「ニーズ」は、簡単に言うと顧客の基本的な欲求のことです。「ウォンツ(顧客が欲しいもの)」や「シーズ(企業が提供できるもの)」と混同されがちですが、それぞれ異なる概念です。本記事では、ニーズの正しい意味と使い方を解説し、ビジネスにおけるニーズの活用例などをわかりやすく説明します。ニーズを正しく理解したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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1 ニーズとは?
ビジネスにおいて、「ニーズ」は頻繁に使用される言葉です。まずは、「ニーズ」の具体的な意味と、ビジネスシーンでの使い方を紹介します。
1.1 ニーズの意味
「ニーズ」は、英語の「Need」が語源の言葉であり、「求める姿」「必要な形」「理想とする状態」など、基本的な欲求を指します。
一般的に、製品やサービスの提供者は顧客のニーズに応じた価値を提供しなければ、多くの利益を得ることができません。つまり、顧客のニーズを正確に把握し、それに合った商品開発やプロモーションを行うことが、事業成功のカギといえます。
なお、ニーズを看護や介護などの福祉業界で使用する場合は、「ケアを必要とする方が潜在的な部分で求めていること」という意味で使用されます。
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1.2 ニーズの使い方・例文
ビジネスシーンにおいて、ニーズはどのように使用されるのでしょうか。具体的な例文をいくつか紹介します。
- 市場調査を通じて、顧客のニーズを把握することが新商品開発の第一歩です。
- 顧客のニーズに応じたサービスを提供することで、競合他社との差別化が可能になります。
- 今後の市場拡大には、未開拓のニーズに焦点を当てることが重要です。
- 顧客のニーズに対応するために、製品ラインナップの見直しを行いました。
- 私たちは、変化する消費者のニーズを予測し、迅速に新しいアイデアを実現させています。
2 ニーズと類語との違い
ここでは、ニーズと混同しやすい類語を4つ紹介します。それぞれの言葉の意味と、ニーズとの違いを確認しておきましょう。
2.1 ウォンツとの違い
ウォンツとは、「ニーズを満たすために求める具体的なものや形態」を指します。一般的に、ニーズは「目的」、ウォンツは「手段」と言われます。
例えば、「リフレッシュしたい」「ストレス発散したい」という欲求は「ニーズ」であり、そのニーズを満たすための「海外旅行に行きたい」「高級レストランで食事をしたい」という欲求は「ウォンツ」です。
ニーズが外からは見えにくい根本的な欲求であるのに対し、ウォンツはニーズに基づく分かりやすい欲求の選択肢と言えます。
2.2 シーズとの違い
シーズとは、「企業独自の技術やノウハウ」です。シーズをもとに開発したものが、必ずしも顧客に受け入れられるとは限りません。しかし、他社にはない新しいアイデアは、競争の激しい市場で高い価値を持つ可能性があります。
もしも、ニーズとシーズをうまくマッチングできれば、革新的な製品やサービスが生み出せるでしょう。
2.3 デマンドの違い
デマンドとは、「ニーズを満たすための意欲と経済的能力が伴っている状態」を指します。日本語では「需要」と訳され、「ウォンツ」に「購入意欲が湧く特徴」と「購入可能な価格」が加わると、「デマンド」が生まれると言われます。
ニーズとの違いで言うと、「遠くに行きたい」という欲求がニーズであり、「旅行を計画して航空券を手配する」のはデマンドです。
2.4 インサイトとの違い
インサイトとは、顧客の「深層心理」や「潜在的な欲求」 を指します。ニーズとは異なり本人が自覚していないことも多い概念で、「消費行動の奥にある本当の動機や根拠」とも言い換えられます。
例えば、「時計を買う」という行動の裏には、単に「かっこいい」「便利」という理由の他に、「自分に自信がつきそう」「周囲から一目置かれたい」という隠れた根拠や動機=インサイトがあるかもしれません。
このような「購買意欲のツボ」とも言えるインサイトを深く理解することで、顧客の心をつかむビジネス戦略が実現できます。
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3 ニーズの種類
一口に「ニーズ」と言っても、その種類はさまざまです。ここでは、一般的によく知られている「ニーズ」の種類を7つ紹介します。
3.1 顧客ニーズ
顧客ニーズ とは、「顧客が求めている価値や解決したい課題」を指します。これは、単に商品やサービスを欲しがることだけではなく、「なぜそれを必要とするのか?」という根本的な欲求や期待を含んでいます。
3.2 顕在ニーズ
顕在ニーズとは、「すでに本人が自覚しているニーズ」のことです。「こういう理由で、こういったものが欲しい」 という明確な意識があるため、販売側は顕在ニーズに応じた商品を提供するだけで成約につなげることができます。
ただし、顕在ニーズは誰もが把握しやすいため、ライバル企業が同様の商品を売り出して、市場の競争率が激しくなることも予想されます。
3.3 潜在ニーズ
潜在ニーズとは、「自覚していないものの、本当は求めているニーズ」を指します。本人が全く無自覚なこともあれば、何らかの不満を感じていても具体的な欲求に結びついていないケースもあります。
例えば、「特に英会話に興味はなかったが、通勤時間が長くて暇だと思っていた。そこで、通勤時間を有効活用する手段として耳で覚える英会話があると聞き、利用したくなる」というのが潜在ニーズです。
潜在ニーズに気づかせて購買意欲を高めるには、提案型のマーケティングや教育的アプローチが有効です。
3.4 基本的ニーズ
基本的ニーズとは、「人間が生きていく上で最低限満たされるべき欲求」を指します。これは、衣食住のような生理的なものから、安全や社会的つながりに関するものまで幅広く含まれます。
基本的ニーズに応えるサービスとしては、「栄養価が高く、安全な食事を提供する」「快適で安心できる住環境を整える」といったことが挙げられます。このように、基本的ニーズは、企業が商品やサービスを提供する際の最も根本的なターゲットになります。
3.5 機能的ニーズ
機能的ニーズとは、「顧客が特定の目的や課題を解決するために求める実用性・利便性・性能に関する要求」のことです。
例えば、「高速洗浄モードのある洗濯機」「長寿命のモバイルバッテリー」などは機能的ニーズに応えた製品であり、使い勝手が良ければ顧客の満足度を大きく向上させることができます。
ただし、近年は機能的ニーズを満たす製品を開発しても、すぐに同様の性能をもった類似品が登場するため、機能の差別化だけで市場をリードするのは難しくなっています。
3.6 情緒的ニーズ
情緒的ニーズとは、「顧客が商品やサービスに対して抱く、感情的な満足感や心理的な価値に関するニーズ」のことです。実用性よりも、気持ちの充足・共感・ブランドの魅力などが重視されます。
情緒的ニーズを満たすことで、顧客は「このブランドが好き」「この商品を使うと気分が上がる」と感じ、ロイヤルカスタマーになりやすくなります。
顧客の情緒的ニーズを満たすには、ブランドの開発ストーリーを伝えたり、限定商品で特別感を演出したりするのが有効です。
3.7 副次的ニーズ
副次的ニーズとは、「主となるニーズを満たす際に生じる付随的なニーズ」のことです。直接的な欲求ではなく、利便性や快適性の向上、より良い体験の追求など、「もっとこうしたい」といったさらなる欲求を指します。
例えば、「体を動かしたい」というニーズを満たすためジムを利用した際、「もっとたくさんのマシーンが揃ったシャワー付きのジムが良い」と感じた場合、これを副次的ニーズと呼びます。
副次的ニーズを満たすには、競合との差別化を意識し、価格や機能以外の魅力を強化することが大切です。
4 ビジネスでニーズが重要な理由
顧客を相手にするビジネスでは、ニーズを的確に把握することが非常に重要です。ここでは、ニーズが重要視される理由を4つ紹介します。
4.1 顧客満足度の向上が目指せるから
市場のニーズを的確に把握し、顧客が求める商品やサービスを提供すれば、顧客の満足度を向上させることができます。
満足感を感じた顧客は、長期にわたり利益を生み出してくれるリピーターやロイヤルカスタマーになってくれる可能性があります。また、良い口コミによって新規顧客の獲得も期待できます。
4.2 他社との差別化が図れるから
市場には、類似の商品やサービスが数多く存在しています。そのため、優位性を確立するには、顧客のニーズを的確に捉え、それに応じた独自の価値を提供することが不可欠です。
ただし、他社との差別化を図るには、誰もが把握しやすい一般的なニーズだけでなく、より深く細かいニーズを掘り出す必要があります。特定の悩みを解決する機能や、画期的なサービスを提供すれば、他社にはない魅力を生み出すことができるでしょう。
4.3 リソースを効率的に配分できるから
企業が限られた人材・資金・時間を最適に活用するには、顧客が本当に求めるものに集中する必要があります。市場のニーズを的確に把握して、利益が見込めるものだけを提供することで、不要な在庫や開発コストを削減し収益性を高められます。
もし、ニーズを無視して商品開発やマーケティングを進めれば、無駄な施策にリソースを浪費してしまうでしょう。このことから、適切なニーズの把握は効率的な経営を支える重要な要素と言えます。
5 ビジネスでニーズを活用できるシーン
ビジネスでは、実際どういった場面でニーズを活用しているのでしょうか。ここでは、4つのシーンを例に挙げて解説します。
5.1 新商品や新サービスの開発
顧客のニーズを掘り起こせば、多種多様かつ、革新的な商品やサービスの創出につながる可能性があります。
例えば、「ストレスを軽減したい」というニーズから開発できる雑貨には、「アロマディフューザー」「温熱アイマスク」「サウンド付きライト」など、多くの製品が考えられます。
ここから、さらにニーズを深堀りすることで、「音や温度の自動調節機能」「色やデザイン」といった付加価値をつけられます。このように、新商品や新サービスの開発ではニーズの把握が非常に重要です。
5.2 マーケティング戦略の立案
マーケティング戦略を立案する際は、背景にどのようなニーズがあるのかを理解しなければなりません。
例えば、健康志向の顧客に向けた広告を展開する場合、市場調査や購買履歴を分析し、「オーガニック食品が食べたい」「高たんぱくな食品を選びたい」といった欲求を把握します。その上で、ターゲット層を絞れば、より的確なマーケティングを実施できます。
5.3 カスタマーサポートのサービス向上
顧客と直接向き合うカスタマーサポートでは、顧客が何を求めているのか、何に困っているのかを的確に把握する必要があります。もし、顧客のニーズを理解しないまま対応すると、不満が蓄積し、結果として顧客離れにつながることも考えられます。
そのため、顧客のニーズを細分化し、それに沿った対応マニュアルを作成するなどして、サポートのサービス向上を目指すことが大切です。
5.4 適正な価格の設定
顧客が「この価格なら納得できる」と感じる水準を見極めることで、売上の最大化やブランド価値の向上が目指せます。
いくら高品質で他社にはない魅力があったとしても、設定価格が高すぎた場合は、「価格を抑えながら、できるだけ良い商品を手に入れたい」というニーズに応えることができません。
「価格が高くても高品質な製品が欲しい」というニーズは満たせるものの、そのニーズが少なければ思うような利益が得られない可能性もあります。このように、価格を設定する際は、顧客のニーズを正しく把握し、価値と価格のバランスを取ることが非常に重要です。
6 ニーズを特定する4つの手段
ビジネスにおいて重要なニーズですが、どのように特定すれば良いのでしょうか。ここでは、ニーズを特定する主な手段を4つ紹介します。
6.1 SNSやインターネットを利用した市場調査
SNSやインターネットを活用した市場調査は、近年多くの企業で取り入れられています。SNSでは、消費者の投稿やコメントからリアルな意見を収集できるので、トレンドや潜在的なニーズを把握しやすくなります。
また、インターネット上のアンケートや口コミサイトの分析を行うことで、多くのユーザーの意見を効率的に集められます。
6.2 顧客の行動や購買履歴の分析
購入頻度、購入時期、併売される商品などのデータを分析することで、顧客が求める商品やサービスの傾向を把握できます。
例えば、特定の商品を繰り返し購入する顧客を分析すれば、どのターゲット層にどの商品をどれくらい提供すべきかが分かります。
また、カートには入れたが購入に至らなかった商品を分析することで、価格や機能面の改善点を見つけることも可能です。こうしたデータは、的確な商品開発やマーケティング戦略に役立てられています。
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6.3 顧客へのアンケート調査
アンケートを通じて、顧客が求める商品やサービスの特徴、改善点、満足度などを直接把握できます。例えば、新商品の開発前にターゲット層を集めて、希望する機能や価格帯を尋ねれば、より市場に合った商品設計が可能になります。
また、既存顧客への満足度調査を行うことで、サービスの強みや改善すべき点を明確にできます。ターゲットを絞り、リアルな生の声を深く聞き出せるのがアンケート調査のメリットです。
6.4 イベントの実施
イベントを開催することで、参加者の関心や悩みを直接把握することができます。イベント内で行うアンケートやヒアリングを通じて具体的な要望を収集できるだけでなく、参加者の反応から潜在的なニーズを探ることも可能です。
また、ワークショップや体験型イベントでは、行動や質問からより深いインサイトを得られる可能性もあります。
7 ウォンツからニーズを把握する具体例
具体的な欲求の「ウォンツ」からニーズを把握することもできます。「なぜ?」という問いを繰り返し、その背景にあるニーズを探ることで、さらなる展開を目指せる可能性があります。
7.1 「最新のスマホ用ケースが欲しい人」のニーズ
「最新のスマホ用ケースが欲しい」というウォンツを持つ人の背景には、以下のようなニーズがあると考えられます。
- 今のスマホを長く使用したい
- 他者と差別化したい
- 流行を取り入れて、周りから一目置かれたい
- コーディネートの一部として取り入れたい
- 日常生活をより便利にしたい
このようなニーズは、商品のPRや関連商品の開発に活かすことができます。
7.2 「投資を始めたい人」のニーズ
「投資を始めたい」というウォンツを持つ人の背景には、以下のようなニーズがあると考えられます。
- 将来の経済的な不安を解消したい
- 子供のために今できることをしたい
- 金融リテラシーを高めたい
- 経済面で達成感を得たい
- 自分の資産を良い形で活かしたい
「投資」という同じウォンツ(手段)であっても、その背景にはさまざまなニーズ(目的)があります。
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8 まとめ
ニーズとは、消費者が「必要」と感じる欲求のことを指します。顧客のニーズを正しく把握すれば、市場が求める商品やサービスを効率的に提供できます。
また、ビジネスにおいては、特定の欲求を指す「ウォンツ」や、企業が持つ技術を指す「シーズ」も重要です。ぜひ、本記事で紹介した意味や使い方を参考にして、効果的なマーケティング戦略の立案を目指しましょう。
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