試用期間は、企業が採用した従業員の能力や勤務態度などを見極める期間です。基本的には長期雇用を前提として導入している企業が多いものの、もしも試用期間中にクビになれば、本採用見送りとなってしまいます。
本記事では試用期間中のクビについて、正当と認められるケースや不当になり得るケースを紹介します。また、試用期間中クビになってしまったときの対処法も解説するので、ぜひ参考にご覧ください。
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1 試用期間中でもクビになることはある?
「試用期間中にミスをしたら、すぐクビにされそうで怖い」と不安を感じる方も多いでしょう。ここでは、まず試用期間とは何かについて解説した後、試用期間中のクビについて説明します。
1.1 そもそも試用期間とは
試用期間とは、新入社員の適正や勤務態度を見極めるために設けられた期間です。通常は1~6ヶ月程度、長くても1年以内であることが多く、企業はこの期間を通じて、面接だけではわからない新入社員の資質を判断します。
言わばお試し期間とも言えますが、基本的に長期雇用が前提であり、正式な雇用契約は結ばれているため給与は規定通り受け取ることができます。ただし、企業によっては本採用に比べて給与額を少なく設定している場合もあります。
【関連記事】「試用期間とは?|基礎知識とトラブル例&対処法、退職方法も解説」
1.2 試用期間中でも簡単にはクビにならない
先述した通り、試用期間であっても正式な雇用契約が結ばれているため、よっぽどのことがない限り、一方的にクビを命じられる可能性は低いでしょう。なぜなら、会社が従業員を解雇するには、合理的で正当な理由が必要だからです。
さらに、労働基準法第20条でも、解雇の30日前に予告を行う「解雇予告」や、予告なしで解雇する場合に30日以上分の平均賃金を支払う「解雇予告手当」についての定めがあります。これらの定めは、試用期間中であっても14日を超えて雇用が継続されていれば適用となります。
【出典】e-GOV「労働基準法第二十条」
1.3 試用期間中クビになる確率は0ではない
簡単にクビになることはないとはいえ、企業が定める解雇事由に当てはまる場合は、当然ながら試用期間中でもクビになる可能性があります。なお、労働基準法第89条3項において「解雇事由は就業規則に記載しなければならない」といった内容が定められているため、解雇について疑問がある場合は就業規則を確認しておきましょう。
【関連記事】「試用期間中に退職はできる?切り出し方やメリット・デメリットも紹介」
2 試用期間中のクビが正当と認められるケース
ここからは、試用期間中のクビが正当と認められる主なケースを紹介します。試用期間でクビになる人の特徴や、考えられるクビの原因を3つ解説していきます。
2.1 著しい能力不足によるクビ
業務の遂行に大きな影響を与えるような著しい能力不足が判明した場合は、試用期間中にクビを言い渡される可能性があります。
例として「何度注意しても同じミスを繰り返す」「接客に対して顧客から度々クレームが入る」「指示された内容が理解できず、仕事を完遂できない」といったケースです。このような場合、将来的に会社に対して大きな損失が生じる可能性もあるため、クビになりやすい傾向があります。
また、専門技術が必要な業務への採用にもかかわらず、能力が足りず業務をこなせない場合も、著しい能力不足と判断されることがあります。
2.2 経歴詐称の発覚によるクビ
「出身校を偽っていた」「誤った職歴を履歴書に記入していた」など、経歴詐称が発覚した場合はクビになる可能性があります。
例えば、職務経験を重視して採用した人が全くの未経験者であったという場合、会社は業務を遂行できず、大きな損失を被ることになります。また、特別な資格が必要な職種において、無資格の人材を雇ったとすれば、会社は責任問題を問われることにもなりかねません。
もしも、クビにならなかったとしても、虚偽報告が発覚すれば周囲からの信頼度は大きく低下するでしょう。そのため、履歴書の記載や会社への報告は、正しく正確に行うことが大切です。
2.3 勤務態度の不良によるクビ
勤務態度の不良もクビになる要因の一つです。例として、「無断欠勤や遅刻を繰り返す」「上司の指示に従わない」「ミスを繰り返しているのに改善の意思が見られない」といったケースが挙げられます。
また、「会社の備品や設備を私的利用する」といった社会的マナー違反や、「機密情報の不正な取扱い」「インサイダー取引」「ハラスメント行為」などの法令違反にも注意が必要です。
【関連記事】「試用期間中でも社会保険に入れる?条件や入れない場合の対処法を解説」
3 試用期間中のクビが不当になり得るケース
試用期間は従業員の資質を見極める期間です。そのため、企業は従業員に対して十分な教育を施し、努力過程をしっかり評価してあげなければなりません。これらを怠った上での一方的なクビは、不当と判断されることもあります。
3.1 十分な教育がなされない状態での能力不足によるクビ
従業員に十分な教育を施さないまま、能力不足と判断してクビにすることは、不当と判断される可能性があります。入社したばかりの新入社員は能力が不足していて当然であり、試用期間中の教育や指導を経て、仕事に慣れていくのが一般的です。
そのため、会社側が教育や指導などのサポートを怠った上で、試用期間中の従業員をクビにした場合は、不当解雇とみなされるかもしれません。
3.2 結果のみで判断した能力不足によるクビ
「今月の売り上げ目標を達成できなかったから」など、結果のみで判断した場合のクビも、不当解雇にあたる可能性があります。上司からの指示や手順を正しく実行しているにもかかわらず、目標を達成できないといった場合は、目標設定や業務自体に問題があることも考えられます。
また、企業は従業員の能力や仕事の進捗状況を、適切に管理・指導することも求められます。そのため、「できなかった」という結果だけを見て、試用期間中の従業員をクビにするのは難しいでしょう。
【関連記事】「試用期間中の給料を詳しく解説!低いと言われる理由や注意点も」
4 試用期間中クビになる場合の前兆とは
試用期間中にクビになる場合、何らかの前兆はあるのでしょうか。ここでは、クビの前兆として考えられるサインを紹介します。
4.1 上司や教育担当者の態度が変化する
これまでは積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくれていた上司や教育担当者の態度が、急によそよそしくなったり素っ気なくなったりした場合は、クビになる前のサインかもしれません。
上司や教育担当者からは、「これ以上指導しても意味がない」「深く関わる必要はない」と思われている可能性があります。また、もうすぐクビになってしまう人に対しての接し方に困り、敢えて距離を取ろうとしていることも考えられます。
4.2 仕事への指示や勤務態度への注意がなくなる
「こうした方がいい」といった仕事への指示や、遅刻・遅刻など勤務態度への注意がなくなった場合も、クビの前兆かもしれません。会社が仕事のやり方を丁寧に指示したり、勤務態度を熱心に注意したりするのは、従業員の成長に期待しているからです。
しかし、すでにクビが決まっている従業員には成長が期待できないため、これまでのような指示や注意がなくなる可能性があります。
4.3 それとなく自主退職をすすめられる
先述した通り、会社は正当な理由がない限りは、基本的に従業員をクビにできません。そのため、従業員の方から退職を申し出てもらうことを目的として、「これから仕事はどんどん大変になる」「今の仕事は向いていないかもしれない」など、ネガティブな言葉をかけられることも考えられます。
ただし、自主退職を促すために「一切仕事を与えない」「到達不可能なノルマを課す」「執拗に退職を迫る」といった行為は、退職強要とみなされ違法となる可能性があります。
【関連記事】「試用期間中の退職は履歴書に書くべき?理由別の書き方も紹介」
5 試用期間中クビになった場合の対処法
実際、試用期間中にクビを言い渡された場合、どのように対処すればいいのでしょうか。解雇理由に納得できないのであれば、以下の対処法を実践するのがおすすめです。
5.1 解雇理由証明書の発行を求める
試用期間中のクビに納得ができない場合は、解雇理由を知るために会社へ「解雇理由証明書」の発行を求めましょう。「解雇理由証明書」とは解雇の理由が明記された書類であり、「従業員が求めた場合は速やかに交付しなければならない」と労働基準法第22条において定められています。
正当な理由であることを確認するため、また、もしもその後裁判などに発展した場合の証拠として、発行してもらうことをおすすめします。
5.2 会社や労働組合と話し合いを行う
クビの理由を直接確認したり、自分の主張を聞いてもらったりするためにも、会社や労働組合と話し合いの場を設けてもらいましょう。話し合いの際は、聞きたいことや伝えたいことをまとめておくとスムーズです。
主張が認められてクビが撤回されれば、本採用に至ることも考えられるため、会社を非難したり不満をぶつけたりするのではなく、会社の主張に耳を傾けながら冷静に話し合うことが大切です。
5.3 不当解雇の可能性がある場合は労働基準監督署に相談する
解雇理由証明書を確認したり話し合いの場を設けたりしても、「クビの理由に納得できない」「不当解雇の可能性がある」という場合は、労働基準監督署に相談してみましょう。
もしも、労働基準監督署が積極的に介入してくれない場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談するのも一つの方法です。ただし、裁判ということになればそれなりの費用と時間がかかります。将来のことを考えるなら、早めに退職し、自分に合う転職先を見つける方がメリットも大きいと言えるでしょう。
【関連記事】「リストラとは?代表的なやり方やリストラされた場合の対処法を解説」
6 試用期間中のクビを回避するには
できればクビにならずに試用期間を終えて、本採用を目指したいものです。そこで、試用期間中のクビを回避するには、具体的にどうすればいいのかを解説します。
6.1 与えられた仕事に集中する
とにかく与えられた仕事を指示通りに、できるだけミスなく仕上げることが何より重要です。任された仕事を的確にこなすことができれば、周囲からの信頼度はアップし、安心して仕事を任せてもらえるようになります。仕事を引き受けたら、最後まで責任をもって終わらせましょう。
また、積極性をアピールすることも重要なポイントです。初めのうちは言われたことだけやっていれば良しとされますが、それだけでは評価は上がらず、大きな仕事も任せてもらえないでしょう。試用期間中は「常にメモを取る」「わからないことは質問する」「できることを探す」など、積極的な姿勢を示すことが大切です。
6.2 ミスを隠さずに報告する
試用期間中のミスは、どんなに小さなことでも必ず報告する必要があります。「ミスがばれたらクビになってしまうのではないか」と不安になるかもしれませんが、小さなミスがいくつか続いたからといって即クビになる可能性は低いでしょう。逆に隠していたことが大ごとになれば、周囲からの信用を失ってしまうかもしれません。
ミスをしたときはもちろん、悩んだときや不安なときは一人で対応しようとせず、必ず上司や先輩に報告・連絡・相談を行うようにしましょう。
【関連記事】「レイオフの意味や目的をわかりやすく解説!日本で行われる可能性は?」
7 試用期間中のクビに関してよくある疑問
ここでは試用期間中のクビに関してよくある質問を紹介します。給与や失業保険、転職の際の履歴書や面接に関する疑問についてまとめました。
7.1 給与や失業保険は受け取れる?
企業によっては試用期間中の給与額を低く設定している場合もありますが、基本的に試用期間中の退職でも、労働分の給与は規定通り受け取ることができます。
一方、失業保険については受け取れない可能性があります。理由として、失業保険の受給要件には「自己都合の場合は、離職前の2年間に被保険者期間が12か月以上あること」「会社都合の場合は、離職前の1年間に被保険者期間が6か月以上あること」という定めがあるからです。
通常、試用期間は6ヶ月未満であることが多いため、試用期間中に退職した場合、被保険者期間が受給要件を満たさない恐れがあります。
【出典】e-GOV「雇用保険法第十三条」
7.2 転職の際、履歴書には記載すべき?
結論、試用期間中のクビも履歴書には記載した方がいいでしょう。勤務した事実を隠したとしても、雇用保険の記録からばれてしまう可能性があります。その場合は、故意に経歴をごまかしたとして、経歴詐称を疑われてしまうことも考えられます。
試用期間中のクビでも前向きな理由を伝えれば、それほど悪い印象を与えないこともあるので、隠さず正直に記載することが大切です。
7.3 転職の面接ではどう答えればいい?
転職の面接で試用期間中のクビについて聞かれた場合は、できるだけ前向きな意思を伝えましょう。この際、前職を悪く言ったり、自分に非がないことをアピールしたりするのはNGです。「働いて得た経験や知識をこの会社で活かしたい」といった回答が適切です。以下に回答の一例を紹介します。
「前職では私自身の力不足により、思ったような結果を出すことができませんでした。しかし、その中でも〇〇や〇〇をするなど自分なりに努力をして、日々前向きに仕事に取り組んできました。御社では、前職の反省を活かすとともに、実務で得た経験と知識を活用しながら、自身の力を十分に発揮したいと思っております。」
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8 まとめ
試用期間だからといって、簡単にクビになるわけではありません。雇用から14日以内は「解雇予告」や「解雇予告手当」の義務がないものの、正当な理由なく企業側の都合でクビにすることは認められていません。
しかし、著しい能力不足や勤務態度の不良があれば、試用期間中でもクビになる可能性はあります。クビの理由に疑問を感じたら、解雇理由証明書を求めたり労働組合と話し合いをしたりして、納得した上で退職に応じましょう。
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