求められることになります。

また、近年進化が目覚ましいAI・IoT関連企業への転職も考えられるでしょう。

いずれにしても回路設計に求められるスキルは高度であり、将来的な転職を視野に入れている場合は、自分の目指す方向性に沿った知識や技術の習得、実績の獲得を目指すことをおすすめします。

キャリアパス

回路設計のエンジニアを目指す人の多くは、専門学校や大学で電気工学、電子工学、情報工学などの基礎を学んでから就職しています。一方、物理や数学、化学などの学科出身であっても、理系の思考ができれば、教育制度が整った大手の新卒採用などで歓迎されるようです。

未経験者やまったく別の分野を学んでいた場合でも、製造業などでの経験があれば一定の評価は得られます。しかし、専門学校などを経由して基礎を固めてから入社を目指す方が多いです。

知識や経験が必要な回路設計は専門性が高い職種であり、キャリアパスとしては、基本的にそのスキルに磨きをかけるか、社内で管理職となるかが一般的です。自社では扱っていない回路を手掛けたい場合などには、活躍の場を求めて転職することも考えられます。派遣会社や下請け企業に勤めているのであれば大手メーカーなどへの転職が多い職種でもあります。

半導体や電気・電子回路にはハードウェアのイメージがあるかもしれませんが、ソフトウェアとも密接に関係しています。デジタル回路設計ではEDAツールでのプログラミング能力が必要ですし、最近では作業工程を大幅に短縮できるFPGA(Field Programmable Gate Array)という集積回路もよく使用されています。FPGAの利用スキルを持つエンジニアが組み込みソフトウェア業界から回路設計へ転職することも珍しくはありません。

回路設計への転職を成功させるポイント

回路設計の転職を成功に導くためには、豊富な知識を備えていることが重要となります。特に実務未経験者は知識量の程度しか判断材料がないため、目指したい業界・企業にマッチした学びを深めておく必要があるでしょう。

加えて重要なポイントが、「どのような手段で転職活動を進めるか」という点です。転職活動の手段によって、結果が変わることも往々にして起きるので、軽視すべきではありません。

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よくあるご質問

  • 回路設計とは?

    Answer

    回路設計は「デジタル回路設計」と「アナログ回路設計」に大別され、機器の内部にある電子回路の設計を行います。

  • 回路設計におすすめの資格は?

    Answer

    情報処理技術者試験、CAD利用技術者試験、EMC設計技術者資格などの資格が業務に役立つでしょう。