PDCAとは、業務を継続的に改善するためのフレームワークです。「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(Check)」「改善(Action)」の4段階を順に進めることで、効率的に目標達成を目指せます。本記事では、PDCAサイクルの基本的な回し方や具体例、また一部の人から「古い」と言われる理由などをわかりやすく紹介します。PDCAを正しく活用し、成果を最大化したい方はぜひ最後までご覧ください。
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1 PDCAとは
PDCA(ピーディーシーエー)は、効率的な業務改善の手法として多くの企業が実践しているフレームワークです。まずは、PDCAの具体的な意味と歴史を見ていきましょう。
1.1 PDCAの意味
PDCAとは、業務改善や目標達成のためのサイクルで、「Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)」の4ステップで構成されます。
このサイクルを繰り返すことを「PDCAサイクルを回す」と呼び、効率的な業務改善には非常に有効な手法とされています。PDCAはビジネスだけでなく、個人のスキルアップや目標達成にも活用可能です。
1.2 PDCAの歴史
PDCAサイクルは、品質管理の父と呼ばれるアメリカのウォルター・シューハートが提唱した「シューハート・サイクル」を原形とした概念であり、20世紀初頭に統計学者のエドワーズ・デミングによって広められたと言われます。
日本では、自動車の生産方式などに取り入れられるなど、高度経済成長を支える手法として活用されてきました。現在では、製造業だけでなく、サービス業や個人の目標管理など幅広い分野で実践されています。
2 PDCAにおける4つのプロセス
ここからは、PDCAを構成する4つのプロセスについて詳しく解説します。それぞれの工程において、具体的に何をするのか見ていきましょう。
2.1 【Plan(計画)】:目標達成に向けた方法の設計
目標を達成するための具体的な計画を立てるプロセスです。まずは、課題や改善点を明確にするための現状分析を行います。
次に、目標設定として達成すべきKPI(重要業績評価指標)などを決め、実行する手順や必要なリソース、役割分担を整理します。
Plan(計画)のポイント
- 5W1Hを活用し、現状分析を行う
- SMARTの法則を活用し、目標を数値化する
- タスクを細分化し、必要なリソースを洗い出す
- 進捗管理の責任者を明確にする
- 実行時のリスクを想定し、対応策を準備する
- 中間チェックのタイミングを決め、進捗を可視化する
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2.2 【Do(実行)】:計画に基づいた行動
計画に基づいて、実際に行動を起こすプロセスです。計画通りに進めることが大切ですが、実行中は記録を取り、進捗状況を常に把握しておかなければなりません。
万が一、計画にはない予期せぬ問題が発生した場合は、チームメンバーと共有し合い、速やかに調整を行います。計画を忠実に実行しながらも、細かい調整を加えていくことが成功のカギです。
Do(実行)のポイント
- Plan(計画)で決定したプロセスやスケジュールを守る
- 小規模な試験運用から開始し、早めにフィードバックを得る
- 数値や結果を記録し、実行の経過を可視化する
- 計画の変更が必要な場合は、理由を明確にして関係者と共有する
- 定期的なミーティングや報告ルールを設定し、進捗や課題を共有する
- 実行が終わったら、Check(評価)に向けてデータや事例を整理する
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2.3 【Check(評価)】:成果の振り返りと分析
実行した結果を振り返り、計画と実績を比較するプロセスです。KPIをもとに成果を測定するとともに、「計画通りに進められたか」「目標達成に足りなかった要因は何か」といったことを分析します。
より良い改善策を見つけて、さらなる向上を目指すには、この段階で成功した点と問題点を明確にしておくことが大切です。
Check(評価)のポイント
- 事前に定めた目標と実績を比較する
- 数値だけでなく、顧客の反応や現場の声も確認する
- 成功要因と課題を明確にする
- 結果だけでなくプロセスも振り返る
- データをもとに振り返り、主観や感覚だけで判断しない
2.4 【Action(改善)】:課題の解決
評価をもとに改善策を実施して、次のサイクルへつなげるプロセスです。分析の結果、問題があれば適切な解決策を考えます。
一方、成功した方法は標準化し、継続できる仕組みを作ります。このように、必要に応じた改善策を施し、次のPDCAサイクルにつなげることがこのプロセスの役割です。
Action(改善)のポイント
- Check(評価)で判明した問題点に対する具体的な改善策を立案する
- すべての課題を一度に解決しようとせず、 最も影響の大きい改善策から取り組む
- 現場の意見を反映し、実行可能な改善策を策定する
- 成功した改善策はマニュアル化するなど、業務の標準プロセスとして定着させる
- 一度の改善で満足せず、継続的な改善を意識する
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3 PDCAサイクルのメリット
多くの企業で実践されてきたPDCAサイクルですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは主なメリットを3つ紹介します。
3.1 効率的に目標を達成できる
企業が目標達成を目指す際の問題点として、進捗管理が不十分になってしまうことが挙げられます。特に、多くの人が携わるプロジェクトでは、問題点が放置されたり修正が遅れたりすることも多く、無駄なリソースを費やす恐れもあります。
一方、PDCAサイクルを利用すれば課題を早期に発見できるため、無駄を省きながら的確に業務を進められます。計画段階で明確な目標を設定し、その後は結果を評価しながら改善を加えていくことで、効率的な目標達成が可能です。
3.2 継続して課題を改善できる
「計画、実行、評価、改善」を繰り返し行うPDCAサイクルでは、常に新しい課題を発見し、修正することができます。
業務中の課題は時間が経過することで徐々に複雑化し、気付いたときには改善が難しくなってしまうこともあるため、PDCAサイクルによる継続的な課題改善は、スムーズな業務運営にとって大きなメリットの一つです。
3.3 チームに一体感が生まれる
PDCAサイクルを回す際は、チーム内で目標を共有し、各メンバーが達成に向けて協力することが大切です。メンバー同士のコミュニケーションも重要であり、進捗状況を確認し合ったり、お互いの意見を交換したりする機会が増えるでしょう。
その結果、チーム全体に一体感が生まれ、目標達成に向けたモチベーション向上も期待できます。また、PDCAサイクルを実践することで個々の役割が明確になれば、チームとしての力を最大化することにもつながります。
4 PDCAサイクルのデメリット
さまざまなメリットがある一方で、「時間と労力がかかる」「形式的になりやすい」など、PDCAにはいくつかのデメリットも存在します。
4.1 時間と労力がかかる
PDCAサイクルを回す際は、各プロセスに多くの時間と労力がかかります。「計画を立て、実行し、その結果を評価して改善点を見つける」という過程は非常に手間がかかり、すべての工程を慎重に行うと予想以上に時間を要してしまう可能性があります。
また、それぞれの段階で多くのリソースを投入する必要があるため、日常業務とのバランスを取るのが難しくなることもあります。特に、短期間で成果を求められる仕事では、PDCAサイクルによって逆に効率が低下する恐れもあるため、計画的な取り組みが重要です。
4.2 形式的になりやすい
PDCAサイクルは、「計画、実行、評価、改善」という工程を順番通りに行う必要があるため、場合によっては形式的な作業になりがちです。
例えば、問題があるのに「実行」を強行したり、十分な「評価」を行わないまま次のサイクルを回したりと、効率を重視するあまり各工程が形だけになってしまうことがあります。
このように、PDCAを回すことが目的化すると、実際の業務改善にはつながらず、ただ形式的に回し続けるという状態に陥ってしまいます。
4.3 新たなアイデアが生まれにくい
PDCAサイクルは、既存プロセスの改善に焦点を当てるため、新たなアイデアを生み出すには限界があります。特に、「計画」「評価」の段階では、過去のデータや既存の枠組みに基づいて進められることが多いため、革新的なアプローチを実行しづらい傾向です。
また、現状に沿った改善を重視するあまり、大きな変革を検討する余裕がなくなり、新しい挑戦に対する意欲が薄れる場合もあります。
5 PDCAサイクルが失敗する原因
手順通りにPDCAサイクルを実行しているのに、「効果が感じられない」「逆に効率が低下した」という場合は、まず失敗の原因を突き止めることが必要です。ここでは、各プロセスにおける主な失敗原因を紹介します。
5.1 Plan(計画)での失敗原因
Plan(計画)での主な失敗原因には、以下のようなことが挙げられます。
- 曖昧、または無謀な目標設定
- データ分析不足
- メンバーへの共有不足
- 柔軟性の欠如
まず、目標設定があいまいだったり、実現の可能性が低かったりすると、目標達成への意欲が失われてしまいます。また、計画段階で過去のデータや現状分析を十分に行わないと、無駄な作業が増えて成果を上げることができません。
さらに、チーム一丸となって進むための適切な共有や、問題が起きたときの柔軟性が不足していると、進行が難しくなる可能性があります。
5.2 Do(実行)での失敗原因
Do(実行)での主な失敗原因には、以下のようなことが挙げられます。
- 計画通りに実行しない
- リソース不足
- コミュニケーション不足
- 進捗状況の確認不足
計画段階で決めた方法を守らず思いつきで進めた結果、ブレが生じ、思ったような成果が得られなくなる可能性があります。さらに、人員、時間、予算などのリソースを十分に準備できていないと、実行が難しくなり途中で停滞してしまいます。
また、チームメンバーとの連携や共有不足、進捗状況の確認不足も、効率的な実行や修正の妨げになる恐れがあります。
5.3 Check(評価)での失敗原因
Check(評価)での主な失敗原因には、以下のようなことが挙げられます。
- 評価基準が不明確
- 客観性の欠如
- データや情報の不足
- 評価の遅れや頻度の不足
評価基準があいまいで、個人の感情に左右される主観的な評価を行っていると、成果を正しく評価できず、改善点が見えにくくなってしまいます。
また、必要なデータや情報を十分に収集せずに評価を行うことも、正確な結果を得られないという失敗の要因です。さらに、評価の遅れや頻度にも注意する必要があります。
5.4 Action(改善)での失敗原因
Action(改善)での主な失敗原因には、以下のようなことが挙げられます。
- 誤った改善策の実施
- 一時的な対応
- チーム内の共有不足
- 改善策のモニタリング不足
業務改善に向けた課題が見つかっても、適切な改善策が取られなかったり、十分なリソースが投入されなかったりすれば、PDCAサイクルの意味がありません。また、改善策が一時的な対応にとどまると、根本的な問題解決につながらず、再び同じ問題が発生する恐れもあります。
さらに、改善点をチーム内で共有せず、改善策のモニタリングやフィードバックが十分に行われないことで、せっかくの効果が薄れてしまうことも考えられます。
6 PDCAサイクルを成功させるコツ
上記のような失敗原因がある中、PDCAサイクルを成功させるにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは、成功に向けた主なコツを3つ紹介します。
6.1 シンプルかつ明確な目標を設定する
Plan(計画)段階において、まずはシンプルかつ明確な目標を設定することが重要です。誰もが分かりやすい具体的な目標は、チームの一体感を生み、モチベーションの向上にもつながります。
また、目標が明確であれば、Check(評価)やAction(改善)の段階で成果を正しく測定できるので、次のステップに進みやすくなります。
6.2 チーム全体で共有する仕組みを作る
情報が個人に留まると、意識や行動がバラバラになり、全体の進捗が遅れる恐れがあります。そのためチーム全体で、目標や進捗状況を共有する仕組みを作ることが大切です。
具体的には、定期的なミーティングや共有ツールを活用し、各メンバーが自分の役割を確認したり、進捗状況をリアルタイムで把握したりできる環境を整えるのが有効です。
これにより、問題を早期に発見できるので、チームが一丸となって改善策を立案・実行することも可能になります。
6.3 定期的に振り返りを行う
PDCAサイクルを成功させるためには、定期的に振り返りを行うことが欠かせません。振り返りの場では、「スケジュール通りに実行できたか」「リソースは足りていたか」など、成果以外の部分も評価します。
この振り返りを定期的に行い、改善を積み重ねながらサイクルをどんどん回していくのが成功のコツです。
7 PDCAサイクルの具体例
ここでは、製品の不良率低減を目指す企業を例に挙げて、具体的なPDCAサイクルの例を紹介します。
【目標】製品の不良率を3%以下に低減させる
1. Plan(計画):現状を確認し戦略を立てる
- 現状の製品不良率は5%であることを確認
- 検査工程の強化、作業手順の見直し、従業員教育を検討
↓
2. Do(実行):計画に基づき行動を開始する
- 検査員の配置を増やし、より厳密な品質チェックを実施
- 作業マニュアルを更新し、従業員に教育を実施
- 新しい検査機器を導入し、欠陥を早期発見できるようにする
↓
3. Check(評価):データを収集し効果を分析する
- 1カ月後に不良率を測定し、改善の効果を確認
- 新しい検査工程を導入したラインの不良率が3.5%に低下したが、目標の3%には届かず
↓
4. Act(改善):目標に届かなかった原因を分析し、改善策を講じる
- 追加の原因分析を実施し、特定の工程でミスが多発していることを発見
- 問題の工程を自動化し、人為的ミスを削減
- 改善策を全工程に適用し、さらなる不良率低減を目指す
↓
1. Plan(計画)へ戻る
8 PDCAは時代遅れ?古いと言われる理由
多くの企業で実践されてきたPDCAですが、近年は「時代遅れ」「古い」という声も聞かれます。理由の一つとして、PDCAは効果が出るまでに時間がかかり過ぎる点が挙げられます。
トレンドや顧客ニーズが短期間で大きく変化する現代において、じっくりと計画を立てて実行し、評価・改善するプロセスではスピード感が不足します。
また、計画に固執しすぎると柔軟な対応が難しくなり、競争力を失う可能性もあります。特に、デジタル技術の進化やグローバル化が進む環境では、慎重な計画よりも、素早い試行と改善が可能なアジャイル型のアプローチが求められつつあります。
9 PDCAに代わり注目を集める「OODA」とは?
近年、PDCAに代わるものとして注目されるのが「OODA(ウーダ)」です。ここでは、OODAの仕組みと、PDCAサイクルとの使い分け方を説明します。
9.1 OODAループの仕組み
OODAとは、米国空軍のジョン・ボイド大佐が空中戦の戦術として考案した、意思決定におけるフレームワークです。
「Observe(観察)→ Orient(状況判断)→ Decide(意思決定)→ Act(行動)」の4ステップを素早くループさせることから、「OODAループ」とも呼ばれます。
OODAループの目的は、「変化の激しい環境で、迅速な意思決定をすること」です。競争が激化している現代の市場では、事前に立てた計画がすぐに役立たなくなってしまう可能性があります。
そんなとき、OODAループを活用すれば、リアルタイムで状況を観察・判断できるため、スピーディに最適な決断を下せるようになります。
9.2 「PDCAサイクル」と「OODAループ」の使い分け方
PDCAサイクルの目的は、計画的に業務を改善することです。事前に計画を立てて、実行、評価、改善を一定のサイクルで進めるため、製造業や品質管理、業務プロセスの効率改善に向いています。
一方、短期間での意思決定と修正が可能なOODAループは、不確実性が高く、素早い対応が求められるビジネス戦略やマーケティングで活用するのが効果的です。
10 その他の覚えておきたいフレームワーク
「PDCAサイクル」「OODAループ」の他にも、覚えておきたいフレームワークがいくつか存在するので、それぞれの概要を簡単に紹介します。
10.1 STPDサイクル
STPDサイクルとは、「See(観る)→ Think(考える)→ Plan(計画する)→ Do(実行する)」の4ステップから成る改善サイクルのことです。
PDCAサイクルと似ていますが、STPDサイクルでは最初に「See(観る)」が配置されています。これは、市場の状況をしっかり観察して、本質的な問題を正しく理解することに重点を置いているからです。
10.2 PDRサイクル
PDRサイクルは、「Prep(準備)→ Do(実行)→ Review(振り返り)」の3ステップで構成される改善プロセスです。
PDCAサイクルにおける「Check(評価)」と「Act(改善)」を、「Review(振り返り)」に統合したフレームワークと言えます。あるいは、OODAループにおける実行の前段階が簡略化され、よりスピード感に特化したフレームワークと言い換えることもできます。
10.3 DCAPサイクル
PDCAサイクルの順番をアレンジし、「Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)→ Plan(計画)」 で進めるプロセス管理手法です。
「Plan(計画)」から始まるPDCAサイクルとは異なり、まずは「Do(実行)」で試験的に行動を起こすのが大きな特徴です。スピーディーな改善を目指すため、机上の計画に時間をかけるのではなく、実行してみることに重点を置いています。
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11 まとめ
PDCAサイクルは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4ステップを繰り返し、業務を継続的に改善する手法です。適切に回すことで、効率的に目標を達成することができます。
業務改善や品質管理など幅広い分野で活用されている一方で、スピード感が求められる現代社会には適さないという声もあります。近年は、OODAなどの手法も注目され始めているため、それぞれの状況に応じて使い分けることが重要です。
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