【エンゲージメントとは】SNSや企業活動で重視される理由

【エンゲージメントとは】SNSや企業活動で重視される理由

「エンゲージメント」という言葉をビジネス現場で聞くことが多くなっています。今回は、SNSでの「エンゲージメント」の意味や、「エンゲージメント」が企業活動で重視されるようになっている背景や理由を説明します。

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1.エンゲージメントとは

エンゲージメントとは「深い関わり合い」を表す言葉です。結婚を約束した2人は、特別深い関わり合いであるため、エンゲージメントには婚約という意味もあります。

ビジネスでは、このエンゲージメントという言葉がさまざまな文脈で使われます。従業員エンゲージメントと言う場合には、従業員の企業や組織に対する思い入れや愛着をいかに育て、帰属意識の強い組織を構築するという文脈で使われます。

顧客エンゲージメントと言う場合には、顧客にいかにその企業や製品のファンになってもらい愛着を持ってもらうかという文脈で使われます。

この言葉が、ウェブマーケティングの世界で特に注目されるようになったのは、ツイッターやフェイスブックなどのSNSで、エンゲージメントが数値測定できるようになったからです。企業が顧客エンゲージメントを高める施策を行い、それがうまくいっているのか、改善が必要なのかが、エンゲージメントの数値の推移を分析することで、施策を改善していくことができるようになったからです。

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2.数値化されるSNSのエンゲージメント

(1)ツイッターのエンゲージメント

ツイッターのエンゲージメントは、企業公式アカウントのツイートに対して、「クリック」「リツイート」「返信」「フォロー」「いいね」の5つの行動のことです。公式ツイートに対して何らかのリアクションを取ることがエンゲージメントです。

これをインプレッション(ツイートを閲覧した人の人数)で割ったものが、エンゲージメント率になります。つまり、エンゲージメント率とは「ツイートを見た人のうち、何人が具体的な反応をしたか」を表す数値です。このエンゲージメント率が高いほど、ツイートの注目度が高く、フォロワーとの関係が深くなっていると考えることができます。

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(ツイッターのビジネスサイトにエンゲージメントについても詳細で具体的な解説がある)

(2)フェイスブックのエンゲージメント

フェイスブックでは、企業の公式投稿に対して、「いいね」「シェア」「コメント」「クリック」の4つの行動のことです。公式投稿に対して、何らかのリアクションを取ることがエンゲージメントです。

これをリーチ数(公式投稿が配信された人数)で割ったものが、エンゲージメント率になります。

3.企業活動でエンゲージメントが重視される理由

エンゲージメントが重視されるようになったのには、ブランド価値の意味が大きく変化したことがあります。

(1)従来のブランド価値

従来のブランド価値とは「優れた製品を作る」「顧客に誠実な対応をする」といった、製品と顧客の2つを軸にしたものでした。「今まで優れた製品を作って企業だから、この新製品も優れた製品だろう」「今まで顧客に誠実に対応してきた企業だから、これからも顧客には誠実に対応するだろう」と消費者は考え、その企業の製品を購入したり、サービスを利用したりしてきました。

(2)現在のブランド価値

しかし、現在では、このブランド価値に企業姿勢が加わっています。例えば、現在の消費者は環境問題に対する企業姿勢もブランド価値のひとつとしてみなすようになっています。どんなに素晴らしい製品であり、どんなに低価格であっても、環境に過大な負荷を与えるような製品であれば、使いたくないと考えるのです。例えば、毛皮のコートやマフラーなどを使う人は減り、古いファー製品のリメイク製品を使ったり、合成素材によるフェイクファー製品を使ったりする人が増えています。動物の命と引き換えに毛皮を生産することに疑問を感じているからです。

また、環境に大きな負荷を与えるガソリン車から、ハイブリッド車、電気自動車に乗り換えるEVシフトが世界的に始まっています。

環境問題だけでなく、人権上問題のある行為を行なっている国で生産された原材料を利用しない、貧困に苦しむ国で生産された製品を搾取するのではなく、貧困を解決できるような仕組みで購入スキームなどを構築するなど、企業にビジネスを行いながら社会課題を解決することが求められ、それが企業やブランドの価値として考えられるようになっています。

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4.エンゲージメントとZ世代の関わり

この企業姿勢が重視されるようになり、企業姿勢が消費者にうまく伝わっているかどうかエンゲージメントを測定することにより評価しようと言う流れは、Z世代の台頭と大きな関係があります。

Z世代とは、米国のマーケティングで使われる世代の呼び方で、60年代中盤から80年代に生まれた世代が「X」、80年代から90年代に生まれた世代が「Y」(ミレニアル世代)、2000年以降に生まれた世代が「Z」になります。

X世代はアナログ世代、Y世代はデジタル世代ですがPCが主体のデジタルネイティブ世代です。一方、Z世代は物心ついた時にはスマートフォンがあるスマホネイティブ世代です。PCと違って、1日の大半の時間をインターネットと触れながら生活するのがあたり前になりました。

Z世代の特徴は、地球規模の社会的課題に強い関心があることです。スマホでインターネットに繋がっていると、地球温暖化や人権、ジェンダー、差別といった世界に共通する問題や課題に関する情報に触れることが多く、世界中のZ世代がこのような問題に関心を持つようになっています。そのようなZ世代は、自分が関心がある課題の解決に尽力をしている企業の製品やサービスを利用し、活動を応援したいと考えるようになっています。

そして、企業は、そのような社会貢献ができるようなビジネスを行いながら、企業姿勢を消費者に伝えることが重要になってきています。その指標として、エンゲージメントが重要になってきています。

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5.エンゲージメントを向上させるには

エンゲージメントを向上させるテクニックにはさまざまなものがあります。例えば、テキストは簡潔にし、写真や動画を多用するなどもそのひとつです。しかし、このようなテクニックはあくまでも小手先のものであり、根本的にはどのような企業を活動を行い、それが企業の事業とどう関連しているかを明快にすることです。例えば、メーカーであれば、すべての原材料をリサイクル可能にし、製造に必要な電力は再生可能エネルギーにより発電された電力を使うなどです。

このような企業が目指すべきゴールがまとめられているのが、SDGs(持続可能な開発目標)です。2015年9月の国連サミットで、世界すべての国で2030年までに達成すべきである国際目標をまとめたものです。外務省の「JAPAN SDGs Action Platform」に、基本的な情報がまとめられています。

このような国際目標に、事業を行いながら真摯に取り組み、SNSを通じて、その活動内容を伝え、企業姿勢を理解してもらう。エンゲージメントを測定することで、この活動の進捗を測ることができます。

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(外務省のJAPAN SDGs Action Platformに、SDGsに関する基本情報がまとめられている)

6.まとめ

エンゲージメントとは「深い関わり合い」を指す言葉で、ウェブマーケティングの世界ではSNSの公式発言に対する反応数を見ることで数値を測定することができます。エンゲージメントが重要になっているのは、企業価値、ブランド価値が、企業姿勢でも評価されるようになってきているからです。自社の企業姿勢がどこまで理解されているかエンゲージメントを測定することで、推し量ることができます。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)
テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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