企業によっては求職者を本採用する前に、仕事への適性や態度を見極める期間として、1ヶ月~6ヶ月程度の試用期間を設けていることがあります。試用期間は企業や従業員にとってのお試し期間とも言えますが、基本的には長期雇用を前提として導入されています。
そのため、「試用期間中に退職したいと思ったときはどうすればいいのだろう」と、疑問に感じる方も多いでしょう。そこで、本記事では試用期間中の退職に関する情報をまとめました。具体的な退職手順や切り出し方も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
「仕事辞めたい、会社がつらい」...悩んでいる方へ
\無料・登録不要/
『仕事どうする!? 診断』を受ける >
1 試用期間中に退職したい場合はどうする?
入社したばかりの試用期間中に、「思っていた仕事と違う」「職場の雰囲気が合わない」と感じて、退職を決断することがあるかもしれません。実際、試用期間中の退職は可能なのでしょうか。
1.1 そもそも試用期間とは
試用期間とは、企業が採用した求職者の能力や態度を見極めるために導入している制度です。本採用の前に実際の働きを確認できるため、多くの企業が長期雇用を前提に試用期間を設けています。
期間は1~6ヶ月が一般的で、最長でも1年程度とされていますが、法的な義務はなく、期間や条件の設定は企業ごと異なります。企業によっては、試用期間中の給料を減額している場合もあります。とはいえ、正式に労働契約が結ばれている状態のため、企業が正当な理由なく解雇を言い渡すといったことは認められません。
【関連記事】「試用期間とは?|基礎知識とトラブル例&対処法、退職方法も解説」
1.2 退職希望日の2週間前には申し出る
民法627条において、「雇用期間の定めがない場合はいつでも解約の申し入れができ、雇用は解約を申し入れた日から2週間を経過すると終了する」といった旨が記載されています。
つまり、基本的に無期雇用の場合は、試用期間中であっても退職希望日の2週間前に申し出ることで退職が可能ということです。一方、雇用の期間が定められている有期雇用の場合は、原則として契約期間が満了するまで退職はできません。
ただし、就業規則などで退職の申し出日について定められているときは、その内容に従うようにしましょう。
【出典】e-GOV「民法第六百二十七条」
1.3 即日退職が認められることもある
無期雇用の方が退職する場合は、2週間前にその旨を申し入れるのが基本です。しかし、体調の急変や家庭の事情などでどうしても勤務が難しい場合は、即日退職が認められるケースもあります。
また、給与の未払いやパワハラなど企業から不当な扱いを受けた場合も、2週間を待たずに退職できる可能性があります。
1.4 試用期間中の退職でも給与はもらえる
試用期間といっても、企業と従業員の間には正式な雇用契約が結ばれています。そのため、労働した分の給与は、全額もらうことができます。
ただし、企業によっては試用期間中の給与を、本採用後の給与よりも低く設定していることがあります。そのため、試用期間中の給与については、労働契約書などでしっかり確認しておきましょう。
【関連記事】「試用期間中でもクビになる?解雇される理由や対処法を解説」
2 試用期間中に退職するメリット
入社後間もない時期の退職は、一般的にあまり良くないイメージを持たれがちです。しかし、試用期間中の退職にはいくつかのメリットも存在します。
2.1 将来のストレスを未然に防げる
希望を持って入った会社でも、実際に働いてみると想像とは全く異なり、理想と現実とのギャップに苦しむこともあるでしょう。また、どうしても気が合わない先輩や、パワハラ気質の上司がいて、仕事に行くこと自体が辛いと感じる方がいるかもしれません。
このように、仕事や職場に適応できない場合は、早期に退職することで、適応不良からくる将来のストレスを防ぐことができます。
さらに、採用時の条件と実際の労働条件が全く違っていたという場合も、早めに見切りをつけて転職した方が将来のメリットも大きくなるでしょう。
2.2 第二新卒として転職活動を行える
試用期間中に退職し転職を目指す場合は、第二新卒として転職活動を行えます。第二新卒とは、学校卒業後に就職し短期間で転職を志す、社会経験がおよそ3年未満の人を指す言葉です。
社会経験のある第二新卒は、転職市場での需要も高い傾向があると言われています。たとえ試用期間であっても、実務を経験したことは転職の際有利になるかもしれません。
【関連記事】「試用期間中でも社会保険に入れる?条件や入れない場合の対処法を解説」
3 試用期間中に退職するデメリット
上記のようなメリットがある一方で、試用期間中の退職にはデメリットも存在します。ここでは主に考えられる2つのデメリットを紹介します。
3.1 転職に影響が出る可能性がある
退職理由にもよりますが、入社後すぐに退職していたり、試用期間中の退職を繰り返したりしている場合は、転職の際にあまり良い印象を持たれない可能性があります。
企業は人材を採用する以上、できるだけ長く働いてくれることを期待しています。そのため、転職の際は「採用しても、またすぐに辞めてしまうかもしれない」と思われないように、積極的な自己PRを準備しておくといいでしょう。
3.2 キャリアが築けないこともある
雇用保険に未加入のまま退職した場合は、職歴が残らない可能性があり、せっかく働いても無職の空白期間になってしまうかもしれません。
また、安易な理由で一度退職を経験してしまうと辞めぐせがつき、少しでも嫌なことがあるとすぐに「辞めたい」と思ってしまうこともあります。その結果、どの仕事も長続きしなくなり、なかなかキャリアが築けないということも起こりがちです。
このように、試用期間中の退職にはデメリットもあるため、本当に辞めるべきなのかを慎重に検討することが大切です。
【関連記事】「試用期間中の給料を詳しく解説!低いと言われる理由や注意点も」
4 試用期間中の退職手順
ここでは、試用期間中に退職する手順を解説します。試用期間中であっても、退職の際は正しい手順を踏むことが大切です。
4.1 上司に口頭で退職の意思を伝える
退職の意思を固めたら、まずは上司に口頭でその旨を伝えましょう。勤務中や他の社員がいる場所は避け、しっかりアポを取って伝えることが基本です。もしも、まだ正式な配属前で直属の上司がいないという場合は、人事部の担当者に連絡します。
4.2 退職届を提出する
口頭での連絡が終わったら、退職届を提出します。「試用期間中の退職であれば退職届は不要ではないか」という声もありますが、正式な雇用契約を結んでいる以上、退職の際も正式な方法でおこなうのがいいでしょう。
もしも、会社独自に退職の際のルールがある場合はそれに従います。また、退職届は一度受理されると基本的に撤回することはできません。
4.3 仕事の引継ぎや必要な手続きを行う
退職日までに、仕事の引継ぎや手続きを滞りなく終わらせましょう。仕事を引き継いでくれる同僚が困ることのないように、引継ぎ書などを作成するのがおすすめです。また、試用期間中に指導してくれた先輩や上司に、感謝の気持ちを示すことも大切です。
【関連記事】「試用期間中の退職は履歴書に書くべき?理由別の書き方も紹介」
5 主な退職理由と切り出し方
試用期間中の退職は、なかなか切り出しにくいという方も多いでしょう。そこで、ここでは主な退職理由ごとの切り出し方を紹介します。
5.1 社風が合わない
社風とは、企業の雰囲気や価値観、独自の文化のことです。実際に働いてみると、社風が自分には合っていないと気づくことがあります。その際は、社風が悪いのではなく、あくまで自分には合わないという内容を伝えることが大切です。
「入社前は活気ある社風に魅力を感じ、自分もその一員として働けるのを楽しみにしておりました。しかし、自分の性格上なかなか雰囲気に馴染めず、力を発揮することができませんでした。仕事へのモチベーションも上がらず、このまま続けても職場の皆さんにご迷惑をお掛けすることになると思い、悩みながらも退職を決意した次第です。試用期間中の退職となり、たいへん申し訳ございませんが、何卒ご理解いただきますようよろしくお願いいたします。」
5.2 業務内容が想像と違う
入社前に想像していた業務内容と、実際の業務内容が大きく異なることもあります。その際は、はっきりそのことを伝えた上で、自分には合っていないという内容を述べましょう。
「私は元々事務志望で入社いたしましたが、実際の業務は顧客対応や営業補助が多く想像と大きく乖離しておりました。2か月間、自分なりに努力はしたものの、やはり今の業務に馴染むことができず、これ以上続けるのは難しいと感じました。
試用期間中の身でありながら、このような結論に至りましたことを大変申し訳なく思っております。ご迷惑をお掛けしますが、何卒よろしくお願いいたします。」
5.3 自身の体調不良
体調が悪くなり退職を決めた場合は、その旨を正直に伝えましょう。場合によっては、退職ではなく病気休暇の取得を勧められる可能性もありますが、退職を決めているのであればはっきりと断ることが大切です。また、病気や怪我の診断書を提出するのもいいでしょう。
「数週間前より体調が悪化し、現在通院により治療を受けている状況です。これまで体と相談しながら無理のない範囲で業務をこなしてきましたが、長時間の勤務が難しくなっております。このままの状態では十分な力を発揮できず、職場の皆さんにもご迷惑をお掛けすることになるため、〇月〇日をもって退職させていただきたいと思います。」
5.4 介護や育児といった家庭の事情
介護や育児といった個人的な家庭の事情で退職する場合も、正直に理由を伝えるのがおすすめです。あまり細かく話す必要はありませんが、一身上の都合といった曖昧な内容ではスムーズに受け入れてもらえない可能性もあるため、おおよその理由は伝えるようにしましょう。
「私事で大変申し訳ございませんが、実母が介護を必要とする状態になってしまったため、〇月〇日をもって退職させていただければと思います。勤務時間や業務内容の変更をお願いすることも考えましたが、介護との両立は難しいと判断し、退職を決意いたしました。試用期間中の退職となり、職場の皆さんにはご迷惑をお掛けいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。」
【関連記事】「【仕事の辞め方】必要な準備と転職活動を含めた退職までの流れ・注意点」
6 試用期間中の退職に関する疑問
ここからは、試用期間中の退職に関する疑問について解説します。「罰則はあるのか」「転職の際はどう対応すればいいのか」といった点を詳しく説明します。
6.1 試用期間中の退職に罰則はある?
正規の手続きを踏んだ上での退職であれば、試用期間中であっても罰則を求められることはないでしょう。もしも、「試用期間中に退職した場合は違約金が発生する」といった契約を求められたとしても、労働基準法第16条の「賠償予定の禁止」により、無効となる可能性が高くなります。
ただし、企業に大きな損害を与えたり、何の連絡もせず突然出社しなくなったりした場合は、何らかのペナルティが課せられることも考えられます。
6.2 試用期間中の退職は履歴書に記入すべき?
試用期間中の退職も、履歴書には記入するようにしましょう。「印象が悪くなるから、試用期間中の退職は書かない方がいいのでは?」と考える方もいますが、雇用保険の手続きなどから職務経歴が判明した場合は、経歴詐称を疑われる可能性もあります。
退職の事実を隠したことでかえって印象を悪くし、働きづらくなったり解雇に至ったりすることも考えられるため、職務経歴は正確に記載することが重要です。
6.3 転職時の面接で理由を聞かれた場合の返答は?
確かに、短期間での退職は転職の際不利になるかもしれません。しかし、伝え方によっては好印象を与えられる可能性は十分にあります。
例えば、「前職では希望の部署に配属されず、自分の力を発揮できませんでした。しかし、その中でも〇〇するなど自分なりの努力をしてきたので、その経験と反省を活かし、御社では〇〇の分野で頑張りたいと思います」など、退職した理由と努力してきたことを前向きに伝えることが大切です。
【関連記事】「面接でどう答える?イヤ~な質問の切り返し方」
7 今後、試用期間中の退職を避けるには
試用期間中の退職は、理想と現実の乖離が原因であることが多い傾向です。そのため、試用期間の退職を避けるには、入社前と入社後のギャップをいかに小さくするかが重要と言えます。では、ギャップを感じずに働き続けるには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。
7.1 徹底的にリサーチを行う
まずは、応募前に企業のことを徹底的にリサーチしましょう。一見、華やかそうに見える職種でも、実際の業務は地味な単純作業が多いこともあります。また、配属される部署によって、想像とは全く違う仕事を任されるかもしれません。
さらに、給与や福利厚生、経営方針や企業風土などを調査し、自分の力を発揮できる場所かどうかを客観的に判断することが大切です。最近は、実際に働いて職場の雰囲気を体験できる「就業体験」や「インターンシップ」を実施している企業も多くなっているため、こういった制度を利用するのも良い方法です。
7.2 転職のプロに相談する
企業の細かいリサーチは大変重要ですが、個人では限界があるのも事実です。そんなときは、マイナビエージェントなど転職のプロに相談するのがおすすめです。個人で調べるのが難しい企業情報を提供してもらえたり、自分の希望にぴったり合う企業を探してもらえたりすれば、入社後のギャップも感じにくくなるでしょう。
はじめての転職には、
「マイナビエージェント」がおすすめです。
マイナビエージェントについて詳しく知る >
8 まとめ
試用期間中に社風や仕事が合わないと感じて、退職したいと思うこともあるでしょう。基本的に、試用期間中であっても退職は可能であり、給与も規定通り支払われます。あまりにも早い時期の退職は、転職の際に不利になることも考えられますが、経歴詐称を疑われないためにも、履歴書には正直に記入することが大切です。
試用期間中の退職を繰り返さないためには、入社前に徹底的なリサーチを行い、入社後にギャップを感じないようにする必要があります。自分にぴったり合う仕事を見つけたい場合は、マイナビエージェントなどの転職のプロを利用するのもいいでしょう。
\転職するか迷っていてもOK/
マイナビエージェントに無料登録して
転職サポートを受ける