忙しく働いているにもかかわらず、効率が悪かったり自己判断が多かったりして、結果的に職場へ迷惑をかけてしまう人を「無能な働き者」と呼びます。
この記事では、「無能な働き者」によく見られる特徴や、「無能な働き者」にならないためにすべきことを解説します。また、「有能な働き者」「無能な怠け者」などとの違いも紹介するので、ぜひ参考にご覧ください。
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1 「無能な働き者」は「ゼークトの組織論」における分類
「無能な働き者」とは、「自身の判断で熱心に働くが、正しい能力が備わっていないため周囲を混乱させてしまう人」を指す言葉です。この概念は、ドイツの軍人ハンス・フォン・ゼークト氏の「ゼークトの組織論」が由来であると言われます。
「ゼークトの組織論」は都市伝説的な軍事ジョークとして広まっており、実際に本人が提唱したものかは定かでないものの、以下のような文面も名言として知られています。
「有能な怠け者は司令官にせよ。有能な働き者は参謀に向いている。無能な怠け者は連絡将校か下級兵士が適している。無能な働き者は処刑するしかない。」
これは、「無能な働き者は害悪である」「無能な働き者に重要な役割を与えてはいけない」ということを示した表現です。
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2 「ゼークトの組織論」の4分類
ゼークトが語ったとされる「ゼークトの組織論」には、4つの分類があると言われています。それぞれの分類について詳しく見ていきましょう。
2.1 無能な働き者(愚鈍×勤勉)
上述したように、正しい判断能力がないにもかかわらず自分の考えで行動し、周囲を混乱させてしまう人のことです。本人に悪気はなく一所懸命取り組んでいるものの、実は周囲に大きな迷惑がかかっている場合もあります。
例えば、「優先順位を決められず締め切りをオーバーする」「非効率な方法で作業を続けて長時間残業する」「まだ決定していない案件に取り掛かる」など、無能な働き者は企業や職場に損失を与える可能性があります。
2.2 無能な怠け者(愚鈍×怠慢)
正しい判断能力がない上に、自分から何かをしようとする行動力もない人を指します。自分の考えを提案したり、積極的に周囲を率いたりすることはなく、言われたことだけを淡々とこなすのが得意です。
一見、仕事への意欲がなく貢献度の低い人材に思えますが、勝手な判断で行動することがないので、組織にとっては大変扱いやすい存在です。指示された仕事や毎日決められた作業を忠実にこなすルーティンワークで力を発揮します。
2.3 有能な働き者(利口×勤勉)
仕事に対して高いスキルを持ち、効率的に業務を遂行できる人のことです。コミュニケーション能力も高く、周囲とのやり取りもスムーズに行えるので、他のメンバーをサポートしながら業務を進められます。
もちろん、誰かに指示を出して仕事を振ることもできますが、働き者であるため、自分で一から計画を立てて最後まで実行するポジションが適しています。有能かつ働き者という特性を活かし、リーダーを支える参謀的役割に就くと、優れた能力を発揮できるでしょう。
2.4 有能な怠け者(利口×怠慢)
高いスキルや知識を持ちながら、できるだけ楽をしたいと考える人を指します。このタイプの人は、いかに効率良く仕事をこなせるかを常に考えているので、一人で行うべき仕事と協力して行うべき仕事を見極めるのが得意です。
また、周囲を俯瞰で捉える能力や、誰にどの仕事を割り振れば最も効率が良いかという判断能力にも長けています。そのため、適材適所に人材を配置したり、適切なタイミングで正しい指示を出したりするリーダー的ポジションが向いています。
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3 「無能な働き者」によくある特徴
企業にとって最も不要な存在とされる「無能な働き者」と呼ばれる人には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、主な特徴を7つ紹介します。
3.1 自己判断で仕事を進めがち
深く考えず、自己判断で仕事を進めるのは無能な働き者の大きな特徴です。上司の指示やチームメンバーのチェックを待たずに行動してしまうので、周囲は混乱してしまいます。
また、その自己判断は間違っていることも多く、場合によっては企業に大きな損害を与えてしまうこともあります。働く意欲はあっても、組織での役割や目標までのプロセスに関する理解が不足しているため、努力が成果に結びつかない状態です。
3.2 何度も同じミスを繰り返す
無能な働き者は、仕事に対する基本的な理解が不足したまま、勝手な判断で作業を進めてしまいます。また、自分の行動を振り返る習慣がなく、失敗から学ぶことができないので、何度も同じミスを繰り返しがちです。
さらに、問題が発生しても周囲からの助言を受け入れず、自分のやり方に固執することが多く、ミスの再発を招きます。結果として、無能な働き者は組織全体のパフォーマンスを低下させる要因となる可能性があります。
3.3 自信過剰で失敗を認めない
無能な働き者は、自分の判断に絶対の自信を持っていることが多いです。そのため、たとえ業務でミスをしてしまっても、それを自分の責任として認めず、他者に責任を転嫁しがちです。
また、失敗を受け入れない上に、他者からのフィードバックにも耳を貸さないこともあるので、改善が難しく、さらにミスを重ねてしまう可能性があります。このような態度は、チームのパフォーマンスにも悪影響を与えることが多く、組織にとって大きな問題となります。
3.4 効率が悪く時間が掛かる
とにかく目の前の仕事をこなそうと考えるのも、無能な働き者の特徴です。優先順位をつけたり仕事の手順を考えたりすることなく、一所懸命仕事をしていれば結果は出ると思っているので、結果的にとても非効率な方法で仕事を進めてしまうことがあります。
「早く仕事を終わらせる人は怠けている」「長い時間をかけて仕事をするのは頑張っている証(あかし)」という意識のもと、長時間働くことを美徳と考える人もいます。
3.5 一人で仕事を抱え込んでしまう
無能な働き者は、自分の能力を過信している場合が多く、「自分がやった方が確実」として他者のサポートを避けることがあります。締め切りに間に合いそうもない状況でも、ギリギリまで自分で抱え込み、結果的には周囲に迷惑をかけてしまいます。
また、「仕事がたまっているのは、任されている仕事が多いからだ」と考え、自分の能力不足を認めないのも特徴の一つです。
3.6 報告・連絡・相談を忘れる
自己判断で仕事を進めることが多いので、報告・連絡・相談、いわゆるホウレンソウを忘れることがあります。無能な働き者は自分のやり方に自信を持っており、「上司と話し合っても意味がない」と考えがちです。
その結果、業務の進捗状況が不透明になり、問題が発生しても周囲が気づかないまま事態が悪化する恐れがあります。さらに、連絡が滞るとチーム内での役割分担がうまくいかず、業務の効率が低下してしまいます。
3.7 常に不満を感じている
努力の割に結果が伴わないことも多いので、必然的に不満を抱くことが多くなります。結果が出ないのは、効率の悪さやミスの多さなど自分のせいであったとしても、そのことには気付けず「周囲が悪い」と他責思考に陥りやすくなってしまいます。
また、「こんなに頑張っているのに評価してもらえない」「毎日長時間働いているのに給料が上がらない」など、会社からの評価や待遇に不満を感じることもあります。
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4 「無能な働き者」のままでいるとどうなる?
ネガティブな特徴の多い「無能な働き者」ですが、そのままの働き方を続けていると自分や会社にどういった影響があるのでしょうか。
4.1 キャリアアップが見込めなくなる
ミスが多い・失敗を認めない・効率が悪い・上司への報告や相談ができないなど、さまざまなデメリットがある無能な働き者は、そのままでいると重要な仕事を与えてもらえなくなる可能性があります。仕事がもらえなければ、当然スキルや経験は身につきません。
また、会社からの評価も下がる恐れがあるため、昇進や昇給にも影響するでしょう。結果として、将来的なキャリアアップは見込めなくなる可能性があります。
4.2 職場の士気を下げる恐れがある
勝手な判断で仕事を進めるため、ミスやトラブルが頻繁に発生する可能性があります。また、非効率な方法でギリギリまで助けを求めず頑張るので、締め切りに間に合わないことも多く、最後はチーム全員でフォローしなければならなくなることも考えられます。
このような状況が続き、今後も改善の兆しが見えなければ、職場の士気は低下して不満を募らせるメンバーも増えていくでしょう。
4.3 会社の業績に悪影響を及ぼす可能性がある
誰にも相談せずに仕事を進めた結果、ミスの発見が遅れて大きな損害が出てしまうことがあります。また、ミスやトラブルが多いと、それを修正したり解決したりするのにリソースを割かなければならないので、チーム全体の進行にも悪影響を及ぼします。
さらに、チームの連携が乱れて職場の士気が下がれば、生産性や質が低下して、会社の業績自体が悪化してしまうかもしれません。
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5 「無能な働き者」と言われないためにすべきこと
自分では必死で仕事をこなしているつもりでも、気付かないうちに無能な働き者になっている可能性もあります。そのため、ここでは周囲から無能な働き者と言われないためにすべきことを解説します。
5.1 仕事に優先順位をつける
無能な働き者は、とにかく目の前の仕事から取り掛かってしまう傾向があります。しかし、効率的に仕事を進めるためには、重要なタスクや締切の迫った業務を先に処理することが必要不可欠です。
そのため、まずは仕事に優先順位をつけることから始めてみましょう。仕事の重要性、ボリューム、期日などを基準に取り掛かる順位を決めることで、限られた時間を有効活用できます。集中すべき業務に焦点を当てれば、ミスやトラブルも軽減できるでしょう。
5.2 ミスの原因を洗い出す
仕事をしていればミスは必ず起きてしまうものですが、同じ過ちを繰り返すことは絶対に避けなければなりません。そのため、ミスが発生したらその原因を特定し、どのプロセスに問題があったのか、どのようなスキルが不足していたのかを明らかにしましょう。
ミスの原因を明確にすれば、仕事の質が向上し、周囲からの信頼も厚くなります。もしも、原因を追求せずに放置したままだと、同じミスを繰り返すことになり、無能な働き者と見なされるリスクが高まります。
5.3 フィードバックを受け入れる
「フィードバックは自分の悪い部分を指摘される耳の痛い声」と思っている方がいるかもしれません。しかし、実際は仕事の質や効率をアップさせられるポジティブなものです。
フィードバックを受け入れることで、自分では気づかなかったミスや改善点を把握し、次回に生かすことができます。また、周囲の声を素直に受け入れる姿勢は、職場内のコミュニケーションを円滑にし、信頼関係を築く助けにもなります。
5.4 上司や同僚とコミュニケーションを図る
無能な働き者は、自らの判断で行動した結果大きな失敗をしてしまう傾向があります。そのため、上司や同僚と密にコミュニケーションを図り、業務の進捗状況を共有し合うことが重要です。
コミュニケーションを図る中で疑問や不安をすぐに相談すれば、トラブルの発生を未然に防ぐことができるでしょう。さらに、チーム内の連携が強化できるので、効率的な業務遂行にもつながります。
5.5 継続的なスキルアップを目指す
仕事の環境や求められるレベルは常に変化しており、それに対応するには自分のスキルを常に更新していかなければなりません。新しいスキルを習得し既存のスキルを磨くことで、業務の質を向上させ、効率的に仕事をこなせるようになります。
また、スキルアップは自己成長の一環であり、キャリアアップのチャンスを広げることにもつながります。継続的なスキルアップは、自分の価値を高め、職場での信頼を築くために欠かせない要素です。
5.6 謙虚な姿勢を心がける
自信過剰かつ自己中心的な態度は、周囲からの反感を買い、職場で孤立するきっかけとなります。誰からのサポートも得られなければ、当然ながら作業に遅れが生じ、ミスも多くなります。その様な状況で一人頑張る姿は、まさに無能な働き者そのものと言えるでしょう。
そのため、仕事では常に謙虚な姿勢を心がけ、自分の限界を認めながら周囲と協力していくことが大切です。そういった姿勢が、結果的に自分の成長や企業の業績向上につながります。
6 職場に「無能な働き者」がいるときの対処法
もしも、職場に無能な働き者と思われる人がいる場合は、どのように対処すべきでしょうか。業務をスムーズにこなすためには、無能な働き者への適切な対処が必要です。
6.1 明確な目標を設定する
無能な働き者は仕事に優先順位をつけたり、期日を把握したりすることが苦手なので、取り組むべき業務が曖昧になって、目の前の仕事に全力投球しがちです。そのため、仕事を与える段階で明確な目標を設定してあげるのが有効です。
「まずは何を達成すべきか」「どのような基準で評価されるか」など、業務の方向性を明らかにすることで、自己判断による誤った行動を防ぎ、無駄な作業を減らす効果が期待できます。
6.2 進捗状況の確認とフィードバックを行う
進捗状況を定期的に確認することで、計画通りに進んでいるか、問題点がないかを早期に把握できるので、たとえミスが発生した場合でも、大きなトラブルに発展することなく業務の修正が可能となります。
また、無能な働き者が自分の問題点を前向きに改善していくためには、改善点を指摘するだけでなく、良い点を見つけて褒めるような正しいフィードバックが必要です。無能な働き者のポジティブなモチベーションを低下させないよう、適切なフィードバックを行いましょう。
6.3 情報共有しやすい環境を構築する
無能な働き者はただでさえ周囲への報告や連絡を怠りがちなので、情報共有の環境が整っていないと、ますます自己判断で仕事を進める可能性があります。
そのため、「ミーティングの機会を多く設ける」「チャットツールや管理ソフトを導入する」「情報共有のガイドラインを設定する」など、情報共有しやすいオープンな環境を構築することが重要です。必要な情報がタイムリーに共有されれば、ミスが減り、業務もスムーズに進められるでしょう。
7 「無能な働き者」でよくある疑問
ここでは、無能な働き者に関してよくある疑問と答えを紹介します。上記の項目では説明できなかった内容について詳しく解説するので、ぜひチェックしてください。
7.1 日本では「無能な働き者」が生まれやすい?
まず、日本では長時間労働や自己犠牲を美徳とする傾向があり、効率よりも仕事に対する姿勢が評価される場合があります。そのため、結果よりも過程が重視され、実際には成果を上げていないにもかかわらず、熱心に働くことで評価されるケースがあります。
また、年功序列や終身雇用制度が根強く残っている企業も多く、能力不足のまま昇進し続けるケースもあります。さらに、遠慮の気持ちから、他者への指摘が適切に行われないこともあることから、日本の職場では「無能な働き者」が生まれやすいと言われています。
7.2 「無能な働き者」を英語で言うと?
「無能な」は英語で「incompetent」「incapable」、「働き者」は英語で「hard worker」「workhorse」と表します。したがって、「無能な働き者」を直訳すると、以下のような表現になるでしょう。
- incompetent hard worker
- incapable workhorse
7.3 ミスが多い人は「無能な働き者」?
ミスが多い人を「無能な働き者」と定義するのは必ずしも適切ではありません。「無能な働き者」は単にミスをする人だけではなく、自己判断で行動しがちで、改善の意識を持たず、チームに悪影響を及ぼす人を指します。
ミスが多い場合でも、その原因がスキル不足や経験の浅さであり、改善に向けた意欲が見られる場合は、むしろ成長過程にいると考えるべきです。重要なのは、ミスを通じて学び、成長しようとする姿勢や行動です。
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8 まとめ
「無能な働き者」とは、仕事に熱心である一方で、効率が悪くミスを繰り返し、改善の意識が欠けている人を指します。これにより、業務の質やチームの士気が損なわれる可能性があります。
無能な働き者にならないためには、業務に優先順位をつけ、周囲からのフィードバックを素直に受け入れることが重要です。さらに、上司や同僚と積極的にコミュニケーションを図り、継続的なスキルアップを目指しましょう。
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