試用期間中でもクビになる可能性はあります。そもそも試用期間とは、企業が採用した従業員の能力や勤務態度などを見極める期間です。基本的には長期雇用を前提として導入している企業が多いものの、もしも試用期間中にクビになれば、本採用見送りとなってしまいます。
本記事では試用期間中のクビについて、正当と認められるケースや不当になり得るケースを紹介します。また、試用期間中クビになってしまったときの対処法も解説するので、ぜひ参考にご覧ください。
「仕事辞めたい、会社がつらい」...悩んでいる方へ
\無料・登録不要/
『仕事どうする!? 診断』を受ける >
1 試用期間中でもクビになることはある?
試用期間中でもクビになる可能性はありますが、試用期間中だからといって簡単にクビになるわけではありません。しかし、「試用期間中に少しでもミスをしたら、すぐクビにされそうで怖い」と不安を感じる方も多いでしょう。ここでは、まず試用期間とは何かについて解説した後、試用期間中のクビについて説明します。
1.1 そもそも試用期間とは
試用期間とは、新入社員の適正や勤務態度を見極めるために設けられた期間です。通常は3~6ヶ月程度、長くても1年以内であることが多く、企業はこの期間を通じて、面接だけではわからない新入社員の資質を判断します。
言わばお試し期間とも言えますが、基本的に長期雇用が前提であり、正式な雇用契約は結ばれているため給与は規定通り受け取ることができます。ただし、企業によっては本採用に比べて給与額を少なく設定している場合もあります。
【関連記事】「会社の試用期間とは?給料や社会保険、トラブルへの対処法を解説!退職の手順も」
1.2 試用期間中でも簡単にはクビにならない
先述した通り、試用期間であっても正式な雇用契約が結ばれているため、よっぽどのことがない限り、一方的にクビを命じられる可能性は低いでしょう。なぜなら、会社が従業員を解雇するには、「やむを得ない事由」が必要と労働基準法第17条で定められているからです。
さらに、労働基準法第20条でも、解雇の30日前に予告を行う「解雇予告」や、予告なしで解雇する場合に30日以上分の平均賃金を支払う「解雇予告手当」についての定めがあります。
「解雇予告」や「解雇予告手当」の定めは、試用期間中であっても14日を超えて雇用が継続されていれば適用となります。
1.3 試用期間中クビになる確率は0ではない
簡単にクビになることはないとはいえ、企業が定める解雇事由に当てはまる場合は、当然ながら試用期間中でもクビになる可能性があります。なお、労働基準法第89条3項において「解雇事由は就業規則に記載しなければならない」といった内容が定められているため、解雇について疑問がある場合は就業規則を確認しておきましょう。
【関連記事】「試用期間中に退職はできる?申し出る方法や退職を迷ったときの判断基準を解説」
【関連記事】「新卒で会社を辞めたいと思ったら-転職のメリット・デメリットや注意点について解説」
2 試用期間中のクビが不当になり得るケース
試用期間は従業員の資質を見極める期間です。そのため、企業は従業員に対して十分な教育を施し、努力過程をしっかり評価しなければなりません。これらを怠った上での一方的なクビは、不当と判断されることもあります。
2.1 十分な教育がなされない状態での能力不足によるクビ
従業員に十分な教育を施さないまま、能力不足と判断してクビにすることは、不当と判断される可能性があります。入社したばかりの新入社員は能力が不足していて当然であり、試用期間中の教育や指導を経て、仕事に慣れていくのが一般的です。
そのため、会社側が教育や指導などのサポートを怠った上で、試用期間中の従業員をクビにした場合は、不当解雇とみなされるかもしれません。
2.2 結果のみで判断した能力不足によるクビ
「今月の売り上げ目標を達成できなかったから」など、結果のみで判断した場合のクビも、不当解雇にあたる可能性があります。上司からの指示や手順を正しく実行しているにもかかわらず、目標を達成できないといった場合は、目標設定や業務自体に問題があることも考えられます。
また、企業は従業員の能力や仕事の進捗状況を、適切に管理・指導することも求められます。そのため、「できなかった」という結果だけを見て、試用期間中の従業員をクビにするのは難しいでしょう。
【関連記事】「試用期間中の給料を詳しく解説!低いと言われる理由や注意点も」
【関連記事】「試用期間中の退職は履歴書に書くべき?理由別の書き方も紹介」
3 試用期間中クビになった場合の対処法
実際、試用期間中にクビを言い渡された場合、どのように対処すればいいのでしょうか。解雇理由に納得できないのであれば、以下の対処法を実践するのがおすすめです。
3.1 解雇理由証明書の発行を求める
試用期間中のクビに納得ができない場合は、解雇理由を知るために会社へ「解雇理由証明書」の発行を求めましょう。「解雇理由証明書」とは解雇の理由が明記された書類であり、「従業員が求めた場合は速やかに交付しなければならない」と労働基準法第22条において定められています。
正当な理由であることを確認するため、また、もしもその後裁判などに発展した場合の証拠として、発行してもらうことをおすすめします。
3.2 会社や労働組合と話し合いを行う
クビの理由を直接確認したり、自分の主張を聞いてもらったりするためにも、会社や労働組合と話し合いの場を設けてもらいましょう。話し合いの際は、聞きたいことや伝えたいことをまとめておくとスムーズです。
主張が認められてクビが撤回されれば、本採用に至ることも考えられるため、会社を非難したり不満をぶつけたりするのではなく、会社の主張に耳を傾けながら冷静に話し合うことが大切です。
3.3 不当解雇の可能性がある場合は労働基準監督署に相談する
解雇理由証明書を確認したり話し合いの場を設けたりしても、「クビの理由に納得できない」「不当解雇の可能性がある」という場合は、労働基準監督署や都道府県労働局に相談してみましょう。
また、労働問題に詳しい弁護士に相談するのも一つの方法です。ただし、裁判ということになればそれなりの費用と時間がかかります。将来のことを考えるなら、早めに退職し、自分に合う転職先を見つける方がメリットが大きくなるかもしれません。
【参考】都道府県労働局「個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)」
【関連記事】「リストラとは?代表的なやり方やリストラされた場合の対処法を解説」
【関連記事】「試用期間中でも社会保険に入れる?条件や入れない場合の対処法を解説」
4 試用期間中のクビを回避するには
できればクビにならずに試用期間を終えて、本採用を目指したいものです。そこで、試用期間中のクビを回避するには、具体的にどうすればいいのかを解説します。
4.1 時間を厳守する
時間を守ることは、試用期間中だけでなく社会人として働いていくうえでの基本マナーです。時間にルーズな人は責任感が欠けているとみなされ、周囲からの信頼を失ってしまいます。
特に、会社では出勤時間や会議の開始時間、納品の日時など必ず守らなければならない時間が数多く存在し、1分遅れただけで大きな問題に発展することも少なくありません。
社会人として「信頼できる人」「責任感のある人」という評価を得るためにも、常に時間を意識して、早めの行動を心がけることが大切です。
4.2 与えられた仕事に集中する
与えられた仕事を指示通りに、できるだけミスなく仕上げることが重要です。任された仕事を的確にこなすことができれば、周囲からの信頼度はアップし、安心して仕事を任せてもらえるようになります。仕事を引き受けたら、最後まで責任をもって終わらせましょう。
また、積極性をアピールすることも重要なポイントです。初めのうちは言われたことだけやっていれば良しとされますが、それだけでは評価は上がらず、大きな仕事も任せてもらえないでしょう。試用期間中は「常にメモを取る」「わからないことは質問する」「できることを探す」など、積極的な姿勢を示すことが大切です。
4.3 ミスは隠さずに報告する
試用期間中のミスは、どんなに小さなことでも必ず報告する必要があります。「ミスがばれたらクビになってしまうのではないか」と不安になるかもしれませんが、小さなミスがいくつか続いたからといって即クビになる可能性は低いでしょう。逆に隠していたことが大ごとになれば、周囲からの信用を失ってしまうかもしれません。
ミスをしたときはもちろん、悩んだときや不安なときは一人で対応しようとせず、必ず上司や先輩に報告・連絡・相談を行うようにしましょう。
4.4 積極的にコミュニケーションをとる
仕事は個人の能力だけでなく、チーム全体の協力とサポートが非常に大切です。効率的に成果を上げるには、メンバー同士で意見を出し合い、全員が同じ目標に向かって協力しなければなりません。
そのため、他の社員と交流を深められる協調性がある人は、上司からの評価も高くなるでしょう。また、試用期間中は周囲と積極的にコミュニケーションをとることでフィードバックを受けやすくなり、さらなる自己成長を目指せるといったメリットもあります。
【関連記事】「レイオフの意味や目的をわかりやすく解説!日本で行われる可能性は?」
5 試用期間中のクビに関してよくある疑問
ここでは試用期間中のクビに関してよくある質問を紹介します。給与や失業保険、転職の際の履歴書や面接に関する疑問についてまとめました。
5.1 給与や失業保険は受け取れる?
企業によっては試用期間中の給与額を低く設定している場合もありますが、基本的に試用期間中の退職でも、労働分の給与は規定通り受け取ることができます。
一方、失業保険については受け取れない可能性があります。理由として、失業保険の受給要件には「自己都合の場合は、離職前の2年間に被保険者期間が12か月以上あること」「会社都合の場合は、離職前の1年間に被保険者期間が6か月以上あること」という定めがあるからです。
通常、試用期間は6ヶ月未満であることが多いため、試用期間中に退職した場合、被保険者期間が受給要件を満たさない恐れがあります。
5.2 転職の際、履歴書には記載すべき?
結論、試用期間中のクビも履歴書には記載した方がいいでしょう。勤務した事実を隠し、新卒として応募したとしても、雇用保険の記録からばれてしまう可能性があります。その場合は、故意に経歴をごまかしたとして、経歴詐称を疑われてしまうことも考えられます。
試用期間中のクビでも前向きな理由を伝えれば、それほど悪い印象を与えないこともあるので、隠さず正直に記載することが大切です。
5.3 転職の面接ではどう答えればいい?
転職の面接で試用期間中のクビについて聞かれた場合は、できるだけ前向きな意思を伝えましょう。この際、前職を悪く言ったり、自分に非がないことをアピールしたりするのはNGです。「働いて得た経験や知識をこの会社で活かしたい」といった回答が適切です。以下に回答の一例を紹介します。
「前職では私自身の力不足により、思ったような結果を出すことができませんでした。しかし、その中でも〇〇や〇〇をするなど自分なりに努力をして、日々前向きに仕事に取り組んできました。御社では、前職の反省を活かすとともに、実務で得た経験と知識を活用しながら、自身の力を十分に発揮したいと思っております。」
【関連記事】「左遷とは?栄転との違い、左遷される人の特徴や対処法を解説」
はじめての転職には、
「マイナビエージェント」がおすすめです。
マイナビエージェントについて詳しく知る >
6 まとめ
試用期間だからといって、簡単にクビになるわけではありません。雇用から14日以内は「解雇予告」や「解雇予告手当」の義務がないものの、正当な理由なく企業側の都合でクビにすることは認められていません。
しかし、著しい能力不足や勤務態度の不良があれば、試用期間中でもクビになる可能性はあります。クビの理由に疑問を感じたら、解雇理由証明書を求めたり労働組合と話し合いをしたりして、納得した上で退職に応じましょう。
\転職するか迷っていてもOK/
マイナビエージェントに無料登録して
転職サポートを受ける