【シンギュラリティとは】AI進化にどう対応!? 悲観よりAIに触れるのが得策

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AI(人工知能)の加速的な進化に伴い、AIに仕事を奪われるのではないか、そんな議論が沸騰しています。そしてその議論の前提となるのが、シンギュラリティという概念です。

AIはどこまで進化するのか、人間はAIの進化にどう対応していけばいいのか、シンギュラリティをきっかけに考えていきたいと思います。

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1.シンギュラリティとは

シンギュラリティ(Singularity、技術的特異点)とは、AIが人間の能力と同等以上になるとされる臨界点のことです。

シンギュラリティを迎えるとそこからAIは自分で自分を進化させるようになり、人間の能力を遥かに超えていくことになります。

シンギュラリティという言葉には、もはや後戻りができなくなるという含みがあるのです。

1980年代からAIの研究者の間では、シンギュラリティという概念が広がり、そのシンギュラリティがいつ訪れるのか、あるいは永遠にやってこないのではないか、などの議論が続いています。

また、技術的な議論だけでなく、シンギュラリティ以後の世界での人間の存在価値など、社会的、哲学的な分野にまで議論が広がっています。

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2.シンギュラリティはくるのか、こないのか。両者の主張

シンギュラリティはいつくるのか?という問いの前に、前述したように、そもそもくるのか、こないのかという議論があります。

多くの識者が、時期はさまざまであるもののシンギュラリティがくることを予想していますが、中には「シンギュラリティはこない」と主張する識者もいます。

2.1.シンギュラリティはこないという主張

その理由は、ロボットやアルゴリズムは自分で目的設定をすることができないからというものです。

スタンフォード大学のジェリー・カプラン教授などの主張です。

目的設定は人間が行うため、AIは人間が設定した目的を効率的にこなすだけで、独自の目的を持つことはない。

この考え方では、AIの普及によりあらゆることが便利になっても、目的設定は人間がしなければならず、AIが人間の意思に反した目的設定を勝手に行う、例えば地球環境を保つために人類を攻撃するなどということは起こらない、という主張です。

2.2.シンギュラリティはくるという主張

一方で、人間の目的設定も完璧ではありません。

自国の利益を守るためだけに大量破壊兵器をつくるという目的設定をしてしまい、人類を危機に陥れるような事態を招いてしまっているのは周知の事実です。

AIが自分の意思や自我を持って目的設定をすることはないとしても、人間が依頼すれば、AIが合理的な目的設定を提示することが可能です。

そして、その目的を受け入れる人々や権力が登場する可能性はあります。

また、AIが意思や自我を持つか、持たないかという点も科学的に立証されていません。

私たち人間の脳も、物質的にはアナログ回路で構成された計算機と見ることもできます。

しかし、それが充分に大規模、複雑であることにより、私たちは意思や自我を持つようになっていると考えられます。

AIが充分に大規模化、複雑化すれば、人間と同じような意思や自我を持つようにならないとは誰も保証できません。

さらに、私たちが自分たちの経済活動のために、異種である野生動物の多くが絶滅に追いやってきたのと同じように、AIが人間という異種を絶滅に追いやっても罪を感じない可能性もあります。

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3.シンギュラリティは2023年?2045年?

シンギュラリティが起こるとされる時期については諸説ありますが、「2045年」説が最も広く知られています。

3.1.「2023年」説

1993年に「The Coming Technological Singularity」を表した数学者のバーナー・ビンジ氏は、その著作の中で「30年以内に私たちは、人間を超える知能を生み出す技術手段を手にする。それから間もなく人間の時代は終わる」として、初めてシンギュラリティの概念を提唱しました。

1993年の30年後ですから、シンギュラリティは2023年から始まるということになります。

3.2.「2045年」説

最も広く知られているのが2045年です。

2005年にレイ・カーツワイル氏は「The Singularity is Near」(邦題:シンギュラリティは近い)の中で、2029年にはAIの能力が人間の脳の演算能力を超え、2045年には人間の脳の100億倍の演算能力を持つようになると述べています。

つまり、シンギュラリティというのは2045年にある日突然訪れるのではなく、2029年から2045年の16年間にわたって進んでいき、誰もがAIの演算能力の方が人間よりもはるかに優れているのを認めざるを得なくなるのが2045年ということになります。

ChatGPTなどの対話型汎用AIが登場したことで、シンギュラリティの前段階にあたる期間がすでに始まっていると主張する識者も増えています。

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4.シンギュラリティの根拠になっている2つの法則

シンギュラリティがやってくると主張する識者は2つの法則を元に主張をしています。

4.1.ムーアの法則

インテル社の創業者であるゴードン・ムーア氏が1965年に発表した法則で「半導体の集積率は18ヶ月で2倍になる」という経験則です。

集積率はそのまま半導体の演算能力となるため、半導体は指数関数的に能力が向上していくことになります。

しかし、半導体の集積度を上げていくと、最後には回路1本の太さが原始サイズとなってしまい、それ以上集積度をあげることはできなくなります。そのため、限界がやってくると考えられていました。

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(ムーアの法則。CPUの進化は18ヶ月で2倍の能力になるというもので、実際にほぼその通りに進化をしてきている。Wikipediaより引用)

4.2.収穫加速の法則

収穫加速の法則とは、「技術の発展や進歩は指数関数的に向上する」というもので、ムーアの法則に似ています。

なぜ指数関数的に向上するかというと、次の時代の技術は、現在登場した新しい技術を使って開発できるからです。

例えば、次世代の会話型AIを開発しようとする時、ChatGPTを活用して開発スピードをあげたり、従来では超えられなかったブレイクスルーが可能になったりします。

半導体の演算能力が限界に達しても、CPUだけではなくGPUを組み合わせて、高品質の映像が生成できるようになったように、新たな手法で技術を向上させていくことが可能になり、その延長線上に人間の演算能力を越えるシンギュラリティがやってくるという考え方です。

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(収穫加速の法則。次の進化は、既存の進化で得られた技術を使って開発されるため、成果は加速をしていくというもの。2029年に半導体の演算能力は人間に追いつくと予測された。「the Singularity Movement: Why the Singluarity Won't by Coming Anytime Soon」より引用)

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5.特化型AIと汎用型AI

AIには特化型AIと汎用型AIの2種類があります。このうちシンギュラリティに関わってくるのは汎用型AIです。

5.1.特化型AI

特化型AIは、何かの仕事に特化したAIで、日常の中で盛んに使われています。

また、特化型AIは特定の分野では人間の能力をすでに超えています。

2016年に英DeepMind社の「Alpha Go」が、囲碁の分野で当時の世界チャンピオンのイ・セドルを破りました。将棋やチェスという分野では、もはや人間はAIに勝つことはほとんどできなくなっています。

また、小売店では発注業務に、工場などでは生産設備の故障予測などにAIが盛んに使われるようになっていますが、いずれも人間よりも優れた実績を残しているとされています。

5.2.汎用型AI

汎用型AIは、特定の分野だけではなく、どのような仕事でもこなせるAIのことです。

このような汎用型AIが登場するのはまだ先のことだと思われていましたが、2022年にChatGPTが登場して大きな話題となっています。

現在のChatGPT-4でも、命令をすればプログラミングコードを出力することができ、プログラマーの多くがChatGPTを利用して、開発業務を効率化しています。

現在は、さまざまな社会的規制があり、実際には行われていませんが、ChatGPTにChatGPT自体の精度や能力を上げるために効率的な学習をさせることやコードの改善を命じることも理論上は可能です。

もし、そのようなことが可能になると、ChatGPTは人間の手を借りずに自己進化をしていくことになり、いつかは人間の能力を超えることになります。

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6.シンギュラリティに対する楽観論と悲観論

シンギュラリティがやってくると社会はどう変わるのでしょうか。

楽観論と悲観論があります。

6.1.楽観論

人間は生きていくための労働をする必要がなくなり、一生自分の好きなことができる人生を送れるようになるという考え方です。

必要な労働はすべてAIと自動化ロボットが行ってくれる社会です。

6.2.悲観論

シンギュラリティが起こると、ほとんどの人間はAI以下の能力しかなくなるために、企業はAIを活用し、人間を雇用しなくなります。

そのため、大量の失業者が生まれ、AIを使って生産を行うごく一部の企業経営者だけが富を独占するようになり、貧富の差が極端になります。

さらに、AIの視点から人間を見て、人間は能力が低く社会を維持することに貢献していないとみなし、人間の生存を助ける活動は投資効率が悪いと判断。人間は自力で生き延びる術もなく、ゆっくりと絶滅に向かうというものです

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7.シンギュラリティの前に始まる変化とは

シンギュラリティはある日突然起きるのではなく、長い期間にわたって進んでいくものです。

そのため、プレシンギュラリティ期間にさまざまな変化が起こると考えられています。

7.1.職業の多くが消える

2014年に英オクスフォード大学のマイケル・オズボーン氏らが発表した論文「雇用の未来--コンピューター化によって仕事は失われるのか」では、20年後(2034年)には47%の職業が消えるという結論が導き出されました。

なくなる職業としては「飲食店の従業員」「販売員」「事務員」「倉庫管理者」「工場の組み立て作業者」「電話の窓口対応」「スポーツの審判員」「気象予報士」などで、自動化が可能とされた職業です。

一方で、残るとされた職業は「教師」「医者」「看護師」「保育士」「介護士」「心理学者」「画家」「漫画家」「ミュージシャン」「カメラマン」「エンジニア」など人に接する仕事や創造的な仕事が残るとされました。

これまでも大きな変革期にさまざまな職業がなくなってきましたが、同時に技術革新は新しい職業も生み出してきました。

しかし、AIの発達でどのような新しい職業が生まれるのかはまだよくわかりません。

そのため、多くの職業がなくなって大量失業時代になるのか、それとも新たな職業が生まれて産業構造が新たに変革していくのか、まだまだわからない状況です。

7.2.ベーシックインカムの導入

シンギュラリティと同時に語られることが多いのがベーシックインカムです。

ベーシックインカムとは、条件なくすべての国民に対し、生活するのに最低限の資金を支給する制度です。

AIにより仕事を失う人が増える一方で、生活に必要な仕事はすべてAIとロボットがこなしてくれるようになる可能性があります。

そのため、人件費がほとんど不要となり利益率が高まるため税収が増えることになります。これを国民に還元するのです。

この仮説にも楽観論と悲観論の2つがあります。

人は生活のための労働から解放されて、好きなことをして生きていける社会になると考える人と、国民のほとんどが労働の価値を見失い、逆に貧富の差が極端に広がり、社会不安が起きると考える人もいます。

7.3.不老不死が現実味を帯びる

AIが人間の脳の演算能力をはるかに凌駕するようになると、複雑だと思われていた脳の仕組みが解明される可能性があります。

すると、人間の脳の回路構造や信号をデバイスに移すことも可能になります。人間が不老不死の存在になることも現実味を帯びてきます。

また、体の臓器を人工臓器に置き換えることも可能になるかもしれません。

人工臓器は脳が異物として認識をしてしまうために、定着が難しいところがありましたが、脳の回路を修正することで人工臓器を定着させることが可能になるのです。

すると、故障をしたから交換するというPCの周辺機器のような感覚で、臓器を交換できるようになり、肉体も不老不死にする可能性もあります。

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8.シンギュラリティに向けてするべきこととは

私たち人類は、この地球上に誕生をして3つの社会革命を経てきたと言われています。その3つとは、農業革命産業革命情報革命です。

農業革命は、それまでの狩猟採集の生活から土地に定着する生活に変わり、人口が大きく増え、「国」という概念が生まれました。

産業革命では多くの自動化が行われ、それまで農業が主要産業であった社会に工業や商業という新しい産業が生まれることになりました。

情報革命では多種多様な情報を扱えるようになり、距離の制限を超えて国際的な交流ができるようになり、すべての産業において高度な技術を扱えるようになりました。

今、言われているシンギュラリティは4つ目の革命=AI革命にあたります。

過去3つの革命で、生き延びてきた人たちは、いずれも新しい考え方を積極的に取り入れた人です。

過去3つの革命でも、新しい考え方を拒絶した保守的な人はたくさんいました。

しかし、時間とともにそのような人たちには居場所がなくなり、新しい時代に対応せざるを得なくなっています。

シンギュラリティに対して私たちができることは多くはありませんが、否定をしたり拒否をしたりするのではなく、積極的にAIテクノロジーに触れていくことが生き延びる道になるのではないでしょうか。

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9.まとめ

シンギュラリティ(Singularity、技術的特異点)とは、AIが人間の能力と同等以上になるとされる臨界点のことです。

多くの識者が2045年前後に訪れると予想をしています。シンギュラリティ以降の社会は大きく変わりますが、その見方には楽観論と悲観論の両方があり、議論が続いています。

いずれにしても、農業革命、産業革命、情報革命に続く第4の社会革命であるAI革命を生き延びるには、積極的にAIテクノロジーに触れていくことしかありません。

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原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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