ROIは、投資に対する利益を測定する指標です。具体的には、投資にどれだけのリターンがあったかを数値で示し、効率的な資金運用をサポートするために使用されます。本記事では、ROIの計算式や活用例をわかりやすく解説するとともに、類似指標であるROAS(広告投資利益率)やROIC(投下資本利益率)との違いについても触れます。ROIを正しく理解し、効果的に活用する方法を学びましょう。
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1 ROI(投資利益率)とは?
ROI(Return on Investment)とは、投資によって得られた利益をその投資額で割った指標です。日本語では「投資利益率」と訳され、投資の効果や効率を測るために用いられます。
ROIを計算することで、どの投資が最も収益性が高いかを比較でき、企業の資産やリソースの運用効率を評価するのに役立ちます。
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1.1 ROIが重要視される理由
業績アップを実現するにあたって、投資は欠かせない要素です。例えば、近年はインターネット広告やSNSキャンペーンなどのデジタルマーケティングに、多くの費用を費やしている企業も少なくありません。
しかし、時代の変化と共にマーケティングチャネルは複雑化しており、どの施策がどれくらいの利益を生み出しているのかが分かりにくくなっています。
もしも、マーケティングの費用対効果が分からなければ、どの施策に注力すべきかが不明確になり、リソースの無駄遣いが発生する可能性が高くなります。
そんなとき、ROIを活用することで投資の収益性を明確に数字で把握できるため、「利益が出ている施策にはより多くの資金を」「利益が少ない施策は見直しを」というように、無駄なコストを削減しながら投資のパフォーマンスを向上させることが可能になります。
1.2 ROIの計算式
ROIは以下の計算式で算出します。
ROI(%)=利益÷投資額×100
※利益=収益-費用
ROIが高いほど、その投資から得られるリターンが大きいことを示します。
1.3 ROIの目安
ROIの目安は業界や投資目的によって異なります。例えば、小売業では10~30%、製造業では15~25%、不動産投資では10~15%が一つの目安と言われますが、明確に決まっているわけではありません。
ROIは事業規模や投資期間などの要因によっても変化するため、他社と比較する際は、同じ条件のもとで計測する必要があります。
なお、ROIが100%未満の場合は、投資額より損失が上回ったことになります。短期的なROIだけで経営状態を判断することはできないものの、100%未満の状態が長く続く場合は要注意です。
2 「ROI」と「ROAS」との違い
「ROI」と混同しやすい指標に「ROAS」があります。ここでは、「ROAS」の特徴と「ROI」との違い、使い分け方を説明します。
2.1 「ROAS(広告の費用対効果)」との違い
ROAS(Return on Advertising Spend)とは、「広告費の費用対効果」を示す指標です。広告に投資した金額に対して、どれだけの売上を生み出したかを測るために使われます。
ROASは以下の計算式で算出します。
ROAS(%)=売上÷広告費×100
ROIは「利益」を基準とするため、仕入れや人件費なども考慮しますが、ROASは「売上」を基準とするため、利益が出ていなくても高くなることがあります。
2.2 「ROI」と「ROAS」の使い分け方
「ROI」「ROAS」について、それぞれの目的と使い分け方をまとめました。
指標 | 計算式 | 目的 | 使い分け方 |
---|---|---|---|
ROI | 利益 ÷ 投資額 × 100 | 利益ベースで投資の効率性を評価する | 事業の投資効率を測る |
ROAS | 売上 ÷ 広告費 × 100 | 売上ベースで広告の費用対効果を評価する | 短期的な広告運用の効果を測る |
広告や設備などの投資効率を測定したい場合は「ROI」を、売上ベースで広告運用の費用対効果を測定したい場合は「ROAS」を使用します。
3 その他の覚えておきたい重要指標
企業の経営状況を客観的に判断する指標には、他にもさまざまなものがあります。ここでは、多くのシーンで用いられる重要指標を6つ紹介します。
3.1 ROIC(投下資本利益率)
ROIC(Return on Invested Capital)とは、投下資本利益率のことで、企業が投資した資本に対してどれだけの利益を生み出しているかを示す指標です。
ROICは以下の計算式で算出します。
ROIC(%)=税引後営業利益÷投下資本×100
※投下資本=有利子負債+株主資本
3.2 ROA(総資産利益率)
ROA(Return on Assets)とは、企業が持つ総資産を使ってどれだけの利益を生み出しているかを示す指標です。企業の資産をどれだけ効率的に活用できているかを測るために使われます。
ROAは以下の計算式で算出します。
ROA(%)=純利益÷総資産×100
3.3 ROE(自己資本利益率)
ROE(Return on Equity)とは、自己資本を活用してどれだけの利益を生み出しているかを示す指標です。株主が投資した資本が、どの程度効率的に利益を生み出しているかを測るために使われます。
ROEは以下の計算式で算出します。
ROE(%)=純利益÷自己資本×100
3.4 CPA(顧客獲得単価)
CPA(Cost Per Acquisition)とは、1人の顧客を獲得するのにかかった広告費用を示す指標です。主に、マーケティングや広告の費用対効果を測定するために用いられます。
CPAは以下の計算式で算出します。
CPA=広告費用÷獲得した顧客数
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3.5 CVR(コンバージョン率)
CVR(Conversion Rate)とは、Webサイトや広告を訪れたユーザーのうち、どれだけの割合が商品の購入やサービスの利用といった目的のアクションを完了したか(コンバージョン)を示す指標です。
CVRは以下の計算式で算出します。
CVR=コンバージョン数÷訪問者数×100
3.6 LTV(顧客生涯価値)
LTV(Life Time Value)とは、1人の顧客が特定の企業やブランドと取引を続ける間に、どれだけの利益をもたらすかを示す指標です。
LTVを算出するにはさまざまな方法があります。以下は、一般的な計算式の例です。
LTV=平均購入単価×粗利率×購入頻度×取引継続期間
4 ROIを活用するメリット
ROIを活用することで、ビジネスシーンでは具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
4.1 投資効果を明確に把握できる
ROIは、投資に対して得られた利益を数値で示すため、どの施策が効果的で、どの投資が無駄だったのかを客観的に評価できます。これにより、企業は資金をより利益の見込める分野に適切に配分でき、経営の効率化につながります。
特に、マーケティングや設備投資などの分野では、ROIに基づいて今後の戦略を最適化することが、持続的な成長を実現させるカギとなります。
4.2 業務改善のきっかけになる
業務改善が必要な状況であっても、日々の業務に追われる中では、問題点が見えにくくなり、現状維持のまま進んでしまうことがよくあります。
また、改善すべき点は分かっているのに、具体的な方法が分からなかったり、周囲の理解を得るのが難しかったりすることもあります。そのため、客観的な指標やデータを活用し、課題を明確にすることが重要です。
ROIを活用して業務の効率性を明確にすれば、コストをかけすぎている業務や効果の低い施策を見直し、改善策を検討することが可能になります。
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5 ROIのデメリット
ROIは投資効果を測る便利な指標ですが、一方でデメリットとも言える注意点があります。活用する際は、以下の点をチェックしておきましょう。
5.1 長期的な効果の把握には向かない
ROIは、基本的に計測時点の投資利益率を示す指標であり、短期的な成果を評価するのに適しています。一方、ブランド価値の向上や顧客ロイヤルティの強化など、時間をかけて成果が現れる要素に対しては、十分な評価ができません。
投資内容によっては、中長期で見ないと実際の成果がわからないものもあるため、投資判断をする際は、ROIだけでなくその他の指標も併せて利用することが重要です。
5.2 数値化できない利益の評価は難しい
例えば、ブランド価値の向上や顧客満足度の改善、従業員のスキルアップといった要素は、直接的な収益には結びつきにくく、ROIには反映されにくいのが現実です。
そのため、企業にとっては価値のある重要な施策が、ROIの低さを理由に無駄な施策として切り捨てられてしまう恐れもあります。企業の利益には数値化できないものもあることを理解し、ROI以外の要素も含めて総合的に判断しなければなりません。
6 ビジネスにおけるROIの活用例
ここでは、ビジネスシーンでROIがどのように活用されるのかを紹介します。「広告マーケティングの効果測定」「IT投資の正当性評価」という2つのパターンを見ていきましょう。
6.1 広告マーケティングの効果を測定する
オンライン広告に100万円を投資し、その結果、広告経由で獲得した利益が200万円だったとします。この場合、ROIは以下のように計算できます。
200万円÷ 100万円 × 100 = 200%
この結果から、広告費100万円に対して200%のリターンを得られたことがわかります。ROIが高ければ広告の効果が大きいと判断でき、逆にROIが低ければ広告内容の改善やターゲットの見直しが必要になります。
このようにROIを活用することで、費用対効果の高い広告運用を実現できます。
6.2 IT投資の正当性を評価する
業務効率化のために新しいERP(基幹業務システム)を導入し、導入コストとして500万円を投資したとします。このシステムにより、業務の自動化が進み、年間で以下のような効果が得られました。
- 人件費削減:300万円
- 作業時間の短縮による生産性向上:200万円
この効果を粗利とすると、利益を算出するにはかかった投資額を差し引く必要があるため、ROIは以下のように計算できます。
(300万円 + 200万円 - 500万円) ÷ 500万円 × 100 = 0%
この結果ではROIが0%となり、投資額とリターンが同じであることが分かります。しかし、システムの活用が進むことでさらなる効率化や業務改善が期待できる場合、ROIは将来的に向上する可能性があります。
ROIは、IT投資が経営にとって正当かどうかを数値で評価し、導入の是非を検討する判断材料にもなります。
7 ROIを最大化する3つの方法
ROIの値が大きいということは、その投資から得られるリターンが大きいということです。それでは、ROIを最大化するにはどうすれば良いのでしょうか。
7.1 無駄なコストを削減する
効果の低い媒体への出稿を減らしたり、過剰な在庫を抱えないように仕入を調整したりすることで、無駄なコストを削減しROIを高められます。
また、業務の効率化を図り、不要な人件費を削ることも有効です。ROIの向上を実現するには、限られた資源を最大限活用して、収益を高める工夫が求められます。
7.2 高収益のプロジェクトに集中する
限られた資源を分散させるのではなく、収益性が高く成長が見込める施策へ優先的に投資することで、より大きなリターンを得ることができます。
例えば、利益率の高い商品やサービスに注力したり、市場ニーズの高い分野へリソースを集中させたりすることが有効です。適切なデータ分析を行い、収益性の低いプロジェクトを見直すことで、効率的にROIを向上させることができます。
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7.3 顧客単価を向上させる
顧客単価を上げることで、同じ数の顧客から、より多くの利益を得ることができます。これには、既存顧客に対するアップセルやクロスセルの提案が有効です。
アップセルとは、顧客が購入する際に、より高価格帯の商品を勧めることです。また、関連する別商品を勧めることをクロスセルと言い、これにより顧客の購入額を増加させることができます。
さらに、顧客との関係を強化してリピーターを増やすことも、安定した収益を得るためには必要です。顧客のニーズを的確に捉え、価値のある商品やサービスを提供することが、顧客単価向上につながります。
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8 まとめ
ROI(投資利益率)は、投資に対して得られた利益の割合を示す指標で、企業の投資効果を評価するのに役立ちます。広告マーケティングやIT投資などさまざまな分野において、効果的な投資戦略を立てるために活用されています。
ただし、「長期の効果が把握できない」「数値化できない効果には向かない」といった点には注意が必要です。ROIを活用する際は、ROASやROICなどその他の指標も併用することで、より正しい経営判断を行えるでしょう。
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