【カバレッジとは】業界やビジネスシーン別の意味と使い方を解説

【カバレッジとは】業界やビジネスシーン別の意味と使い方を解説

「カバレッジ」と聞くと英語のカバーの名詞であることはなんとなく想像できますが、この言葉はビジネス用語として業界やビジネスシーンごとにそれぞれの意味を持っています。今回は「カバレッジ」という用語のさまざまな使い方を見ていきます。

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1.カバレッジとは

カバレッジ(Coverage)とは、カバーしている割合=網羅率のことで、さまざまな業種で使われる用語です。

例えば携帯電話の通話エリアを表す人口カバレッジは、全人口を分母に、携帯電話のカバーエリアに住んでいる人口を分子にして計算をします。

サービスなどの普及範囲を示す時に使われる用語で、さまざまな分野で使われます。

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2.携帯電話で使われるカバレッジ

もっと身近なカバレッジの1つは、携帯電話の通話エリアのカバー率「エリアカバレッジ」です。

しかし、どのような算定基準にするかで数値は異なります。

2.1.面積カバー率

携帯電話基地局を中心に通話可能エリアの面積を計算し、それが全国の面積のどのくらいにあたるのかを示します。

分母は全国の面積で、分子は通話可能エリアの面積になります。

しかし、携帯電話の基地局は、利用の多い場所=人口の多い場所に優先して配置され、人の少ない場所には設置されないため、面積カバー率は一般に低くなります。

2.2.人口カバー率

携帯電話は人が使うものなので、人口の何%の人が使える状態にあるかを示した人口カバー率が一般に使われます。

分母は全国の人口で、分子は通話エリアに住んでいる人の人口になります。携帯電話キャリアなども「人口カバー率97%」などという形で発表をしています。

その基準は、国勢調査で使われる500mメッシュを利用したものです。総務省統計局は、国勢調査の結果に基づいて、全国を500m四方の四角形に区切り、メッシュごとの人口などの「地域メッシュ統計」を公表しています。

携帯電話キャリアは、このメッシュのそれぞれについて通話可能エリアがメッシュ面積の50%を超えているかどうかを確認します。

50%を超えている場合はその500mメッシュの人口は通話ができるとみなし、50%未満であった場合はその500mメッシュの人口は通話ができないとし、合計した人口を総人口で割った率を人口カバー率として発表しています。

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3.マスメディアでのカバレッジ

テレビやラジオなどのメディアが配信している地域の中で、実際に視聴をしている割合です。

広告主にとっては、地域ごとのカバレッジを見て、プロモーション戦略を立案することから重要な指標になっています。

3.1.テレビの視聴率

テレビでよく使われる視聴率は、ビデオリサーチ社が全国27の地域で番組ごとの世帯数カバレッジを調査し、視聴率として発表しているものです。

世帯数が計算の基礎になっているため、視聴率50%でも人口の50%が見ているというわけではありません。あくまでも全世帯の50%の世帯がその番組を見ていたということです。

例えば4人家族で1人だけが視聴をしていてもカウントをされるため、実際に視聴をしている人の数は世帯視聴率よりも低くなります。

3.2.ラジオの聴取率

ラジオの場合は、ビデオリサーチ社が、個人に対してどの番組を聞いていたかのアンケート調査を行い、そこから個人カバレッジを推定し、聴取率として発表しています。

アンケート調査は個人に対して行われるため、テレビ視聴率と異なり、個人聴取率になります。

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4.ソフトウェア開発でのカバレッジ

ソフトウェア業界では、テストカバレッジという言葉がよく使われます。

コードを書いた後に、テストが完了した範囲を数値で表したものです。

ソフトウェア開発では、コードを書くと、単位ごとにテストコードを書き、テストを行います。

プログラムにより、さまざまな条件でコードを動かしてみて、バグや不具合がないかどうかを確認します。

このテストコードで動作確認をした命令、条件分岐、分岐条件などの割合がテストカバレッジになります。

カバレッジが100%になるまで、コードを改善するのが理想ですが、それをやろうとすると膨大な時間がかかることになり現実的ではありません。

コードの内容や開発するシステムの用途により、適切なテストを行い、開発コストを抑えるのも、テスト技術のひとつです。

4.1.ステートメントカバレッジ

コードの中の命令のうち、テストで実行された命令の割合です。

このステートメントカバレッジが低いということは、一度も実行されなかった命令が多くあるということで、そもそものコード自体に無駄があるか、あるいはテストコードが適切でなかったということになります。

多くの場合、コードを1ユニット分書いたらテストをする単体テストでの評価に使われる指標です。

4.2.ブランチカバレッジ

コードの中には条件分岐の命令が含まれます。条件分岐とはある条件が真であるか偽であるかを判定して、それぞれで別の処理を行うものです。

この条件分岐の両方の処理を行うようなテストコードを書き、確認をすると、カバレッジ100%になります。

4.3.コンディションカバレッジ

条件分岐の中には、複数の条件分岐が組み合わさり、処理が複数にわたるものもあります。このような複雑な条件分岐構造の処理をすべてテストをすると、コンディションカバレッジ100%になります。

この3つのカバレッジは、ステートメントカバレッジ(C0)、ブランチカバレッジ(C1)、コンディションカバレッジ(C2)と記号で呼ばれることもあり、C2になるほど複雑なテストコードが必要になり、テストの分析にも時間がかかるようになります。

また、この他、すべての関数を呼び出したかを測定する指標もあります。

4.4.アンチパターン

テストカバレッジ100%ということは、すべての命令分、条件分岐を動作させたということであり、バグのない非常に品質の高いコードであるかのように思えます。多くの場合その通りです。

しかし、テストカバレッジ100%であっても、バグが潜在している場合が多々あります。このようなパターンはアンチパターンと呼ばれます。

アンチパターンの代表的なコードは「a=b/c」とう除算です。一般的にはb、cに1から任意の数までを代入していって、エラーが起きないことや異常値が出力されないことを確かめます。

しかし、この場合は、cが0の場合もテストしておく必要があります。多くの開発環境で、0で割る除算はエラーを起こすからです。

この「0で割る」テストを考慮してないテストコードで、テストカバレッジ100%にしても、品質としては100%になっているわけではありません。

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5.AIのニューロンカバレッジ

ソフトウェアのテストカバレッジの考え方をAIに適用したものがニューロンカバレッジになります。

深層学習(ディープラーニング)では、人間の脳神経細胞を模したニューラルネットワークを利用します。

現在、AIで問題になっているのは説明可能性です。AIは適切な学習をさせることで高い精度の予測、判別などを行なってくれますが、なぜそのような結果が出てくるのか、ニューラルネットワークがどのように動作しているのかはブラックボックスになってしまっています。

この状態では、AIのさらなる進化に限界が生まれしまうため、AIがどのように動作しているのかを知る研究が盛んになっています。これにカバレッジ手法が応用されています。

目的は、ニューラルネットワークのすべてのノードを活性化(出力する)パターンを探すことで、活性化したニューロンを分子、前ニューロン数を分母にしてニューロンカバレッジを計算します。

カバレッジ100%になるということは、ニューラルネットワークのすべてのノードを動作させたことになり、AIの仕組みを解明する大きな手がかりとなります。

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6.BtoBマーケティングのカバレッジ

法人ビジネスを行うBtoBマーケティングでは、次のような意味でカバレッジという言葉が使われます。

・想定されるターゲット企業に対して、どれくらいの企業から引き合いをいただいているか。

・想定されるターゲット企業に対して、どのくらいの企業がコンタクト可能な状態になっているか。

・想定されるターゲット企業に対して、どのくらいの購入決定権を持つ人とコンタクト可能な状態になっているか。

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7.BtoCマーケティングのカバレッジ

消費者ビジネスを行うBtoCマーケティングでは、次のような意味でカバレッジという言葉が使われます。

・推定された潜在消費者に対して、どのくらいの消費者が実際に製品やサービスを購入してくれたか。

・競合する他社の販売数、売上などに対して、どのくらいの販売数、売り上げを達成できているか。市場シェア、市場占有率と同じ。

具体的にカバレッジという言葉がどのような内容を指すのかは、業界、企業によって異なります。必ず、定義を確認しておくことが大切です。

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8.金融業界でのカバレッジ

証券会社や投資銀行などが、ある企業を継続的に調査、分析の対象とすることを指します。

分析対象となっている企業では、自社の分析を行っているアナリストの所属機関と氏名を、了承を得て、「アナリストカバレッジ」として投資家向けに公開をしている企業があります。

投資家の方に、企業が公開するIR情報だけでなく、各アナリストが公開をする分析レポートなどを読んで、投資するかどうかを判断してもらうためです。

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9.まとめ

カバレッジとは、カバーしている割合=網羅率のことで、さまざまな業種で使われる用語です。

使われる業種で中身は大きく異なり、またひとつの企業の中で通用する言葉としてカバレッジという言葉が使われることもあります。

カバレッジという言葉に出会った時は、分母と分子に何が使われているのか、定義を確認することが大切です。

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