ステークホルダーとは?意味や使い方、経営における重要性などを紹介

ビジネススキル・マナー

企業経営を行う上で重要なものの1つがステークホルダーです。今回はステークホルダーとは何か、その意味や使い方から、経営における重要性、「ステークホルダーエンゲージメント」といった考え方や実例まで、わかりやすく解説します。

【関連記事】「【ビジネス用語一覧】厳選110選|基本をマスターするための例文も紹介」

【関連記事】「【エンゲージメントとは】SNSや企業活動で重視される理由」

「もしかしたら仕事頑張りすぎ!? 」... そんな方へ
\無料・登録不要/
『仕事どうする!? 診断』を受ける>

1.ステークホルダーとは

ステークホルダーとは、簡単に言うと利害関係者のことです。英語では「stakeholder」と表記します。ステーク(stake)とは掛け金のこと、ホルダー(holder)は保有者のことで、「出資者」「投資者」という意味での「stakeholder」が語源となっています。

1984年にビジネス倫理の研究者、エドワード・フリードマンが著書「Strategic Management: A Stakeholder Approach」の中で、ステークホルダーという考え方を企業経営に活かせることを主張してから、ビジネス用語として定着しました。

そこから、出資者以外の利害関係者である消費者や取引先企業(顧客)、地域社会までステークホルダーに含まれるようになりました。つまり、ステークホルダーとは、広義には「その支援がなければ、集団が成り立たなくなるような人たち」を指します。日本語では、単に「関係者」と言い換えられることもあります。

1.1.ステークホルダーの具体例

企業にとってのステークホルダーは、広範囲に及びます。具体例を挙げると、以下のように多くの組織や個人がその対象となることがわかります。

・顧客、消費者
・取引先
・株主、投資家
・経営者
・従業員
・グループ会社、関連会社
・金融機関
・行政機関
・地域社会、地域住民
・利益団体(業界団体、労働組合など)
・マスメディア

1.2.ビジネス用語としてのステークホルダーの使い方

ビジネスシーンにおいて「ステークホルダー」という言葉はどのように使われているのでしょうか。「ステークホルダー」は使われる場面や文脈によって、どの組織や人を指すのかが変わる点に注意が必要です。いくつか例文を紹介します。

(株主総会に向けて)

・株価下落の理由について、ステークホルダーに丁寧に説明することが大事だ
・この資料では、ステークホルダーから十分な理解を得られない

(経営会議にて)

・経営方針を見直し、ステークホルダーとの対話をより重視していく
・経営者の理念をステークホルダーと共有する取り組みを強化しよう

(社内会議にて)

・本プロジェクトの新しい情報をレポートにまとめ、ステークホルダーに公開する
・新サービスの考案にあたって、ステークホルダーから意見を収集する

(会社説明会に向けて)

・自社の取り組みが地域の活性化にもつながることをステークホルダーにアピールする
・ステークホルダーの理解を得るため、工場の建設が自然環境に害をもたらさないことを説明する

post1006_img1.jpg

【関連記事】「コミットとは? 意味とビジネスシーンでの使用例をわかりやすく解説」

今の仕事、会社がつらい...無料で相談できる転職エージェント「マイナビエージェント」に相談してみる。

2.ストックホルダーやシェアホルダーとの違い

ステークホルダーとよく似た用語に「ストックホルダー」「シェアホルダー」がありますが、似ていながら異なる概念の言葉です。

2.1.ストックホルダー

株(ストック)を所有している人のことで、株主のことを指します

2.2.シェアホルダー

シェア(割合、議決権割合)を持っている株主のことを指します。

株主は、保有する株式の割合に応じて、経営に対する発言権があります。

しかし、近年では議決権のない株式も発行されているため、株式保有割合=議決権割合にならない場合があります。そのため、シェアホルダーという言葉が使われることがあります。

2.3.ストックホルダー企業とステークホルダー企業

この2つのタイプの企業を比較する言い方がしばしば使われます。ストックホルダー企業とは「株主の利益を最優先する企業」のことで、いつか破綻してしまう可能性が高い悪い例として使われます。

一方、ステークホルダー企業は企業に関わるすべての人の利益を考えて経営するために持続可能性の高い、優れた例として使われます。

post1006_img4.jpg

【関連記事】「【シナジーとは】シナジー効果の実例・メリット、シナジー効果を生む手法」

3.直接的ステークホルダーと間接的ステークホルダー

ステークホルダーとしてわかりやすいのは、出資者(株主)、従業員、消費者、金融機関の4つです。

この4者は、直接的ステークホルダーと呼ばれ、ひとつ欠けただけでも企業は成り立たないと考えてよいでしょう。

また、間接的なステークホルダーも意識する必要があります。具体的には政府、地域社会、従業員の家族などです。企業活動に直接的に影響を及ぼすわけではありませんが、このような間接的ステークホルダーを意識した経営を行うことで、企業活動の幅が広がります。

誰がステークホルダーに当たるのかの定義はなく、むしろ、企業がその範囲を自ら定義することでその企業の個性となります。

例えば、競合他社をステークホルダーと考えることで、業界全体の利益をも考える企業となり、自然とその業界をリードする企業の地位を獲得することができるようになる場合もあります。

post1006_img2.jpg

(ステークホルダーは、直接的、間接的の2つに分類ができる。間接的ステークホルダーをどう定義するかで、企業の個性が決まる)

【関連記事】「アライアンスの意味をわかりやすく解説!M&Aとの違い・重要性は?」

4.ステークホルダーを意識した経営のメリット

ステークホルダーを意識した経営には次のようなメリットがあります。

4.1.企業の持続性

特定の人の利益しか考えない企業は、企業を持続させていくことはできません。

そのようなやり方では多くのステークホルダーの利益が損なわれるため、信頼を失い、支援を失うことになるからです。

全方位のステークホルダーの利益を考えることで、全方位の支援を受けることができ、企業が長期にわたって存続していくことができるようになります

4.2.コンプライアンスの真の実現

コンプライアンスとは、狭義には「法令遵守」のことですが、企業は法律を遵守するだけで良いというわけではありません。社会道徳、社会規範にも従う必要があります。

しかし、社会規範のようなものは、人により異なり、また時代によっても変化をしていきます。

普段から広くステークホルダーとの対話を続けている企業は、このような社会規範から外れた行為があった場合にステークホルダーから予兆情報をあげてもらい、社会規範を遵守しやすくなります。

4.3.ブランド価値の構築

全方位でステークホルダーの利益を考える企業は、信頼を得て自然にブランド価値が向上していきます。

プロモーション施策によるブランド価値構築よりも、強固で持続するブランド価値を構築することができます。

post1006_img3.jpg

【関連記事】「コンプライアンスとは? "コンプラ違反"が起きる原因と対策を解説」

5.それぞれの立場から見たステークホルダーの重要性

ステークホルダーは、経営者にとってはもちろん、株主や従業員にとっても重要な存在です。それぞれの立場なりにステークホルダーの利益を考えることが、結果的に自身の利益にもつながっていきます。

5.1.経営者にとってのステークホルダー

経営者にとってのステークホルダーは、以前は株主が主でした。

しかし、株主の利益ばかりを優先する企業は、消費者や従業員の心が離れてしまい、地域社会の協力も得られなくなり、持続をしていくことができなくなります。

経営者は、消費者や従業員、さらには地域社会などの間接的ステークホルダーの利益も考え、360度の視野を持つ必要があります。

5.2.株主にとってのステークホルダー

以前の株主は、企業に対し、株価の上昇と配当の多さという自分の利益を主に求めていました。

しかし、それは短期的な利益は得ることはできるかもしれませんが、長期に渡った利益を得ることは難しく、結局、自身の利益も小さくなってしまいます。

ステークホルダー全体の利益を考えて、経営に参画することで、自身の長期的利益も最大化することができます。

5.3.従業員にとってのステークホルダー

従業員は、労働力を提供して給料をもらう存在で、自分は経営とは関係がないと考える人も多くいました。

しかし、社会から見ればその企業の一員であり、自分自身も自社製品の消費者でもある場合があります。社員株制度があれば、株主であることもあります。

従業員も、消費者、株主、金融機関、地域社会などのステークホルダーを意識しながら業務にあたることで、質の高い業務、提案ができるようになります

【関連記事】「【スキームとは】意味と使い方を徹底解説!簡単に言い換えるなら?」

6.「ステークホルダーマネジメント」と「ステークホルダーエンゲージメント」

ステークホルダーについて理解するうえで覚えておきたい言葉があります。それが、「ステークホルダーマネジメント」と「ステークホルダーエンゲージメント」です。どちらもステークホルダーと良好な関係を築くために欠かせない考え方です。

6.1.ステークホルダーマネジメントとは

ステークホルダーマネジメントとは、自社のステークホルダーを管理・分析し、それぞれの立ち位置を把握することです。ステークホルダーの整理と影響力の分析、合意形成などが含まれます。

経営者は、どの企業活動においても、そこに関わるステークホルダーを意識したマネジメントをしていくことが求められています。

一方、日々の業務にもステークホルダーマネジメントの考え方を取り入れることで質の高い仕事ができるようになります。

例えば、社内の受発注システムを刷新するという場合、従来であれば、開発を担当する情報システムが中心となりプロジェクトを進め、それを使用する部署に対して、使用法の研修を行うというやり方が一般的でした。

ステークホルダーマネジメントの考え方では、利害関係者になる営業部や物流部、場合によっては外部の取引先の代表者にも入ってもらって、全員に当事者意識を持ってもらいながら開発を進めます

こうすることで、最終的にすべてのステークホルダーが満足をするシステムが完成する確率が高くなります。

6.2.ステークホルダーエンゲージメントとは

ステークホルダーエンゲージメントとは、企業に対するステークホルダーからの信頼度や評価を指す言葉で、ステークホルダーの要望や関心ごとを企業の意思決定や事業プロセスに反映させる取り組みを指すこともあります。

株主総会や顧客向けのサポート窓口の設置もステークホルダーエンゲージメント向上の取り組みの一つですし、顧客満足度調査や従業員に対する組織サーベイ、地域貢献活動や交流会なども、ステークホルダーエンゲージメント向上施策に当たります。

こうした取り組みによって、ステークホルダーとの信頼関係が深まり、結束感が強まります

【関連記事】「ナレッジとは? ノウハウとの違いや「ナレッジマネジメント」の重要性を解説」

7.ステークホルダーエンゲージメントを高める3つの方法

ステークホルダーとの信頼関係を積極的に築いていくことは、ステークホルダーエンゲージメントと呼ばれます。

ステークホルダーエンゲージメントを高めていくには3つのことが重要だと言われています。

7.1.すべてのステークホルダーと公平に対話をする

信頼関係の第一歩は、対話を持つ機会を持つことです。

株主や金融機関など、対話を持ちやすいところとだけ対話の機会をつくっていると、他のステークホルダーからは「あの企業は冷たい、信用できない」という不満を持たれやすくなります。

対話の時間だけがすべてではありませんが、まずは等しくすべてのステークホルダーと対話をすることから始まります。

7.2.自分もステークホルダーであることを意識する

従業員も、自身で企業を支援するステークホルダーです。

他のステークホルダーと対話をする時は、自分もステークホルダーの一員であるという意識を持つことが大切です。

ステークホルダーであるという意識がないまま対話を始めてしまうと、ステークホルダーは「不満や注文ばかりを言う人」、従業員は「対応をしなければならない人」という対立的な関係に陥ってしまい、信頼関係を構築することが難しくなります。

7.3.ステークホルダーと企業理念を共有する

ステークホルダーは、企業の理念に賛同しているため、資金、労働力、購入などの形で企業を支援します。

しかし、企業理念が抽象的すぎて、理解が難しい、ステークホルダーに伝える努力をしてないために共有できていないという場合は、その支援は安定せず、いつか失われてしまうかもしれません。

ステークホルダーと企業理念がしっかりと共有できているかどうかを常に検証し、共有する努力を続けていくことが大切です。

【関連記事】「【ブルーオーシャン戦略とは】見つけ方から戦略のフレームワークまで」

8.ステークホルダーエンゲージメントの実例

三菱地所グループでは、ステークホルダーエンゲージメント活動を実施するだけでなく、公式サイトで取り組み内容を公開しています。

自社でステークホルダーエンゲージメント活動をする時に非常に参考になる情報です。このような他社の取り組みを参考に、自社の活動を実施していくことが大切です。

post1006_img5.jpg

(三菱地所は公式サイトでステークホルダーエンゲージメント活動の詳細を公開している。引用元はこちら)

【関連記事】「ベーシックインカムとは? 仕組みやメリット、各国の導入状況を解説」

スキルアップを目指すなら
まずはプロにご相談ください
マイナビエージェントについて詳しく知る >

9.まとめ

ステークホルダーとは利害関係者のことです。現在では、出資者以外の利害関係者である消費者や取引先企業、地域社会までの広い範囲をステークホルダーと呼びます。

その支えがなければ、集団が成り立たなくなるような人たち」のことです。企業が持続をしていくためには、すべてのステークホルダーの利益を考えることが重要になってきています。

\転職するか迷っていてもOK/
マイナビエージェントに無料登録して
転職サポートを受ける

TOPへ