自己効力感とは、簡単に言うと「自分ならできる」という自信のことです。本記事では、自己効力感の意味や自己肯定感との違い、高い人の特徴を解説します。記事の後半では、自己効力感を高めるメリットや具体的な高め方も紹介していますので、自分に必要だと感じた方は自己効力感を高める方法を試してみましょう。
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1. 自己効力感とは?
自己効力感とは、『自分は目標達成のための能力を持っている』と認識する力のことです。ここでは、自己効力感の意味や社会的学習理論との関係性、自己肯定感との違いについて解説します。
1.1. 自己効力感の意味
自己効力感とは、自分自身に対して「自分ならできる」という信念や自信のことを指します。
自分には、特定の目標や課題を達成する能力があると認識している状態のことで、この心理学的な概念は、スタンフォード大学教授のアルバート・バンデューラ氏によって提唱されました。
「困難なことでも乗り越えられる」といった認知状態にあると、仕事や生活などさまざまなシーンで役立ちます。例えば、大きな壁が立ちはだかっても諦めずに立ち向かい、失敗した時にも早く立ち直ることができるのです。
1.2. 社会的学習理論との関係性
自己効力感は、「社会的認知理論」のなかで使用される心理学用語の1つです。
アルバート・バンデューラ氏は「社会的認知理論」のなかで「人間は3つの要因が互いに関連しつつ、意思決定に影響している」と記述しています。
要因 | 詳細 | 具体例 |
---|---|---|
先行要因 | 行動を起こす前の条件 | 体調や気分が良いから仕事で結果を出せそうだと思える |
結果要因 | 行動の結果から学んだことによる条件 | 過去の経験や他人から見聞きした情報を頼りに仕事で結果を出せそうだと思える |
認知的要因 |
特定の行動に対してどのように認識しているかという条件 |
仕事は楽しい・自分を成長させてくれるものだと考えているから仕事で結果を出せそうだと思える |
1.3. 自己効力感が重要視される理由
近年は、ビジネスシーンだけでなく教育や医療においても、自己効力感が人間の意識や行動をより良い方向へ変化させることができるとして注目されています。
ビジネスにおいては新しい課題や困難な問題に積極的に取り組んだり、失敗から学んだりできるため、仕事で成果を上げやすくなるといえるでしょう。
人間の意識や習慣を変えるのは難しいものですが、自己効力感を高めることでモチベーションの維持や、成果の向上が期待できます。
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2. 自己効力感と「自己肯定感」「自尊心」との違い
自己効力感と似た言葉に、「自己肯定感」や「自尊心」があります。2つともよく耳にする言葉ですが、自己効力感とはどのような違いがあるのでしょうか。
2.1. 自己効力感と自己肯定感との違い
自己効力感と自己肯定感は、概念が大きく異なります。
自己効力感は、目標達成に対して「自分ならできる」「きっとうまくいく」と信じることができる認知能力のことです。
それに対し、自己肯定感は無条件に自分の存在価値を認めることができる「感情」を指します。
つまり、「自分ならできる」と信じることを自己効力感、「たとえできなかったとしても自分を認めてあげられる」というのが自己肯定感だと言えます。
2.2. 自己効力感と自尊心との違い
自己効力感と自尊心は、どちらも「自信」に関わる概念ですが、ニュアンスが異なります。
自己効力感は、「自分なら成功できる」と信じる力であり、これまでの経験や成功体験によって高まりやすいのが特徴です。
一方、自尊心は「自分には価値がある」という感覚を指し、他者との比較で影響を受けやすいと言われています。自尊心は「プライド」や「誇り」とも言い換えることができます。
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3. 自己効力感は3つに分けられる
「自己効力感」は主に3つに分類されます。対象や状況などが異なるためそれぞれ理解しておきましょう。
3.1. 自己統制的自己効力感
自己統制的自己効力感は、自身の行動をコントロールできる認知状態のことです。
はじめて挑戦する仕事や前例のない問題においても「きっと乗り越えられる」と考えて挑むことができます。失敗や挫折をしてもすぐに立ち直り、再び挑戦できる能力のことです。
3.2. 社会的自己効力感
社会的自己効力感は、対人関係において発揮される能力のことです。
社会的自己効力感が高い人は、相手の気持ちに寄り添い、共感することができやすいので、良好な人間関係を構築できる可能性が高まります。
相手が自分に対して心を開いていないことが分かっていても、「自分ならきっと仲良くなれるはず」といった心理状態を作れることが特徴です。
3.3. 学業的自己効力感
学業的自己効力感とは、学業における達成感によって育まれる能力のことです。
難関校への合格や、難しい資格を取得した時など、学習を通して成果をあげることで学業的自己効力感が高まります。
学業的自己効力感が高い人は、社会に出ても難易度の高いスキルや資格の取得が必要になった時にスケジュールを立てて前向きに挑むことができるケースが多いです。
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4. 自己効力感の高い人の特徴
自己効力感の高い人にはいくつか特徴があるので、下記にまとめました。
自己効力感の高い人 |
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---|
自己効力感が高い人は、大きな壁に直面した場合、課題解決へ向けた行動をとります。困難な状況でも諦めずに、粘り強く努力し続けることができます。
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5. 自己効力感を高めるメリット
自己効力感を高めることでさまざまなメリットが得られます。ここでは、下記の3つの視点から具体的なメリットについて解説します。
5.1. モチベーションの維持につながる
自己効力感を高めることで、モチベーションを維持できるようになります。
自己効力感が高い人は、達成感を抱きやすいため、目標に向けた取り組みに集中しやすいことが特徴です。
たとえ困難なことに直面しても、自分の能力を向上させるために必要なことだととらえます。そのため、自らを奮い立たせて前向きに取り組むことができるのです。
5.2. 何事にもチャレンジする精神が身につく
自己効力感を高めると、「自分ならできる」と思えることが多いため、何事にも恐れずチャレンジする精神が身につきます。
さまざまなことに興味を持って、周囲の人に質問をしたり、勉強したりと積極的に行動できるため、能力向上に期待を持てるでしょう。
失敗をしてもくじけにくいので、成功するまで突き進むことができる点もメリットの1つです。
5.3. 前向きに考えられるようになる
自己効力感を高めることで、ポジティブな思考になりやすいため、物事に対して前向きに考えられるようになります。
失敗体験も自分にとってプラスだととらえて、前向きな行動を取り続けられるため、大きな成長が見込めるでしょう。
成功率の低いプロジェクトにも積極的に取り組むことができるので、成功へと導ける可能性があります。
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6. 自己効力感を高める4つの要素
自己効力感を高めるためには、下記の4つの要素にアプローチすると効果的です。
● 直接的達成経験
● 代理経験
● 言語的説得
● 生理的・情動的喚起
6.1. 直接的達成経験
特定の目標を最後までやり遂げて成功体験を積み重ねることが大切です。
なかでも時間や労力をかけて達成できた経験は、自己効力感の向上に効果的だと言えるでしょう。
困難なことに挑戦した結果、自分の力で成し遂げることができれば、「自分ならできる」といった自信につながります。
6.2. 代理経験
自己効力感は、他者の行動を観察し、「自分にもできそう」とイメージする代理経験によって高めることができます。他者が成功した結果だけではなく、過程を観察することが重要です。
具体的に乗り越えてきた困難な出来事や、達成した方法などをより詳しく調べることで代理経験による自己効力感を高められます。
6.3. 言語的説得
言語的説得によって自己効力感を高めることができます。
例えば、「君ならできる」「このプロジェクトを成功できたなら〇〇も達成できるはず」というようにポジティブな言葉をかけられると、自己効力感の向上につながるでしょう。
また、ネガティブな発言を受けたときに、自分のなかでポジティブに変換する癖を付けておくことも大切です。
6.4. 生理的・情動的喚起
心身の健康状態を保ち、いつもと同じ状態を作ることも自己効力感の向上につながります。
例えば、睡眠不足や不規則な食生活、ストレス過多などが常態化してしまうと、前向きな判断ができなくなります。
自己効力感を高めるためには、ワクワクやドキドキといった感情に気づくことが大切ですので、環境を整えることからはじめると良いかもしれません。
日々の生活リズムを整えて、精神的に穏やかな毎日を過ごすことを意識しましょう。
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7. 自己効力感を高める方法
自己効力感は、工夫すれば自分自身で高めることができます。ここでは、6つの視点から自己効力感を高めるコツを紹介するので、取り組めそうなものから挑戦してみてはいかがでしょうか。
7.1. 小さな目標から立てていく
はじめから大きな目標の達成を目指すのではなく、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。
「自分で立てた目標を達成できない」「成果がでない」という状態では、かえって自己効力感を低くしてしまう可能性があります。
また目標が低すぎても、自己効力感の向上効果が期待できないため、ギリギリ達成できるかどうかという小さな目標を立てることを意識しましょう。
徐々に目標を大きくしていくことで直接的達成経験を積み重ねられるため、自己効力感が高まります。
7.2. 過去に成功した経験を探してみる
過去に経験した成功体験を振り返ることで、自己効力感を高められる可能性があります。些細な出来事でも良いので、過去の経験をリストアップしてみるのもよいでしょう。
過去に成功した時の自分と、現在の自分を結び付けて考える能力が高まれば、自己効力感が向上します。
自分では「成功体験」だと気づいていないケースも多くあるので、過去を振り返って探してみることが大切です。
7.3. 他人の成功体験を観察しイメージしてみる
他人の成功体験を観察し、イメージすれば、「自分にもできそう」という自己効力感を育んでいくことができます。
偉人やプロの選手など有名人の成功例を参考にする人が多いのですが、時代がかけ離れていたり、成功の規模が大きすぎたりすると自分事としてとらえにくくなるでしょう。
そのため、対象者の能力や環境、境遇が自分に近い人の成功プロセスを聞いて、代理経験による自己効力感を高めることをおすすめします。
7.4. ポジティブな言葉を使用する
例えば、難しい問題に直面した際に、「無理かもしれない」「自分には向いていない」などネガティブな言葉を口にすると、挑戦意欲が失われ自己効力感も低下してしまいます。
そのため、気持ちが沈んだときこそ「やればできる」「少しずつ成長している」とポジティブな言葉を使用することが大切です。前向きな言葉を使い続けることで、脳が「自分はできる」と認識しやすくなり、自己効力感を高めることができます。
7.5. 肯定的なフィードバックを受ける
他者から褒められると、自分の努力が評価されたと感じて自信につながりやすくなります。特に、「プレゼンの説明がとても的確だった」「〇〇の資料はポイントが分かりやすく整理されていた」など、具体的なフィードバックを受ければ、自分の強みを自覚できるので、自己効力感はより向上するでしょう。
ただし、周囲から肯定的なフィードバックを受けるには、自分も積極的に他者を褒めるなど、前向きな環境を作る意識が大切です。日常生活でポジティブな言葉をかけ合うことで、周囲の人も自然と良いフィードバックを返しやすくなります。
感謝や称賛の文化が根付くと、互いに認め合う環境が生まれ、職場全体の自己効力感アップにつながるでしょう。
7.6. 体調を整える・生活習慣を見直す
心身の不調は、自己効力感を低下させる要素の1つですので、体調を整えるようにしましょう。規則正しい食生活や、十分な睡眠時間の確保、ストレスの解消などが自己効力感の向上につながります。
慢性的な不調をその日のうちにケアして、自己効力感を高く保てるように意識してみましょう。
7.7. 自分の行動に対する意味や必要性を明確にする
自己効力感が高い人ほど、「何のために行うのか」「結果的に自分が何を得られるのか」など行動に意味を見出す傾向にあります。
行動に対して意味や価値をつけなければ、何のためにやっているのか分からなくなり、挫折につながるかもしれません。
自己効力感を高めるための行動を取る前に、なぜ行うのか、自分に本当に必要なのかを考えることが大切です。
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8. 自己効力感を測る方法
自己効力感がどの程度身についているのかを認知することが大切です。
ここでは、1986年に坂野雄二氏と東條光彦氏によって提唱された「一般性セルフ・エフィカシー尺度の妥当性の検討」を基に自己肯定感を測る方法について解説します。
同資料では、自己効力感は「行動の積極性」「失敗に対する不安」「能力の社会的位置づけ」という3つのカテゴリーに分類され、16項目の質問によって測定できます。
回答は「はい・いいえ」の2択で得点範囲は0〜16点までとなっており、得点数が多いほど自己効力感が高いことになります。
行動の積極性 | □ 何か仕事をする時は自信を持ってやるほうである。 □ 人と比べて心配性なほうである。 □ 何かを決める時、迷わずに決定するほうである。 □ 引っ込み思案なほうだと思う。 □ 結果の見通しがつかない仕事でも、積極的に取り組んでゆくほうだと思う。 □ どんなことでも積極的にこなすほうである。 □ 積極的に活動するのは苦手なほうである。 |
---|---|
失敗に対する不安 | □ 過去に犯した失敗や嫌な体験を思い出して、暗い気持ちになることがよくある。 □ 仕事を終えた後、失敗したと感じることの方が多い。 □ 何かをする時、うまくゆかないのではないかと不安になることが多い。 □ どうやったらよいか決心がつかずに仕事に取りかかれないことがよくある。 □ 小さな失敗でも人よりずっと気にする方である。 |
能力の社会的位置づけ | □ 友人より優れた能力がある。 □ 人より記憶力が良いほうである。 □ 友人よりも特に優れた知識を持っている分野がある。 □ 世の中に貢献できる力があると思う。 |
【出典】坂野雄二「一般性セルフ・エフィカシー尺度の妥当性の検討」
【出典】坂野雄二 東條 光彦「一般性セルフ・エフィカシー尺度作成の試み」
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9. まとめ
自己効力感とは、目標を達成するために必要な能力を自らが持ち合わせていると確信できる能力のことです。
変化が著しい時代に活躍できるビジネスパーソンになるためには、自己効力感を高める必要があります。自己効力感の高め方を理解したうえで、日頃から発言や行動など意識して過ごすようにしましょう。
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