有給休暇の買取はできる?買取可能なケースや金額の計算方法について解説

ライフ・マネー

有給休暇とは、労働者が健やかに働き続けられるよう、定められた日数分の休暇を付与する制度です。しかし、その日数や取得上の規定について詳しく知らないという方も少なくないかもしれません。

そこで今回は、有給休暇の買取が可能なケースや買取額の算出方法、メリット、注意点などを解説します。

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1.有給休暇とは

有給休暇とは、労働者の心身のリフレッシュを促す目的で設けられた休暇です。「有給」の名の通り休暇中の給料が保障されているため、労働者は金銭的な不安を抱えることなく休暇を取得できます。

有給休暇は、入社から6ヵ月間勤務することで、まず初年度分として10日間の休暇が付与されます。その後、1年ごとに付与日数が増えていき、入社から6年半後に最大日数の20日間に到達する仕組みです。

有給休暇は、企業から労働者への付与が義務化されているのと同時に、労働者に取得させる義務も課されています。

有給休暇の詳細については以下の記事でも解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

【関連記事】「知らないと損する?有給休暇の制度や休みが取れない場合の対処法」

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2.有給休暇の買取は原則NG

大前提として、有給休暇の買取は本来禁止されている行為です。

有給休暇は従業員が、休暇をとりリフレッシュを図ることを目的に、労働基準法により付与が義務づけられています。

つまり、買取により休暇を金銭に換えてしまうと有給休暇の意図に反することになるため、原則として買取は禁止行為とみなされています。

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2回目以降の転職で気を付けるべきポイントを確認する。

3.有給休暇の買取が可能な場合とは

有給休暇の買取は原則禁止されているものの、状況によっては企業側から認められるケースもあります。それは以下の3つの状況です。

3.1.法定外の有給休暇が余っている場合

法律で定められた日数を上回る有給休暇を付与した場合、超過日数に関しては買取が認められる範囲です。

あくまでも企業の判断で追加付与した分に関する買取となるため、問題になることはないでしょう。

3.2.退職時に有給休暇が余っている場合

退職が決定したものの退職日までに有給休暇が消化しきれない場合は、買取で対応することが考えられます。

これは、残りの出勤日よりも有給休暇のほうが多い場合に認められるケースがあります。

3.3.有給休暇の時効を迎えた場合

有給休暇で設けられている2年間の使用期限を超過し、時効を迎えた日数分の買取も認められます。退職時と同様、効力を失う有給休暇であるため、買取が可能となります。

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4.有給休暇の買取金額の計算方法は?

有給休暇の買取金額は、以下の4つの方法で算出します。

4.1.過去3ヵ月の平均賃金で算出

まず、過去3ヵ月間の賃金の総額を算出します。その金額を3ヵ月分の日数で割ると、有給休暇1日あたりの買取金額が算出されます。月給制で雇用されている従業員の場合の算出方法です。

4.2.所定労働時間で働いた時の通常賃金で算出

月給額を月の所定労働日数で割ると、有給休暇1日あたりの買取金額が算出されます。こちらも月給制で雇用されている従業員の場合の算出方法です。

4.3.標準報酬月額の日割額で算出

健康保険や厚生年金の等級の決定に用いられる標準報酬月額を日割した金額を、有給休暇1日あたりの買取金額とする方法です。標準報酬月額は通年変動がないため、買取金額も一定となります。

4.4.就業規則などで定めた一定金額で算出

有給休暇の買取は会社ごとの運用に委ねられています。したがって、個人や状況により変動する算出方法ではなく、いずれの労働者に対しても一定金額とする方法もあります。

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5.有給休暇買取の会社側のメリット

有給休暇の買取を認めると、企業には以下のようなメリットがあります。

5.1.社会保険料の負担軽減

買取希望者が退職者の場合に限りますが、有給休暇の買取により企業の社会保険料の負担が減額される場合があります。

退職者が本来消化するはずだった有給休暇の残日数を買い取れば、その分退職日が前倒しされる可能性があります。

そうなれば、前倒しできたぶん企業が負担するはずだった社会保険料がかかりません。

5.2.労働者とのトラブル回避

一人あたり保持できる有給休暇の日数は通常40日間ですが、上限を超えて残日数がある場合、退職日までに消化しきれないリスクがあります。そうなると、企業と労働者間でのトラブルに発展しかねません。

しかし、残日数を買取ることでトラブルの回避につながり、円満な関係性のまま送り出すことができます

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6.有給休暇買取の労働者側のメリット

有給休暇の買取金額は、退職時に受け取る収入を指す「退職所得」に該当します。

退職所得は年間40万円分非課税となるため、有給休暇買取分に所得税がかからないメリットがあります。

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7.有給休暇の買取にデメリットはある?

ここまで有給休暇買取のメリットについて解説してきましたが、デメリットはあるのでしょうか。

有給休暇買取によってトラブルを回避しスムーズに退職手続きを行える場合はメリットとなりますが、双方の認識にずれがあると逆にトラブルが発生してしまうことがあり、デメリットになり得ます。

7.1.買取可否をめぐるトラブル

まず考えられるものとしては、買取をめぐって企業側と従業員側でトラブルが起こる可能性があることです。

従業員は企業に有給休暇の買取を求めることができますが、買取は義務ではないので企業は買取を拒否することもできます。

ただし、合意書や契約書、就業規則には従う必要があります。それらに有給休暇買取について記載がない場合は、その都度個別に判断することになります。

「買取をしてくれなかった」あるいは「買取をしてもらえると知らなかった」ということがないように、企業側は有給休暇買取の可否や金額などについてあらかじめ書面などを通じて従業員の合意を得ておくと良いでしょう。

従業員側も、自身が務める企業に有給休暇買取の条件等はあるのか、きちんと確認する必要があります。

7.2.企業側から買取を求めるのは違法

原則として、有給休暇の買取は従業員から申請があった場合のみ可能です。

先述のように、退職日や有効期限までに残りの日数を消化しきれないなどの理由が条件です。

ただし、法定外の有給休暇について就業規則などで買取をすることが定められている場合は、従業員から申請がなくても買い取ることができます。

7.3.買取金額をめぐるトラブル

「4.有給休暇の買取金額の計算方法は?」で有給休暇の買取金額の例を挙げましたが、買取金額に法律上の決まりはなく、各企業の判断に委ねられています。

従業員は企業の判断に従わなければいけませんが、買取金額が有給休暇を消化する時の給与よりも低い場合はトラブルになる可能性が考えられます。

企業側はどのように金額を算出するかあらかじめ定めておく必要がありますし、従業員側も買取を求める際は企業側によく確認しておかなければなりません。

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8.基本的には有給休暇の消化を選択した方が良い

有給休暇を買い取ってもらえる方法が選べる場合、労働者側から見て「有給消化と有給買取、どっちが得か」は一概に言えません。しかし、基本的には有給休暇は通常通り消化した方が、会社側との手続きもスムーズにいく可能性が高いです。

また、退職時に有給消化の代わりに買取を選ぶと、退職日が前倒しになることもあります。有給を消化する間は会社に在籍しなければなりませんが、買取の場合はその必要がないからです。

転職などで今の会社を退職後、次の雇用先が決まっている場合、買取を選択することで「雇用されていない期間」が想定外に生まれ、健康保険や年金などの手続きが必要となる場合もあるので、注意が必要です。

では、有給休暇を買い取ってもらった方が良いのはどのようなケースが考えられるでしょうか。よくある事情としては、「有給休暇を消化しようとすると引継ぎが十分にできない」といったケースが挙げられます。

退職日は後ろにずらせないけれど引継ぎが終わらない、有給休暇もどうにかしなければならないという場合、消化の代わりに買取を選択して引継ぎに当てる、という解決方法もあります。

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9.有給休暇の買取に関する注意点

有給休暇の買取に際しては以下の注意点を理解しておきましょう。

9.1.有給休暇の買取は企業側の義務ではない

有給休暇の買取は企業に対して義務化されている制度ではなく、あくまでも任意でおこなわれるものです。したがって、労働者側は原則として企業の判断に従う必要があります。

9.2.有給休暇買取を予約することはできない

有給休暇の目的は、労働者の心身をリフレッシュさせることです。そのため、あらかじめ有給休暇の買取を予約してその日数を減らすような行為は、労働基準法で定められている趣旨に反することになります。

買取の予約をしてしまうと、労働者は有給休暇を積極的に取得する必要性がなくなり、制度の意味がなくなってしまいます。有給休暇は「取得」するのが原則だということを覚えておきましょう。

9.3.有給休暇の買取代金は賞与として計上される

有給休暇の買取を行った場合、買取代金は給与ではなく賞与として計上されます。したがって、本来の賞与の支給時と同様、社会保険料が控除された状態で支給されることになります。

9.4.労働契約が解消された時点で有給休暇は消滅する

有給休暇は労働契約が締結されている従業員に対して有効なものです。そのため、労働契約が解消された時点で、保持していた有給休暇の残日数は消滅してしまいます。

したがって、労働契約が有効な間に買取できるよう、早めの対応が必要です。

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10.まとめ

有給休暇は心身共に健康な状態で仕事を続けるためにも定期的に取得することが望ましいといえます。

しかし、思うように取得できず買取が認められるケースが発生した場合は、買取を希望する旨をなるべく早い段階で人事担当者や上司へ相談するようにしましょう。

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